夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU

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俺はあゆみと別れる

俺は何をやってるんだ

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「ご馳走様でした」

「また、誘ってもいいかな」

あゆみは躊躇して、返事をしなかった。

次の日、花屋にいくと、友梨ちゃんが目を輝かせて、事の成り行きを聞いてきた。

「あゆみさん、どうでした?」

「加々美社長と食事した」

「はい?」

「凌は全く脈なし」

「部屋に入れてもらえましたか」

あゆみは首を横に振った。

「なんで加々美社長と食事したんですか」
「だって、断れなくて」

「もう、しょうがないですね、今度は麻生さんの店、ホストクラブへ行きましょう」

「無理だよ、行った事ないし、お酒飲めないし、麻生さん、全く脈なしだったんだよ、
本当に初めの頃私に一目惚れしてくれたのかな」

「とにかく、ホストクラブで指名すれば、ゆっくり二人で話出来ますから」

私はホストクラブへ向かった。

友梨ちゃんが、ヒカルくんに話しておいてくれた。

「麻生さん、指名入りました、よろしくお願いします」

「よし」

俺は店の片隅の席にいくと、あゆみが客だった。

どう言うつもりだよ、俺の気もしらねえで。

凌はわざとあゆみに素っ気ない態度をとっていた。

俺はお前を幸せには出来ない。

何度も記憶がなくなり、その度に辛い思いをさせた。

この先、どれくらい生きられるかわからない。

そんな男と一緒にいて、あゆみにとって幸せなのか。

実は凌は一ヶ月前に記憶が戻っていた。

担当医師のもとへ行って、話を聞いていた。

あゆみの苦しみは計り知れない。

このまま、記憶がないふりをして、あゆみから離れる決意をしていたのに……

俺はあゆみのテーブルに近づき、目線をあゆみより下になるようにしゃがみ込んだ。

手をとって、甲に口づけをした。

「麻生凌です、ご指名頂きありがとうございます、今宵は楽しんで頂けるように精一杯努めさせて頂きます」

あゆみは頬を真っ赤に染めて俯いた。

あゆみのうぶな反応に、凌はドキンと心臓が高鳴った。

やべえ、気持ち持ってかれる。

凌はぼそっと自分の気持ちを呟いた。

「いい加減にしてくれ、俺はお前を幸せに出来ない」

「えっ」

「なんでもありません」

あゆみはホストクラブにきて、ジンジャエールを頼んだ。

やっぱり、お酒飲まないとダメだよね。
「お酒お願いします」

「無理するな、飲めねえだろう」

「えっ、なんて言ったんですか」

「いや、なんでもありません」

凌はあゆみがお酒を飲めないことは知っている。

薄めのカクテルを持ってくるように指示をした。

ところが、徐々に顔が赤くなり、凌の肩にもたれかかって、眠ってしまった。

嘘だろう、一杯でもう寝ちまったのか。

凌はあゆみの顔を覗き込んで、声をかけた。

「あゆみ、あゆみ」

あゆみは全く目が覚めなかった。
参ったな。

まさか。

凌はヒカルを呼んだ。

「失礼します、あれ?」

「あれじゃねえよ、このカクテル薄めてねえだろう」

「あゆみさん、一杯で寝ちゃったんですか」

「あゆみは酒に弱いんだから、薄めろって言ったろうが」

「すみません」

「俺はもう仕事上がる、タクシー呼んでくれ」

「どうするんですか」

「あゆみを送っていくんだよ、このままじゃ困るだろ」
「わかりました」

「アパートは前のところか」

「いえ、引っ越したって友梨ちゃんが言ってたんですが、聞いていなくて」

凌は仕方なく自分のマンションに連れて行った。

あゆみを抱き抱えて、ベッドに寝かせた。

凌はあゆみのおでこにキスを落とした。

何やってるんだ、俺は。

あゆみと別れる決意はどこに行ったんだよ。
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