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第十七章 理樹さん、愛しています

記憶が甦った亜紀

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「こっちが亜紀の部屋だよ、ベッドを買っておいたから、今日からここで休んでくれ」

「ありがとうございます」

しばらくして、健がマンションにやって来た。

健にはいろいろ世話になりっぱなしで、亜紀の術後の後遺症も話をしたら、すごく驚いていた。

すぐにでも会いに行きたかったが、会社のこともあり、今日に至った。

「亜紀、退院おめでとう」

「ありがとうございます、ごめんなさい、どなたですか」

「僕は東條ホールディングス副社長、東條健です」

「東條?ご兄弟ですか」

「よく言われるが偶々苗字が同じだけなんだ」

「そうですか、なんか何にも思い出せなくて」

「ゆっくり思い出せばいいよ」

健はまた来るよと言ってマンションを後にした。

「そうだ、これ」

俺は亜紀にニューヨークのガイドブックを見せた。

亜紀は手に取ってページをめくっていった。

「素敵ですね」

二人で行ったブルックリン橋のたもとの公園のページで手が止まった。
俺は亜紀の様子を感じ取り声をかけた。


「亜紀、大丈夫か」

亜紀は目にいっぱいの涙を溢れさせて泣いていた。

「なんかわかんないんですが、すごく懐かしい気がするんです」

イーストビレッジやマンハッタンなど、俺と歩いたニューヨークの街並みのページは何か思い出しそうな表情を感じた。

「亜紀、ニューヨークへ行こう」

「えっ?ニューヨークですか」

「手術前に行けなかった場所や、前回行った場所など回ろう、記憶が蘇って来るかもしれないだろう?」

亜紀はコクリと頷いた。

俺と亜紀はニューヨークへ向かった。

ニューヨークの街並みを二人で歩いていると、亜紀に変化が現れた。

「素敵ですね、理樹さん、このお店、この間来た時も来ましたよね」

俺は亜紀の言葉に驚きを隠せなかった。

「亜紀、今俺の事理樹さんって呼んでくれたのか」

亜紀は満面の笑顔を見せて、俺に抱きついてくれた。

「理樹さん、理樹さん、愛しています」

「亜紀、俺も愛している」

ニューヨークの夜、俺と亜紀はお互いを求め合った。

はじめて亜紀と愛し合ったニューヨークでの夜以上に、興奮を抑える事は出来なかった。

「亜紀、約束を覚えているか」

「はい、覚えています、赤ちゃんですよね」

「そうだ、このまま俺を受け入れてくれ」

亜紀は最高の瞬間を感じて、俺も目一杯の愛情を注いだ。

ああ、なんて素晴らしいんだ、こんなにも幸せを噛み締められるなんて。

ニューヨークの熱い夜はいつまでも続いてくれと願った。
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