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第4章:幼少期・友愛編
第67話:【ブルーグレープがきっかけ】
皆様、大変お久しぶりでございます。
梻(シキミ)メギです。
2025年09月28日投稿の第66話【落ちつけるわけがない】を最後に更新がストップしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
前書きに長々と綴って、作品をお読みになる方のお邪魔をしたくないのでストップした詳しい経緯や今後の投稿頻度などに関してはX活動報告に記載しております。
気になる方はお手数ですが、そちらをご覧いただければと思いますので、よろしくお願い致します。
お久しぶりの投稿、どうか。少しでも、お楽しみいただけますように。温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼▼▼
「さあ…っ!ルピナス様、ぜひともお召し上がりください!!」
キラッキラの笑顔で第二王子殿下が両手を広げる。
目の前には白いレースのテーブルクロスがかけられた大きなテーブル。その上には美味しそうな料理がいくつも並べられていた。
魔法の練習を終えて一息ついた瞬間、第二王子殿下の使用人さんたちが素早く丁寧な動きで用意してくれたのだ。
───…こちらが遠慮して止める間もない程に。
「ええと…」
側にいるユーフォリア様を見上げると私の両肩に手を添えた状態で、にこりと笑う。
「せっかく、ダリアくんたちが用意してくれたんだ。一緒にいただこうか?」
ユーフォリア様の御顔とテーブルの上、第二王子殿下へと順番に視線を動かす。
ユーフォリア様からお許しが出たことで、第二王子殿下の表情はより一層輝きを増していた。
「……それでは。お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます」
笑みを浮かべて承諾の意思を伝えると、第二王子殿下がその場で万歳をしながら喜び出してしまった。
どうしたものかと、あたふたしていると側で控えていた年配の執事さんがやんわりと第二王子殿下を諌めてくれたおかげで無事にランチが開始されたのだった。
▼▼▼
「わあ…っ!このお料理すごく美味しいです」
ひとくち、ひとくち。
咀嚼しては御顔を綻ばせるルピナス様の姿を目に焼き付けていたくて思わずガン見をしてしまう。
…その度に、お父様がぼくを心配して同伴させた執事長の咳払いが聞こえてくるが。
そんなもの、気にしてなんていられない…!!!
こんな尊いルピナス様の食事シーンを、こんな近くの特等席で見られるチャンスを逃すものか…ッ!!
「ルピナス。フルーツもとっても美味しいよ」
ユーフォリア様がブバルディア王国名産のブルーグレープを一粒手に取っては召し上がれている。
碧い果実はツヤツヤと宝石のように輝き、黄緑の蔦は可愛らしくカールを描く。映える見た目をしているので、よく絵や陶器のモチーフに使われる。
見かけだけに留まらず味も抜群。大粒の実は甘くて、一口噛めばジュワッと果汁が溢れ出す。とっても美味しいフルーツだ。
我が国のブルーグレープは他国でも人気なのでワインやジュースも製造されており、それらと合わせ多く輸出している。
「もしかして、これってブルーグレープですか…!?座学で話には聞いていましたけど食べたことがなかったので嬉しいです!」
ピシリ。
その場の空気が一瞬で凍りついたことが分かった。
このブルーグレープは毎年のように豊作で、市場でも安く購入することができるフルーツだ。
伯爵家の生まれであるルピナス様が食したことがないとは、かなり異様なこと。
さすがユーフォリア様は動揺など一切見せずに続けた。
「ルピナス…今までの食事にフルーツとかは、あまり出てこなかったのかな?」
「え?ああ、言われてみたらそうですね。私自身、少食なのもありましたし特別、不自由だと思うこともなかったので気にしたことはありませんでした」
朗らかに紡がれた返答にユーフォリア様からはドス黒い魔力を帯びたオーラが溢れ出している。
本人的には、ささやかなつもりかもしれないがエルフ様の魔力は膨大。物凄い圧を感じた。
「アイツ…やっぱり俺の手で処刑してやればよかったな」
ボソリと呟かれた一言はルピナス様に届いていないようだったけれど、ぼくたちの元には届いてしまっているワケで。直ぐにオーラは消えたが皆、震えを止めるのに必死な状態だ。
…特に以前、ユーフォリア様の怒りを買ったぼくは魔力を浴びたことがある為、体が恐怖を覚えているのだろう。自業自得だが全然、震えが止まらない。
そんな周りの様子には気づかず、少し離れた位置にあるブルーグレープをルピナス様はご自分で取ろうと無理をして手を伸ばした。
ぼくたちはオーラの影響で動けずにいて、ただ黙って見ていることしか出来なかった。
───ルピナス様ってば、給仕にお頼みいただいたら良いのに…!無理をしないで!
そう思っていると、もう少しで届きそうなところで、サッとブルーグレープを取り上げる者がいた。
───ユーフォリア様だ。
「俺の近くに置いてあるんだから、そこは頼って欲しかったかな~。ルピナス、ほら。…あーん」
長く、しなやかな指がブルーグレープを一粒摘んで、ルピナス様の口元へ伸ばされている。
当のルピナス様はというと、びっくりした表情で瞳を大きく見開いていた。次第に白い頬がぶわりと赤く染まる。宝石のようなアメジストの瞳が少し潤んで見えた。
その様子をエメラルド色の瞳を細め、愛おしそうに見つめるユーフォリア様。想う相手だけに向けられた表情は誰がどう見ても特別なもので。美しいエルフ様のものとあって、とても神々しい。
風がブワリと吹いて、ざわめくようにヤグルマギク教会の敷地に咲く花々が揺れている。それらも背景となって、お二人の場面を惹き立てていた。
辺りから息を呑む音が聞こえる。
皆が目の前の光景に見惚れているんだ。
嗚呼、なんてことだ。こんなのまるで…まるで……
(宗教画みたいじゃないか)
ぼくは今日という日を深く胸に刻んだ。
絶対に忘れたりしないように。
永遠に熱く、それはもう熱く。
語り継いでいく為に───。
「こ、こんな人前でやめてくださいよ…!自分で食べられます!」
「えー。残念だなぁ~。人前でってことは、外じゃなければいいのかな?」
「何を言ってるんですか!もう…!」
この日をきっかけに、ぼくは【ルピナス様を尊ぶ会】を設立した。
ブルーグレープのひと場面を共に目撃していた使用人たちは…当然だが漏れなく皆、入会を果たしたのだった。
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