悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ

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第1章:はじまり・出会い編

第12話:【君に誓う】




『ユーフォリアってば、まだ運命にこだわってるの?いい加減、諦めなよ』


 一体、このセリフを今まで何度、同族に言われてきただろうか。百を超えたあたりから数えるのを辞めてしまった。

 俺たちエルフ族には、運命という存在がいる。

 魂の縁とも言われていて、もともと生き物の魂の質を見ることのできる俺たちエルフ族は、運命の存在を一目見ただけで直ぐに分かると言い伝えられていた。

 だが、運命に巡り逢える幸運なエルフは、ほんの一握り。
 この広い世界で、生涯をかけて巡り逢えるかなんて分からない。

 その為、ほとんどのエルフは運命に巡り逢えることなど期待せず身近な同族や他国に渡る者は運命ではない普通に出会った他種族と結ばれる者が多かった。

 そんな中、俺だけは他のエルフ族の者とは違い、生まれてから現在に至るまで運命を探し続けた。

 十八の成人を迎えてからはエルフの国を出て、様々な他種族の国を渡ってまで探し続けた。
 五百年という時が流れて、多くの生命が生き死に、様々な時代が流れても探した。

 探し、続けた。


「やっとみつけた───…俺の、俺だけの運命」


 今日も今日とて運命を探しに毎度お馴染みの定期的に行っている運命探しの旅に他国へ行って、今回も巡り逢うことができずに拠点としているブバルディア王国の教会へ帰ってきたところだった。

 いつも清閑な空気に包まれているはずの教会内がいつもと違って騒がしかった。
 声のする方へ行ってみると、一人の少年が大声を出して必死に訴えかけていた。


「お願いです、シスター!もう時間がないの!!急がないと、あの子が死んでしまう…!アタシたちの愛する、ルピナス様が死んでしまうの……ッ!!」


 本当に大切な存在なのだろう。
 走って来たのか髪が乱れていて、身につけているメイド服はところどころ汚れていた。

 いつもならば要請がない限り、自分たちの力で解決させるべく人族の営みに関わりすぎないようにしている俺が、この件に関しては酷く興味を惹かれた。

 今にして思えば、本能で何か察知していたのかもしれない。

 俺は使用人のリリィと話しているシスターたちの前に現れて事情を聞いた。

 すると、なんとリリィの主人である七歳の子供が結界魔法を発動し、自分たちを拒絶していると言うではないか。
 どうもお家事情があるようで王城の魔法騎士に要請は出すことができなかったようだ。

 リリィは、主人を助ける為に藁にもすがる思いで王都の教会へ訪れたとのことだった。


「俺が行こう」


 気がついた時には口から言葉がこぼれ落ちていた。
 会ってみたいと何故か、そう強く心が揺り動かされている自分がいたのだ。

 渋るシスターを上手いこと言って納得させ、リリィと共に転移魔法で向かうことにする。
 リリィに場所を聞き、リリィが双子であると言うのでリリィと似た魔力を魔法で見つけ出し転移魔法で正確な位置へ飛んだ。

 貴族家らしい豪華な部屋が魔法でだろうか、少々荒れてしまっている寝室の部屋へ辿り着いた。

 そして寝室内にあるベッドへ顔を向けて、俺は───。

 己の全ての感覚がその一人の人物へ集中するのを感じた。

 展開された結界は頑丈そうで、発動している人物を表すかのように魔力は白く清廉としていた。

 魔法が放つ光さえも愛おしくて、俺は思わず結界に触れていた。


「嗚呼、なんということだ…これは何処へ行っても見つからないはずだ」


 ───…こんなところにいたのだから。


 美しい魔法をもっと見ていたかったが、発動している主の魔力が枯渇しかけていることを察し、早々に結界を打ち破った。


「やっとみつけた───…俺の、俺だけの運命」


 きっと俺は、今まで生きてきた中で一番の笑顔を見せているのだろう。

 その愛おしい存在は、美しい紫色の髪に魔力を大幅に失っているからか表情は精気を失っているが薄く開かれている瞳は、まるで宝石のアメジストのように美しかった。


 …やっと、出会えた。


 それなのに俺の運命は、魔力枯渇の影響で今にも息絶えようとしている。

 そうはさせない。やっと、君に巡り逢えたのだから。

 もう、寂しい思いをさせたりしないから。


「駄目だよ、やっと見つけたんだから」


 頬に触れるとひんやりとしていた。

 先ほどから伝わってくる悲哀に満ちた魂の叫びが俺の心を締め付けた。

 エルフ族は生きる者の魂の質を見ることができるが、このような魂が宿す感情まで伝わってくるのは生まれて初めてだった。

 魂の縁と呼ばれるだけあり、運命であるが故の為せる業なのだろうか。


「ずっと、一人にしてごめんね。もう一人にしないから」


 撫でた頬には幾筋もの涙の痕跡があった。
 今も流れている涙を優しく拭うとベッドに腰掛ける。


「もう、一人にしない。君の側にずっといるよ」


 俺が言うと、悲哀で満ちていた感情に少しばかりの驚きが広がった。


 ────ほんとうに?


 続いて疑うような感情が伝わってきて、それは彼が今までどれだけ裏切られてきたのかを示しているようだった。


「本当だよ。片時だって、側を離れたりしない」


 ────ほんとうに、ずっとそばにいてくれる?


 安心させたくて、俺の本気度合いを伝えたくて。
 俺は軽い気持ちでは言うことのできないエルフ族にとって非常に重い、重要な誓いの言葉を口にした。


「俺は戯言たわごとは言わないよ。俺の一生をかけて証明する。エルフの盟約に誓う。ずっとずっと、そばにいるよ」


 運命である彼に魔力を分け与える為。
 その愛らしい唇に、そっと優しくキスをした。

 彼の枯渇していた身体に俺の魔力が隅々まで行き渡っていく。

 俺の魔力で全身が染め上がる様子は、酩酊するような強烈な幸福感を俺にもたらしていた。

 髪の艶と顔色は彼が本来持つ良い状態へと戻り、その美しさに思わずため息が溢れた。

 今まで頑張ってきた彼を労わりたくて声をかけながら、そっと包み込むように抱きしめ頭を撫でた。


「よしよし。今まで…よく一人で頑張ってきたね。えらい、偉い」


 俺の慈しむ感情が伝わってくれたのか、彼の心に喜びの光が灯ったかと思うと安心した様子で眠りについた。
 眠ってしまってからも嬉しくなって飽きもせず暫く横抱きにしたままで見つめていた。

 この子の魂は、今までいろんな生き物を見てきた俺でも見たことのない、特殊な状態に陥っていた。

 一つの身体に対して、を宿していたのだ。

 魂は二つとも違う人格のようだったが同じ気配をしていて、どうやら元は一つの魂だったのだろう。

 引き続き観察していると一つの魂が突如として消えかかったかと思えば、次の瞬間に二つの魂が強く共鳴をし始めた。

 彼の中で別れてしまっていた魂が、やがて混ざり合い一つになっていく。それに呼応するように彼の身体が淡く光り始めた。

 治癒の邪魔をしてはいけないと声をかけずに側で心配しながら控えていたリリィたちが驚いたように、ルピナス様!と言って慌てている。

 安心させるように手で制止し、リリィたちと共に見守っていると徐々に彼の姿が変化していった。


「嗚呼、君の本来の姿は美しいよ───ルピナス」


 ルピナスの紫色の髪が左半分、艶やかな黒髪に染まっていた。



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