悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ

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第3章:幼少期・敬愛編

第54話:【本当は分かっていましたよ】




「ルピナス」


 考え込んでいたところに、ユーフォリア様から声をかけられてハッと我に帰る。

 隣を見上げるとエメラルドの瞳が真摯に私を見つめていた。


「俺は…今日、君が第二王子の為に自ら行動して王城に乗り込んで来たことに凄く驚いたよ」

「そうだったんですか?あまり驚かれているようには見えなかったですけど」

「しかも第一王子だけじゃなくラランとリリィまで引き連れて。そんなに第二王子を救いたかったの?何だか少し妬けちゃうなぁ…」

「ふふ、ユーフォリア様ってば」


 言葉を遮るようにして少し可笑しそうに名前を呼ぶと、ユーフォリア様の表情が訝しむようなものに変わる。


「───本当は私が王城に来ること、知っていたんじゃないですか?」


 私の発した言葉にユーフォリア様の目が段々と見開かれていく。こちらを抱きしめている手も自然と強まった気がした。


「……どうして、そう思ったの?」

「いくつか理由はありますけど、まず最初の理由はユーフォリア様がヤグルマギク教会から王城に転移魔法で行かれて恐らく三、四時間は経っていました。それなのに私たちが王城に着いて間もないくらいのタイミングで玉座の間でのユーフォリア様に向けた事件や処罰などに対する報告が行われていました。こう言っては失礼ですけれど…早く王城に行かれていた割には、あまりにも遅すぎますし私たちが着いたあたりで始まるなんてタイミングが良すぎる気がしたんです」

「別にそのようなことはないよ?報告については王族たちや貴族たちの準備もあったし、なんだかんだと時間がかかって…」

「それは考えにくいですね。ユーフォリア様を怒らせてしまったと恐れているはずのブバルディア王国の方々が待たせていると分かっていながら、のんびり準備するはずがありません。王城内を案内してくれ、とでも言ってウロウロして時間を潰されていたのではないですか?」

「……っ」


 言葉に詰まったユーフォリア様を見て確信する。
 この方は、やはりワザと開始を遅らせたのだと。


「二つ目の理由は、私たちが王城へ向かっている時に誰とも遭遇しなかったことです。第一王子のタンジー様は第二王子のダリア様が罰せられると聞いてしまい、ユーフォリア様にお会いして説得するべくヤグルマギク教会へ単身で向かっていらっしゃいました。それを察知されて、陛下の命で近衛たちに探されていたんです。…ところが、第一王子殿下曰く向かう道中もヤグルマギク教会に辿り着いてからも近衛たちと鉢合わせることはありませんでした。そして、先ほど述べたように私たちが王城へ向かっている時ですら遭遇しなかったんです。───このようなこと、あり得るのでしょうか?」


 投げかけると明らかにユーフォリア様の目が泳ぎ出した。
 私はここぞとばかり、泳いでいる目を追いかけて視線を合わせにいく。


「三つ目、最後の理由。それは…玉座の間に入室する前、私はユーフォリア様から教わったスリープ魔法を騎士たちに向けて使いました。ユーフォリア様は広範囲の魔力探知がお得意のはず。そんな貴方様が私の魔力をあんな近距離で感知できない筈がありません。仮に、王城へ私たちが来ていることを知らなかったとしましょう。でも、私が魔法を使用した時点で王城に着いていると気がついたはず。本来のユーフォリア様であれば、勝手に王城に来て危ないだのなんだのと私の元へ瞬時に現れて、転移魔法で強制帰還させたと思います。ユーフォリア様の御力を考えれば、来ていることに気がつかず易々と王族方の前に私を登場させてしまうなんて…かなり無理がありますよ」


 顔を背けてしまったユーフォリア様の御顔を両手でガッシリと掴み、こちらへ向かせる。
 普段の私であれば、やらないような行動に戸惑っているらしく完全に固まっていた。


「これらを総合して、私は考えたんです。…ユーフォリア様は、第二王子殿下を本当は罰したくないんじゃないかって。勿論、今回のことに対してユーフォリア様がとてもお怒りでいらしたことは知っています。けれど、それは第二王子殿下対してのみに怒っていたわけではなく、もっと全体的な…今回の問題が起きる要因を与えてしまったブバルディア王国に対しての筈です」


 私が優しく頬を撫でると御顔からは徐々に強張りが解け、気持ちよさそうに目を細めた。


「……なのに、私を害したとして第二王子殿下が矢面に立って罰せられようとしていた。止めさせようにも怒りを示す張本人であるユーフォリア様から発言するわけにはいかない。だって、そのような特例を出してしまったら、もしかすると貴族たちや国民から王族だから特別に赦されたのではないか?と王族が怒りを買って均等が崩れてしまう恐れがあった。何か手はないかと考えていた時、ユーフォリア様の何らかの情報網で第一王子殿下が抜け出そうとしているという情報を掴んで思いついた。第一王子殿下をヤグルマギク教会へ誘導して私を王城へ呼び寄せ、敢えて第二王子殿下の処罰を阻止しようとするのを止めさせずに、それを受け入れるパフォーマンスを取ろうと。───違いますか?」

「…さすがの俺でも不可能で、」

「エルフ様に関する本で読んだことがあるんです。ただの仮説として取り上げられていましたけど…私たち人間の目には見えない妖精をエルフ様は見ることが可能で、しかも協力し合って生きているんだって。どのような方法かは分かりませんが妖精さんに、王族の方々の行動を教えてもらったり、第一王子殿下が近衛たちに見つからないよう協力を仰いだりとか御力を借りたのではないですか?私が夢を見過ぎているでしょうか?」

「えっと、妖精は空想上の生き物で…」

「あーあ、一度でいいから妖精さんに会ってみたかったな~。妖精さんについて教えてくれる、そんな素敵なエルフ様にお会いできたら…私、そのエルフ様に凄く憧れてしまうのにな~」


 ジッとユーフォリア様を見つめると、グッと何かを飲み込むような顔をして頬を赤くした。

 …どうやら、私がやってみても効果はあるみたいだ。

 このような強請るみたいなことをするのは恥ずかしかったけれど、リリィにどうしてもという時が訪れたら上目遣いでこのような表情をしたらいいですよ、と教えてもらったのが役に立った。

 ……人間。どのような知識であっても、いつどこで役に立つか、意外と分からないものである。



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