1 / 29
俺と契約を交わせ①
しおりを挟む
最上丈一郎は最上総合病院の跡取り息子で天才的外科医である。
俺は三十二歳を迎え、父親の最上総合病院医院長、最上権蔵は結婚しろとうるさく言ってくる。
「お前、独身を貫き通すつもりか」
「そんな事誰も言ってないだろ?めんどくさいんだよ」
「今付き合っている彼女とは結婚しないのか」
「誰の事言ってるのかな、今付き合っている女はいない」
「なんだ、また振られたのか」
「あのな、人聞きの悪い事を言わないでくれ、振られたんじゃなくて自然消滅って言ってくれ」
「なんかよく分からないが、お前についてきてくれる女性はいないのか」
俺はため息をついた。
また、その話かよと嫌気がさす。
俺は医院長室を出て行った。
「おい、話はまだ終わってないぞ」
親父の言葉を聞かず、バタンとドアを閉めた。
女と言うのは、休みになるとデートしろ、仕事から帰ると話に付き合えと、うるさくて仕方ない。
俺は疲れて帰ってくるのに、勘弁してくれ。
そのうち、何も言わずに姿を消す。
その繰り返しだ。
そんな矢先、足首の骨折で運ばれて来た患者がいた。
鶴巻梨花 三十九歳だ。
骨折して歩けないのにその患者は大丈夫と診察を拒否した。
「私、自力で治しますから治療はしないでください」
そう言って、緊急処置室のベッドから立ち上がろうとした。
「痛い」
「当たり前だ、骨が折れてるのに立ち上がれるわけがないだろう」
「大丈夫です」
俺はその患者の言葉を無視して、診察を始めた。
「CT検査室に運んで」
その女の抵抗も虚しく、CT検査室に運んだ。
「家族の連絡先を教えろ」
「私は一人暮らしなので家族はいません」
「そうか、じゃあ、お前に話する、しっかり聞けよ」
何、この先生、お前とか、聞けよとか、なんで命令口調なの。
「骨折してるから、入院して手術だな」
「私は自然治癒で治します、骨は勝手にくっつくし……」
「はあ?何言ってるんだ、歩けなくなるぞ、それでもいいのか」
「だって……」
私は実はお金がない、日々の生活を送るのにギリギリの収入しかないのである。
どう考えても無理。
悠長に入院して手術を受けるなんて、どこをどうしたってそんなお金は払えない。
「とにかく、私は帰ります」
なんだ、この女、なんか訳ありだな。
俺は看護師を一旦診察室から追い出した。
「おい、外に出ていてくれ」
「はい」
そしてその女と二人になった。
「訳ありだな、話してみろ」
その女はしばらく考えていたが、決心したように話始めた。
「お金がないんです」
「金がない?」
「入院して、手術を受けたら、退院の時支払うお金がありません」
「男はいないのか、男に払って貰え」
「そんな人いません」
俺はこの時、いいことを思いついた。
「なあ、俺と契約を交わせ」
「契約ですか」
「お前はこれからこの病院で手術を受ける、俺が執刀医だ、そして全ての費用は俺が出す」
「えっ」
「その代わり、俺の妻になれ、俺達は契約結婚をする、どうだ、これならお前は手術を受けられるだろ?」
「先生のメリットはなんですか」
俺は三十二歳を迎え、父親の最上総合病院医院長、最上権蔵は結婚しろとうるさく言ってくる。
「お前、独身を貫き通すつもりか」
「そんな事誰も言ってないだろ?めんどくさいんだよ」
「今付き合っている彼女とは結婚しないのか」
「誰の事言ってるのかな、今付き合っている女はいない」
「なんだ、また振られたのか」
「あのな、人聞きの悪い事を言わないでくれ、振られたんじゃなくて自然消滅って言ってくれ」
「なんかよく分からないが、お前についてきてくれる女性はいないのか」
俺はため息をついた。
また、その話かよと嫌気がさす。
俺は医院長室を出て行った。
「おい、話はまだ終わってないぞ」
親父の言葉を聞かず、バタンとドアを閉めた。
女と言うのは、休みになるとデートしろ、仕事から帰ると話に付き合えと、うるさくて仕方ない。
俺は疲れて帰ってくるのに、勘弁してくれ。
そのうち、何も言わずに姿を消す。
その繰り返しだ。
そんな矢先、足首の骨折で運ばれて来た患者がいた。
鶴巻梨花 三十九歳だ。
骨折して歩けないのにその患者は大丈夫と診察を拒否した。
「私、自力で治しますから治療はしないでください」
そう言って、緊急処置室のベッドから立ち上がろうとした。
「痛い」
「当たり前だ、骨が折れてるのに立ち上がれるわけがないだろう」
「大丈夫です」
俺はその患者の言葉を無視して、診察を始めた。
「CT検査室に運んで」
その女の抵抗も虚しく、CT検査室に運んだ。
「家族の連絡先を教えろ」
「私は一人暮らしなので家族はいません」
「そうか、じゃあ、お前に話する、しっかり聞けよ」
何、この先生、お前とか、聞けよとか、なんで命令口調なの。
「骨折してるから、入院して手術だな」
「私は自然治癒で治します、骨は勝手にくっつくし……」
「はあ?何言ってるんだ、歩けなくなるぞ、それでもいいのか」
「だって……」
私は実はお金がない、日々の生活を送るのにギリギリの収入しかないのである。
どう考えても無理。
悠長に入院して手術を受けるなんて、どこをどうしたってそんなお金は払えない。
「とにかく、私は帰ります」
なんだ、この女、なんか訳ありだな。
俺は看護師を一旦診察室から追い出した。
「おい、外に出ていてくれ」
「はい」
そしてその女と二人になった。
「訳ありだな、話してみろ」
その女はしばらく考えていたが、決心したように話始めた。
「お金がないんです」
「金がない?」
「入院して、手術を受けたら、退院の時支払うお金がありません」
「男はいないのか、男に払って貰え」
「そんな人いません」
俺はこの時、いいことを思いついた。
「なあ、俺と契約を交わせ」
「契約ですか」
「お前はこれからこの病院で手術を受ける、俺が執刀医だ、そして全ての費用は俺が出す」
「えっ」
「その代わり、俺の妻になれ、俺達は契約結婚をする、どうだ、これならお前は手術を受けられるだろ?」
「先生のメリットはなんですか」
20
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上エリートは溺愛がお好き
藤谷藍
恋愛
(旧題:強引社長とフラチな溺愛関係!? ー密通スキャンダルなんてお断り、ですー)
素顔は物凄く若く見えるベイビーフェイスの杉野紗奈は、メガネをかけて化粧をすると有能秘書に早変わり。いわゆる化粧映えのする顔で会社ではバリバリの仕事人間だが、家ではノンビリドライブが趣味の紗奈。妹の身替りとして出席した飲み会で、取引会社の羽泉に偶然会ってしまい、ドッキリ焦るが、化粧をしてない紗奈に彼は全然気付いてないっ!
ホッとする紗奈だが、次に会社で偶然出会った不愛想の塊の彼から、何故か挨拶されて挙句にデートまで・・・
元彼との経験から強引なイケメンは苦手だった紗奈。でも何故か、羽泉からのグイグイ来るアプローチには嫌悪感がわかないし、「もっと、俺に関心を持て!」と迫られ、そんな彼が可愛く見えてしまい・・・
そして、羽泉は実はトンデモなくOOたっぷりなイケメンで・・・
過去の恋の痛手から、一目惚れしたことに気付いていない、そんな紗奈のシンデレラストーリーです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
氷の上司に、好きがバレたら終わりや
naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。
お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、
“氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。
最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、
実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき――
舞子の中で、恋が芽生えはじめる。
でも、彼には誰も知らない過去があった。
そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。
◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか?
◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか?
そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。
笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。
関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。
仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。
「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
最強魔術師の歪んだ初恋
る
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。
けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる