聖女様に貴方の子を妊娠しましたと身に覚えがないことを言われて結婚するよう迫られたのでもふもふな魔獣と旅にでることにした

葉柚

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第24話


 

☆☆☆

 

 

(ねむねむーねむねむですのよー。ねむいのですぅー。)

 ヒューレッドがフワフワとセレスティアの家で一緒に過ごすようになってから一週間が経った頃だった。

 ヒューレッドもフワフワの世話に慣れてきて、適度に肩の力が抜けてきたころのこと。

 フワフワにご飯を与えて、排せつ物の処理をしていたところ、急に可愛らしい声がヒューレッドの脳内に響いた。

 ヒューレッドは驚いて辺りを伺う。けれども、セレスティアは出かけていていないので、ヒューレッドの側にはフワフワしかいない。

「(まさか、フワフワの声か……?)」

 ヒューレッドは周りに誰もいないことを確認してから、一つの考えを導き出す。

 それは、先ほど脳内に聞こえてきた声がフワフワの声ではないかと言う事だ。魔獣と会話をしたことなどないヒューレッドだが、何故だか素直にフワフワの声ではないかと思ったのだ。

「フワフワ、眠いのか?」

(ねむねむー。ねむねむなのですのよー。ヒューねむいからだっこしてなのですよー。)

「ヒューというのは、オレのことか?」

(ヒューはヒューなのですよー。ねむいのですのよー。)

 かみ合っているのかかみ合っていないのか、ヒューレッドにもよくわからない会話が続けられる。可愛らしい声の主は、眠いようでヒューレッドが問いかけても明確な答えが返ってこなかった。

「フワフワ。寝て起きたら教えておくれ。」

(ねむねむーですのよー。ねむねむー。)

 ヒューレッドがフワフワを抱っこしながら優しく撫で続ければ、フワフワはクテッと身体の力を抜き、ヒューレッドの全体重を預けてきた。そして、すぐに「スースー。」という規則正しい寝息が聞こえてきた。

 フワフワはよく眠る。一日のうちの大半を寝て過ごしている。そして、起きている最中もヒューレッドが心配するほど、眠そうにしているのだ。それだけ寝ているので、ヒューレッドはフワフワが何か病気なのではないかとセレスティアに聞いてみたが、セレスティアはにこにこと笑いながら「良く寝る子は育ちますよ。」とだけ言って全く相手にしてくれなかった。

「あらあら。フワフワったら気持ちよさそうに寝ているわね。」

「セレスティア様。」

 寝ているフワフワを見つめていたらいつの間にかヒューレッドの側にセレスティアがやってきて、フワフワを見つめていた。その表情は慈愛に満ちている。まるで聖女のようだとヒューレッドは思った。

「ねえ、ヒューレッドさん。フワフワのお世話は順調かしら?」

「ええ。未だにフワフワに鳴かれるとどうすればいいのか焦りますが、だいぶ慣れてきました。」

「そう。それはよかった。フワフワもヒューレッドさんに懐いているみたいだし、そろそろフワフワと会話できるかもしれませんよ?」

「……え?」

 ヒューレッドの思考を読んだのかと思うような言葉がセレスティアの口から発せられたことに、ヒューレッドは思わず固まってしまう。そんなヒューレッドの様子を見て、セレスティアは笑みを深めた。

「さては、ヒューレッドさん。フワフワと会話ができましたね?」

 確信したよに言うセレスティアに、ヒューレッドは戸惑いながらも小さく頷いた。

「え、ええ。急に可愛らしい声が脳内に響いたんです。眠いと。ただ、それがフワフワの声なのかはわからないですけど……。フワフワすぐに眠ってしまいましたし。」

「ふふ。そう。そうなの。フワフワらしいわ。でも、フワフワの声が聞こえたということは、もうフワフワも旅に出ても大丈夫でしょう。ヒューレッドさんもフワフワのお世話になれたみたいですしね。」

「え?」

 セレスティアは笑顔のまま、ヒューレッドにもう旅をしても大丈夫だと告げた。ヒューレッドはセレスティアにそう言われるとは思てもみなかったので、カチンッと固まる。

 聖女マリルリから逃げなければならないのは覚えていた。覚えてはいたが、セレスティアの元で暮らす日々が穏やか過ぎてずっとここで暮らしていけたらと思っていたところだったのだ。幸い、マリルリから追手が来ることもなかったので、もう大丈夫だとヒューレッドは錯覚していた。

 


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