妹が寝取った婚約者が実は影武者だった件について 〜本当の婚約者は私を溺愛してやみません〜

葉柚

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ルーンファクトとそっくりさんの会話

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「よぉ。あんたの婚約者はいい女だな。」

 ルーンファクトが寝ていると、ルーンファクトのそっくりさんが自室に現れた。

「ああ。そうだろう?ステファニー嬢は私とファントムの違いがわかるんだそうだ。貴重な人だよ。多くの人は私の容姿と地位にしか興味がないようだが、ステファニー嬢は違うようだ。」

 ルーンファクトのそっくりさんはファントムと言う。

「目の色も声も発音も違うと言っていたな。」

「よくわかっているよね。ステファニー嬢は。だから、アルフォネアには近づくな。ファントムは私にそっくりだ。他の誰も区別はつかないだろう。それなのに、ファントムがアルフォネアに近づくとよくない噂が立つ。曰く、私が婚約者の妹に惹かれている、とね。それはステファニーのためにはよくないことだ。」

「ふんっ。あんたへの嫌がらせのためにアルフォネアに近づいたんだがな。ステファニーのこと気に入ったよ。だから、ステファニーに対する悪い噂は流させねぇ。」

「そうか。わかってくれたなら、よかった。だけど、ステファニーは私の婚約者だ。ファントムがいくら私に似ていようが、ステファニーの婚約者は私なのだ。ステファニーに本気になるなよ。」

 ルーンファクトはファントムがステファニーを好きになるのではないかと懸念した。

「……さてね。」

「はあ……。君がそういう反応をするってことはもう手遅れかな?」

「どうだかな。」

 ルーンファクトは大きなため息をついた。ファントムはニヤリと笑みを浮かべる。

「頭が痛いことが増えたな。」

「ルーンファクト様はお忙しいからな。オレみたいに自由に生きればなにも悩むことなんてねぇのに。あんたは真面目すぎるぜ。」

 ファントムはルーンファクトが寝ているベッドに近づくと、そのベッドにドカリと座り込んだ。

「……自由、か。私の地位では難しいだろうな。だが、ファントムは本当に自由なのか?オレにそっくりなために、王宮に縛られているじゃないか。」

「そうだな。だが、あんたよりは自由だ。もし、あんたが王になるのが嫌だってんならオレが代わってやるぜ?オレはあんたの影武者だからな。まあ、ステファニーをオレがもらうことが条件だがな。」

「それもいいね。王という重責に耐えられるか不安だ。逃げ出したいと思うときもある。だけど、ステファニーが隣にいないなら逃げたって意味はないんだよ。」

「ははっ。じゃあ、あんたはステファニーが王妃になるのが嫌だっていったら、オレに王を押しつけてステファニーと逃げる気か?」

「そうだな。ステファニーが望むなら、な。」

 ファントムはわははと笑い声を上げた。それはどこかとても楽しそうだ。

「ステファニーはすごいな。」

「そうだろ。でも、君には渡さないよ。」

「わかってんよ。で?あんたオレになにか頼みがあるんだろう?」

 ファントムは話題を変えた。これ以上はお互いステファニーの自慢大会になるだろうということがわかったからだ。

「ああ……。頼みがある。他でもないステファニーの妹のアルフォネアのことだ。」

「アルフォネア、か。とても良い身体をしてたぜ?」

 ファントムはニヤリと笑った。ルーンファクトはファントムの物言いに眉を顰めた。

「……アルフォネアにちょっかいを出すな。あれは危険だ。人が言うこと成すこと全て自分の良いように捉えてあたりに言いふらす。」

「そうだね。あんたが困るだろうと思ってアルフォネアに近づいたんだけどなぁ。今じゃあ、ルーンファクト様はアルフォネアにご執心だとあちこちで言いふらしているぞ。まあ、姉が婚約者なのに酷い妹だ、と貴族の間では言われているようだが。」

「まったく困ったことをしてくれたよ。それを撤回して欲しいんだ。君が撒いた種だろう?綺麗に刈り取ってくれ。」

 ルーンファクトはファントムにぞんざいに言い放つ。

「へいへい。ルーンファクト様がそういうなら。」

 ファントムは綺麗な礼をするとスッと闇に溶けるようにルーンファクトの目の前から姿を消した。

「……ファントムもステファニーを気に入った、か。手強い恋敵だな。」

 ルーンファクトはファントムが消えた方向に視線を向けながら呟いた。

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