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オフィーリアが消えた。
私の目の前から。
優しく淡い光に包まれたオフィーリアは満足そうに微笑んで光の中に消えて行った。
オフィーリアの笑顔は、なんの穢れもない天使のような笑みだった。
「お母様。オフィーリアが消えてしまいました。」
感情を出さずにお母様に事実だけを伝える。
お母様もお父様の被害者だった。
それは理解しているけれど、どうしても今までの仕打ちをすべて水に流すことは難しい。
「……オフィーリア?オフィーリアって誰のことかしら?」
「お母様っ……。なぜっ、なぜっそのようなことをっ!!」
お母様は顔を歪ませて首を傾げる。
その様子からは「オフィーリア」という名前に心当たりが無いように思えた。
あれほど、お母様はオフィーリアのことを溺愛していたというのに、なぜ。
オフィーリアがお母様に反抗したから、だから知らないふりをしているというのだろうか。でも、今になってなぜ。
私は思わず声を荒げてしまった。
淑女らしくない振舞いだとお母様に叱られてしまうと思ったが、今はそれどころではない。
「……エレノア?どうしてしまったの?皇太子妃になれなかったことが今になってあなたをおかしくさせてしまったのかしら?でも、それはあなたが望んだことでしょう?」
「オフィーリアよ。私の妹。お母様の娘のオフィーリア。本当にわからないの?」
「……私の娘はあなた一人だわ。エレノア。」
「……そんなっ。」
お母様の言葉に私は驚きを隠せなかった。
本当にオフィーリアのことを綺麗さっぱりと忘れてしまったようなのだ。
「本当に覚えていないの。オフィーリアを……オフィーリアのことを……。」
「エレノアったらとっても必死なのね。あなたにとってとても大事な人だったのね。でも、ごめんなさいね。私にはオフィーリアが誰だかわからないの。」
「そんな……。」
お母様の表情からはとても嘘をついているようには思えなかった。
お母様は本当にオフィーリアのことを忘れてしまったのかもしれない。
愕然とした気持ちのまま、私はお母様の前から去る。
お母様が知らないというのならば、オフィーリア付きだった侍女に聞けばいいと思ったのだ。
けれど、オフィーリア付きの侍女の回答もお母様と同じだった。
オフィーリアのことを知らないという。
しかも、その侍女はオフィーリア付きではなくて私付きの侍女だと言った。
他にも屋敷の使用人たちに尋ねるも誰もオフィーリアのことを知っている人は存在しなかった。
まるで、最初からオフィーリアは存在しなかったというように。
私はそれが受け入れられなくて屋敷を飛び出した。
そうして、辺境の地で労役させられているお父様に手紙を書いて送った。
お父様はきっとオフィーリアのことを覚えているだろうと。
あれほど、お父様はオフィーリアのことを溺愛していたのだ。忘れるはずがない。そう思ってのことだった。
けれど、お父様からの返事には一言
『オフィーリアという人物には心当たりが無い』
とだけ書かれていた。
それならばと、私は王太子殿下に手紙を書いた。
私はもう王太子殿下の婚約者候補ではない。
そんな私がアポイントメントもなく王城にいきなり向かったとて門前払いされるだけだ。
そう思って、手紙を書いて王城に向かった。
王太子殿下に渡してほしいとだけ言って、門番に手渡したのだ。
数日後、私の元に王太子殿下から手紙が届いた。
王太子殿下はどこまでも優しい。
手紙には私の身体を気遣うような内容とともに、オフィーリアについて記載されていた。
やはり、王太子殿下もオフィーリアのことは覚えていなかった。
誰も彼もがオフィーリアのことを忘れてしまった。
唯一オフィーリアのことを覚えているのは私だけ。
それが、悔しくて私は一筋の涙を流した。
そうして私は決めた。
オフィーリアを探す旅に出ようと。
きっとどこかの誰かがオフィーリアのことを覚えているはずだ。
オフィーリアの痕跡を探すために私は各地を旅することにしたのだ。
そして、それから数か月の月日が経った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
恋愛小説大賞参加にあたり、ラストを書き直しております。
あと一話で完結ですが、その後オフィーリア視点の番外編を連載予定です。
今しばらくお付き合いくださいませ。
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