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二章
2ー10
しおりを挟むふわふわな手の正体は、
「マーニャ!?」
でした。
何時の間に、来たのだろうか。先ほどまでいなかったはずなのに。
「にゃあん」
まるで、誉めてというようにちょこんと座って丸い目でこちらを見つめてくるマーニャ。
後ろで尻尾がふわふわと揺れている。
「ありがとう、マーニャ」
マーニャが錬金釜に何をしたのかまだわからないが、マーニャの頭を優しく撫でる。
マーニャは撫でられて嬉しそうに、目を細めてゴロゴロと喉を鳴らしていた。
「あはっ。猫様の影響がない場合どんな化粧水が出来るのか検証していたのに、マーニャ様ったら、もう」
マリアはそう言いながらも、仕方ないなぁと笑っている。後ろに一緒に来ていたソフィアもクスクスと笑っていた。
まあ、マーニャが錬金釜にいたずらをしてしまったが、これはこれでしょうがないと諦める。でも、ボーニャが錬金釜に触ったときとは反応が違った。
今度は、どんな化粧水ができたのか少し楽しみでもある。
私は、錬金釜の蓋を再度握ると、ゆっくりと錬金釜の蓋を開けた。
「あら。普通の化粧水かしら?」
「あれ?この錬金釜は10個しか出来ないはずなのに、20個もできているわ!」
見た目はどうやら普通のごくごく普通の化粧水に見える。って、私、この世界の化粧水まだ見たことないけど。
マリアとソフィアさんが、見た目は普通だと教えてくれた。
ただ、作成できた量が倍になっているだけで。
でも念のため鑑定してみる。
【化粧水(メロンソーダ味)
肌を整える化粧水。飲むこともできる。メロンソーダの味がする。】
・・・やっぱり飲めるんだ。しかも、メロンソーダだって。
「この化粧水もやっぱり飲めます。味はメロンソーダだそうです」
ひとつを手に取って、マリアとソフィアに見せる。
今度も飲める化粧水が作成できた。
「そう。こっちの錬金釜はマユが「美味しくなあれ」って思いを込めていたわよね。やっぱり飲めるようになるのね」
「そうですね、錬金釜は思いの魔力で作成物の質が変わりますから、きっとそうでしょう。でも、化粧水が飲めるだなんて驚きです」
「マユ、錬金釜に魔力を込める時に、メロンソーダを連想した?」
マリアとソフィアがそれぞれ、化粧水について分析している。
「特に連想はしていないかなぁ」
メロンソーダが野みたいとは思ってはいなかったし、その時にメロンソーダを思い浮かべたこともなかったはずだ。
その時のことを思い出して、マリアとソフィアに告げる。
「そうですか。すると、マーニャ様が味を決めたのでしょうか」
ソフィアがそう言って、床で後ろ足を上げながら毛繕いをしているマーニャを見つめた。
「そうすると数が増えたのは?」
「う~ん。もう片方の錬金釜も開けてみましょうか」
「そうだね」
私はもう片方の錬金釜に手を当てた。こちらは、「美味しくなあれ」との思いをかけていない普通の化粧水が出来ているはずだ。たぶん。
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