見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)

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第四章 ジメッとメラッと強化合宿 編

厄災の呪縛、崩壊の狼煙

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「いやぁ~負けた負けた!!はっはっはっ!
はぁ~~ひっさびさに死んだと思ったなぁ」

「本当ですの?その割にはずいぶんと回復が早いですわねぇ!」


ギュッ!!

「イデエエエエエエ!!何すんだ!」

「それだけ叫べるのなら大丈夫ですわね。さぁ!わたくしの最高傑作、[いろいろ増し増しポーション]を飲んで第三ラウンドとまいりましょうか!」









[クロスポーション]
古代に存在したとされるポーションであり、簡単に言えば2種類のポーションのいいとこどりをした、純正ポーションとエリクサーの中位互換。


シルヴィアのソレは段階を勝手に飛ばして、効果で言えばエリクサーの一つ下のフルポーションを材料がほとんど揃っていない状態で作成を試みた失敗作。


奇跡的に使用は可能で、通常の回復と魔力ポーションより効果は1.3倍効く。

ただし、不味さと副作用は鑑定が文字化けを起こすほど。





「やっやめろっ そんな得体のしれねぇもん飲ませんじゃねぇ!」
「あら?娘の最高傑作を拒否するんですの?効き目だけは保証しますわよぉ?」
「効き目以外を保証しろぉ!」





「さっ2人とも、てっしゅー」
「うぃーっす」
「はーい」

「し・しょ・う♪」
「ひゃいっ!?」
「コ・チ・ラを複製して下さいますわよね?♡」
「【創造クリエイション】!!!
どうぞっ!
1箱1ダース入りを15箱、お嬢様用にはお手本用のクロスポーションを15箱ご用意致しておりますっ!!」
「行ってよし」
「「「しつれいします!!」」」
「おめっ!?裏切んな助けろよぉおおおお!!」

「問答無用!」
「イャァだアアアアアアアーーーー!!」














ここからは親子の時間。部外者はとっとと避難しましょ。




少し前からモニターには

[映像が乱れております。ご了承下さい]

の文字と川のせせらぎの映像が表示してくれていて外の方々にはこれから行われるスプラッタな映像をお見せしなくて済むようだ。







「おつかれ様。あの子は?」
「親子水入らずで15年分のた~のしいお話をするみたいで、まだ当分は出て来ませんよ。」



『セナさん、領主サマのケータイを取ってきていただけてマスカ?』
「はい。こちらに」
『奥サマ、この画面越しで映像を見ることができマスよ。』





【「ゴブァッ! 悪かった!いっぺん待ってくれって!グフォッ!」】

【「お父様はわたくしが今まで申したワガママを一度でも聞いてくれまして?」】

ドカッ バキッ ボコッ

【「さぁて、そろそろ2本目を使いますわね♡」】















『念の為バイタルチェックは行ってマスが、明日にはダンナサマのココロは消し炭にナル計算デス』
「そう…当然よね」
『ソレは…どういう?』
「今思えばあの子も普通に生活できたのよ。
でも私たちはそのための判断ができなかった。二つ名持ちの冒険者の子でもあり貴族の子供という肩書きと、あの子の魔力量とが重なりに重なって。
方法は他にあったはずなのに、ホント愚かな親よね。」




「そんなことはないです!」
「フィーっち…」
「これを見てください」





フィエリアのスマホからジョセフさんのケータイに送られた一枚の画像は、寝間着の2人の仲良さそうなのがひと目でわかる自撮り。


SNSにそういった画像を見慣れた俺には一見しただけでは家族との関連性が見えない。


『右奥の箱を拡大しマス』
「これ…!」
「シルヴィアちゃん言ってました。「15歳のお誕生日プレゼントにいただいた大切なペンダントですわ」って。

お家の中では精一杯接してあげていたんですよね。

シルヴィアちゃんがお2人のことを本当に嫌っていれば、肌身離さず持ち歩くことはないと思います。

僕は…シルヴィアちゃんが素直にうらやましいです。両親を5歳くらいに失ってから誕生日も分からないですし、祝ってもらったことも、残ってる物もこの間の写真以外、ひとつもないですから…」





フィエリア…いや過去でいえばフィリップの家に行事というものがなかったらしい。
ガドマさんは年がら年中お休みはまずとらない。たまにある休みも家のことをして満足に会話をすることなくその日が終わってしまっていた。

そもそも彼女の誕生日も夏前後だったと言う記憶しかなく、記録にも残っていないのだ。


突然エミリさんが、糸が切れたように飛び出し、フィエリアを力いっぱい抱きしめた


「え…?」
「ごめんなさい…少しこうさせてくれないかしら…
似ているのよ。14年くらい前に連絡がつかなくなった弟の小さい頃に」










ブ~ッ
俺のスマホが微かに震える。

周りの目を盗んでチャットを見ると、またケンちゃんから最新のチャットが送られていた。


今度はURLなしで
[今のキーワード、引っかかりません?]とだけ。




正直めちゃくちゃ引っかかる。



14年前、失踪、弟、子供と言うキーワード



十数年前、両親を盗賊に殺された貴族の夫婦と生存した娘。襲撃を受けた場所がリースからそう離れていない地点という手がかり。



その2つの出来事が約14年前とするとシルヴィア、フィエリア共に4歳か5歳。



一致する。


『【セナサン、スチュアートサン、奥サマの旧姓って分かりマスカ?】』
「【旧姓ですか?えっと…あれ…?】」
「【ヴィンセント家でございます。過去にいろいろございまして、記録が抹消されておりますので使用人のごく一部しか知らされておりません】」
『【兄弟姉妹はおられマス?】』
「【弟様がお二人いらっしゃいました。
次男のランノール様は妻子と15年前に行方不明となってしまいまして、長男のオズワード様も半年前にヴィンセント家が取り潰しになって以降、情報がございません】」
『【ホウ?となるト…】』 
















『【もしもし隊長サン?】』

「【!!? 誰だ!?】」

『【ワタシデスよ】」』
「【ああ、精霊様か】」
『【お仕事中すみマセン、ひとつ聞きたいコトがありまシテ。】』
「【私に分かる事なら構わないぞ】」
『【15年前の例の日、貴方が護衛してイタ貴族のお名前と、当時どこに向かっていたのカ、覚えていマセンか?】』
「【15年前…忘れもしない。あれはまだ私がエールテールを拠点に活動していた頃…】」
『【ストップ!回想シーン入ろうトしてマセン?】』
「【カイソ…?】」
『【チョット待って下サイね】』










カタカタカタッ

『side ガドマ
遡る事15年前_エールテールの南の森にて_っト』




『【いえ、なんでもありマセン。続きをドウゾ】』




















当時[満月の微笑み]という男3人のパーティで活動していた私たちはその日の仕事を終え、日も暮れてしまった森で野営の準備をしていた。



「そこだと火ぃちかくねぇか?」
「あ~ そうだな。少し遠ざけよう」
「スープは野菜のやつでいいな」
「豆のにしねぇ?」
「昨日も一昨日もたべたろう」



ガサッ

チャキッ

「魔獣か!?」
「待ってくれ!私だ、敵意などない。」
「ランノール様!?」
「驚かせてすまない 単刀直入に言うと助けて欲しいんだ。」




ひとまず街と真反対に向かいたいというので兎にも角にもエールテールを離れ、隣町のベスガ方面に向かうことにしたんだ。



「へぇ…オズワードが命をねぇ」


「なんで殺されなきゃいけねぇんだ?

ランノールのダンナって末っ子だろ、次の継承権は兄貴か姉貴の子供に行くはずだろ?」
「領主の座を兄が、爵位を私が継ぐという父の遺言が事の発端だ。

候爵家として代々国に仕えてきたヴィンセント家と、酒の生産地として発展してきたエールテール。

双方とも急激に発展しすぎたばかりに治安の悪化と、繋がりのある貴族による酒の買い占めと経営の介入が年々酷くなって来ている。


候爵家と領地の経営を切り離さねば、10年もしないうちにエールテールは衰退の一途をたどることになる。という事を繰り返し生前の父が言っていた。」
「オズワードはその切り離しが気に入らねぇってか?」
「その通りだ。兄が欲しているのはエールテールの財源と、候爵家の権利と武力の全て。
そのどちらかが手に入らないと知った兄は遺言を無かったことにするべく父を監禁し、遺言の内容を知っている私たちを葬ろうとしているというわけだ。

残念ながら私にとって父や爵位よりも妻と子供の命の方がずっと大切だ。
一時撤退する以外に家族と領民を助ける方法も持ち合わせて無い。」
「ですが、現状オズワードは何をしてくるかは読めないのでは?」
「ああ。だが、ダルセン家に嫁いだ姉がいる。リースにさえ辿り着き、姉の保護下に入れば」
「流星の拳闘士であり夫のジョセフダルセンと、その相棒、火山の鬼アンジェ…」
「少なくとも身の安全は確保でき、安心して王家に訴え出ることができる。もちろんキミ達もアンジェ殿の元にいれば反逆者として手が下ることもないはずだ。」

「…!まて。10時の方向。…2…いや3人だ。」






「近くにいるはずだ!さっさと探し出せ!」

「クソっ どこ行きやがった!」

「見失ったか 先を探すぞ!」
 







「もう追いついてきたのか…!」
「左は見つかっちまうぜ?」
「仕方ない。足場は悪いが一本杉の丘の横を駆け抜けるしかないか」




なんとか進んでは茂みに紛れ、ベスガに着いてからは馬車を借り、全速力でリースに向かっている途中で私たちの旅路は最悪の終わりを迎えた。























ワッセ ワッセ ワッセ ワッセ

『視点を戻シテ…よシっ』









『【ナルホド、そういう事だったんデスね。ありがとうゴザいマス】』
「【いやまだ続きが…】」
『【フィエリアから聞いてマスので、そこカラあとは把握してマス】』
「【そうか。】」
『【気にならないんデスカ?】』
「【なぁに、大きくなったあの子が過去と向き合う時が来たとして、私はあの子がどんな決断をしようとも止められる立場にはもういない。それだけの話だ】」
『【彼女はそんな薄情な子に育ってはいマセンよ。

確カニ、今まで苦労した分、あの子達はやりタイように生きるべきダとは思いマスが、隊長サンを裏切るようなことは73.8%ありマセン。】』
「【ないとは言い切らないんだな】」
『【嘘のつき方は学習ラーニングしていマセン。マスターに似たんでデショウね】』
「【まぁその、なんだ、あの子のことをこれからも支えてやってくれ。】」
『【ワタシの命にかけて、約束しマスよ】』


























「えええええええええっ!!!???
フィーっちとシルヴィアっちって、いとこなんすか!?」
「そうなるね。アタシも昨日の伝書が来るまで完全に忘れてたよ。

アイツに関しちゃそれでもなお覚えちゃいないかもしんないくらいだけどね。」
「あれっでもこれ口にしちゃマズくないっすか?
命を狙われたって」
「そうでもなくなっちまったよ。
ヴィンセント家は半年前に取り潰し食らってオズワードは妻子を残して財産だけを持って雲隠れしたんだと。

そうなりゃ家も力も失ったオズの野郎が生きてても、大成したあの子達にゃ手も足もでないだろうし、今となってはもうどうでもいいとアタシは思うけどね」
『貴族家の取り潰しトいうとヴィンセント家は何をやったんデスカ?』
「多額の税金を独占横領した上に、ベスガの一件にも相当関与してたみたいだよ。
どうしようも無くなった矢先に、ギルドの依頼料も素材の売値も不当に値切ったばっかりに冒険者ギルドは閑古鳥が吠え散らかして、討伐してくれるヤツらがいない以上、魔獣は放置状態。」
『ドウしようも無いクズじゃないデスカ』
「エールテールに騎士団が遠征することになったって話がここにつながってくるんすか。」
「そういうことさ。領主は次のが決まったらしいが、持たれた根はすぐに返ってこないっていうし、相当苦戦するだろうね。」
『リースはその点、人手不足以外に不満はそう聞きまセンね』
「この街はカネ周りと治安維持がうまく作用できてるのさ。
安い酒税と2割いくかどうかぐらいの素材の買取手数料でも税金の過半数はクリアしてやがる。

あとは儲けた冒険者が勝手に経済を回してくれるから、住民税と売り買いの税金を足してやりゃ、魔獣大発生と雨期が長い年以外に赤字が出ないし、アタシらが抑止力となって威張り散らしてりゃ各々冒険者同士で治安の維持が勝手にできるし、特に文句も出ないのさ。」
『ナルホロ。』

ハァ…
「でも、ケン坊の言う通り人手不足がどうしようもならないのも事実さ。

幸い冒険者ギルドはアンタたちが現れてからようやく捌けるようになったけど、今度の遠征でアンタ達を貸さなきゃなんないから、今のまんまじゃお手上げさ。」
「それで会議してたんですか」
「当たり前さ。アンタらギルドの連中の間で[職人戦医]と[街中依頼の覇者インサイド・ストライカー]、2人合わせて[問題解決の2大神ツインゴッド]って」呼ばれてんだよ?

そんなのを借りられちゃ受けてくれるのは登録したばっかりの低ランクしかいなくてね。仕事の質もあまり高くないからやーれ困ったねって。

そんでなんとかC、Dランクらへんも積極的に受けられるように条件を一件一件ゼロから見直してんのさ。今夜中に終わりゃいいけどね。」
「お忙しいところすいません」
「呼ばないよりかマシさ。

こんなにいい親子ゲンカを見逃したとなっちゃ一生悔いるとこだからね。

いいモン見れたしアタシゃそろそろお暇するよ。リク坊、帰りもいっちょ頼むよ」
「は~~い。」


「そうだ、今度アンタ達にヴェルメールん所に行ってもらうから明日か明後日、アタシのとこに来な。そんじゃ」




「【グッバ~~イ】」

「師匠、ヴェノなんちゃらって誰っすか?」
「さぁ…」
「お医者様のヴェルメール先生でございます。リョー様とは何度も関わりがある方はずなのですが」
「あー先生ね。
先生としか聞いたことがなくてつい…」
「おれっちも今知ったっす」





「そっちはひと段落ついたかしら?」
「終わりま…した。けど…一体それは…」



先ほどの暗い顔はどこへやら、フィエリアをバックハグしたままお手手をニギニギし、コチラに幸せいっぱいの笑顔で話しかけてくる。


おもちゃを買ってもらった3歳児すら連想できてしまうほどのホールドを見せびらかすように。



「あのっ…僕はもうっだいじょうぶですからっ…そろそろ放してもらっ」
「ダ~メっ 私の胸には貴方とシルヴィアが収まる予定なのよ 大人しく愛でられなさい♡
あ~っこうしちゃ居られないわ!スチュアート、セナ、今夜は盛大に宴よっ!今すぐ準備なさい!」
「「かしこまりました」」





相当機嫌いいな。もう既に酔ってたりして…


盛大にやるなら匠と俺もいった方がいいだろう。


「【そういうと思ってもう始めてんで】」


さすがッス、我が家のオカン


「俺も手伝います!」「おれっちも行くっす」

「あっ僕も!うわぁっ」
「こ~ら逃がさないわよぉ!
聞き分けのない子にはこうよ!こ~ちょこちょこちょこちょっ」




「やぁあ~っ!はっはっはっはっははっはははっははははっ!!」




































「それでは、我が娘シルヴィアの輝かしい未来の幕開けと、私の麗しの姪っ子の仲間入りにっ!」

『「乾杯!!」』



『【皆々サマ、各テーブルに料理が運ばれて参りマス。一度に全席の料理をお運びいたしマスので、しばしテーブルからお手を離してお待ち下サイ】』


「きたっ!」「おにいちゃんだ!」


「皆さん本日は急な開催にも関わらず、お集まりいただきありがとうございます。

今宵皆さんにご堪能頂くのは、ダルセン家の料理長 おやっさんことトムさんと、我がヤマモト家のオカンこと匠、そして微力ながらこのリョー・ヤマモトの魔法とが織りなす料理という名の合同芸術です!

早速ですが、前菜を登場させましょう。

さぁ皆さん、Buon appettito(※)!」

(※)=訳:召し上がれ












厨房の台からゆっくりフワフワっと列をなして宙を舞う皿。


使用人達からもギリギリ見えない高さで、それでいて、見えたとしても正面で見れないようあえて反対向きに進むことで早く見たいという感情を掻き立てる演出だ。



各席の真上に前菜がたどり着き、配置に狂いがないことを確認してそ~っと皿を各々の正面に向かうように回しながら下ろす。




そこには人参を加工した皮を特製のあんにかぶせて作られた炎狐のミニチュアオブジェが各3匹こちらに向けて駆けてくる姿に見える。



『「オオォォ!」』 




「昼間の映像をご覧になった方で、もうお気づきの方もいらっしゃることでしょう。
一品目のテーマはケリーの十八番、炎狐乱舞。

火球を強くしなやかに練り上げた1匹1匹が逃げ回る敵も追い回し、燃やし尽くすまで攻め続ける一撃必中の技。

そんな炎狐にあなたの心を掴まれちゃって下さい!!」




パチ……パチ…パチパチ…パチパチッパチパチパチパチッ!!




あれ、スベると思ってたけど料理が凄すぎて普通にウケてる…
スベる前提で台詞考えてたけどウケたらウケたでいいか。進めちゃお。




「本日のフルコースのテーマは主役であるシルヴィア・ダルセンと愉快な仲間たちというテーマで構成させていただいております!

この後私は厨房の方に戻りますので、以後の説明は」
『このワタシ、思考特化型AIゴーレム、マタの名を賢者ゴーレムのケンちゃんが映像と共に解説いたしマス。』
「『それでは輝かしいひと時をご堪能ください!』」








鳴り止まぬ拍手に深く頭を下げ、後ろの戦場に加勢する歩みをすすめていると

「「おにぃちゃ~ん!!」」


お飾り程度に水を入れたプラスチックのコップを手に、天使がテーブルの下を通って俺の方に駆け寄ってきている。




「おっアム、レグ かんぱいする?」
「するっ!」「する~」

『マスター、グラスはこちらに。』

「サンキュ
それじゃ、せーの かんぱーい」
「「かんぱ~い」」
「2人とも、今日のお兄ちゃん達どうだった?」

「ドッカドカのキラキラがつよつよだった!」

「メラメラもピカピカもドキドキで、すごすごだった!」

「ありがと
あっそろそろお兄ちゃん次の料理作りに行かなきゃだから今夜もメルタ爺ちゃんとティー兄ちゃんの言うこと聞くんだぞっ」
「うん!」

「おかわりしてもいい?」
「いっぱい食べな。
でもデザートまでもつかな~、お兄ちゃん達すんごいの作っちゃうぞ~」
「リクくらいおおきい?」
「どうだろうな~、高さは陸くらいありそうだなぁ」
「だいじょ~ぶ!!
アムたちのおなかってよじげんのおなかなんだから」
「そっかそっか。ならお兄ちゃん達本気出しちゃおっかな。2人の食べるスピードが追いつかないくらいに早く作っちゃおっかな~~」
「「ダメ!!」」
「大丈夫 ちゃんとみんなが食べ終わる頃に出てくるようにしてるからよく噛んで食べるんだぞ。」
「「うん!!」」





「よし」

『【cooking up】』

着せられてたタキシードから、手っ取り早く着慣れたエプロン姿にチェンジ。



ここからデザートまでノンストップで100ある腕を動かしつづける。遅効性の魔力ポーションを一気に飲み干す。


うん、まじゅい…












「すいません戻りました!」
「おかえり。よかったよ、さっきのスピーチ。」
「ありがとうございます。」
「おかげでハードルはグングン上がっちゃってるよ。
こ~りゃ1秒たりとも気は抜けないぞ。」
「上等です。
残り7品全部ノンストップでド肝抜いてやりますよ!」











「次の鍋かけます。俺がとるんで、その間に魚の用意をお願いします。」
「わかりましたっ!」
「あ、ちょっと待った。おろし金ってどこに入ってます?あとできれば水分もらっていいですか?さっきのスピーチで喉カラッカラで…」
「取ってきます。」




「アム様レグ様よりおかわり入りました!」
「とりあえず茹で卵2、3個ずつ殻のまま渡してください!」
「かしこまりました!」

「マヨネーズ持ってったって!!」





「おいソレ捨てんなや!次のやつの出汁に使うねんぞ!!」
「すいません!」
「ちょいケリー、もうタイマー鳴んで。
あ、ちょいちょい もうそろそろこれ冷やしといて。あとボウルってまだある?」







「いいか、よく見とけよ。」


サっサっサっサッサッサッ


「できるな?」
「はい!」
「頼んだぞ」










盛大な宴は朝まで続いた。

料理やドリンクが次から次へと運ばれ、入れ替わり立ち替わり余興の数々が行われた。



合間合間で、カメラデータに保存されていた3人の成長記録や先ほどの戦いの様子をケンちゃんがうまいこと編集しては投影したり、右下の小窓の方で第三ラウンドの様子を実況中継してみたり。








上座には主役のシルヴィア、2番目の席にはジョセフさん…空席だけど。

「はい、あーーん」

「あ…あーん…」




そこからエミリさんとその椅子くっつけられたフィエリアの席。



そこから俺たちの席もあるにはあったが、席にいたのはティー兄とメル爺、アムとレグくらいだ。



俺たちも席に着くように何回か勧められたのだが、もてなされるよりもてなしたい派だとか、テーブルマナーが分からないからとか、なんだかんだいって結局キッチンと休憩室にいる時間の方が長かった。




主役陣の半分がいないにもかかわらず、産まれた時からシルヴィアを見ているエミリさんはもちろん、使用人全員がアンコールで成長記録映像をループで流しては何度も泣き、記憶に新しい戦いを見て大盛り上がりしていた。



朝日が登って"今日の宴"は御開きということで、先に寝かせてもらっているおチビ達と陸の様子を見に行くと、ちょうどのタイミングで、返り血であろう血痕だらけのシルヴィアに顔色真っ青のおっさんが雑に引きずられながら出てきた




「死…じぬぅ…」


2人が出てきた直後、魔法空間のゲートが捩じ切れた。

崩壊の可能性があるとは聞いていたが、どんなパワーでどんなことしたらこうなるんだ…






「派手に…やったね」
「はいっ!ボッコボコにさせていただききましたわっ♪」
「だろうね…」


「師匠、」
「ん?」
「いろいろ、ありがとうございました。」
「どういたしまして。」



ブースト魔法を完成させた彼女にはもう俺は勝てない。シルヴィアももう…大丈夫かな。


「でも、まだ卒業だとか言わないで下さいまし。

クロスポーションを錬成できるまではわたくしは未熟者です。これからもよろしくお願いしますわ」


「それはできない。」


「なんでですの!?」
「シルヴィアが来たのは魔法を使えるようになるためで、昨日の戦いでそれが叶ったし、既存のポーションと簡単な薬の調合や簡単な細工はできるようになってる。

あくまでもクロスポーションは古代文明のシロモノ。一人前の錬金術師が作ることはまずないし、俺もこのまえ本で知ったばかり。


新しいことに挑戦することを否定する気はないし、教えることに問題はないけど、ここからはシルヴィア自身で研究する必要があるから師匠として教えるのはここでおしまい。


これからは師匠弟子ではなくて、そういうことにちょっと詳しい友達ってことでいいんじゃないかな。」
「そうですわね。では訂正しますわ。
リョーさん、これからもダチとしてよろしくお願いしますわっ
「ダチって言い方ぁ…」
「あ、でも師匠にはちゃんと勝ってからですからね!」
「いいんだけど、その前に…」
「コレを修理しなくてはなりませんわ」
「先にお父さんの治療!
ってえええ!!?腕輪壊れたの!?」
























そして夕方、案の定シルヴィアとの模擬戦にあーっさり惨敗した俺は無事、新たなお友達、ではなくダチとしてのスタートをきった一方で、最後の1人は頭を抱えていた。




「取り残されたっすね…」
「……焦ったら最後…勝てない。」
「タクミっちもメルタのおじきもリクっちも揃って平常心でいろって言うっすけど、どう頑張ってもおれっちだけ勝てる気しないんすよ」
「ん。クナイ…多すぎる。」
「あんな大量の武器をどうやったら…」
「弱っす…ブースト…」
「分かってはいるんす。
でもひっとつもピンとくるのが来ないんすよ。
ケンっちも『もうピースは揃ってマス』ってこと以外なんにも教えてくらないっすし」
「ん。友…速くいっぱい。
お嬢…全部を集める。
弱っす………………かわす?」
「避けろってことっすか?無理っすよ。
師匠のクナイ、100本を5本1束とかにすれば生き物みたいに動かせるんすよ。5本避けれても次の10本くらい飛んできて挟まれて終わりっす。ケンっちが泥スライムみたいな魔法使ってくれないと絶対無理なんすなんすから」
「…それ、ケン坊の役割」
「それじゃダメなんすよ!
ケンっちはひとつの端末にしかいられないんす。おれっちがぶっ通しでサポート受けてると、フィーっちの空中足場とシルヴィアっちの黒雲魔装が使えないんすよ。特にフィーっちはブースト状態だと魔力が5分保つかどうかっすから、2番目に魔力が多いおれっちが足引っ張れないっす」
「…ケン坊の弱点…友とお嬢、一緒。」
「そうなんすけど…」


「ケリー~!集合だって!」
「あ、すぐ行くっす!」


「…ケ…ケリー」


「おっととと!?な、なんすか?」
「…ガンバ…」
「あ…あざっす」




「ほらコレだよ」
「[第一次応急救護者資格]…?ってなんすか?」
「回復魔法、製薬、応急手当ての3つを合わせて応急救護って呼ぶ。

それらが一定の条件を満たす場合、資格の範囲内の医療行為に関する認可を受けてることができて、その範囲内であれば責任を当人の所属ギルドと医療ギルド、派遣先で分担する。

ま、分かりやすく言や、あんたらみたいな応急医療だけならできる奴を医者の代わりに使う事はできるけど、なんかあって時、例えばミスにつけ込んでいいようにしようなんて事は許さないよって話さ。

ついでに言うなら、医者がいりゃ第一次の範囲で手術や感染症相手とかになっても医者の補助まではできるってところだね。」
「今度の遠征にこの資格がいるんですか?」
「なくてもいいけど一応さ。」









ふーん 資格があることで依頼の報酬とランクの加算だけじゃなくて、臨時や合同パーティを組む際にメンバー同士の相性も優遇されやすくなるのか…


取得条件が3通り。

・講習付きの実技試験7割以上かつ分野に応じた筆記試験7割以上で、合計15割分以上で合格

・ギルド登録済みの医者もしくは薬師一名の推薦を受けること

・回復魔法、製薬、応急手当て等の依頼を合計15件以上成功。なお一件あたりの基準は担当者3名以上による判断を行う

俺は3番目が確実にクリアできるはずだけど…




「どこ読んでんだい、ん……ああ、言っとくけどアンタは受けてもあんま変わらないよ」
「え!?俺3番目すら満たしてないんですか?今まで何万本と作って納めて報告までしっかりとしたと思うんですけど」
「何言ってんだい。アンタはとっくに取得してんだろ」
「へ?」
「アンタ…まさかギルドカードの裏見た事ないのかい?」
「ギルドカードの…裏…?あっ」





裏面にちゃんと載ってました…

資格

・第一次応急救護者資格(第2枠、第3枠)




備考

・依頼優良処理認定2級(作業系・製薬)
・従魔等取扱責任者;金属製ゴーレムまたは魔導生命種(準アーティファクト級)
・念動使いにつき密集戦に要配慮







「なんですかこれ…」
「ランク配慮しろって文句つけられた時にやれることは全部やっといたのさ。間違っちゃないだろ?」
「いや…下3つはごもっともですけど、第2枠って医者か薬師の推薦なんて貰った覚えないんですが」
「そいつはヴェルメールの推薦だね アンタが凄すぎて向こうから言ってきたからありがたく頂戴したのさ」
「本人の意志ぃ…」
「依頼にもよるけど、こういうのはハッキリさせないといろいろ大変なんだよ。
特に騎士団や貴族が絡むと手柄の取り合いと責任問題でね。

功績は奪い取りにくるくせに、ヘマしたところは有る事無い事都合がいいように上に言いふらしやがる野郎が貴族にゃゴマンといて、昔アタシらもよく頭を抱えたもんさ。

今回この手紙を寄越した第三騎士団は前にヴェルメールんとこやマリーと一緒に治療した奴らばっかりで、援護魔法に始まり搬送から治療までの全部をやってのけたリョーは大恩人。

そんな大恩人はもちろんアタシらのハンコ付きの出世頭3人を相手に理不尽働くヤツはほぼいないだろうけど、どこの集団にもバカとアホは一定数必ずいるもんでね…古い話に縛られて不当な迫害を企てるゴミ野郎がいる可能性は高いだ…」






思わず全員の目が固まったギルドマスターの視界の先に向いてしまう。



騎士になる者は原則、王都もしくは大都市の学園卒業が必須であり、王都の学園の過半数は貴族家の出身で形成される。

当然第三騎士団のまあまあの割合が王都の学園の卒業生であり、シルヴィアのことを知る者も必ずいる。


呼ばれてから一言も声を聞いていなかったが、原因が全員嫌でも理解できた。




「ハァッ… ハァッ… ハハァッ… ハハァッ… ハハァッ… ハハァッ…! ハハァッ…!?」



今までにないくらいに青ざめ、手の震えもひどくなって、呼吸も荒…過呼吸を起こしてる!

それに加えて魔力の露出が抑えられなくなってきている。









正面に向かい合うようにしゃがむ。
片手でシルヴィアの両手を優しく握り、もう片方を背中にあてゆっくりと動かす。

背中から頬に添え替えて







「魔法を使うから少し目を瞑って。」


互いのおでこ同士をくっつけ、ゆったり詠唱する。



「【荒ぶる精神よ、静まりたまえ。リフレッシュ】」



おでこを離し、頬に添えていた方の手を頭に乗せて、人差し~小指で一定のリズムを刻む

ポンっ…ポンっ…ポンっ…ポンっ…ポンっ…ポンっ…ポンっ…

「…大丈夫、大丈夫。
今ここには俺達しかいない。
シルヴィアが優しい人だってこと、ちゃんと魔法を使えるようになったことはみんなが見ててわかってるから。

ちょっと、深呼吸しようか。

大丈夫…大丈夫。そう ゆっくりでいいよ。そのまま…そのまま…肩の力を抜いて…そう いいよ…」




魔法の効果も効いてきて魔力の露出はなくなり、呼吸も落ち着いてきた。

このまま説明を聞かせるべきかの判断をさせてもらうと答えはNOだ。




「今日は…やめとこう
いろいろ急に変わって疲れたよね。

あとは俺に任せて 【スリープ】」















「ケンちゃん」
『まだケータイをお持ちのようナノでそのまま奥サマを、起きてイルようなのでリクサンもお呼びしマスね』
「おねがい」

「リョー君、僕もついてていい?」
「そうしてあげて。」
「ケリー、おんぶするから手伝って」
「オッケーっす。」



「いろいろ済まして俺も向かうから。」




連絡してから1分ほどで陸にもたれかかったエミリさんと、付き添いでスチュアートさん、セナさんが下に到着したとのことなのでお任せする。















俺、ケリーとギルドマスターの2人との間にしばしの沈黙が残る。


「無様だったろう?…あの子の触れちゃいけないところにこうもズカズカと…」
「「…」」
「一度流れちまった噂は消えることはないし、あの子は初めての、そのたった1度の失敗に締め付けられ続けてきたんだよ。それこそ[戦士の勝負一生]のままにさ。」
「…おれっちも何気ないひと言で傷付けてたんすかね」





さっきの怯え方、聞いてる情報から予想できる過去。

学校で起きたいじめなんて言葉で済ますにはおよそ1人に向けられていい浅さの根じゃない。








「ギルドマスター リースから騎士団に伝書って飛ばせますか」


「何がしたいんだい?」
「ちょっと面を通しに。飛ばせないっていうなら王都の方角を教えてください。今からでも飛んでいきます」
「やめときな。この時間からならどっちにしろ大変なことになるよ。」
「じゃあいいです。よっこらせっ」



わざとらしくドアの方へ歩みを進める。




「エールテールはベスガの向こうでしたよね。匠とティー兄連れて軽くそこらへんの生態系を調査してきます。」
「待ちなって アンタの言いたいことも分かる。全員が納得できない状態の依頼であって欲しくないんだろ。

そのためなら騎士団をシメに行くか、遠征先の魔獣を殲滅しときゃいいって思ってんだろ。

…アンタの行動力には何度も助けられちゃいるが、ギルドの長やってる身として、今回ばっかりは許可できないよ。」

「なら、火山の鬼と流星の拳闘士は、こういう時どう動いてたんですか?

荒波に自ら立ち向かうだけが強くなる手段だと本当に思ってるんですか?」








「死にますよ。せっかく殻を破れそうなシルヴィアも、シルヴィアのポーションを使えば助かる患者も」

「……………明け方にアタシとジョセフの連名で伝書を飛ばす、アンタの言いたいことの100や200思うように書いて出しゃいい。
……ひとまず…それでどうだい」
「…。いいでしょう。」
























2日後、とある地点にいるという情報を得た俺は匠と向かっていた。


確かサバイバル訓練の施設が見えるはず…あった。


ドタドタバタっ コンコンコンっ!!!

「団長!!」
「入れ」

ガチャッ!

「上空に箱型飛行物体が姿を現しました!」
「来たか。」








「どうもー」
「突然の来訪、ご無礼申し上げますフォンドバーグ騎士団長様」
「気にしないでくれ。こちらこそご足労感謝するぞ。大恩人殿」











「好きに掛けてくれ」
「失礼します」
「失礼しますー」
「早速だが打ち合わせから入っても構わないだろうか」
「はい。お願いします」


「開始は今日から数えて2週間後。討伐を行うのはクラッシュタートル、ゴブリン、オークの3種…の予定だ。数が多過ぎるので1ヶ月はかかると予想される。

貴殿達には医療班を中心に非戦闘班の補助、いっそ指揮までお願いしたい。」
「聞いてます。

第一騎士団、第二騎士団の大動員の影響で市民からの人員の確保が困難だとか」
「ああ。そこら辺に関しては騎士団に命令権はなくてな…各騎士団にギルドから派遣されている者達もいるんだが、実戦になればやはり人手に限界がある。

そこで報酬を出して協力してもらう市民枠というものが用意されているのだが…どこも協力はできないと」


「さすがに騎士の権限があっても、
「騎士のために病気になって死ね」
「騎士に飯作らん言うなら店潰す」
「大義のための犠牲なら本望やろ、やれ」
「連れて行くのは決定事項。逆らえば逮捕な」
とまではよう言えへんもんな」


「そのとおり、金銭的な交渉しかできない。
そもそも募集しかできないところを規則の隙をついて交渉してるんだ。

強制したら最後、噂に尾ヒレがついて広がる上に、望まない仕事の強制によって生まれた軋轢が原因で、集団食中毒などがおき、騎士団の崩壊につながる。




絶対にして暗黙のルール
「だった?
まさかとは思うけど…第一騎士団か第二騎士団のどっちかやらかし__?」
「第二がやらかした。」
「やんな。どこの班や?」
「ほぼ全部だ。医者と鍛冶屋数人を強制的に、飯屋・居酒屋数軒では備品や建物の一部を破壊して脅してまで連れていったらしい。
無事なのは団内で賄えてる馬とその世話係だけだ。」
「どうりで人口の割に集まり悪いわけやな。おかしいとは思ててん」
「集められそうな合計人数って分かりますか?こちらを抜いた人数で」
「騎士が180、事務係が5、医療班が4、馬の世話係が30、調理が4、武具の管理には1人もアテがいない。」


「バカやろ」
「無謀すぎます」
「通常の非戦闘班はこの4倍いてやっと、こんな人数では死にに行くようなもの。貴殿達は第三だけが頼れる最後の砦だ」
「なるほど。そちらの状況は分かりました。」

「意見や提案があるならば是非ともお聞かせ願いたい。」
「まず伝書でお知らせした通り、ウチで手伝えるのは応急医療、調理全般、武具全般、予備の食料や薬草の栽培と幅は広いですが、掛け持ちしてそれなので限界はあります。

なので」

スッ


「やり方はかなりこっちに合わせてもらうことになります」



資料をまとめた冊子を渡し、読むように促す。
眉間に皺を寄せて目を通すこの男の内情を見破るため、動きの全てを見て覚える







「…失礼。健康観察のバイタルスキャナー使用というのは?」
「診断用の魔法道具です。

いちいち問診はできないので朝晩で一人一人読み取って5秒ほどで健康状態を診断、記録し、痩せ我慢や自覚がない怪我や病気も一つ残らず炙り出します。

モノは持ってきましたので試しますか?」
「見せていただこう。ゾース」
「はっ」
「軽く目を瞑って腕を広げてください。」



基本形状はスピードガンの流用。
構えてトリガーを引くと足元から3秒くらいかけて髪の毛先まで緑色の横線が通過する。

読み取った情報はパソコンに飛び、診断・解析が行われ、診断結果がスマホに送られる。



「はい終わりました。楽にしてもらって結構です」


『診断結果出マシタ』


「ゾースさんのお身体の異常は…軽度の下痢と左膝の亜脱臼ですね。

あと異常ではないですが今朝か昨晩、足の小指をどこかにぶつけたみたいですね」
「どうして分かる!?」
「そのための道具なんです。コレを医療班全員分用意すれば朝食・夕食前10分ほどで健康観察ができます。」
「すごい…すごいですよ団長!これが使えるならきっと犠牲になる者は少なく…いや、いなくなるかもしれません!」

「死なせる気はありませんが、犠牲が出る出ないはお互いに利害が一致するかどうかで全て変わってきますよ。」
「なに…?まさか金か!」
「違う」「違うわボケ」「違います」

「ダルセン家のご令嬢…か」

「俺が武具の修繕に追われている間は製薬のほとんどを彼女が請け負うので彼女の存在が重要なのは確かです。

しかし、彼女がいることでどんな現実が発生するのか、見れば分かるはずです。」



目の前で、ある魔法を唱える。
そう、これは実験なのだ。




「何をする気で?」
「ですから、行けば分かりますわ」












「構え!」

ザッ シャキッ

「納め!」

ザッ スーーーーッカチャッ

「休め」

スッ…

「あらかじめ通達していたエールテール周辺の遠征が決まり、陛下より2ヶ月以内に任務を完了させよとの王命を賜った!

しかぁし!皆も知っているとは思うが先日の大動員の影響で非戦闘班の王都の市民枠は枯渇状態。

今の戦力では全滅もあり得る!
そこで、ダメ元で我ら第三騎士団の大恩人 冒険者ギルドリース支部のリョー殿に要請を出したところ、リョー殿をはじめとする精鋭数名が来てくれるとお返事があった!」


『「おお!!」』









「こちらが皆が集められている広場です。」
「ちょうどお話中のようですわね」
「説明をしているところなのでお静かに」






『「…!」』
ザワザワ…ザワザワ…






「おい…みろよ仮面かぶった女」
「まさか アレもついてくるのか」
「何を考えているんだ団長は…!」


声は3人、目線的には…もうちょっといるか



「静粛に!

これから説明するのは、お前達全員が無事に帰ってくるためのたった一つの大型作戦だ!」







数分後

「説明は以上だが、最後に1つ!
しつこいようだが、今回の遠征において重要なのは我々を支えていただく裏方が抱えきれるかどうかに全てかかっていると言っても過言ではない!


リョー殿が率いる精鋭数名は今までにない回し方をすると聞いている!最初はお前達はもちろん私も戸惑うだろう。違いについてこれず拒絶する者もいると踏んでいる。

お前達の管理をする者としてリョー殿より授かったお言葉をそっくりそのまま伝える。

「みんなで笑顔で帰るために、全力を持って対応してやる」とのことだ。

国のために命を捧げる騎士も助けられるべき国民だ。

己の命を守れないものは今、この場に立っている者の命も、武器を持たない国民も、家族も救うこともできないということをよく肝に銘じて今回の遠征に臨むように!


以上だ。解散!」





「少々休憩にしますか?」
「そうですわね、お花を摘みに行ってまいります」
「そうですか。左の通路の突き当たりを右です。」





言われたトイレに向かう。

このトイレは小便器がないので大きい方をする以外男は使わないんだそうで、人目にも触れにくい



「待てよ災害オンナ」
「害獣がなに騎士様のところにいんだよ」
「獣は森に帰ったんじゃなかったか」



来たか…
ターゲット1号、2号、3号




「あの…失礼ですが、どなたの事をおっしゃっているんですの?」

「何をほざくかと思えばとぼけた事を。
そんなだっさいまで仮面付けて!

貴様の穢らわしさを隠せないことはよ~く教えてやったはずだろう?」


「今更、何をしに来た!厄災の人間兵器シルヴィア・ダルセン!」

「わたくしの事をご存じですの?」



クマさんの仮面を外して包帯を巻いた顔を晒す。







「あいにく2ヶ月前になんらかの事故に遭ったようで、それ以前の記憶がございませんの。

御三方…わたくしの事をご存知なのであれば、わたくしが何者なのか教えていくださいまし!!」


「コイツ…自分の生まれてきた罪を知らないどころか死に底なって何もかも忘れるほど愚かだったようだな」
「おい落ち着けよ。

いいぜいいぜ、忘れたんなら何度でも教えてやるよ。
貴様は無作為に破壊することしか脳がない、人間様の顔をした悪魔なんだ。

貴様が呼吸を続けるだけで大勢の国民が危険に晒され続ける、厄災お越しの生物兵器、国家規模で消されねばならんSランク害獣っ!
貴様はなぁ!生きているだけで大罪人なんだよ!」



「分かりませんわね…」
「は?」

「分からないんですの。
何故、わたくし…シルヴィアが貴方達のようなゴミ・クズ・ザコの口から溢れ出る根も歯もないことに一度も反論ひとつしなかったのか。」

「そうかよ…なら、ありがたく思え!このオレが直々に叩き込んでやるよ!」



…おそい
昼寝明けのアムでももうちょっと速いぞ



ガシィッ!

「防いでんじゃねぇ!クソっ離せっ!」




「騎士って人の話を聞かない方のことを言うんですね」





「あ?」「なんだと?」

「【~】団長から聞きませんでした?

俺は確かに伝えましたよ、がみんな笑顔で帰るために全力で対応しますと。このっ!」

ポイっ ドンガラガッシャァァン!!

「ガあ"ァァっ!!」

「貴様、何者だ!?」


「ここまで言ってなんで分からないんだよ
あんたらがさんざん苦しめてきたシルヴィア・ダルセンのダチにして、今回の遠征で補助をする予定の冒険者だ!」



「貴様っまさか…」
「エッ…  エッ…」


「ついでだから教えてやるよ。あんたからよ~くご教授いただいたシルヴィアが遠征で使う薬の7割、他の複雑なのは俺が作る予定だ。

全力で生かしにはかかるが、五体満足にできる保証はあんたらにはしないでおこう。」

「そんな…!」「許してくれぇ!」

「あっ、そうだぁ!

ここにシルビアの力作と全く同じポーションがある。遠征にも使えるかどうかあんたらにはその実験台になってもらおう。効果だ・け・は・保証するぞ?」

『マスター、実験体ラットは実験を行うには健常過ぎるよウデス。』
「そっか…じゃあその分くたばってもらうしかない。

問題ないですよね、フォンドバーグ団長、ゾース副団長」
「ドウゾ…ゴ自由二」
「ゼヒ、オ役立テクダサイ」

「そういう事ですので。匠」
「おっしゃあ!」
「ケンちゃん」
『地獄の始まりDeath!』
「さぁ、実験を始めましょうか!!」




「いやぁぁあああっ」
「やめろぉおおおおっ」
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