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第二章 ベスガ連続誘拐事件 編
潜入
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出発の日の朝。
俺とセナさんは行商の格好をしている。ちょっと汚れているのは新品だと怪しまれるので中古をわざわざ用意してらしい。
体に馴染むように用意されてから今までずーーっとこの格好で過ごした。
ちなみに俺が武器売り兼修理工、セナさんがポーション売りに。
どちらも俺が商品の補充がしやすいため、当初の予定と若干の違いがある。
「それでは参りましょう」
「はぁい…」
目立たないように行きは歩きだって
飛行板に乗ってけば楽なのに…
メルタ、ティールズが街の外で待機して、なんかあったら2人が飛行板で駆けつけてくれる手筈だからどうあがいても俺たちには使えない。
北門を出て数時間。
「セナさん、そろそろ休みません?」
「そうですね…ここら辺で薬草を採っておきましょう」
「薬草採取なら楽ですけど結局動くんですね…」
門に着くまで休み休み歩き続けて昼時、ようやくベスガの門にたどり着いた。
「止まってください。身分証の提示をお願いします。」
「はい」
「えーっと?リースの行商の方ですか、なぜベスガに?」
匠が屋台を開業する際に、商人ギルドに登録しておいたギルド証があるのだが、この日のために、職人の登録だけの物を用意した
完全に偽造ではなく実名だからなんかあったら名が知られてしまうかもしれないが、違法行為をしてまで潜入するわけにもいかないため致し方ない。
「この間、リースの周りで魔獣の大量発生が起きたんですが、その際に腕利きの薬師がポーションを大量に作ったのが余ってしまってるらしくて実りが良くないもので。
近くで冒険者の需要を探してるんです。」
セナさんは嘘は言ってない。
俺以上にポーションを大量生産できるヤツはそう多くないはずだし、スタンピードの後、たしかに多少は残ったらしい。
ただもうとっくに在庫は売れているし、ポーションの需要はちょっと少ないかな程度で困るほどでもない。
「あなたは?」
「鍛冶屋の見習いみたいなものです
売ってる物は違いますが、何かと便利なんで商人仲間として一緒に動いてます。」
「なるほど、ありがとうございました。通って大丈夫です」
門のチェックをスルーした俺達は適当な宿に部屋をとって今後の動きをざっと確認することに。
「街の中に入ることは成功しましたけど、いろいろ違和感ありません?」
「明らかに住民が何かに怯えて街に活気が欠けています。
それに宿の受付がこっそり言っていた「女性はあまり夜間出歩かない方がいいですよ」っていうのも気になります。」
何かがある。違和感が一歩確信に近よった。
俺達は適当な木陰にゴザを並べ、各々の露店を開く。
「いらっしゃい、いらっしゃい!!ポーションはいかが!?
このポーションはすごいよ!下級のポーションの癖に中級と変わりません!隣街リースの街で起こった魔獣の大量発生の時に冒険者の命を救ったポーションと全く同じ物だよ!!
さあ買った買った!!」
セナさんすご~
俺はあんなに元気な声出ないよ。
匠(In鞄)に頼んで風魔法で声を変えて代わりに話してもらうこともできるんだが、そもそもの発音の違いがある。
それに俺は武器屋兼修理屋。声を張り上げるより旗をドンッと立てる方が手っ取り早い。
「おっ武器屋か、ちょっと見てもいいかい?」
「はい、どうぞお手に取ってご覧下さい。」
開店30分後、ベテランの冒険者らしき人が来た。
早速、ショートソードと盾を見だす。
「なかなかいい剣だな。この剣いくらだい?」
「大銀貨で8枚となります。」
「質の割には安くないかい?」
「修行の身でして。一人前の料金をいただく事はできないんです。」
「そんなもんか、小金貨からでいいかい?」
「大丈夫ですよ。大銀貨2枚のお返しになります。」
ねっ!上手くいくでしょ?
おっ次のお客さん来た
「なぁ、あんちゃん、斧ってないか?」
「ございますよ。少々お待ちください。」
俺は商人用のアイテム袋から斧をいくつか取り出して並べる。
「こちらが薪割りや木を切り倒す用で、手斧の方が冒険者の方向けの戦闘用ですね。」
「だとしたらこっちの薪割り用だな。実は買って2年か3年くらいぐらい経つんだがよ、どうも俺が下手なのかここんとこ切れにくくなっちまっててちょうどよかったぜ。」
「2、3年ですか、ダメになるとするとちょっと早いですね。その斧って見せていただけないでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待っててくれ」
男性は斧を取りに帰ってった。
数分後
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、待たせてすまねぇな。コイツがうちで使ってる斧だ。」
「拝見します。」
巻いてある布を取り去って俺のもう一つの顔になる。
刃こぼれも歪みも多い。力任せに割ってる
証拠だろう。
はーい戻っておいで~商人の顔~
「これくらいなら大銀貨2枚で修復は可能ですが、いかがなさいますか?」
「やってくれ。」
叩き加減や研ぐのはチートのおかげで簡単ではある。
難しいのは気を抜くとちょっとした業物の刃物になってしまう事。
俺はチート加減を必死に調整しながら、叩き、研ぎ、磨いていく。
「できました。お確かめ下さい」
「…スゲェ…
さすがだな。新品みてぇだ」
「薪割りでしたら腰を落とした方が楽に割れますよ。」
「ありがとよ、早速やってみるぜ」
一日やって俺の腕前が伝わったのか斧や武器の手入れに来る人が多く来た。
ちょっと新品同様にしすぎると明日以降の売上が不安要素ではあるが、あくまでも仮の姿。
腕利きの修理屋として溶け込めたら充分だ
夜、宿にて。
「お互い、なかなか売れてるみたいですね。俺の場合、売るより修理の方が多い感じですが」
「鞄の中から聞いとったけど亮、なかなかノリノリやったね」
「途中から楽しくなってきてさ…」
「当面のうちは問題無さそうですね。[こっち]の方はですけど」
「…。やっぱり何かあるって感じですか」
「今日のお客にはほぼ全員、恐怖や焦りといった感情は感じませんでした。これはあくまで予想に過ぎませんが、今日のお客はほとんどが独り身なのではないかと。」
「予想…ですか。ん~…さすがに1日じゃ何も掴めませんよね」
「予定通り明日から夜、街を調べてみます。リョー様は」
「商品の補充をメインに。匠が上空からの調査ですね」
「鳥のマネなら任せとき!」
「マネばっかりしてないでまわりの調査もしてくれよ」
「分かっとるて」
翌日も同じように商売を続ける。
「すまない、包丁の手入れをしてもらいたいんだが、」
次の客は…料理人か?
なんとか冷静さを装ってるつもりだろうが素人の俺でもわかる。表情から何かに対する恐れと焦りを感じる
「拝見しても?」
「あ、あぁ」
包丁にわずかな歪みや刃こぼれは見られるが、この程度は気になる程でもない。
料理人なら自分で手入れをするはずだし、素人ならそもそもよく見てようやく気付くかどうかのレベル。
「大事に使われてるんですね、ご自身で料理なさるんですか?」
「うっ…えーっと…まぁ」
はい、ダウト!
絶対料理ではない何かだ。この人から怪しさは感じないが、鍛冶屋見習い(仮)としての勘で包丁を調理器具として見てないのだけはわかる。
「よしっ。できました。大銀貨2枚になります」
「ほらよ」
代金を支払うと男性は逃げるようにその場を立ち去った。
調べる必要がありそうだ
俺はトイレに行くフリでその場を立つ。
「匠、」
「分かっとるよ。あのお客を追っかければええんやろ?」
「家の場所が分かればいい。目印にタマちゃん仕込んでおいて」
「了解や」
夜。匠は空から、セナさんは陸路で調査をする。俺は商品の補充をするので待機だ。
「セナさん、これを。」
「これは?」
「通信機と盗聴器です。これでお互い連絡をとったりできますし、長居しなくても一定の距離内なら離れていても音を拾う事ができます。
盗聴器の調整が間に合わなくて渡すのが遅れました。」
俺が渡したのは通信機の本体、片耳のイヤホンマイク、盗聴器4つ。腰につけた本体を操作して通信機の番号(全員指定も可)、聞きたい盗聴器の番号に切り替えられる。
「なるほど、えーっと…もしかしてここで連絡と盗聴器の音を切り替えられるのですか?」
「正解です。あとはこことここで…」
簡単な操作方法にしたからか、セナさんの理解力がすごいのか、すぐにメルタ、ティールズとお試し連絡に成功。
「それでは行ってきます」
「行ってくるで」
「お気をつけて」
宿の窓から音を立てる事なく、2つの影が飛び出した。
sideセナ
宿を出た自分はタクミ様と別れて陸からの調査です。
自分は闇魔法と無属性魔法を使い分け、影から影へ移ることで高速移動を可能にします。
念のため【シャドウハイド】と【シャドウムーブ】、つまりは陰潜りと影移りで動いてますが、外を出歩く人はほぼいません。
リョー様からは通信機、盗聴器、タマちゃん様をお2つ、沢山の忍術道具、空間魔法を用いた腰巾着をお預かりしております。
どれも素晴らしいものばかりです。1人で動く場合も複数で動く場合もとても動きやすくサポートしてくださります。
忍術道具は余ったら頂けるとのこと。旦那様に相談して、隠密活動に導入すべきです。
ここですか。リョー様から伺ったお客の家は。
「キュゥ」
目印のタマちゃん様が出て参りました。
「ご苦労様です、ここからは自分が。【シャドウハイド】」
木製の窓の隙間でも陰さえあれば侵入できますので、中の住人には見つからずに音の拾いやすい場所、居間の窓枠の上部分に取り付けました。
「【セナよりリョー様、タクミ様へ盗聴器の設置完了いたしました。
これよりタマちゃん様を回収して一度戻ります。】」
「【了解です。匠、そっちの動きはどう?】」
「【特に出歩いとるモンもおらんね。もう一周して何もなかったらワイも戻るわ。】」
「【了解】」「【承知いたしました】」
宿。
「やっぱ動きがなかったわ。みんな外に出んようにしとるんかもね。」
「もう一つ、可能性としてあげられるのは外出中ではなく、家そのものを襲うという方法もあります。」
「どっちか断定するにはまだ情報が足りません。とりあえずさっきの盗聴器を聴いてみましょう。」
自分達は各々のイヤホンに耳をすまします。
ザーザザッ
「【あなた、いい加減寝たらどうですか?】」
「【うるさい!この間だって八百屋の娘が居なくなったんだ、次はウチかもしれないだろ。
人攫いめ…来るなら来いだ!刺し違えてでもウチの嫁と娘は守ってやらぁ!】」
「【…でも…】」
「【どうせこの街のクソ領主は何もしないんだ。個人で動かずしてどうやって家族を守れっていうんだよ】」
「「「!!!」」」
衝撃でした。何の罪のない住人が人を殺めてでも家族を守らなければならない。
そういえばこういった事件が起きていながら、衛兵の一人として見回りをしていません。
リースなら夜勤の衛兵が2人か3人で毎日夜間見回っているのに。
「これは…黒幕の匂いプンプンやね」
「話を聞く限りベスガの領主は人攫いに対して対策を講じていませんね。」
「領主が事件の黒幕説、強めじゃありません?」
「自分はその仮説が今のところ1番濃厚だと思います。
この間という言葉とあの恐れようからして早くて一昨日、遅くても1週間と言ったところでしょうか」
「そう思うわ。
事件が一昨日やとしてワイらが来たの昨日やからそれより前いうことやろ?ほいなら、3日か4日くらいで動くんちゃう?」
「ヒト族が飲まず食わずで2日か3日で限界だから、単純計算でも明日か明後日にはきそうだね」
油断はできない。
自分は休まらない眠りにうなされることとなりました。
俺とセナさんは行商の格好をしている。ちょっと汚れているのは新品だと怪しまれるので中古をわざわざ用意してらしい。
体に馴染むように用意されてから今までずーーっとこの格好で過ごした。
ちなみに俺が武器売り兼修理工、セナさんがポーション売りに。
どちらも俺が商品の補充がしやすいため、当初の予定と若干の違いがある。
「それでは参りましょう」
「はぁい…」
目立たないように行きは歩きだって
飛行板に乗ってけば楽なのに…
メルタ、ティールズが街の外で待機して、なんかあったら2人が飛行板で駆けつけてくれる手筈だからどうあがいても俺たちには使えない。
北門を出て数時間。
「セナさん、そろそろ休みません?」
「そうですね…ここら辺で薬草を採っておきましょう」
「薬草採取なら楽ですけど結局動くんですね…」
門に着くまで休み休み歩き続けて昼時、ようやくベスガの門にたどり着いた。
「止まってください。身分証の提示をお願いします。」
「はい」
「えーっと?リースの行商の方ですか、なぜベスガに?」
匠が屋台を開業する際に、商人ギルドに登録しておいたギルド証があるのだが、この日のために、職人の登録だけの物を用意した
完全に偽造ではなく実名だからなんかあったら名が知られてしまうかもしれないが、違法行為をしてまで潜入するわけにもいかないため致し方ない。
「この間、リースの周りで魔獣の大量発生が起きたんですが、その際に腕利きの薬師がポーションを大量に作ったのが余ってしまってるらしくて実りが良くないもので。
近くで冒険者の需要を探してるんです。」
セナさんは嘘は言ってない。
俺以上にポーションを大量生産できるヤツはそう多くないはずだし、スタンピードの後、たしかに多少は残ったらしい。
ただもうとっくに在庫は売れているし、ポーションの需要はちょっと少ないかな程度で困るほどでもない。
「あなたは?」
「鍛冶屋の見習いみたいなものです
売ってる物は違いますが、何かと便利なんで商人仲間として一緒に動いてます。」
「なるほど、ありがとうございました。通って大丈夫です」
門のチェックをスルーした俺達は適当な宿に部屋をとって今後の動きをざっと確認することに。
「街の中に入ることは成功しましたけど、いろいろ違和感ありません?」
「明らかに住民が何かに怯えて街に活気が欠けています。
それに宿の受付がこっそり言っていた「女性はあまり夜間出歩かない方がいいですよ」っていうのも気になります。」
何かがある。違和感が一歩確信に近よった。
俺達は適当な木陰にゴザを並べ、各々の露店を開く。
「いらっしゃい、いらっしゃい!!ポーションはいかが!?
このポーションはすごいよ!下級のポーションの癖に中級と変わりません!隣街リースの街で起こった魔獣の大量発生の時に冒険者の命を救ったポーションと全く同じ物だよ!!
さあ買った買った!!」
セナさんすご~
俺はあんなに元気な声出ないよ。
匠(In鞄)に頼んで風魔法で声を変えて代わりに話してもらうこともできるんだが、そもそもの発音の違いがある。
それに俺は武器屋兼修理屋。声を張り上げるより旗をドンッと立てる方が手っ取り早い。
「おっ武器屋か、ちょっと見てもいいかい?」
「はい、どうぞお手に取ってご覧下さい。」
開店30分後、ベテランの冒険者らしき人が来た。
早速、ショートソードと盾を見だす。
「なかなかいい剣だな。この剣いくらだい?」
「大銀貨で8枚となります。」
「質の割には安くないかい?」
「修行の身でして。一人前の料金をいただく事はできないんです。」
「そんなもんか、小金貨からでいいかい?」
「大丈夫ですよ。大銀貨2枚のお返しになります。」
ねっ!上手くいくでしょ?
おっ次のお客さん来た
「なぁ、あんちゃん、斧ってないか?」
「ございますよ。少々お待ちください。」
俺は商人用のアイテム袋から斧をいくつか取り出して並べる。
「こちらが薪割りや木を切り倒す用で、手斧の方が冒険者の方向けの戦闘用ですね。」
「だとしたらこっちの薪割り用だな。実は買って2年か3年くらいぐらい経つんだがよ、どうも俺が下手なのかここんとこ切れにくくなっちまっててちょうどよかったぜ。」
「2、3年ですか、ダメになるとするとちょっと早いですね。その斧って見せていただけないでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待っててくれ」
男性は斧を取りに帰ってった。
数分後
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、待たせてすまねぇな。コイツがうちで使ってる斧だ。」
「拝見します。」
巻いてある布を取り去って俺のもう一つの顔になる。
刃こぼれも歪みも多い。力任せに割ってる
証拠だろう。
はーい戻っておいで~商人の顔~
「これくらいなら大銀貨2枚で修復は可能ですが、いかがなさいますか?」
「やってくれ。」
叩き加減や研ぐのはチートのおかげで簡単ではある。
難しいのは気を抜くとちょっとした業物の刃物になってしまう事。
俺はチート加減を必死に調整しながら、叩き、研ぎ、磨いていく。
「できました。お確かめ下さい」
「…スゲェ…
さすがだな。新品みてぇだ」
「薪割りでしたら腰を落とした方が楽に割れますよ。」
「ありがとよ、早速やってみるぜ」
一日やって俺の腕前が伝わったのか斧や武器の手入れに来る人が多く来た。
ちょっと新品同様にしすぎると明日以降の売上が不安要素ではあるが、あくまでも仮の姿。
腕利きの修理屋として溶け込めたら充分だ
夜、宿にて。
「お互い、なかなか売れてるみたいですね。俺の場合、売るより修理の方が多い感じですが」
「鞄の中から聞いとったけど亮、なかなかノリノリやったね」
「途中から楽しくなってきてさ…」
「当面のうちは問題無さそうですね。[こっち]の方はですけど」
「…。やっぱり何かあるって感じですか」
「今日のお客にはほぼ全員、恐怖や焦りといった感情は感じませんでした。これはあくまで予想に過ぎませんが、今日のお客はほとんどが独り身なのではないかと。」
「予想…ですか。ん~…さすがに1日じゃ何も掴めませんよね」
「予定通り明日から夜、街を調べてみます。リョー様は」
「商品の補充をメインに。匠が上空からの調査ですね」
「鳥のマネなら任せとき!」
「マネばっかりしてないでまわりの調査もしてくれよ」
「分かっとるて」
翌日も同じように商売を続ける。
「すまない、包丁の手入れをしてもらいたいんだが、」
次の客は…料理人か?
なんとか冷静さを装ってるつもりだろうが素人の俺でもわかる。表情から何かに対する恐れと焦りを感じる
「拝見しても?」
「あ、あぁ」
包丁にわずかな歪みや刃こぼれは見られるが、この程度は気になる程でもない。
料理人なら自分で手入れをするはずだし、素人ならそもそもよく見てようやく気付くかどうかのレベル。
「大事に使われてるんですね、ご自身で料理なさるんですか?」
「うっ…えーっと…まぁ」
はい、ダウト!
絶対料理ではない何かだ。この人から怪しさは感じないが、鍛冶屋見習い(仮)としての勘で包丁を調理器具として見てないのだけはわかる。
「よしっ。できました。大銀貨2枚になります」
「ほらよ」
代金を支払うと男性は逃げるようにその場を立ち去った。
調べる必要がありそうだ
俺はトイレに行くフリでその場を立つ。
「匠、」
「分かっとるよ。あのお客を追っかければええんやろ?」
「家の場所が分かればいい。目印にタマちゃん仕込んでおいて」
「了解や」
夜。匠は空から、セナさんは陸路で調査をする。俺は商品の補充をするので待機だ。
「セナさん、これを。」
「これは?」
「通信機と盗聴器です。これでお互い連絡をとったりできますし、長居しなくても一定の距離内なら離れていても音を拾う事ができます。
盗聴器の調整が間に合わなくて渡すのが遅れました。」
俺が渡したのは通信機の本体、片耳のイヤホンマイク、盗聴器4つ。腰につけた本体を操作して通信機の番号(全員指定も可)、聞きたい盗聴器の番号に切り替えられる。
「なるほど、えーっと…もしかしてここで連絡と盗聴器の音を切り替えられるのですか?」
「正解です。あとはこことここで…」
簡単な操作方法にしたからか、セナさんの理解力がすごいのか、すぐにメルタ、ティールズとお試し連絡に成功。
「それでは行ってきます」
「行ってくるで」
「お気をつけて」
宿の窓から音を立てる事なく、2つの影が飛び出した。
sideセナ
宿を出た自分はタクミ様と別れて陸からの調査です。
自分は闇魔法と無属性魔法を使い分け、影から影へ移ることで高速移動を可能にします。
念のため【シャドウハイド】と【シャドウムーブ】、つまりは陰潜りと影移りで動いてますが、外を出歩く人はほぼいません。
リョー様からは通信機、盗聴器、タマちゃん様をお2つ、沢山の忍術道具、空間魔法を用いた腰巾着をお預かりしております。
どれも素晴らしいものばかりです。1人で動く場合も複数で動く場合もとても動きやすくサポートしてくださります。
忍術道具は余ったら頂けるとのこと。旦那様に相談して、隠密活動に導入すべきです。
ここですか。リョー様から伺ったお客の家は。
「キュゥ」
目印のタマちゃん様が出て参りました。
「ご苦労様です、ここからは自分が。【シャドウハイド】」
木製の窓の隙間でも陰さえあれば侵入できますので、中の住人には見つからずに音の拾いやすい場所、居間の窓枠の上部分に取り付けました。
「【セナよりリョー様、タクミ様へ盗聴器の設置完了いたしました。
これよりタマちゃん様を回収して一度戻ります。】」
「【了解です。匠、そっちの動きはどう?】」
「【特に出歩いとるモンもおらんね。もう一周して何もなかったらワイも戻るわ。】」
「【了解】」「【承知いたしました】」
宿。
「やっぱ動きがなかったわ。みんな外に出んようにしとるんかもね。」
「もう一つ、可能性としてあげられるのは外出中ではなく、家そのものを襲うという方法もあります。」
「どっちか断定するにはまだ情報が足りません。とりあえずさっきの盗聴器を聴いてみましょう。」
自分達は各々のイヤホンに耳をすまします。
ザーザザッ
「【あなた、いい加減寝たらどうですか?】」
「【うるさい!この間だって八百屋の娘が居なくなったんだ、次はウチかもしれないだろ。
人攫いめ…来るなら来いだ!刺し違えてでもウチの嫁と娘は守ってやらぁ!】」
「【…でも…】」
「【どうせこの街のクソ領主は何もしないんだ。個人で動かずしてどうやって家族を守れっていうんだよ】」
「「「!!!」」」
衝撃でした。何の罪のない住人が人を殺めてでも家族を守らなければならない。
そういえばこういった事件が起きていながら、衛兵の一人として見回りをしていません。
リースなら夜勤の衛兵が2人か3人で毎日夜間見回っているのに。
「これは…黒幕の匂いプンプンやね」
「話を聞く限りベスガの領主は人攫いに対して対策を講じていませんね。」
「領主が事件の黒幕説、強めじゃありません?」
「自分はその仮説が今のところ1番濃厚だと思います。
この間という言葉とあの恐れようからして早くて一昨日、遅くても1週間と言ったところでしょうか」
「そう思うわ。
事件が一昨日やとしてワイらが来たの昨日やからそれより前いうことやろ?ほいなら、3日か4日くらいで動くんちゃう?」
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