坊主頭は高嶺の花に恋をする

堀尾さよ

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9月

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 九月。すっかり暑さは落ち着いて、夏の残り香を纏わせる教室は二学期初日の朝。
 一ヶ月前と何の変わりもない教室に僕一人。美容院で整えてもらった、長すぎず短すぎないこの絶妙な髪の毛を何度も触ってしまう。
 セットもこれで合っているのだろうか?

 僕等の作戦はこうだ。

 まず、この一ヶ月で坊主頭からイマドキのヘアスタイルにするべく髪を伸ばす。そして、体の贅肉を落とす。元々そこまで太った体型ではなかったけれど、より洗練された肉体へ生まれ変わった。

 もう「おにぎり君」の面影は殆どない。イマドキの高校生へとジョブチェンジだ。
 母さんも父さんも、驚いていた。犬のシロは警戒心を解いてくれなくなった。「垢抜けたねぇ」なんて感心されたり、飼い犬に全力で吠えられるのちょっと心にダメージが来たが、これも全部木ノ崎さんのためだ。

 この姿で、もう一度友人としてやり直す。それから、仲良くなって、告白する。計画は単純。しかし内容は複雑だ。
 何せ、高嶺の花を掴み取りに行かなくてはならないのだから。

 だから誰よりも早く来て、隣の席でスタンバイし、木ノ崎さんを待つ。
 生まれ変わった僕を見て、何と言うだろうか?
 君のために変わったのだ。熱意は充分伝わるよね?
 これから始まるラブロマンスに胸を躍らせる。

 まずは、一言目。挨拶をしてからどんな話をしようか。流石に僕の外見の話はできるだろう。そこから、僕は練習した余裕たっぷりの笑顔を見せながら、木ノ崎さんの容姿を褒めたりするんだ……。

 そんなことを悶々と考えているとガラガラと扉が開く。二人組。木ノ崎さんじゃないな。目をそらし、窓の外を見た瞬間、
「すまん、木ノ崎さんは坊主フェチで、俺が坊主にした途端惚れ込んでしまったようだ」
 聞き慣れた声。しかも、聞きたくないような内容だ。
 視線を戻すと、木ノ崎さんと腕を組んでいるクラスメイトの姿。
 その頭は、かつての僕のように丸まっていた。

「あんまりだぁ!」
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