創世のアダム ―滅びの迷ヶ平―

事業開発室長

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第5話「新世界のアダムとイブ ― イブ再誕 ―」

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次に気がついたとき、俺は作業台の前に立っていた。

右手には、いつも使っているプラスドライバー。
左手には、見たこともない金属片――恐らく古代文明の機械の一部。

作業台の上は空だった。
代わりに、目の前には巨大な装置が鎮座していた。

トラックほどの大きさ。
前面には球体の透明キャノピー。
内部は淡い光を帯びた液体で満たされ、
その奥では”何か”が脈動している。

「……これは」

言葉が続かなかった。

『それは、あなたが完成させた製造機械です。
  あなたは今、私の本体の内部にいます』

頭上のスピーカーから、いつもの無機質な声が落ちてくる。

「あなたは私の委任せいぎょを受けて無意識下で作業をしていました。
 私の器を構築するために」

俺はゆっくりと装置に近づいた。

キャノピーの向こうで、液体の中に“形”があった。
最初は塊のように見えたそれが、
次の瞬間には胎児の形を取り、
さらに目を離す間に、

子供へ、少女へ、
そして――成人女性の姿へと変わっていく。

時間の感覚が狂う。
呼吸を忘れる。

―こんな明らかなオーバーテクノロジーを、俺が作ったって?

『私は自分の器を作る技術を持ってはいます。
 しかし、製造機械を作ることはできませんでした。
 だから、適合者であるあなたを呼びました』

淡々とした説明が続く。

『あなたは怠惰に過ごすことも厭わず、
 無意識下の制御にも耐性がありました。
 文明を滅ぼさないための資質も持っています。
 技術的にも、生体的にも、そして精神的にも
 あなたは“アダム”として適合しています』

その言葉が終わると同時に、
装置の内部で小さな音がした。

液体が静かに引いていく。

――カチッ

キャノピーのロックが外れる音がして開き、
中から女性の身体がゆっくりと姿を現す。

濡れた髪が肩に落ちる。
白い足が床に触れる。

彼女は、まるで重力や感触を確かめるように、
ゆっくりと一歩を踏み出した。

俺は動けなかった。

彼女が、こちらに手を伸ばす。

その指先が触れた瞬間――
温度があった。

金属でも、人工物でもない。
確かに“生きている”ものの温度。

その温度が、
世界の終わりと始まりの境界線を示していた。

俺はただ、その手を受け取った。

スピーカーは沈黙していた。
代わりに、目の前の彼女が静かに口を開く。

「……私はイブ」

透明、だけどどこか人の声とは違った静かな声。

「あなたがアダム」

そして、ゆっくりと微笑んだ。

「ここから――新しい人類を作りはじめましょう」

――第1章 完。
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