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穏やかだと思われた日常は、私がアイリス王女殿下かもしれないという疑念から、突如崩れ始めた。
隣国であるリユーナイン王国のことを記憶はないものの私は懐かしいと思っている。きっと、私はリユーナイン王国出身なんだと思う。
アイリス王女殿下の名前を聞くと、とても懐かしい気持ちと憧れる気持ちで胸がいっぱいになる。なぜだかアイリス王女殿下の名前を聞くだけで涙が溢れそうになってしまう。
そんな時には、いつもオキニスが傍にいてそっと寄り添ってくれた。
「……アイリス王女殿下を探そう。」
「……にゃあ。」
今のままじゃあ、リユーナイン王国とアイリス王女殿下のことが気になってすべてが手につかない。
ならば、アイリス王女殿下を探すしかない。
きっとアイリス王女殿下に会えば、なにかしら変わるかもしれない。
それ以外に今、私にできることは……ない。
思い立ったが吉日とばかりに私は立ち上がり、旅に出る準備をする。
オキニスは一緒には連れていけないだろう。
どのくらいの間旅をするかわからないのだ。
もしかしたら数日でアイリス王女殿下が見つかるかもしれないが、もしかしたら数年探しても見つからないかもしれない。そんな長期間、過酷な度にオキニスを連れて歩くわけにはいかない。長期間に渡る旅は、あまりにもオキニスの身体に負担がかかりすぎてしまう。
「オキニス、おいで。」
オキニスと離れるのはつらいけれど、きっとアイリス王女殿下が見つかればまたオキニスと一緒にこの場所で暮らせばいい。それまでの我慢だ。
私は、オキニスに手を差し出す。
オキニスは理解しているのかいないのか、私の手に身体を摺り寄せてきた。
そのままオキニスの身体を抱き上げ、そっと抱きしめる。
ふんわりとしたオキニスの身体と、人間よりも少し暖かい体温が私を安心させた。
「ユルーリット辺境伯家にしばらくいてね。」
ユルーリット辺境伯家であれば、私が帰ってくるまでオキニスのことを責任をもって面倒を見てくれるだろう。そう思って、オキニスに頬ずりする。
しばらくの我慢だ、と告げて。
「にゃあう。」
オキニスは不機嫌そうに一声鳴いた。
☆☆☆☆☆
「ユルーリット辺境伯様。私は、アイリス王女殿下を探しに旅に出たいと思います。その間、どうかオキニスのことをよろしくお願いいたします。」
アイリス王女殿下を探しに行くと決めた。
けれど、まずは筋を通さなければならない。
どこの誰かもわからない私を介抱してくださり、さらには当面の資金援助もしてくれたユルーリット辺境伯様には、旅立つことを伝えるのが筋だろう。
そう思い、ユルーリット辺境伯様にアポイントメントを取り、時間を作っていただいた。
開口一番にアイリス王女殿下を探しに行くことを伝えると、ユルーリット辺境伯様は目を見開いたが、すぐに神妙な顔をして頷いた。
「……いつか、そう言うのではないかと私は思っていたよ。思ったより早かったね。」
「そう、でしたか……。どうしても、リユーナイン王国から来たという商人の話が頭の中から離れなくて……。私はきっとアイリス王女殿下を探さなければならないんです。そして、リユーナイン王国の現状を改善させるために動かなければならないと……そう思います。」
「そうだね。悪かったね。実は、私はミスティアのことを知っていたんだ。知っていて、君の素性を伝えなかった。」
「えっ……!?」
ユルーリット辺境伯様の以外な言葉に私は思わず声を上げていた。
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