妹が寝取った婚約者が実は影武者だった件について 〜本当の婚約者は私を溺愛してやみません〜

葉柚

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そっくりさんの名前は……?

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「……ルーンファクト様のそっくりさん。出直してくるってこういうことだったのかしら?」

 応接室で待っていたのは、ルーンファクト様ではなくてルーンファクト様のそっくりさんだった。

「……そんなにあらかさまにガッカリしないでくれるかな?私はとても悲しいよ。」

 ルーンファクト様のそっくりさんは芝居がかったような声音でそう言って、ソファーにヨヨヨッとしな垂れかかった。

「申し訳ございません。本物のルーンファクト様にお会いできるかと思っておりましたもので……。」

 私はルーンファクト様のそっくりさんに謝罪して部屋の中に入る。そして、ルーンファクト様のそっくりさんの目の前のソファーに座った。

「ようこそお越しくださいました。本日は私にご用とのことで、どういった要件でしょうか?」

 正直ルーンファクト様のそっくりさんとはあまり話したくない。

「まあまあ。そう他人行儀にしないでほしいな。私たちは婚約者同士じゃないか。」

 ルーンファクト様のそっくりさんはそう言って笑みを見せた。さっきまでの泣きまねはどこに行ったのだろうか。

「私はルーンファクト様と婚約しているのです。ルーンファクト様のそっくりさんと婚約しているわけではございませんわ。」

「んーでも、周りは私がルーンファクトじゃないとは思わないでしょ?見た目で判断できるやつほとんどいないよ?つまり、私がステファニー嬢と仲良くすればするほど、本物のルーンファクトとステファニー嬢は誰も付け入る隙がないほどに仲が良いって周りが思うわけ。私とは仲良くしておく方が利点は多いと思うけどね?」

 確かに、ルーンファクト様のそっくりさんが言う事にも一理ある。見た目はルーンファクト様なのだ。邪険に扱っていては、周りが要らぬ誤解をするだろう。

「……でも、私が最初にルーンファクト様のそっくりさんにお会いしたときは、私に対して友好的ではありませんでしたわよね?それどころか、アルフォネアと関係を持っていたじゃないの。」

「ああー。それは、さあ。ほら、オレってルーンファクトにすっごくそっくりだろ?だからさ、ストレスもたまるわけ。オレのこと皆がルーンファクト様っていうんだ。本当のオレはどこにいるんだよって感じで。それにさ、オレってルーンファクトに似すぎているから王宮の連中もオレのことルーンファクトの影武者って扱いでさ。仕事中もルーンファクトって呼ばれるし、休日に街を歩いていてもルーンファクト様って言われるし。ほんと、オレってなに?って感じでストレスたまりまくるんだよ。だから、ルーンファクトに少し仕返ししたいなぁ~って思ってさ。アルフォネアに近づいたってわけ。」

 ルーンファクト様のそっくりさんは、少しだけ困ったように微笑みながら胸の内を吐露してきた。

 っていうか、もしかして私って本音を吐露してもらえるくらいにルーンファクト様のそっくりさん信頼されてしまっているのかしら?

「……そう。それは確かにストレスが溜まるわね。」

「だろう!だからさ、ちょっと意趣返しってやつをだな……。ほら、ルーンファクトってあんたに夢中じゃん?王と王妃様にあんたを婚約者にしたいって説得したのもルーンファクトなんだよ。そんだけ夢中になっているあんたじゃなくて、妹の方とオレが仲良くなったら面白い噂が流れるだろ?ちょっと困らせて婚約者に嫌われてしまえって思ったわけ。可愛いいたずらでしょ?」

 ルーンファクト様のそっくりさんに同調したら、さらにまくし立ててきた。

「人を困らせるのは良くないと思うわ。ねえ、あなたのことそっくりさんって呼ぶのもおかしいと思うのよ。呼びづらいし。もしよかったら名前を教えてくれるかしら?」

 私はルーンファクト様のそっくりさんに名前を尋ねた。

 すると、ルーンファクト様のそっくりさんは表情をぱぁあああああっと明るくして名前を教えてくれた。

「オレの本当の名前はファルコンって言うんだ。でも、ルーンファクトにはファントムって呼ばれてるけどな。なんとかっていう劇の主人公にオレが似てるんだとか。ああ、ファルコンって呼び辛かったらファルって呼んでくれていいよ。二人きりのときは、ファルって呼んでもらえると嬉しい。」

「わかったわ。ファルって呼ばせてもらうわね。」

「うん!」

 私がルーンファクト様のそっくりさんをファルと呼ぶと、今まで以上に嬉しそうにファルは笑った。

「ファル……ファルは、アルフォネアに本気なの?」

 
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