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三章
3ー156
しおりを挟む結局呪われた大地まで行ってはみたもののなんの収穫もなかった。
ただ、ミルトレアちゃんが還ってしまったということだけがわかった。
でも、ミルトレアちゃんのママっていったい何者なのだろうか。
疑問だけが私の中に残る。
「あ、どうでしたか?」
皇太子殿下の家に皆で戻ると、皇太子殿下もちょうど皇后陛下のところから戻ってきたみたいだった。
にこやかにこちらに挨拶してきた。
「ミルトレアちゃんは還ってしまいました。理由もよくわからなかったんですよね。ママが呪われた大地にプーちゃんを呼び寄せたいがために、皇太子殿下に湯水のようにお金を使ってもらったとか。結局ママがいったい誰なのかもわからなかったですし・・・。収穫なしです。」
「そうでしたか。」
皇太子殿下に告げると、以外にもあっさりと皇太子殿下は頷いた。
「ミルトレアはとってもいい子だったんですよ。ただ、僕に湯水のようにお金を使わせる以外はね。呪われた大地の復興にも人一倍興味を持って積極的に進めてくれていたんです。そうですか、ママに言われたんですね。」
そう言って皇太子殿下は朗らかに笑った。
どうやらミルトレアちゃんのことは起こっていないようである。
精神に干渉されたのにも関わらず。
「それにね、実は僕が散財したお金は無駄にはなっていなかったんです。きっとあの商人もミルトレアのママの命令を受けていたのかもしれませんね。」
「それは、どういうことですか?」
わけがわからずに皇太子殿下に聞き返す。
だって、散財したお金がまさか無駄になっていなかったとはどういうことだろうか。
まさか、皇后陛下の元に行っていた・・・とか?
いやいやいや。でも、そんな気配はなかったしなぁ。
「ふふっ。あの商人の足を追ったら各地の孤児院に頻繁に足を運んでいたんですよ。そこで必要な物を孤児院に寄付したり、必要であればお医者さんを手配して孤児の怪我や病気を治していました。本来なら国でやらなければならないことなのに。率先してやっていてくださったんですよ。」
「はあ。それはそれは・・・。」
皇太子殿下からお金を巻き上げるくらいだから自分の私腹を肥やすためだけにお金を使ったのかと思えばどうやらそういう訳ではなかった。
経営に困っている孤児院に手を差し伸べていたってことか。
ちょっとお金の稼ぎ方がいまいちだけど・・・。
まあ、うん。
少し納得はできないところはあるけれども。
「それに、その商人も還ったみたいなんですよ。」
「え?」
「きっとミルトレアのママのところに還ったんでしょうね。今思えば彼は不思議でした。気配が一切ないんですから。それに気づかなかったのもミルトレアの精神干渉の所為なんでしょうね。」
「はあ・・・。なるほど。」
皇太子殿下に高額で粗悪な商品を売っていた商人もママの使者だったということですかね。
ほんと、ママっていったい何者なのだろうか。
「まあ、とりあえず解決したんだからいいじゃない!これで呪われた大地が復興すれば、皇太子殿下も皇位を告げるんでしょう?」
「そうですねぇ。父も高齢なのでそろそろ皇位を譲ってくださるといいんですが、何分、私には妻がいませんからねぇ。もちろん、子供もいません。」
「・・・へ?結婚してなかったんですか?」
ま、まさか齢60にもなる皇太子殿下が結婚していないだなんて思ってもみなかった。
ミルトレアちゃんはお母さんに逃げられたとか言っていたけど・・・。
「婚約まではうまくいくんですけどね。なぜか結婚となるとみんな逃げて行ってしまうんですよ。はははっ。」
「それって・・・。」
『マザコンだからなのー。』
突如現れたクーニャが教えてくれた。
どうやら皇太子殿下がマザコンだという噂は本当だったようです。
でも、マザコンのお陰で結婚できない皇太子殿下ってどうなんでしょう・・・。
っていうか、唯一のこの帝国の血筋が皇太子殿下ってことだとするのならば、ここで血が途絶えてしまうのではないだろうか。
それとも世襲制じゃないのだろうか。
いや、でも。皇帝の息子だから皇太子殿下になっているんだし。
やっぱり世襲制だよね。
「まあ、もう。この年になると結婚しなくてもいいかなーと思ったりね。子孫を残していかなければならないのかもしれませんが、幸い妹は早くに結婚して立派な子供もいますし。そちらが皇位を継いでもいいんですよねぇ。」
「ああ。妹さんがいらっしゃるんですね。」
そうなのだとしたら、最悪、血が途切れるようなことはないだろう。
うん。よかった。よかった。
「私なんて皇帝陛下と同年代なのにまだ結婚していないんですから大丈夫ですよ。」
って!!
よくない!!マコトさん、それ言っちゃダメ!!
それ言ったら私たちがここに来たのが皇帝陛下に頼まれたからだってバレちゃうじゃない。
「えっ!?マコトさんって父上と同い年なんですか!?」
「そうなんですよ。年は取りたくないですねぇ。」
「全然見えませんね。まだ20代でも通りますよ。」
「そうですか?嬉しいですね。」
そう言ってにこっとマコトさんは笑った。
「・・・っ!!?ま、まさか!!賢者のマコト様でいらっしゃいますかっ!!?」
皇太子殿下は興奮したようにマコトさんに詰め寄る。
って、賢者ってなに!?賢者って!!
マコトさんが賢者だったら大変だって。
どうして、マコトさんが賢者になったんだ。
絶対、人違い。人違いだよ。皇太子殿下。
そうは思うが、私がそう言うわけにはいかない。
ここは、マコトさんが否定するだろう。
そう、きっぱりと否定してください。マコトさん。
「ええ。そうですよ。」
そうですよね。否定しますよね。
・・・ん?
あれ?
今、聞き間違えたかな。
マコトさんが賢者だって肯定したような・・・。
「うわっ!賢者マコト様!お会いできて嬉しいです。」
そう言って、皇太子殿下は年甲斐もなくはしゃぎ始めた。
うん。もう、マコトさんが賢者だとしてもいいや。
マコトさんはマコトさんだしね。
気にしないことにしよう。
気にしたら負けのような気がするし。
「ねえ?楽師たちが来たわよ。これから呪われた大地で宴を開くんですって?誰が宴の旗振りをするのかしら?もう役割は決まっているの?」
わちゃわちゃとマコトさんと皇太子殿下がしていると、マリアが助け舟を出してくれた。
まあ、助け船というよりかは楽師が来たから対応に困ってのことなんだろうけど。
それにしても、楽師が来るの意外と早かったなぁ。
「おっと。料理もしなきゃいけませんね。楽師の皆さんと私は先に呪われた大地に行っています。マユさんたちは料理を持って後から来てください。よろしくお願いします。」
皇太子殿下はそう言って外に飛び出していった。
忙しい楽師の方々を待たせるわけにもいかないしね。
私たちは皇太子殿下の指示にしたがって宴に必要なものを準備し始める。
呪われた大地まで皇太子殿下たちは徒歩で向かうらしい。
私たちはもちろんいろんな荷物があるのでプーちゃんの転移を使用するけれど。
全員でプーちゃんの転移を使用すればいいという案もあったが、そこまで甘えるわけにはいかないという皇太子殿下の意見で、楽師たちは歩いて行くこととなった。
「さて、私たちもさっさと準備して呪われた大地に行きましょう。」
『宴なのー。いっぱい騒ぐのー。』
『ご馳走なのー。楽しみなのー。』
『ミルクあるのー?』
『宴じゃ宴じゃ!!なんといっても甘味なのじゃーーーーーー!!!』
『我はマユのトマトがいいのだ。マユ、トマトを用意するのだっ!』
「ふふふっ。私の魔道具を炸裂させましょう!盛り上がりますよぉ。ふふふっ。」
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