上 下
109 / 584
一章

108

しおりを挟む

プーちゃんが気絶してしまって、尻尾が動かないのが不満なのか、マーニャたちはそれぞれ思い思いに毛繕いを始めてしまった。

少しはプーちゃんを心配してあげたりは、しないのかしら。

そう思いながら、プーちゃんの元に近づく。ツンツンとプーちゃんの頭をつついてみる。

「プーちゃん、大丈夫?」

「・・・うぅ~ん」

お、生きているようだ。
よかった。よかった。

ひょいっと縮んだプーちゃんを抱き上げる。
このままここに置いていくわけにもいかないし。
起こして歩かせたらまた、マーニャたちの餌食になりそうだし。

「プーちゃん伸びちゃったね」

「そうね。マーニャたち、もう少し手加減してあげてね?」

「にゃあ?」

「プーちゃんも喜んでいたよ?だって」

「えっ!?」

あんなに噛みつかれてもプーちゃん喜んでいたの?
・・・マゾ?

「マーニャ様たちに構って貰えて嬉しかったようよ。最初、相手にされていなかったから余計に嬉しかったみたい」

「そ・・・そうなんだ」

思わず手の中のプーちゃんを凝視する。
どうしようもないマゾかもしれない・・・この竜。
置いていってしまおうか・・・と、頭の中で悪魔が囁く。

「置いていってもいいんじゃない?マーニャ様たちもそう言っているわ。わざわざ連れていかなくてもいいんじゃないかって」

「えっ!?」

私の思考読まれてる!?
というか、皆同じ考えとかどうなのかしら・・・。

「でも、置いていくの可愛そうかも。あんなに張り切っていたし」

「そう?私、正直爬虫類って苦手だから持てないわよ?」

「ああ、うん。私、持っていくよ」

そうか。マリアは爬虫類苦手なんだ。
そうだよね。プーちゃんは竜だけど、こうやって縮んだ姿を見ればまんま爬虫類だもんね。
苦手な人も多いかも。

「そう?じゃあ先を急ぎましょう。マーニャ様たちは疲れていない?歩いていける?」

「「「にゃあ♪」」」

「そう。じゃあ、このまま歩いていきましょうね。マユ、マーニャ様がそのバスケットにプーちゃんいれていいって言っているわよ」

「そう?じゃあ、バスケットの中にいれちゃおう」

私は、マーニャたち用のバスケットにプーちゃんを入れた。
マーニャったらバスケットをプーちゃんに貸してもいいだなんて、本当はプーちゃんのこと心配しているんだね。
可愛いなぁ。その、「心配してないんだからねっ!」とか言いつつ、実は心配しているところが、とても可愛い。

「マーニャ、バスケット貸してくれてありがとう」

未だ意識がないプーちゃんに代わりに私がお礼を言う。

「にゃあ?」

なんで、私がお礼を言うの?って顔をしているけど、すぐに前を向いて歩き始めてしまった。




しばらく歩いていると、森の入り口が見えた。森の入り口にはちゃんと立て看板があった。
なんて親切なんだろう。

「マユ、森の中は結構広いから迷わないように気を付けてね」

「うん」

私たちは森に足を踏み入れた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

学園長からのお話です

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:253

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:271

この結婚、ケリつけさせて頂きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,382pt お気に入り:2,909

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,381pt お気に入り:3,098

浮気の認識の違いが結婚式当日に判明しました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,955pt お気に入り:1,220

見た目幼女は精神年齢20歳

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:683

処理中です...