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第25話
「な、なにを、言っているんです、か?セレスティア様。ま、だ、まだフワフワは小さいんですよ。旅なんてそんな危険なこと……。」
驚きで声が上手く発生できなくなるヒューレッド。
「そうですね。フワフワは魔獣と言ってもまだ小さいです。まだまだ赤ちゃんです。でも、忘れていませんか?ヒューズさんはマリルリに追われているのですよね?」
セレスティアは小さく微笑みながらヒューレッドを諭してくる。
「確かにオレは、聖女マリルリ様に目をつけられています。でも、今のところなんのアクションもないようですし、まだここにいても……。」
「聖女マリルリはヒューレッドさんを探しています。日が経つにつれ、マリルリは力を入れてヒューレッドさんを探すことでしょう。今はまだヒューレッドさんが魔法を使うのではないかと思って待っているようですが、日が経つにつれ、自分から探しにでることでしょう。」
「そんな……。なんでオレなんかに……。ただ結婚を断っただけなのに……。」
結婚を断っただけなのに、執拗に追われる理由がヒューレッドにはわからない。
「マリルリは全て自分の思うままにことが運ばないと気が済まない性分です。断られたヒューレッドさんの存在が許せないのでしょう。それに、ヒューレッドさんは……。いえ、なんでもありません。フワフワとヒューレッドさんが会話を出来るようになったのであれば、そろそろここを出た方がいいかと思います。ここは王都からさほど離れておりません。追手が放たれればすぐに見つかってしまうことでしょう。」
セレスティアは、真剣な表情でヒューレッドに告げる。
セレスティアはヒューレッドには言っていなかったが、セレスティアが出かけていた目的は王都でマリルリがヒューレッドの捜索を開始しているかどうかを確認しにいったのだ。
その際、マリルリが兵を動員してヒューレッドを探そうとしているという話を聞いた。今のところ国王がヒューレッドの捜索に難航を示しているということだが、国王もマリルリには逆らえない。そのため、ヒューレッドの捜索隊が組まれるのも時間の問題だ。
捜索隊が組まれてから逃げたのでは遅い。
セレスティアもここでずっとヒューレッドを匿っているわけにはいかなかった。兵に囲まれてしまえばヒューレッドを逃がすことは難しい。転移の魔法を使うにも、兵に見つかってからではマリルリの魔力感知で追われてしまう可能性が非常に高い。
だから今決断しなければならない。
幸いにもヒューレッドとフワフワは会話をできるようになった。まだまだフワフワは赤子だが、魔獣の赤子は人間の赤子と違ってちょっとやそっとのことじゃ死なない。それに離乳食も食べれるようになったのだ。ミルクと違い離乳食なら旅の道中でもどうにでも手に入るだろう。動植物をかみ砕いて与えればよいのだから。
「今のうちに、私がヒューレッドさんを転移させます。とは言っても私の力だとヒューレッドさんとフワフワを100km先に転移させることしかできません。そこから先は自力で逃げ延びてください。でも、決して魔法を使用してはなりません。」
ヒューレッドの言葉を待たずにセレスティアは告げる。そして言うが早いか、転移魔法を唱え始める。
「ちょ、ちょっとセレスティア様っ!?」
展開の速さにヒューレッドはついていけず、セレスティアに質問を投げかけようとする。だが、それよりも早くセレスティアの転移魔法が発動した。
ヒューレッドの目の前がグニャグニャとうねりだす。転移魔法が発動したことをヒューレッドは感知した。
「セレスティア様っ!?」
ヒューレッドはセレスティアに向かって手を伸ばす。
「どうかお元気で。逃げ延びてください。……どうして私はここから離れられないのでしょう。どうかご無事で。ヒューレッドさん。」
ヒューレッドの耳にはセレスティアの言葉が最後まで聞き取ることができなかった。
そして数秒後には、セレスティアと暮らしていた森から離れた場所にヒューレッドは転移していたのだった。その手に大事そうにフワフワを抱きかかえて。
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