3 / 29
③
しおりを挟む
もう、こんなに冷たい人だとは思いもしなかった。
契約するんじゃなかったな。
でも駄目だ、私、お金払えない。
会計は全て最上さんが済ませてくれた。
退院の日、タクシーを手配してくれて、私は一人で最上さんのマンションへ向かった。
私が住んでいたアパートから荷物を運び、解約の手続きをしてくれたのも最上さんだった。
私はまだ、松葉杖を使っていないと歩く事が出来なかった。
退院の日も最上さんは姿を見せず、一人寂しく退院した。
タクシーが最上さんのマンションへ到着すると、マンションのコンシェルジュが出迎えてくれた。
「最上様の婚約者の鶴巻梨花様ですね、私、当マンションのコンシェルジュ、佐々木と申します、何なりとお申し付けくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます、鶴巻梨花と申します、よろしくお願いします」
「既に梨花様のお荷物は届いております」
「ありがとうございます」
「お部屋までご案内致します」
そして佐々木さんが案内してくれた。
凄いタワーマンション、エレベーターは最上階まで上がって行った。
「大丈夫でございますか」
「はい、最上さんにもう少し、佐々木さんくらいの優しさがあってもいいのに……」
そして、エレベーターのドアが開いた。
松葉杖を使うのは初めての事で、戸惑っていると、ドアの外に立っていた男性に怒鳴られた。
「本当に鈍臭いな、梨花は」
私はえっと聞き慣れた声に、最上さんだと確信した。
顔を上げると、やはり最上さんが立っていた。
私は想像もしていなかった最上さんの姿に呆然と立ち尽くしていた。
「いつまで突っ立ってるんだ、佐々木が出られないだろう」
「あっ、ごめんなさい」
そして慌ててエレベーターから降りようとした時、松葉杖がエレベーターのドアの溝にはまって、倒れそうになった。
「きゃっ」
最上さんは咄嗟に私を抱き抱えてくれた。
「おい、また病院へ逆戻りしたいのか」
「ごめんなさい」
倒れた松葉杖を拾って私に渡してくれた。
「全く世話が焼けるな」
最上さんは佐々木さんから荷物を受け取り、私を部屋に案内してくれた。
「早くしろ」
「無理です、そんなに早く歩けません」
でも、嬉しかった、だって休みは取れないなんて言ってたのに、先回りしてマンションで待っていてくれたんだもん。
最上さん、優しいところもあるんだとちょっと見直した。
最上さんは、部屋のドアを開けると、荷物を部屋まで運び「仕事に戻る」そう言って、出口に向かった。
「あれ、休み取ってくれたんじゃなかったんですか」
「お前の退院如きに大切な有給使えるか」
私は頬を膨らませて最上さんを睨んだ。
「そんな可愛い顔しても駄目だ、午後から手術があるからな」
可愛い顔に反応して恥ずかしくなって下を向いた。
最上さんは私に近づいて、私を抱き上げた。
「きゃっ」
そしてベッドの部屋に歩を進めた。
私をベッドに下ろして最上さんの顔が急接近した。
えっ、キスされるの?
私は咄嗟に目を閉じた。
次の瞬間、おでこにデコピンされた。
契約するんじゃなかったな。
でも駄目だ、私、お金払えない。
会計は全て最上さんが済ませてくれた。
退院の日、タクシーを手配してくれて、私は一人で最上さんのマンションへ向かった。
私が住んでいたアパートから荷物を運び、解約の手続きをしてくれたのも最上さんだった。
私はまだ、松葉杖を使っていないと歩く事が出来なかった。
退院の日も最上さんは姿を見せず、一人寂しく退院した。
タクシーが最上さんのマンションへ到着すると、マンションのコンシェルジュが出迎えてくれた。
「最上様の婚約者の鶴巻梨花様ですね、私、当マンションのコンシェルジュ、佐々木と申します、何なりとお申し付けくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます、鶴巻梨花と申します、よろしくお願いします」
「既に梨花様のお荷物は届いております」
「ありがとうございます」
「お部屋までご案内致します」
そして佐々木さんが案内してくれた。
凄いタワーマンション、エレベーターは最上階まで上がって行った。
「大丈夫でございますか」
「はい、最上さんにもう少し、佐々木さんくらいの優しさがあってもいいのに……」
そして、エレベーターのドアが開いた。
松葉杖を使うのは初めての事で、戸惑っていると、ドアの外に立っていた男性に怒鳴られた。
「本当に鈍臭いな、梨花は」
私はえっと聞き慣れた声に、最上さんだと確信した。
顔を上げると、やはり最上さんが立っていた。
私は想像もしていなかった最上さんの姿に呆然と立ち尽くしていた。
「いつまで突っ立ってるんだ、佐々木が出られないだろう」
「あっ、ごめんなさい」
そして慌ててエレベーターから降りようとした時、松葉杖がエレベーターのドアの溝にはまって、倒れそうになった。
「きゃっ」
最上さんは咄嗟に私を抱き抱えてくれた。
「おい、また病院へ逆戻りしたいのか」
「ごめんなさい」
倒れた松葉杖を拾って私に渡してくれた。
「全く世話が焼けるな」
最上さんは佐々木さんから荷物を受け取り、私を部屋に案内してくれた。
「早くしろ」
「無理です、そんなに早く歩けません」
でも、嬉しかった、だって休みは取れないなんて言ってたのに、先回りしてマンションで待っていてくれたんだもん。
最上さん、優しいところもあるんだとちょっと見直した。
最上さんは、部屋のドアを開けると、荷物を部屋まで運び「仕事に戻る」そう言って、出口に向かった。
「あれ、休み取ってくれたんじゃなかったんですか」
「お前の退院如きに大切な有給使えるか」
私は頬を膨らませて最上さんを睨んだ。
「そんな可愛い顔しても駄目だ、午後から手術があるからな」
可愛い顔に反応して恥ずかしくなって下を向いた。
最上さんは私に近づいて、私を抱き上げた。
「きゃっ」
そしてベッドの部屋に歩を進めた。
私をベッドに下ろして最上さんの顔が急接近した。
えっ、キスされるの?
私は咄嗟に目を閉じた。
次の瞬間、おでこにデコピンされた。
11
あなたにおすすめの小説
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
訳あって、お見合いした推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
羽村 美海
恋愛
【タイトルがどうもしっくりこなくて変更しました<(_ _)>】
狂言界の名門として知られる高邑家の娘として生を受けた杏璃は、『イケメン狂言師』として人気の双子の従兄に蝶よ花よと可愛がられてきた。
過干渉気味な従兄のおかげで異性と出会う機会もなく、退屈な日常を過ごしていた。
いつか恋愛小説やコミックスに登場するヒーローのような素敵な相手が現れて、退屈な日常から連れ出してくれるかも……なんて夢見てきた。
だが待っていたのは、理想の王子様像そのもののアニキャラ『氷のプリンス』との出会いだった。
以来、保育士として働く傍ら、ソロ活と称して推し活を満喫中。
そんな杏璃の元に突如縁談話が舞い込んでくるのだが、見合い当日、相手にドタキャンされてしまう。
そこに現れたのが、なんと推し――氷のプリンスにそっくりな美容外科医・鷹村央輔だった。
しかも見合い相手にドタキャンされたという。
――これはきっと夢に違いない。
そう思っていた矢先、伯母の提案により央輔と見合いをすることになり、それがきっかけで利害一致のソロ活婚をすることに。
確かに麗しい美貌なんかソックリだけど、無表情で無愛想だし、理想なのは見かけだけ。絶対に好きになんかならない。そう思っていたのに……。推しに激似の甘い美貌で情熱的に迫られて、身も心も甘く淫らに蕩かされる。お見合いから始まるじれあまラブストーリー!
✧• ───── ✾ ───── •✧
✿高邑杏璃・タカムラアンリ(23)
狂言界の名門として知られる高邑家のお嬢様、人間国宝の孫、推し一筋の保育士、オシャレに興味のない残念女子
✿鷹村央輔・タカムラオウスケ(33)
業界ナンバーワン鷹村美容整形クリニックの副院長、実は財閥系企業・鷹村グループの御曹司、アニキャラ・氷のプリンスに似たクールな容貌のせいで『美容界の氷のプリンス』と呼ばれている、ある事情からソロ活を満喫中
✧• ───── ✾ ───── •✧
※R描写には章題に『※』表記
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✿エブリスタ様にて初公開23.10.18✿
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
国宝級イケメンとのキスは、最上級に甘いドルチェみたいに私をとろけさせます♡ 〈Dulcisシリーズ〉
はなたろう
恋愛
人気アイドルとの秘密の恋愛♡コウキは俳優やモデルとしても活躍するアイドル。クールで優しいけど、ベッドでは少し意地悪でやきもちやき。彼女の美咲を溺愛し、他の男に取られないかと不安になることも。出会いから交際を経て、甘いキスで溶ける日々の物語。
★みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください
◆出会い編あらすじ
毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く美咲。
そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らい。この日は初めて会話をしたけど、ちょっと変わった人だなーと思っていた。
まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。
毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。
◆登場人物
佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動
天見 光季(27) 人気アイドルグループ、dulcis(ドゥルキス)のメンバー。俳優業で活躍中、自然の写真を撮るのが趣味
お読みいただきありがとうございます!
★番外編はこちらに集約してます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/693947517
★最年少、甘えん坊ケイタとバツイチ×アラサーの恋愛はじめました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/408954279
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる