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第84話
しおりを挟むクリスはロザリーの言葉にたじろぎながら、一歩後ずさりをした。だけど、ロザリーが部屋から逃げることは許さないとばかりに、クリスににっこりと微笑む。
「クリス様、アンジェリカお嬢様のことを想ってらっしゃるのでしたら本日はアンジェリカお嬢様のおそばにいてくださいませんか?」
ロザリーはにっこり笑みを浮かべてクリスに問いかけるが、その目は全くと言って良いほど笑っていなかった。
それにしても、ロザリーはどういった心境の変化があったのだろうか。私が寝込む前までは、クリスが私の側にいることを……私がクリスの側にいることを嫌がっていたように想っていたのだけれども。
「あ、あの……。ロザリー。クリスが嫌がっているように見えるわ。だから、良いのよ。私はクリスに会えただけでいいの。これ以上クリスの負担になりたくないし。」
私がクリスに会えないことで塞ぎ込んでしまっていたことが原因なのだろうか。だけれども、私のわがままでクリスの自由を奪うことはできない。
だって、クリスは猫なのだ。
猫は自由を愛する生き物。束縛を嫌う生き物なのだ。
「にゃ!にゃう!!にゃう!!」
私がクリスの負担になりたくないと言うと、クリスは負担ではないというように首を激しく横に振った。
「では、どうかクリス様。アンジェリカお嬢様のおそばに居てくださいませ。そして、クリス様の秘密をアンジェリカお嬢様にお伝えください。私はおそばに控えております。用があったらお呼びください。」
「えっ!?ロザリー?どういうことなの!クリスの秘密ってなに?」
ロザリーは意味深な言葉を残して私から距離を取った。必然的に私とクリスは視線を合わせる。クリスはふぃと私から視線を反らせた。
「……クリスの秘密ったって、クリスはしゃべれないし。どういうことなのかしら。」
クリスの秘密。それが何なのかとても気になる。でも、クリスから伝えろと言ってもクリスは人の言葉をしゃべることができない。それに私も、猫の言葉をしゃべることができない。
つまり意思疎通ができないのだ。
それこそ、クリスと意思疎通ができる侯爵様の力を借りる必要がある。
でも、もし侯爵様のお力を借りるのであれば、きっと気が利くロザリーが侯爵様を既にこの屋敷に呼んでいることだろう。でも、その気配はない。
まさか……っ!!
「クリスは人の言葉をしゃべることができるの!?」
思い当たることはただ一つ。実は、侯爵様がクリスと意思疎通できるのは、クリスが人の言葉をしゃべれるからではないだろうか。それならば、ロザリーがクリスに秘密を伝えるようにと告げた言葉が理解できるような気がする。
クリスはずっと人の言葉をしゃべることを私に隠していたのだろうか。
私と、意思疎通を取りたくないから?
★★★
間が空いてしまってすみません。完結まで予約投稿済みです。またカクヨムでは既に完結済みの作品となりますm(__)m
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