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アルフォネアが言ったことは本当なのか……?
しおりを挟む「ステファニー。聞きたいことがある。執務室に来なさい。」
夕食後、私はお父様に呼ばれた。
ちなみに今日の夕食はお通夜そのものだった。お父様もお母様も何もしゃべらない。まあ、本来食事中はしゃべらないことがマナーとされているけれど。
お父様だけでなく、アルフォネアも何もしゃべらないのだ。いつもはお父様とお母様になにかしら話しかけて賑やかなのに。アルフォネアはどこかムッとした表情をしている。
これは、王宮から帰ってきたあとにお父様とお母様になにか言われたのだろう。
「お父様、ステファニーです。入ってもよろしいでしょうか。」
お父様の執務室のドアの前に立って、中にいるであろうお父様からの返答を待つ。
「……入りなさい。」
お父様は少しの間の後、私に入室を促した。
「失礼しますわ。」
私はお父様の返事を待ってから執務室の中に足を踏み入れる。
執務室にはお父様が執務をするための机と椅子がある。その前に2人がけのソファーが2脚と間にテーブルが1脚だけある。執務中に人と話すためのスペースだ。
私はその2人がけのソファーに腰掛けるようにお父様に言われた。
「ステファニー……アルフォネアから話は聞いた。アルフォネアの話はどこからどこまでが本当なんだ?」
お父様もソファーに深く腰掛け、重い口を開く。
「どこからどこまでが本当かと言われましても……アルフォネアはなんと言ったのです?」
「ああ、すまない。あまりに衝撃的なことをアルフォネアから聞かされたものでな、つい。」
お父様はばつが悪そうに頬を掻いた。
「それで?アルフォネアはなんと?私よりアルフォネアがルーンファクト様に相応しいというようなことでしょうか?」
「まあ……近いな。王妃様にアルフォネアをルーンファクトの婚約者にするように言われた、と。今すぐにでも王宮に住むように言われたと言っていてな。まさか、あの王妃様がそのようなことをアルフォネアに言うとは思わず……信じられぬのだ。王妃様はステファニーのことを気に入ってくださっていたと思ったのだが……。」
お父様の言葉に私は「はあ」と深いため息をついた。アルフォネアの言うことはなんだかいろんなところが飛躍しすぎているのだ。というか、王妃様はそんなこと一言も言っていない。
「アルフォネアが王妃様のことをいきなりお義母さまと呼び出しました。私はアルフォネアが王妃様のことをお義母さまと言ったのを不敬だと思い王妃さまに謝りました。さらには、アルフォネアに相応しいのはルーンファクト様しかいないと。それを聞いた王妃様はアルフォネアのことをまるでこの国のお姫様みたいですね。とおっしゃいました。」
「……そうであったか。やはりアルフォネアの言うことは信じられないな。王妃様がアルフォネアをお姫様だと言ったのは明らかに皮肉だろう。どうしてアルフォネアはそれを気に入られたと取るんだ……。」
お父様は疲れたようにソファーにもたれかかった。
「早急にどうにかしないと、アルフォネアの話が広まってしまいますわ。」
「ああ。困ったな。もし、アルフォネアの話が広まってしまったらきっと王妃様もお怒りになるだろう。」
「ええ。そう思います。」
「……まったく、妻の妹の忘れ形見だと甘やかしてしまったのがあだとなったか。いや……だが、妻はアルフォネアにも笑顔で違うことは違うと言っていたようだったが……。アルフォネアが良いように拡大解釈してたのか……。」
「そのようですね。」
「対処を考えよう。王妃様と親しいのはステファニーだということを貴族にすりこませるのが早いだろう。だが、それには王妃様にも協力していただかないとならない。王妃様がはたして協力してくださるだろうか。それに、下手をするとアルフォネアの所為でステファニーとルーンファクト殿下の婚約自体がなくなりかねないな。」
お父様と私は頭を抱えた。
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