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四章
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しおりを挟むドスンっ!!
「ぎゃっ!!」
突然鈍い音とともに悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴が聞こえてきた方向を見ると、魔王様が地面に横たわっていた。
どうやら、プーちゃんが驚きすぎて魔王様を落としてしまったようだ。
私ですらもしかしたら女王様はプーちゃんの娘ではないかと薄々と感じていたのだが、単細胞なプーちゃんのことである。
まったく気が付いていなかったのだろう。
それだけに驚きも半端ではないようだ。
『ま、まさか・・・。そんな・・・。バカな・・・。』
今の今まで気が付かなかったプーちゃんは呆然と虚空を見つめている。
「プーちゃん。おーい、プーちゃん。」
プーちゃんの名を呼んでみるが、まったく反応はなかった。
「あー。女王様、今のうちに魔王様と話し合いをしますか・・・。ちょうどプーちゃんも魔王様を放してくれたようですし。」
「あ・・・え・・・うそ・・・。」
時間を有効活用するためにも、プーちゃんが衝撃に固まっている間に女王様と魔王様で話し合いを進めたらどうかと提案してみる。
しかしながら、女王様の衝撃も大きかったのか、女王様も虚空を見つめて呆然としていた。
あー。うん。
そっか。女王様もプーちゃんが父親だなんて気づいていなかったのか。
そりゃ。ショックだよね。
「ふぁはっはっはっ。」
驚きに固まっているプーちゃんと女王様を尻目に魔王様は楽し気に笑い出した。
どうしたのかと、魔王様を見る。
魔王様は左の口の端を少し上げて笑っていた。
「いつ言おうかと思っておったが、こんなに驚かれるとは。実に愉快だ。今まで黙っていたかいがあったというものよ。」
「は、はあ。」
「まあ、始祖竜様にはパールバティーを身ごもってから一度も会っておらんかったがの。」
「へ?」
こんなに魔王様にベタ惚れなプーちゃんなのに、全く魔王様に会ってなかったのか。
いったい。なんだってそんなことに。
「しかも、こちらから始祖竜様に連絡を取る手段もなかったしのぉ。」
「それは・・・。」
魔王様からプーちゃんへの連絡手段はなかった。
それはつまり、プーちゃんが魔王様に会いに行くしかなかったとそういうことだろうか。
仮にも恋人に対して何十年も会わずにいるというのは、プーちゃん。あまりに酷くはないだろうか。
「始祖竜様に裏切られたと儂はずっと思っておったがの。まあ、でも竜という種族は嫉妬深いゆえ、心変わりなんぞはないと心のどこかで思ってはおったが、随分と不安だった。」
「ええ。そうでしょうね。何十年も会えなかったらそうでしょうね。」
なんでもないことのように言ってのける魔王様だが、きっと何年も悩んだことだろう。
「まあ、ここで始祖竜様が呆けた顔をしているのを見れたから全てよしとしよう。会いに来てくれたしのぉ。」
『ふんっ。相変わらずプーちゃんのことが大好きなのじゃな。なあ、マオマオよ。知っておるかの?プーちゃんが何故マオマオに会いにこれなかったかを。』
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