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体育館裏で蹲るウタちゃん。
「私、怖いの」
「うんうん」
私はウタちゃんの真似をする。ウタちゃんがいつも私にしてくれたみたいに。
「怖い。これからどうなちゃうのか怖い。高校も、どこ行けばいいのか分からないし、多分彼氏とかも出来ないし――」
わあ、可愛い。
サッカー部のあの人、私に近づきたくてウタちゃんと仲良くなったんだ。
一緒に進路の話してたの、知ってるよ。
「お母さん怖いし」
いつもウタちゃん、叩かれてたよね。
ウタちゃんの顔がパパそっくりで憎まれているの、知ってるよ。
おばさんも、ウタちゃんも、可愛い。
「バカだし」
ううん。
ウタちゃんはバカじゃないよ。むしろ頭がいいんだ。良すぎるから、周りと釣り合わないんだよ。
だから、気にしなくてもいいのに。理由を考えなくてもいいのに。
全部全部、私のせいだって怒鳴ってくれればいいのに。
ああ、もっと可愛いウタちゃんが見たい。
「怖い。怖いよぉ」
「うんうん」
怖いね。
将来、真っ暗で分からないね。
私もわかんないよ。怖くて怖くて仕方がないよ。
みんなの言う「可愛い」だっていつまで続くか分からないし、いつみんなが手の平を返すかだってわからない。
私は、みんなが怖い。
なんで私が「可愛い」のか。
笑うことで、可愛いがどんどん無くなっていく気がしていて。
私の「可愛い」が空っぽになったら、みんなはどこに行くのだろうか。
私の「可愛い」と、みんなの「可愛い」が決定的に違うっていうのは、わかるけれど。
でも、何が「違う」のかがわからない。「どこから」違うのか。可愛いってこんなにもいっぱいあるものなの?
怖い。今まで私が普通だと思っていたことが風じゃなくって。
本当はにっこり笑うだけで人に好かれるなんてことはありえないはずなのに。どうしてだか、私の世界ではそれが当たり前なんだ。
それもいつかなくなっちゃうって、知っているから。
怖い。
一歩進んだ先が地面だなんて誰が決めているんだ。
でも、ウタちゃんは、ウタちゃんだけは変わらないから。怖くない。
今まで変わらなかったの。
なら、これからも変わらないよね?
そうだよね、ウタちゃん。
だから、大好き。
「一緒に暮らそう、ずっとずっと一緒にいよう」
不意に出た言葉だけれど、音になって力になって、現実になりそうな気がしていた。
私のために。
それから、ウタちゃんのために。
二人でずっとずうっと生きていければ、いいんじゃない?
自分に言い聞かせているのか、ウタちゃんに言っているのか、分からないけれど。
「ずうっと私は、ウタちゃんがすき」
ああ、好きだなんて。
なんて無責任な言葉なんだろう。
なんて押しつけがましい言葉なんだろう。
「木ノ崎さんが、好きです」
「ハルカが好き」
「ハルちゃん、好き」
「ハルカちゃんが、好きなんだけど」
「ハルカ」「ハルカ」「ハルカ」「ハルカ」
ウタちゃんを擦る手の力が、ちょっと強くなった。聞こえないはずの、沢山の声が聞こえてきた。パパとママの声も聞こえる。男の子、女の子、顔のわからない誰かの声。声。声。
きもちわるい。
でも、ウタちゃんは気持ち悪くない。
たくさんのきもちわるいものの中で、唯一の希望の光。ウタちゃん。
ぼろぼろ泣いているの、本当に可愛い。
可愛い。愛おしい。ずっと見ていたい。
私で不安になって、でも、私を頼って欲しい。
ウタちゃんの私であって、私のウタちゃんなんだ。
唯一の光よ、永遠に。
「私、怖いの」
「うんうん」
私はウタちゃんの真似をする。ウタちゃんがいつも私にしてくれたみたいに。
「怖い。これからどうなちゃうのか怖い。高校も、どこ行けばいいのか分からないし、多分彼氏とかも出来ないし――」
わあ、可愛い。
サッカー部のあの人、私に近づきたくてウタちゃんと仲良くなったんだ。
一緒に進路の話してたの、知ってるよ。
「お母さん怖いし」
いつもウタちゃん、叩かれてたよね。
ウタちゃんの顔がパパそっくりで憎まれているの、知ってるよ。
おばさんも、ウタちゃんも、可愛い。
「バカだし」
ううん。
ウタちゃんはバカじゃないよ。むしろ頭がいいんだ。良すぎるから、周りと釣り合わないんだよ。
だから、気にしなくてもいいのに。理由を考えなくてもいいのに。
全部全部、私のせいだって怒鳴ってくれればいいのに。
ああ、もっと可愛いウタちゃんが見たい。
「怖い。怖いよぉ」
「うんうん」
怖いね。
将来、真っ暗で分からないね。
私もわかんないよ。怖くて怖くて仕方がないよ。
みんなの言う「可愛い」だっていつまで続くか分からないし、いつみんなが手の平を返すかだってわからない。
私は、みんなが怖い。
なんで私が「可愛い」のか。
笑うことで、可愛いがどんどん無くなっていく気がしていて。
私の「可愛い」が空っぽになったら、みんなはどこに行くのだろうか。
私の「可愛い」と、みんなの「可愛い」が決定的に違うっていうのは、わかるけれど。
でも、何が「違う」のかがわからない。「どこから」違うのか。可愛いってこんなにもいっぱいあるものなの?
怖い。今まで私が普通だと思っていたことが風じゃなくって。
本当はにっこり笑うだけで人に好かれるなんてことはありえないはずなのに。どうしてだか、私の世界ではそれが当たり前なんだ。
それもいつかなくなっちゃうって、知っているから。
怖い。
一歩進んだ先が地面だなんて誰が決めているんだ。
でも、ウタちゃんは、ウタちゃんだけは変わらないから。怖くない。
今まで変わらなかったの。
なら、これからも変わらないよね?
そうだよね、ウタちゃん。
だから、大好き。
「一緒に暮らそう、ずっとずっと一緒にいよう」
不意に出た言葉だけれど、音になって力になって、現実になりそうな気がしていた。
私のために。
それから、ウタちゃんのために。
二人でずっとずうっと生きていければ、いいんじゃない?
自分に言い聞かせているのか、ウタちゃんに言っているのか、分からないけれど。
「ずうっと私は、ウタちゃんがすき」
ああ、好きだなんて。
なんて無責任な言葉なんだろう。
なんて押しつけがましい言葉なんだろう。
「木ノ崎さんが、好きです」
「ハルカが好き」
「ハルちゃん、好き」
「ハルカちゃんが、好きなんだけど」
「ハルカ」「ハルカ」「ハルカ」「ハルカ」
ウタちゃんを擦る手の力が、ちょっと強くなった。聞こえないはずの、沢山の声が聞こえてきた。パパとママの声も聞こえる。男の子、女の子、顔のわからない誰かの声。声。声。
きもちわるい。
でも、ウタちゃんは気持ち悪くない。
たくさんのきもちわるいものの中で、唯一の希望の光。ウタちゃん。
ぼろぼろ泣いているの、本当に可愛い。
可愛い。愛おしい。ずっと見ていたい。
私で不安になって、でも、私を頼って欲しい。
ウタちゃんの私であって、私のウタちゃんなんだ。
唯一の光よ、永遠に。
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