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45. 断罪の終着点
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「偽の……魔法契約ですって……?」
アレックスの話を聞き、ユリアンナは目を見開いて愕然としている。
「……これは暗殺ギルドから持ち込まれた君の依頼の際の魔法契約書だ」
サイラスが持っていた書類を目の前に掲げる。
「契約書にはこう書いてある。
『この契約の目的は対象者を抹殺すること。各々の体の一部を契約の証とす。目的を達成した場合にはこの契約は破棄される。目的が未達の場合、契約の継続を望まない場合は契約金を返金の上、契約は破棄される』
この契約書は偽物だから契約は成されていないが、魔法契約書と同様に契約者同士の魔力が込められている。
ここに書かれている依頼者は君だ、ユリアンナ嬢」
「そ、そんなものっ!契約書には依頼者としか書かれていませんでしょう!?それがわたくしである証拠がありませんわっ!」
必死のユリアンナの弁解に、アレックスは目を閉じて首を横に振る。
「この依頼者がユリアンナである確たる証拠があるよ。……ここに」
そう言ってアレックスは目の前に金色の髪の毛の束を掲げる。
その美しい髪の色はユリアンナのものとよく似ている。
「魔法契約には契約者の体の一部が証として必要になるんだが、依頼者が契約の証として差し出したのがこの髪の毛だ」
ユリアンナは思わず少しだけ短くなった髪の毛を触る。
「皆も知っての通り……髪には持ち主の魔力が宿る。魔力には魔力紋があり、魔力紋は他人と完全に一致することはない。つまり、この髪に宿る魔力の魔力紋を調べれば、依頼者が誰かが分かるということだ」
ここにあるはずのない決定的な証拠の出現に、ユリアンナは顔色を変える。
「そして僕がこうやって皆の前でこの告発を行っている時点で…………この証拠品の持ち主が誰かは既に判明している。ここまで言えばもう分かるね?……ミリカ嬢の殺害を依頼したのは………君だよ、ユリアンナ」
アレックスの決定的な通告に会場は騒然とし、騒めきは次第に大きくなっていく。
───「何と恐ろしいことを……!」
───「いくら公爵家の令嬢とはいえ、このような暴挙は許されないだろう!」
───「シルベスカ公爵はどのように責任を取るおつもりなのか!」
非難の声が次々と上がる光景を尻目に、ユリアンナは髪を振り乱しながらアレックスに詰め寄ろうとして護衛に取り押さえられる。
「アレク様っ!!違うのです、アレク様……!わたくしは、アレク様に近づく女狐をどうにかしたい一心だったのです!アレク様はその女に騙されているのです!!信じてくださいませ!!」
「………ユリアンナ………最近僕は、もっと君と上手くやっていこうって思っていたんだよ?………しかし、こうなってしまってはもう無理だ。婚約は破棄させてもらう」
アレックスが決定的な言葉を口にすると、ユリアンナはわぁっと泣き声を上げる。
「そんなっ!!嘘よ……嘘よ!!お父様!!お兄様っ!!わたくしは王子妃になるのですわよね!?そうと言ってください!!」
この断罪劇を今にも切れそうなほど顳顬に血管を浮き上がらせながら見ていたシルベスカ公爵に、会場中の視線が集まる。
「………この役立たずが………。無能なりに大人しくしていればいいものを、シルベスカの名に泥を塗りおって……。お前とは今この場で縁を切った!今後一切シルベスカ家はこの件に関知しない!その者は既に無関係の平民であるから、処刑でも何でも、処遇は王家に委ねる!!」
───「………処刑だ!」
誰かがそう叫んだ瞬間、会場中で処刑を願う声が湧き起こる。
ユリアンナは護衛騎士に取り押さえられたまま慟哭をあげている。
「処刑っ………!」
ミリカはそう呟いた瞬間、顔色をなくしてふらりと倒れ、それをジャックが慌てて支える。
「ミリカッ!」
倒れたミリカの様子をサイラスが心配そうに覗き込み、それを見ていたアーベルが堪らず駆け寄る。
「ユリアンナ……貴様……!例えお前が死のうとも、私は一生貴様を許すことはない!」
アーベルは壇下のユリアンナを射るような視線で睨め付けると、ミリカを抱えて会場を後にするジャックたちに追随して会場を出て行った。
「お兄様!?どうしてですか!!血の繋がった妹より、なぜそのような女を───!!」
騒然とする会場にユリアンナの悲痛な慟哭が響き渡る。
「ユリアンナ……君の量刑はこの後王城に戻って話し合われる。己の過ちについて、牢の中でしっかりと考えて向き合ってくれ。………連れて行け」
アレックスがそう言って右手を上げると、ユリアンナを取り押さえていた騎士たちが腕を掴んで無理やり立たせ、引きずるようにして連れて行く。
「アレク様っ!牢なんて嘘ですわっ!わたくしはシルベスカ公爵家の娘ですっ!誰よりも高貴な娘なのよーっ!!」
会場を出るまで、ユリアンナの聞くに耐えない叫び声が響いていた。
アレックスが事態の決着を宣言して卒業パーティーの再開を促すと、会場では戸惑いつつも再び華やかな雰囲気が戻ってきた。
しかし人々の話題は先ほどの断罪劇のこと。
人々は〝稀代の悪女〟シルベスカ公爵令嬢の凋落を面白おかしく罵って楽しんだ。
アレックスの話を聞き、ユリアンナは目を見開いて愕然としている。
「……これは暗殺ギルドから持ち込まれた君の依頼の際の魔法契約書だ」
サイラスが持っていた書類を目の前に掲げる。
「契約書にはこう書いてある。
『この契約の目的は対象者を抹殺すること。各々の体の一部を契約の証とす。目的を達成した場合にはこの契約は破棄される。目的が未達の場合、契約の継続を望まない場合は契約金を返金の上、契約は破棄される』
この契約書は偽物だから契約は成されていないが、魔法契約書と同様に契約者同士の魔力が込められている。
ここに書かれている依頼者は君だ、ユリアンナ嬢」
「そ、そんなものっ!契約書には依頼者としか書かれていませんでしょう!?それがわたくしである証拠がありませんわっ!」
必死のユリアンナの弁解に、アレックスは目を閉じて首を横に振る。
「この依頼者がユリアンナである確たる証拠があるよ。……ここに」
そう言ってアレックスは目の前に金色の髪の毛の束を掲げる。
その美しい髪の色はユリアンナのものとよく似ている。
「魔法契約には契約者の体の一部が証として必要になるんだが、依頼者が契約の証として差し出したのがこの髪の毛だ」
ユリアンナは思わず少しだけ短くなった髪の毛を触る。
「皆も知っての通り……髪には持ち主の魔力が宿る。魔力には魔力紋があり、魔力紋は他人と完全に一致することはない。つまり、この髪に宿る魔力の魔力紋を調べれば、依頼者が誰かが分かるということだ」
ここにあるはずのない決定的な証拠の出現に、ユリアンナは顔色を変える。
「そして僕がこうやって皆の前でこの告発を行っている時点で…………この証拠品の持ち主が誰かは既に判明している。ここまで言えばもう分かるね?……ミリカ嬢の殺害を依頼したのは………君だよ、ユリアンナ」
アレックスの決定的な通告に会場は騒然とし、騒めきは次第に大きくなっていく。
───「何と恐ろしいことを……!」
───「いくら公爵家の令嬢とはいえ、このような暴挙は許されないだろう!」
───「シルベスカ公爵はどのように責任を取るおつもりなのか!」
非難の声が次々と上がる光景を尻目に、ユリアンナは髪を振り乱しながらアレックスに詰め寄ろうとして護衛に取り押さえられる。
「アレク様っ!!違うのです、アレク様……!わたくしは、アレク様に近づく女狐をどうにかしたい一心だったのです!アレク様はその女に騙されているのです!!信じてくださいませ!!」
「………ユリアンナ………最近僕は、もっと君と上手くやっていこうって思っていたんだよ?………しかし、こうなってしまってはもう無理だ。婚約は破棄させてもらう」
アレックスが決定的な言葉を口にすると、ユリアンナはわぁっと泣き声を上げる。
「そんなっ!!嘘よ……嘘よ!!お父様!!お兄様っ!!わたくしは王子妃になるのですわよね!?そうと言ってください!!」
この断罪劇を今にも切れそうなほど顳顬に血管を浮き上がらせながら見ていたシルベスカ公爵に、会場中の視線が集まる。
「………この役立たずが………。無能なりに大人しくしていればいいものを、シルベスカの名に泥を塗りおって……。お前とは今この場で縁を切った!今後一切シルベスカ家はこの件に関知しない!その者は既に無関係の平民であるから、処刑でも何でも、処遇は王家に委ねる!!」
───「………処刑だ!」
誰かがそう叫んだ瞬間、会場中で処刑を願う声が湧き起こる。
ユリアンナは護衛騎士に取り押さえられたまま慟哭をあげている。
「処刑っ………!」
ミリカはそう呟いた瞬間、顔色をなくしてふらりと倒れ、それをジャックが慌てて支える。
「ミリカッ!」
倒れたミリカの様子をサイラスが心配そうに覗き込み、それを見ていたアーベルが堪らず駆け寄る。
「ユリアンナ……貴様……!例えお前が死のうとも、私は一生貴様を許すことはない!」
アーベルは壇下のユリアンナを射るような視線で睨め付けると、ミリカを抱えて会場を後にするジャックたちに追随して会場を出て行った。
「お兄様!?どうしてですか!!血の繋がった妹より、なぜそのような女を───!!」
騒然とする会場にユリアンナの悲痛な慟哭が響き渡る。
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「アレク様っ!牢なんて嘘ですわっ!わたくしはシルベスカ公爵家の娘ですっ!誰よりも高貴な娘なのよーっ!!」
会場を出るまで、ユリアンナの聞くに耐えない叫び声が響いていた。
アレックスが事態の決着を宣言して卒業パーティーの再開を促すと、会場では戸惑いつつも再び華やかな雰囲気が戻ってきた。
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