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第79話
しおりを挟む「クリスっ!?クリスなのっ!?」
部屋の外から聞こえてきた猫の鳴き声に私は慌ててドアに駆け寄ろうとする。だが、この数日ベッドで無気力に寝ていた私の足はもつれ、私の身体はドアにたどり着く前に床にたたきつけられてしまった。
「いたっ……。」
「にゃあーーーーー!?んみゃぁー!!」
ドテッという鈍い音が響くと、クリスが驚いたように声を上げた。
いけない。私ったら、またクリスを驚かせてしまったわ。どうしましょう。ただでさえクリスにストレスをかけてしまっているというのに。
私は泣きたくなった。大好きなクリスに負担をかけてしまうことが辛くて。
「にゃあ……。」
「……アンジェリカお嬢様。」
床に倒れたまま、悲しくて涙を流していると、頬にザラッとした感触があった。優しい暖かさが秘められているその感触はとても覚えのあるものだった。
「クリスっ……。」
真っ黒な尻尾がひょいと目の前に現れる。次いでまん丸な金色の瞳が私の顔を覗き込んできた。
愛しい愛しいクリスだ。
大好きで大好きで会いたくて仕方のなかったクリスが目の前にいる。
なのに、どうしてだろう。
次から次へと溢れてくる涙で前が良く見えない。クリスの姿がよく見えない。
「にゃあう。」
クリスが私をいたわるようにそのザラザラとした舌で私の涙をぬぐう。
そして、私に寄り添うように私の側にクリスは寝そべった。その長く黒い尻尾で私をなだめるように、ポンポンと手を軽く叩きながら。
どのくらいそうしていただろうか、
「アンジェリカお嬢様。クリス様がいらして嬉しいのはわかります。感動で動けないのも、お食事をとっていらっしゃらなくて身体が衰弱しているのもわかります。ですが、そのまま床に倒れこんでいると身体に悪いですわ。ベッドにお戻りください。」
と言うロザリーの手で私はベッドに戻ることになった。もちろん久々に会えたクリスを放すまいと私はギュッとクリスを抱きしめながらだが。
でも……クリスはこうやって抱きしめられるのは嫌なのだろうか。
また不安に胸が押しつぶされそうになった。
その瞬間、私の不安を察知したのか、クリスが私の身体にクリスのしなやかな身体を擦り付けてきた。まるで、「不安にならないで、僕はここにいるよ。」とでも言っているように思えた。
「クリス……。」
おかしい。涙腺が壊れたのだろうか。先ほどからずっと涙が止まらない。
おかしい。クリスに会えて嬉しいはずなのに、どうしてか涙が止まらない。
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