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生きていくためには仕事をしなければならないというのは世間一般での共通項である。

ただ、出自のわからない異国の女を雇い入れてくれる場所があれば良いのだが。

 

「いらっしゃいませ~。」

「こんにちは。厨房の人員を募集していると伺ってまいりました。」

目に付いたのは、庶民が気軽に入れるような一般的なレストランだった。

おいしそうな匂いにつられて店の入り口を見れば、接客と厨房の人員を一名ずつ募集している旨の張り紙があった。

清潔そうなレストランは働きやすそうに見えたので、すぐに店に入って、出迎えてくれたウエイトレスに声をかける。

すると、ウエイトレスの女性は眉間に皺をよせた。

「ごめんなさいね。厨房は男性限定なのよ。力仕事ばかりだからね。それにうちの店忙しいから女性では勤まらないわ。」

「・・・そう、ですか。」

体力には自身がある方だが、男性と同じだけの力仕事ができるとは思わない。

野菜の皮むきだけでも・・・とも思ったが、そういう専任は募集していないとのことだった。

接客については、見た目が異国人ということもあって採用は厳しいようだ。

特に私の容姿はハズラットーン大帝国の敵国であるヤックモーン王国人の容姿をしている。

出身国を尋ねられることはなかったが、人前に出るような接客としては雇っては貰えなかった。

これが、同盟国の容姿をしていたら違っていたかと思うと少しやるせなくなる。

どの店も基本的には裏方では主に男性が働いており、接客は女性がおこなうというスタイルだった。

そうして、やはり接客についてはヤックモーン王国人の容姿をしている私を雇ってくれるところは見つからなかった。

エドワード様やマコト様に大見得切ったが、短期間とはいえ帝都で就職することは予想以上にハードルが高かった。

 

「うぇ~んっ・・・。」

当ても無く歩いていると道の端っこに蹲って泣いている子供がいた。

しかし、誰も気にかけることはなく通り過ぎていく。

私も平素だったら気にかけなかっただろう。

だが、誰も雇ってくれない自分と道端で誰にも声をかけられないその子が重なってしまった。

「・・・どうしたの?」

子供が怖がらないように、子供と同じ目線になるためにもしゃがんで声をかける。

子供は恐る恐る顔を上げると「ヒッ・・・。」と恐怖に青ざめた。

どうしたのかと首を傾げる。

子供をよくよく観察すると、どうやら転んだのか膝に掠り傷がついていた。

また、足を捻ってもいるのか右の足首が真っ赤に腫れ上がっていてとても痛々しい。

「やっ!!こないでっ!!」

足が痛くて歩けないため、お尻をずって後ずさる。

それにちょっと眉を寄せながらも放ってはおけなくて、晴れ上がっている足首に手を当てる。

「治療するだけだから、逃げないで。」

魔力を子供の足首に当てている右手のひらに集中させる。

そのまま頭の中で子供の怪我が治るようにと思いを込めて、魔力を放出した。

子供の顔が恐怖から驚きの表情に変わっていった。

 

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