機動する世界の狭間で:A Robot Meets a Girl Across Variable Worlds

るろうに

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ep.5-1 Growing

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「それでねぇ、最後にわたしの真鶴が敵を射抜いて撃破したのよ」
「へぇ、それはすごい!杏子の救世主じゃん」
「ほんと私って救われてばかり」

 すっかりロボット同好会の活動拠点と化した校庭端の大木の下で、私たちは弁当を箸で突っついていた。季節も12月に入り、すっかり冬空が展開されている。幾度となく体を風が冷やすも、話の面白さがそれをカバーする。

「それで、どっちが撃墜数多かったの?」
「わたしの方が多かったわ」
「おっ、じゃあユズが撃墜王だ」

 あの日、富士山麓の戦いは敵機の姿がSNSに上げられたらしく、ニュースでもそこそこ話題になった。だが、人的被害がゼロだったせいか、扱いはゴシップニュース並みで、数日もすればネタから消えてしまった。

 もちろん、私たちのことは一切書かれていない。そのことが安堵感を覚えさせると共に、少し寂しさを感じさせる。

「もうちょっとぐらい私たちのことも知られてほしいなぁ」
「そう?わたしは陰のヒーローみたいでカッコいいと思うなぁ」

 不満を垂らす私に、優月が唐揚げを口に運びながら反論する。

「それに、わたしたちのことがバレたら大騒ぎよ」
「そう?」
「間違いなくニュースになるし、下手したらこの国にいられなくなるかも……」

 ――そんなわけ。反射的に否定しようとする口を頭が押さえる。

 確かに、いまのSNSのトレンド的に、もし私たちがドールユニットのパイロットとバレたら、まず氏名特定、住所特定ぐらいは余裕であり得るだろう。敵の仲間と思われたら、逮捕まで……。

「ああ、怖い怖い」

 私は頭をブンブンと横に振る。今のは忘れよう、そうしよう。

「そういえば、杏子ちゃんと葵ちゃんは期末試験はどうなの?」
「うっ……」
「うっ……」

 思いっきり意表をつかれ、私と葵の箸が完全に止まる。まさか、そんな言葉が優月から飛び出すとは。

「そ……それを聞くかぁ」
「どれくらいか気になって!」
「元気よく言うね……」

 私の語気が途端に弱々しくなる。

「年貢の納め時だよ。杏子」
「葵……」
「まあ私もそうなんだけどね、ガハハ」

 葵がふざけて笑い散らかす。余裕あるな、こいつ。

 私と葵はスマホを取り出し、写真フォルダの奥に眠っていた7月の期末試験の結果を広げた。優月が覗き込むように見る。

「ふむふむ……」
「どう……?」
「……あまり高くはないねぇ」

 単刀直入な発言が私の心に突き刺さる。葵もそうだったのか、アハハと苦笑いをしている。

「そ……それを言うなら、ユズはどうなの?」
「わたしは全科目90点以上だったわよ」
「「9……90点!?」」

 私と葵の声が見事にシンクロする。

「でも、この点数だともしかしたら補習かもねぇ」
「そ……それは困る……」

 素の反応が喉を出る。

「だって……白龍のチューニングもしないといけないし……もっと腕も磨かないといけないし……」
「私だって、ロボット同好会の活動が減るのは困る……」

 私と葵の意見が合致する。優月がなにかを思いついたらしく、手をポンと叩き合わせる。

「それなら、わたしの家で勉強とかどうかしら?」
「ユズの家で?」
「うん!わたしの家ならiARTSのスタッフさんも協力してくれるわ!」
「それめっちゃ名案!」

 葵が元気よく指を鳴らしてみせた。

「でも、ユズの家ってどこにあるの?」
「立川の近くね!」
「あーじゃあ結構距離あるなぁ」
 
 うーん、と葵がわざとらしく悩む。結論は既に決まっていた。

「まあ、大丈夫でしょ!」
「それじゃあ、決まりね!」

 優月の音頭に合わせるかのように、昼休み残り10分を告げるチャイムが鳴る。いつもと同じチャイム、けれども心の中で少し急かされた気がした。

 ――もしかしたら、白龍に乗れなくなるかも。そんな危機感と、白龍が日常の一部と化した自分への微かな驚きを胸に抱き締めながら、私は残りの弁当を食した。
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