2 / 29
②
しおりを挟む
「俺のメリットは黙って俺の生活スタイルに忠実に従う妻が欲しい」
その女は目を丸くした。
「いいか、普通に男女が付き合って結婚するとわがままが出る、俺が疲れて帰って来ても話相手をしろだの、休みにデートしろだのうるさくて仕方ねえ、でも契約なら俺の生活スタイルに忠実に従って貰う事が出来るだろ」
「あのう、それならずっと一人でいればいいんじゃないですか」
「あのな、俺は親父に結婚を急かされてる、だから結婚しないといけないんだ」
「そう言う事ですか」
「お前に取ってこんないい話はないだろう、ただで最高の治療が受けられるんだからな」
「それはそうですけど……」
「お前は俺の指示に従っていればいい、簡単だろ」
その女はしばらく考えていたが、俺の話に頷いた。
「そのお話をお受けします」
「そうか、決まりだな」
「契約結婚ですよね、ただの契約の関係ですよね」
「そうだ、何が言いたい」
「だから、夜はベッドは別ですよね」
「ああ、でもどうしても抱いて欲しいなら、抱いてやっても構わないぞ」
「結構です、こちらからお断りします」
全く、なんなのこの人、これじゃ誰も着いてこないのは当たり前だよね。
私はこのままじゃ、ずっと一人寂しく人生を終えることになっちゃうから、契約でもいいから結婚したほうがいいかもしれないと思った。
それにとにかくこの骨折を治さないと、どうすることも出来ない。
「あのう、先生の名前教えてください、私は鶴巻梨花です」
「俺は最上丈一郎だ」
えっ、最上って、先生のお父さんってこの病院の医院長?
「先生、先生はこの病院を将来継ぐんですか」
「そうだ、梨花は将来医院長夫人だな」
「私に務まりますか」
「どうかな、わかんねえな、梨花がどんな女かまだ分からないからな」
「それなのに、プロポーズしたんですか」
「プロポーズ?俺達は契約結婚だ、忘れるな」
分かってます、なんなの?本当に契約上の妻だけ欲しいんだ。
私にだって夢はある。
好きな男性にプロポーズされて、結婚して、毎日「いってらっしゃい」そしてキスして、
「ただいま」「お帰りなさい」そしてキス。
私は唇を尖らせて最上さんに近づいた。
「おい、なんの真似だ」
「えっ」
「そう言う面倒な事が嫌だからお前と契約したんだ、勘弁してくれ」
「ごめんなさい」
「なんだ、素直なところもあるんだな」
私は恥ずかしくなって俯いた。
「じゃ、契約成立だな」
私は入院して手術を受けることになった。
それからまもなくして退院の許可が降りた。
「もう退院して構わない、明日退院の手続きを済ませておく、お前は手配しておくタクシーで俺のマンションへ迎え」
「私、一人ですか」
「当たり前だ、俺は仕事があるからな、退院の手続きもタクシーの手配も済ませておくからありがたいと思え」
「私、いま、最上さんの婚約者ですよね、婚約者が退院する日位、お休み取ってくれてもいいのに……」
「はあ?何を甘えた事言ってるんだ、俺達は契約の関係だ、自分の立場を弁えろ」
その女は目を丸くした。
「いいか、普通に男女が付き合って結婚するとわがままが出る、俺が疲れて帰って来ても話相手をしろだの、休みにデートしろだのうるさくて仕方ねえ、でも契約なら俺の生活スタイルに忠実に従って貰う事が出来るだろ」
「あのう、それならずっと一人でいればいいんじゃないですか」
「あのな、俺は親父に結婚を急かされてる、だから結婚しないといけないんだ」
「そう言う事ですか」
「お前に取ってこんないい話はないだろう、ただで最高の治療が受けられるんだからな」
「それはそうですけど……」
「お前は俺の指示に従っていればいい、簡単だろ」
その女はしばらく考えていたが、俺の話に頷いた。
「そのお話をお受けします」
「そうか、決まりだな」
「契約結婚ですよね、ただの契約の関係ですよね」
「そうだ、何が言いたい」
「だから、夜はベッドは別ですよね」
「ああ、でもどうしても抱いて欲しいなら、抱いてやっても構わないぞ」
「結構です、こちらからお断りします」
全く、なんなのこの人、これじゃ誰も着いてこないのは当たり前だよね。
私はこのままじゃ、ずっと一人寂しく人生を終えることになっちゃうから、契約でもいいから結婚したほうがいいかもしれないと思った。
それにとにかくこの骨折を治さないと、どうすることも出来ない。
「あのう、先生の名前教えてください、私は鶴巻梨花です」
「俺は最上丈一郎だ」
えっ、最上って、先生のお父さんってこの病院の医院長?
「先生、先生はこの病院を将来継ぐんですか」
「そうだ、梨花は将来医院長夫人だな」
「私に務まりますか」
「どうかな、わかんねえな、梨花がどんな女かまだ分からないからな」
「それなのに、プロポーズしたんですか」
「プロポーズ?俺達は契約結婚だ、忘れるな」
分かってます、なんなの?本当に契約上の妻だけ欲しいんだ。
私にだって夢はある。
好きな男性にプロポーズされて、結婚して、毎日「いってらっしゃい」そしてキスして、
「ただいま」「お帰りなさい」そしてキス。
私は唇を尖らせて最上さんに近づいた。
「おい、なんの真似だ」
「えっ」
「そう言う面倒な事が嫌だからお前と契約したんだ、勘弁してくれ」
「ごめんなさい」
「なんだ、素直なところもあるんだな」
私は恥ずかしくなって俯いた。
「じゃ、契約成立だな」
私は入院して手術を受けることになった。
それからまもなくして退院の許可が降りた。
「もう退院して構わない、明日退院の手続きを済ませておく、お前は手配しておくタクシーで俺のマンションへ迎え」
「私、一人ですか」
「当たり前だ、俺は仕事があるからな、退院の手続きもタクシーの手配も済ませておくからありがたいと思え」
「私、いま、最上さんの婚約者ですよね、婚約者が退院する日位、お休み取ってくれてもいいのに……」
「はあ?何を甘えた事言ってるんだ、俺達は契約の関係だ、自分の立場を弁えろ」
11
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる