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一章

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「その5000ニャールドの鞄をください」

私は、一番安い鞄を指差した。

「これで、いいの?」

リュリュさんが、私が指差した鞄を持ち上げる。

「ええ、それがいいの。鞄に入れたときのまま取り出せるっていう鞄もいいけど、それは私の好きなデザインの鞄用にとっておくわ。今回は、メインに採集に使う鞄だからそれでいいわ」

「そうなの?採集で使うなら余計に品質が落ちないこの鞄がお薦めなんだけど・・・」

「品質ってそんなにすぐに落ちるの?」

私はマリアに確認してみる。

「物によるわね。ただ、今回は森へ行っての日帰りだから品質はそんなに変わらないと思うわ」

どうやら森に行ってくるだけなら品質にそんなに影響がないらしい。
それならば、まずは5000ニャールドの鞄でいいだろう。
資金がたまったら自分の好きなデザインでよい性能の鞄を買うことにしよう。

「うん、ならやっぱりその5000ニャールドので十分よ。稼いだら私の好きな鞄を買うことにするわ」

「そう?じゃあ、今度も僕のところで鞄買ってね。特別にサービスするから」

リュリュさんはそう言ってにっこりと笑った。

「ありがとう」

さて、リュリュさんのところに長居してもしょうがないし。鞄を受け取って帰ろう。
と、思っているとガタガタと手に持っていたバスケットが揺れ出した。

「どうしたの?」

近くにあったテーブルにバスケットを下ろして、蓋を開ける。
すると、マーニャたちがバスケットから飛び出した。

「マーニャ?クーニャ?ボーニャ?」

マーニャたちはテーブルの上から飛び降りると、みんな同じ体制をした。
どんな体制かと言うと、姿勢を低くしてお尻を高く上げている。
耳はピーンッと立っているし、尻尾もたっている。しかも、尻尾がなんだかいつもより太い気がする。

ふりふりふりと、皆で仲良くお尻を振っている。

「なにをしているの?」

そのフリフリしているお尻可愛いんだけど。思わずさわろうとして手を伸ばすと、その手をマリアに止められた。

「猫様たちを見ているといいわよ。今は猫様たちに触らない方がいいわ」

「なぜ?」

「見ていればわかるわよ」

見ていればわかる?
いったいマーニャたちは何をしたいのだろうか?

私は、マリアに言われたとおりに手を出さずにじぃっとマーニャたちを見つめていた。
でも、そのフリフリしているお尻、本当に触りたいくらい可愛いんだけど。

気合いを込めるように、マーニャたちの姿勢が一段と低くなり、そして、

「ぎゃぁ~~~!!!」

リュリュさんの悲鳴が響いた。

マーニャたちがリュリュさんに向かって飛びかかったのだ。
その際、爪をしっかりと出していたらしくてリュリュさんの腕と足から血が滲み出ている。
クーニャとボーニャの仕業だ。
マーニャは爪を立てて、リュリュさんの肩までよじ登ると自慢の爪をたてて、その端正なリュリュさんの頬を引っ掻いた。

「いったっっ・・・」

リュリュさんは涙目でうずくまってしまった。

すると、マーニャたちは満足したのか私の元まで戻ってきて私の足に頭を擦り付けている。
呆然とマーニャたちを見ている私と違い、マリアはマーニャたちの頭を撫でで「えらいえらい」と誉めていた。

いったい何で・・・?

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