悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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アクアさんの方を見るとアクアさんは顔を真っ青にしていたが、首を横に振っていた。

アクアさんはどうやらランティス様とは関係ないようだ。

最初からアクアさんはランティス様のことを気に入らなかったようだしね。

それにしても、ランティス様の言う精霊の王とはいったいなんなんだろうか。

ふいに真横に気配を感じてそちらを見れば、アクアさんの卵から孵った精霊王がいた。

精霊王はジッとランティス様を見つめている。

その瞳は深淵を見ているようにも思えた。

「精霊王は一人だけなのじゃ。妾だけじゃ。」

精霊王は静かにそう告げたが、その言葉は重く辺りに響き渡った。

それはもちろん、ランティス様の耳にも聞こえていたわけであり、ランティス様の表情がはじめて揺らいだ。

「おまえは精霊王ではない。私の精霊こそが精霊王なのだ。なにを言っている?」

「ふむ。では、その精霊と妾を会わせるのじゃ。」

精霊王は静かにそう告げた。

ただ、精霊王からは若干の怒りの感情を感じた。

やはり精霊王を名乗られて嫌な気分なのだろう。

「いいだろう。私の精霊王の前に皆ひれ伏すがいい。」

そう言ったランティス様の目の前にひょろひょろの精霊が姿を現した。

精霊は姿を現すなり、その場に力なく座り込んだ。

どういうことだろうか。

「もっと堂々とするがいい。おまえは精霊王なのだから。」

ランティス様はそう言って精霊王だという精霊を立たせようとする。

ランティス様の力で精霊は立ち上がったが、顔は始終うつむいていた。

本当にランティス様の精霊は精霊王なのだろうか。

ずいぶんと自信がないように思える。

「・・・わ、わたしは・・・精霊・・・王などでは・・・ありません 。なぜ・・・何度言っても聞き入れてくださらないのでしょうか。」

その精霊は小さな声でそう呟いた。

が、ランティス様は自分に不都合な呟きは耳に入らないのか得意気な笑みでこちらを見ていた。

「私の精霊こそ精霊王なのだ。そこにいる市松人形が精霊王だなんて見え透いた嘘はやめることだ。」

市松人形とはアクアさんの卵から孵った精霊王のことだろう。

真っ白な肌とストレートの黒髪が市松人形にそっくりだった。着物も着ているしね。

「ふむ。その精霊を解放させてもらうぞ。なにやらひどく弱りきっておるからの。」

そう言って、精霊王はランティス様の精霊に向かってなにやら光を投げつけた。

「なっ!精霊の王を攻撃するとはっ!!」

ランティス様は驚いて叫んでこちらを睨み付けた。

「その精霊は精霊王ではあらぬ。ただの光の精霊じゃ。しかも下級精霊じゃの。その光の下級精霊が妾の名を名乗るのは相当な負荷だったはずじゃ。消えかけておったぞ?」

精霊王が投げた光が収まるとそこには精霊の姿は無くなっていた。

かわりに、精霊王の隣に精霊の姿があった。

その姿は先程の精霊とは思えないほどに輝きを放っていた。
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