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6層攻略
2025年4月、半ば。
大学の午後の講義が終わり、春の柔らかな日差しがキャンパス全体を包み込んでいた。
構内を行き交う学生たちは、レポートやサークル、新歓の話題に花を咲かせ、どこにでもある平穏な日常を過ごしている。
三上ひよりは、その喧騒から少し離れた学生食堂の片隅で、一人腰を下ろしていた。
テーブルの上に広げた手帳には、細かな文字と線で描かれた「人員配置図」と、びっしりとしたMP消費の計算式が並んでいる。
(……MPは、もう105まで伸びた)
鉛筆を止め、ひよりは静かに息をつく。
(これなら一度の【招集】で『チンピラ』を2人、それに『Lv.1チンピラ』を1人、同時に呼べる。全員を昇格させたとしても、毎週確実に戦力は底上げされる……)
彼の視線が、ふと足元へ落ちた。
アスファルトに伸びるひよりの影は、周囲の学生たちのものよりも不自然なほど濃く、そして――時折、生き物のように脈動していた。
その影の奥深くには、彼の呼び出しを待つ8名の精鋭「チンピラ」たちが、音もなく跪いている。
彼らは影の中で休息し、ボスであるひよりの指示をいつでも実行できるように待機している。
ひよりのスキル『召集』という、この「影の兵舎」の様なシステムにより、ひより組は24時間365日、常に万全の状態で戦場へ投入可能となっていた。
「三上くん、また難しい顔してるね。テスト勉強?」
唐突に声をかけられ、ひよりははっと顔を上げた。
「あ、……ううん。なんでもないよ」
曖昧に笑って誤魔化した直後、スマホが小さく震えた。
画面に表示されたのは、母・華世からのLINEだった。
『また凛さんから頂いた香水、本当にすごくいい匂いね! 部屋中にシュッシュしちゃった!』
そんなメッセージと共に送られてきた写真には、高級回復ポーション――数十万円は下らない代物の瓶が写っている。
(……母さん、またポーションを香水代わりにしてる。……まあ、元気ならいいか)
ひよりは苦笑いを浮かべた。
一度、凛に直接会ったときに「もう見守らなくて大丈夫です。今までありがとうございました」と伝えたことがある。
その時、彼女は「気づいてたんですか?」と少し恥ずかしそうに笑っていた。
それもまた、彼女らしい優しさだと思った。
母が凛に感謝していること、よければ今度家に来てほしいと伝えたこと。
それ以来、凛は度々三上家を訪れ、今では母と連絡を取り合うほど親しくなっている。
スマホを閉じ、ひよりは立ち上がった。
天然な母の無邪気さに、胸の奥がじんわりと温まる。
だが同時に、彼の意識はすでに――世田谷ダンジョン、その深い闇へと向かっていた。
……
地上階。ダンジョンゲート付近。
ひよりが影を解放した瞬間、周囲の空気が一変した。
「「「「「「「「「「「お疲れ様です、ボス!!!!」」」」」」」」」」」
腹の底から叩きつけられるような低い声が、通路に反響する。
今週の【招集】で新たに加わった3名を含め、総勢11名。
派手なジャケットを羽織り、殺気を隠そうともしない屈強な男たちが、狭い空間を埋め尽くしていた。
その中心に立つのは、漆黒の防刃スーツを完璧に着こなした美少年――三上ひよりだ。
「うん。今日もよろしくね」
その一言で、男たちの背筋が一斉に伸びる。
「新しい仲間が3人いる。しっかり連携して、安全第一で進もう」
「はい、ボス!」
ひよりは即座に最適な布陣を弾き出す。
前衛には耐久力の高いチンピラたちが盾となって並び、素早く敵を削る役としてフウが走る。
その後ろには、最高の盾であり矛でもあるライが棍棒を担いで控え、ひよりはさらに後方から全体を見渡し、指揮を執る。
「……よし、行こう」
………
夕刻。世田谷ダンジョン6層。
ひよりはすでに5層までの攻略を終えており、レベリングを一旦止めて地上階から一気に5層へ移動していた。
そのため、この6層へもさほど時間をかけずに辿り着いている。
理由は『転移石』。
5層おきに設置された青白く輝く巨大な石で、探索者免許をかざして登録すれば、瞬時に対応する階層へと転移できるダンジョン内の生命線だ。
攻略が進めば進むほど、ひより組の効率はさらに加速していく。
「ここからは未知の階層だ。みんな、気をつけてね」
6層は『トロール』や『スカルアーチャー』が徘徊する危険地帯だ。
並の探索者であれば、一瞬の油断が命取りになる。
チンピラたちは慎重に索敵とルート確認を行いながら進む。
本来なら危険上等で突っ込む彼らも、ひよりの掲げる「安全第一」を徹底していた。
やがて、巨大なトロールが姿を現す。
だが、ひよりが「威圧 Lv.8」を放った瞬間、その動きは完全に止まった。
「……やるよ」
合図と同時に、11人が一斉に動く。
「ボスの道を塞ぐんじゃねえぞ!」
「跪け、デカブツ!」
罵声と威圧が重なり合い、トロールの精神を叩き折る。
そこへフウの連撃が叩き込まれ、戦いは終わった。
ひよりは歩み寄り、淡々と告げる。
「――【かつあげ】」
魔素、素材、そして戦意までもが奪われ、『トロールの心臓』が転がり落ちた。
「……さすがです、ボス!」
照れ笑いを浮かべながら、ひよりはドロップ品を回収した。
………
同じ頃、赤城凛はパーティのメンバーと共に、深層を目指す為にレベリングを兼ねてこの階層にいた。
最新装備とレベル50台を揃えた彼女たちですら、慎重にならざるを得ない階層。
「凛、あそこを見ろ」
仲間の指差す先には、トロールを完封しているひより組の姿があった。
その光景を目にした凛は、思わず息を呑む。
「……何もかも、ひよりさんの前では無になるのね。……素敵」
「煽り虫きゅん」――彼女がそう呼んでいた青年は、今や彼女たちの想像を絶するスピードで、ダンジョンの常識を塗り替え始めていた。
……
6層のフロアボス『スケルトン・ジェネラル』も、11人の包囲網とひよりの速度の前では、ただの骨の山と化した。
戦闘後、ひよりは魔法瓶のお茶を配りながら、一人ひとりの無事を確かめる。
「みんな、お疲れ様。怪我は…ないね。よかった」
「ボス……ネクタイが少し曲がってます!」
部下の一人が、震える手でひよりのネクタイを整える。
ひよりは微笑み、7層へと続く、さらに深く暗い階段を見つめた。
レベル28。 構成員という特殊な職業と、毎週増え続ける忠実なファミリー。
世田谷のトップ層がLv.50台で足踏みしている今、ひよりには確信があった。
この「組織(システム)」なら、もっと深くへ、誰も見たことのない深淵まで届くはずだ。
「……安全にいかないとダメだよね」
探索者なら、深くもっと先へと進みたい。
だが、ひよりは愛する家族の命を優先したのだった。
ひよりは、愛刀『鬼灯』を鞘に納め、カチリと音を立てた。
その瞳には、もはや気弱な大学生の面影はなく、軍団を率いる若き「ボス」の光が宿っている。
「――よし、もう一周しようか」
ボスの静かな号令が響く。
11人の男たちと2体の怪物は、そんなボスの背中を見つめ、歩を進めるのであった。
大学の午後の講義が終わり、春の柔らかな日差しがキャンパス全体を包み込んでいた。
構内を行き交う学生たちは、レポートやサークル、新歓の話題に花を咲かせ、どこにでもある平穏な日常を過ごしている。
三上ひよりは、その喧騒から少し離れた学生食堂の片隅で、一人腰を下ろしていた。
テーブルの上に広げた手帳には、細かな文字と線で描かれた「人員配置図」と、びっしりとしたMP消費の計算式が並んでいる。
(……MPは、もう105まで伸びた)
鉛筆を止め、ひよりは静かに息をつく。
(これなら一度の【招集】で『チンピラ』を2人、それに『Lv.1チンピラ』を1人、同時に呼べる。全員を昇格させたとしても、毎週確実に戦力は底上げされる……)
彼の視線が、ふと足元へ落ちた。
アスファルトに伸びるひよりの影は、周囲の学生たちのものよりも不自然なほど濃く、そして――時折、生き物のように脈動していた。
その影の奥深くには、彼の呼び出しを待つ8名の精鋭「チンピラ」たちが、音もなく跪いている。
彼らは影の中で休息し、ボスであるひよりの指示をいつでも実行できるように待機している。
ひよりのスキル『召集』という、この「影の兵舎」の様なシステムにより、ひより組は24時間365日、常に万全の状態で戦場へ投入可能となっていた。
「三上くん、また難しい顔してるね。テスト勉強?」
唐突に声をかけられ、ひよりははっと顔を上げた。
「あ、……ううん。なんでもないよ」
曖昧に笑って誤魔化した直後、スマホが小さく震えた。
画面に表示されたのは、母・華世からのLINEだった。
『また凛さんから頂いた香水、本当にすごくいい匂いね! 部屋中にシュッシュしちゃった!』
そんなメッセージと共に送られてきた写真には、高級回復ポーション――数十万円は下らない代物の瓶が写っている。
(……母さん、またポーションを香水代わりにしてる。……まあ、元気ならいいか)
ひよりは苦笑いを浮かべた。
一度、凛に直接会ったときに「もう見守らなくて大丈夫です。今までありがとうございました」と伝えたことがある。
その時、彼女は「気づいてたんですか?」と少し恥ずかしそうに笑っていた。
それもまた、彼女らしい優しさだと思った。
母が凛に感謝していること、よければ今度家に来てほしいと伝えたこと。
それ以来、凛は度々三上家を訪れ、今では母と連絡を取り合うほど親しくなっている。
スマホを閉じ、ひよりは立ち上がった。
天然な母の無邪気さに、胸の奥がじんわりと温まる。
だが同時に、彼の意識はすでに――世田谷ダンジョン、その深い闇へと向かっていた。
……
地上階。ダンジョンゲート付近。
ひよりが影を解放した瞬間、周囲の空気が一変した。
「「「「「「「「「「「お疲れ様です、ボス!!!!」」」」」」」」」」」
腹の底から叩きつけられるような低い声が、通路に反響する。
今週の【招集】で新たに加わった3名を含め、総勢11名。
派手なジャケットを羽織り、殺気を隠そうともしない屈強な男たちが、狭い空間を埋め尽くしていた。
その中心に立つのは、漆黒の防刃スーツを完璧に着こなした美少年――三上ひよりだ。
「うん。今日もよろしくね」
その一言で、男たちの背筋が一斉に伸びる。
「新しい仲間が3人いる。しっかり連携して、安全第一で進もう」
「はい、ボス!」
ひよりは即座に最適な布陣を弾き出す。
前衛には耐久力の高いチンピラたちが盾となって並び、素早く敵を削る役としてフウが走る。
その後ろには、最高の盾であり矛でもあるライが棍棒を担いで控え、ひよりはさらに後方から全体を見渡し、指揮を執る。
「……よし、行こう」
………
夕刻。世田谷ダンジョン6層。
ひよりはすでに5層までの攻略を終えており、レベリングを一旦止めて地上階から一気に5層へ移動していた。
そのため、この6層へもさほど時間をかけずに辿り着いている。
理由は『転移石』。
5層おきに設置された青白く輝く巨大な石で、探索者免許をかざして登録すれば、瞬時に対応する階層へと転移できるダンジョン内の生命線だ。
攻略が進めば進むほど、ひより組の効率はさらに加速していく。
「ここからは未知の階層だ。みんな、気をつけてね」
6層は『トロール』や『スカルアーチャー』が徘徊する危険地帯だ。
並の探索者であれば、一瞬の油断が命取りになる。
チンピラたちは慎重に索敵とルート確認を行いながら進む。
本来なら危険上等で突っ込む彼らも、ひよりの掲げる「安全第一」を徹底していた。
やがて、巨大なトロールが姿を現す。
だが、ひよりが「威圧 Lv.8」を放った瞬間、その動きは完全に止まった。
「……やるよ」
合図と同時に、11人が一斉に動く。
「ボスの道を塞ぐんじゃねえぞ!」
「跪け、デカブツ!」
罵声と威圧が重なり合い、トロールの精神を叩き折る。
そこへフウの連撃が叩き込まれ、戦いは終わった。
ひよりは歩み寄り、淡々と告げる。
「――【かつあげ】」
魔素、素材、そして戦意までもが奪われ、『トロールの心臓』が転がり落ちた。
「……さすがです、ボス!」
照れ笑いを浮かべながら、ひよりはドロップ品を回収した。
………
同じ頃、赤城凛はパーティのメンバーと共に、深層を目指す為にレベリングを兼ねてこの階層にいた。
最新装備とレベル50台を揃えた彼女たちですら、慎重にならざるを得ない階層。
「凛、あそこを見ろ」
仲間の指差す先には、トロールを完封しているひより組の姿があった。
その光景を目にした凛は、思わず息を呑む。
「……何もかも、ひよりさんの前では無になるのね。……素敵」
「煽り虫きゅん」――彼女がそう呼んでいた青年は、今や彼女たちの想像を絶するスピードで、ダンジョンの常識を塗り替え始めていた。
……
6層のフロアボス『スケルトン・ジェネラル』も、11人の包囲網とひよりの速度の前では、ただの骨の山と化した。
戦闘後、ひよりは魔法瓶のお茶を配りながら、一人ひとりの無事を確かめる。
「みんな、お疲れ様。怪我は…ないね。よかった」
「ボス……ネクタイが少し曲がってます!」
部下の一人が、震える手でひよりのネクタイを整える。
ひよりは微笑み、7層へと続く、さらに深く暗い階段を見つめた。
レベル28。 構成員という特殊な職業と、毎週増え続ける忠実なファミリー。
世田谷のトップ層がLv.50台で足踏みしている今、ひよりには確信があった。
この「組織(システム)」なら、もっと深くへ、誰も見たことのない深淵まで届くはずだ。
「……安全にいかないとダメだよね」
探索者なら、深くもっと先へと進みたい。
だが、ひよりは愛する家族の命を優先したのだった。
ひよりは、愛刀『鬼灯』を鞘に納め、カチリと音を立てた。
その瞳には、もはや気弱な大学生の面影はなく、軍団を率いる若き「ボス」の光が宿っている。
「――よし、もう一周しようか」
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