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しおりを挟む「ふんっ。闇魔法使いであるアマルダなど嫌いに決まっているだろう。今すぐにでも消したいくらいだ。」
エスフォード王子殿下は殺気混じりの視線で私を射貫きながら心底嫌そうに吐き捨てた。
っていうか、エスフォード王子殿下、あなたの婚約者はアマルダではなく、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢なんですけど。名前もうろ覚えなほど、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢のことが嫌っているようだ。
「では、なぜ婚約を解消なされないのですか?このまま婚約を続ければいずれご結婚されることになると思うのですが。」
エスフォード王子殿下に不敬な発言をしているのはわかっている。
もしかしたらなんらかの罰を受けるかもしれない。
それを承知でエスフォード王子殿下に質問する。
エスフォード王子殿下は一瞬大きく目を見開いた。それから、口の端を上げた。
「そうだな。婚約破棄。その手があったか。おまえなかなかいい提案をするではないか。闇魔法の使い手というところがとても気に食わんが。」
「……え?」
エスフォード王子殿下の反応に私は思わず呆気に取られてしまった。
マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はエスフォード王子殿下はいろいろ考えているから婚約破棄を言い出さないというようなことを言っていたけど、エスフォード王子殿下の反応を見ると、これって……婚約破棄という考えにそもそも至らなかったように見受けられる。
国王陛下に言われたことは絶対だと、逆らってはいけないと潜在的に思っていたのだろうか。
「ふははははっ。あの忌々しい闇魔法使いとの婚約破棄か。実にいい!あの女の悔しがる表情が見れるかと思うととても気分がいい。ははっ!すぐにでも婚約破棄をしてやろうではないか。なあ、おまえ、あの女にどこで婚約破棄を告げれば一番ダメージを負わせることができると思う?」
エスフォード王子殿下は私にそう尋ねてきた。
えっと、この場合はエスフォード王子殿下に一番ダメージが大きいであろう場所で婚約破棄を宣言してもらった方がいいだろう。前言撤回できないように大勢の前で婚約破棄を宣言してもらえば、晴れてマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はエスフォード王子殿下から解放され自由になれる。
私は頭の中をフル回転させた。
「……もうすぐお城でエスフォード王子殿下の舞踏会があると伺いました。そこで婚約破棄を提案されてはいかがでしょうか。大勢の貴族の前で婚約破棄を言い渡されるのは屈辱だと思います。それに、大勢の貴族の前で婚約破棄を言い渡せば大勢の証人が得られます。大勢の証人がいれば、国王陛下もマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢との婚約破棄をお認めになるのではないかと……。」
私はエスフォード王子殿下にそう提案した。
まあ、この場合、貴族からの評価がよろしくないエスフォード王子殿下が婚約破棄を公衆の面前で言い渡したことで、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢よりもエスフォード王子殿下の奇行として話題になるだろうけど。
「そうか。それはいい考えだな。おまえが闇魔法使いじゃなければ私の婚約者として取り立ててやったものを……。おしいな。」
エスフォード王子殿下はそう言って満面の笑みを浮かべた。
この時ほど自分が闇魔法の使い手でよかったと安心したことはありませんでした。
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