29 / 76
29
しおりを挟む「騒がしいわねぇ。なにを騒いでいるのかしら?ユースフェルト。」
ゆったりとした動作で豪華なドレスを纏いやってきたのは、騒ぎを聞きつけたユースフェルトの母親であり妾妃のユフェライラだった。
ユフェライラはピンク色の長い髪に豪華な金細工の飾りをつけてにこやかに笑っている。
目が笑っていないのはとても不気味だ。
「は、母上……。」
ユースフェルトは突然のユフェライラの登場に身体を固くした。
「あら?そちらのご令嬢は?ユースフェルト、紹介してくださるかしら?」
ユースフェルトの隣にいるアンナライラに目を止めたユフェライラは大きく目を瞠ると、すぐにその表情を消しユースフェルトに問いかけた。
「アンナライラ・ナンクルナーイ男爵令嬢です。母上。」
ユースフェルトの背中を冷や汗が滑り落ちる。
「お母様。お会いしたかったですわ。」
焦るユースフェルトとは反対に、アンナライラはにっこりと笑みをみせてユフェライラに挨拶をした。
「そう。あなたがアンナライラ嬢なのね。は・じ・め・ま・し・て、ナンクルナーイ男爵令嬢。」
ユフェライラはことさら「はじめまして」を強調してアンナライラに挨拶をする。
「は、母上……。あの……。私はっ……。」
「言いましたよね?ユースフェルト。あなたの婚約者はアマリア侯爵令嬢以外あり得ないと。それがあなたが王太子になる条件だと申しましたでしょう?」
ユフェライラはにっこりと笑いながらユースフェルトに釘を刺す。
ユースフェルトがアンナライラと婚約をすることはユフェライラが許さなかった。アンナライラとの婚約破棄を誰よりも怒ったのはユフェライラだった。
現在、この国で一番地位が高くユースフェルトと年が近いのはアマリアだ。侯爵家の後ろ盾を手にいれ王太子となるためにも、ユースフェルトの婚約者にはアマリアが適しているとユフェライラは思っていた。
他の令嬢では役不足。ましてや、男爵令嬢などもってのほかだとユフェライラは思っていた。
「で、ですが……母上。アマリアはアンナライラを呪うような悪女です。そのような者が私の婚約者として相応しいとはとても……。それに、兄上は引きこもっていて表舞台に顔を出さないじゃないですか。アマリアが私の婚約者でなくとも、私が王太子となるのは決まっている。」
「ユースフェルト、王太子となり国王になりたいのであれば私に従いなさい。」
ユフェライラは笑みを絶やさず、しかしながら強い命令口調でユースフェリアにアンナライラとは手を切り、アマリアと婚約をするようにと告げる。
「ですがっ……。私はっ……。」
嫌だと反論するユースフェルトにユフェライラは眉を潜める。
「ナンクルナーイ男爵令嬢。申し訳ありませんが、お引き取り下さいませ。そして、今後二度とユースフェルトに近寄らぬよう。衛兵たちよ、ナンクルナーイ男爵令嬢はお帰りです。門の外まで案内なさい。」
ユフェライラはこれ以上ユースフェルトに構っていてもらちが明かないと、アンナライラに視線を向ける。そして、にっこり笑って出て行けと告げた。
衛兵たちも、ユフェライラの命令に逆らう理由もないためアンナライラを門の外まで連行する。
「えっ!?ちょっとお母様っ!なんで私が出て行かなければならないのっ!」
アンナライラはユフェライラの言葉に驚きを隠せず目を見開いた。
ユースフェルトの母親であるユフェライラもアンナライラのことを認めてくれると思っていたのだ。
「私はあなたの母親ではなくてよ。」
アンナライラの叫びにユフェライラは冷たく言い放った。その視線は氷よりも冷たいものだった。
95
あなたにおすすめの小説
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる