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五章
5ー22
しおりを挟む「魔王様ぁ~~~~~っ!!我らの魔王様ぁ~~~~~っ!!こちらにいらっしゃますかーーーーっ!!!」
女王様とホンニャンのかみ合わない会話をのんびりと聞いていたら、突如外から誰かの叫び声が聞こえてきた。続いて家を破壊するようなドゴンッという大きな音と、土煙が辺りを覆う。
って、破壊するような音じゃなくて、思いっきり家を破壊してきたようだ。
そして、家の壁が壊された場所からホンニャンに目掛けて黒い大きな塊が吹っ飛んできた。
「ホンニャン危ないっ!!」
「へわっ!へわわわわっ!!」
その大きな塊はホンニャンにガシッと抱きついた。
その反動でホンニャンの身体が大きく後ろに傾いてしまう。慌てたホンニャンから驚きの悲鳴が漏れた。
「はっ!魔王様っ!!申し訳ありませんっ!!」
黒い塊・・・もといタイチャンはホンニャンの体制を立て直すと、サッとホンニャンから距離を取った。どうやら正気に戻ったらしい。
「でも、魔王様がいけないんですよ。魔王城からいなくなったりするんですから。まあ、もっとも・・・マユに唆されたのでしょうけど。」
タイチャンはホンニャンを心配そうに見つめた後で、絶対零度の視線を私に送ってきた。
思わずブルッと身震いをする。
「ははっ・・・。」
ホンニャンが勝手についてきただけなのにな。
でも、それをタイチャンに言ったところで、私の言う事などタイチャンは聞いてはくれないだろう。言い訳としか思われなさそうだ。
むしろホンニャンの所為にするのかっ!と怒られそうなのでやめておく。
「マユが一緒だから危険はないわっ!」
ホンニャンがむっと頬を膨らませてタイチャンに抗議をしている。
「マユが一緒だから危険なんですよ。マユが安心安全だとは思わないでください。マユが貴女に降りかかる全ての災厄を防げるはずはないのですよ。」
「でもっ!マユは女神様代行なのよ。そのマユの側にいれば安心だわっ!」
「・・・あくまで、マユは女神様の代行です。代行は代行なんです。女神様のお力には敵いません。」
タイチャンはわかりやすく「代行」のところを強調してホンニャンを窘める。
そうなんだよね。
私は、あくまで女神様の代行だ。
それに、私自身にはそんなに力がないのだ。
むしろ、どうして私が女神様の代行になんてなっているのかそれを私は知りたい。っていうか、勝手に押し付けられたってだけかもしんないけど。
「でもっ!」
「魔王城が一番安全なのです。魔王様。」
ホンニャンはタイチャンに立ち向かうが、タイチャンの方が経験年数がずっと上である。
そのため、簡単にホンニャンはタイチャンに言いくるめられてしまう。
なにも言い返せない状態になってしまったホンニャンはただ黙っているしかない。
頬を限界まで膨らませてホンニャンはタイチャンを恨めしそうに睨みつける。
「魔王様に代わりはいないのです。なんたって前魔王様のお子は魔王様しかおられないのですから。」
「お姉さまがいるじゃない。」
「あのお方は人間の国の王です。魔族の国の王にはなりえません。」
「兼任すればいいじゃない。」
「人間の国に統一されろということですか?」
「・・・違うわよ。」
「国を一つ統治するのは簡単ではありません。二つの国を一人で統治するのは無理です。二つの国を一つに統一すれば可能ですが、それは魔族側が黙ってはおりません。」
「・・・むぅ。」
タイチャンは完膚なきまでにホンニャンを言いくるめる。
「私は可愛いホンニャンが望むなら魔族の国を統治してもよいが?」
と、そこに割り込む声が。
言わずと知れたパールバティー様ことホンニャンの姉の女王様である。
タイチャンはそこで初めて女王様が同じ空間にいたことに気が付いた。
タイチャンの視線と女王様の視線がバチッと絡み合う。
やばい・・・。一触即発の危機かもしれない。
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