魔族の花嫁に選ばれた皇太子妃

３０

「大丈夫だったかい？セレスティーナ。」

　アリス様が部屋から出て行った後、ロイド殿下は私の……黒猫である私の身体をそっと抱き上げた。
　名前を呼ばれたことに驚いた私はロイド殿下の顔をジッと見つめる。
　
「ふふっ……。やっぱりセレスティーナなんだね。」

　ロイド殿下はにこやかに笑いながら、私の頭を優しく撫でた。
　頭を撫でる優しい手にうっとりと身体を預ける。
　
「にゃぁう。」

　黒猫の姿のせいなのか、なぜかとてもロイド殿下に甘えたくなってしまう。
　もっと撫でてほしいと頭をロイド殿下の手のひらに擦り付ける。
　
「猫になったセレスティーナはとっても甘えん坊だね。」

　ロイド殿下は嬉しそうに笑いながら、私を甘やかした。
　それにしても、なんでロイド殿下はこの黒猫の姿の私がセレスティーナだとわかったのだろうか。
　疑問に思いながらも、ロイド殿下の優しい手つきに私はうっとりと目を閉じた。
　
　
　
　
　
☆☆☆☆☆





「セレスティーナ。我が愛しの妻。君のことは誰にも渡さないよ。」

　暗闇の中で聞こえてきた声は一体誰の声だったのか。
　まどろんでいた私にはそれが誰の声だったのかわからなかった。