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第五章 目覚めた戦士達の逆転劇 編
紅い獣面の職人医療(クラフトメディック)
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「ティー兄」
「…ん…?」
「昨日はありがと。おかげであの場にいた全部助けることができた。人間も、馬も、ね」
「ん。グッジョブしゅじん」
馬舎の方に目をやると、土地を外に延ばしたのか奥行きが増している。昨晩、オレが一切関与できない間にティー兄の判断と獣医師のサーガさんや従魔術師のニコさん指導の元で増設したもので、その中には1度しか見たことのない馬達が収まっている。
昨晩の送られてきた物資の中、ティー兄が採っておいてくれた薬草の箱の中に、コッソリと隠すようにロープやニンジンが入ったアイテム袋を見つけた時は一瞬荷物の間違いを疑ったが、
[馬 牧草 ニンジン 誘導]
赤札隊からのメッセージに紛れてこんな注文が送られてきていたのを見て語れぬ証人患者として急遽建物ごと回収、陸の空間魔法を通じて増設した馬舎へ招待したという訳だ。
「みんな…きのう…ストレス」
「お馬さん達が環境の変化にストレスを感じてるってことか、分かった。後で様子を見に回るよ」
「ん。」
「お馬さんの数増えたけど食料自給率は足りてる?」
「……ちょい狭い」
「やっぱり…。どうする?畑広げる?」
「ん。」
「人手は借りる?」
「…じゅうぶん。」
「皆さん手伝ってくれてるんだ」
「ん。」
「オッケ、とりあえず何面分拡げる?」
「いい。おれ…出来る」
「そっか」
確かに最初見た時よりさりげなく何列か増えてる。1面が赤々や黒々と実る危険物ゾーンがあっても、多様な需要に応えられているのがその証拠か。
「なにこれ?赤紫色のカブ?」
「違う」
「え?じゃあコレ何?」
「二十日大根。」
「デカイなおい!」
野菜ひとつひとつが尋常じゃないくらいデカい。
大根だけでまぁまぁ太めの切り株のような直径。キャベツやかぼちゃ、レタスなどの球体系に関しては、アメリカのハロウィンの時期にカボチャの大きさ競う大会でしか見ない超特大サイズ。どれも一つ持つのに抱えて歩かないとしんどそうなほどにデカイ。
毎日200人余りの食材を担う畑では、全ての野菜がとてつもない“大”進化を遂げていた。
小さいやつを探しても、通常2~3個の粒のところを10個ぐらい連なって入っている枝豆とか、栄養価が高すぎてか自ら輝きを放ってすらいる果物類が通常より一回り大きいくらいなものだ。
「肥料と魔法 合わせ技…。」
そう言うと鍬を地面に置き、腕につけたスマートウォッチを操作。すると陸がゲートを送ってくれるのでそこから、ナタ代わりに予備のナッケンジョーを1本を取り出し、ゲートは開きっぱなしにして準備完了。
「キャベツ…ニンジン…レタス…イチゴ…【集合】…」
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
トッテ トッテ トッテ トッテ トッテ トッテ
妙にムキムキな茎のような手足が生えてきたかと思うと自分で土から抜け出して、根や茎が付いたままこちらに走り向かってくる。
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
「…【跳べ】…」
たった一言の号令を野菜達は逃さず、一切の乱れなく一斉にジャンプする。この時ばかりは堅牢なはずのこの土地全体で軽い地響きが起きる。
「…フンっ…!」
スパーーーーーーンッ!!!!!!!!!!
『【回収ヲ。】』
「【…】」
「【リクサン?お野菜の回収ヲ】」
「【……ファ~~~~い…】」
根とヘタをふた振りで切り落とし、3つに分かれた各部位をゲートが吸い込んでいく。
この体制がティー兄と時々来る手伝いだけで畑の栽培が出来ている最大の秘訣。
あらかじめ品種改良した種、日々出てくるお馬さんの馬糞から加工した肥料、専用に開発したいくつかの地属性植物系魔法を、植物本来の生命力の阻害にならないない範囲で惜しげもなく使い、野菜の成長速度、栄養、糖度、その他エトセトラを極限まで高めてているんだとか
ちなみに、可食部分はケンちゃんの介入の元、このまま調理班や馬世話班に分配され、後にケリーや、手の空いたスタッフ達によって洗浄化、最後に匠とケリーによって使用可能なサイズに斬り分けられる。
ただ、このシステムには少しだけデメリットがあって、通常の何倍もある巨大野菜がこちらに向かって押し寄せてくるように見えてしまうと最後、頭では分かっていても本能的に命の危機を感じてしまうし、食べる時にどうしてもこの手足が生えた野菜達が土から抜け出て襲ってくるように見えるシーンがフラッシュバックして箸やフォークが止まってしまう。
便利なことに間違いはないけど、袋を持つ側の視点としては勘弁。できることなら収穫シーンは見たくない。顔はもちろん表情なんてものは無いから余計に怖くて
「お馬さん…診断。」
「あ、はい。いってきまーす…」
早よ行ってこいとのことなので農場ゾーンを後にし、お隣のお仕事現場を見に行く。
徒歩20秒ほどで到着するもう一つの医療現場ではサーガさん、ニコさんを筆頭に30名のスタッフが沢山のお馬さん達と必死に向き合っていた。
「プルルルッ」
「お薬飲みましょうね~。お口開けてもらえるかな~?」
ア~
「はーいおりこうさんですね~」
パクッ
「よ~しよくがんばりました」
ナデナデ
「あっ ドラゴンさん」
「お疲れ様です。」
『「ヒヒ~~~ン」』
「お疲れ様で みんなどしたのどしたのっどうしたのっキャッ!」
「おっととと 大丈夫ですか」
「はい…ありがとうございます」
「えらくみんな落ち着きが無いみたいですね
バイタルチェックはしてますか」
「こまめにやってるんですがあまり良くないですね…
昨晩から朝方にかけて中庭にいっぱい人がいたのと寝床が変わった影響であんまり眠れていないんです。食欲もあまりないみたいで」
『「ヒヒ~~~ン」』
「寝不足とストレスは彼らにとって負担が大きすぎますからね」
「みんな助かってよかったとは思うんですけど、ちょっとの油断も許されない子達がまだいて…
せめて寝かせてあげたいんですが、どうしても寝てくれなくて…」
「こういう場合、回復魔法によるリラックス療法が確実ですけど、皆さんが総手でやっても魔力が足りるかどうか…、全員が全員、回復魔法を使える訳でもないですからね」
『念話と従魔術ヲ併せた魔法でワタシがサポートすれば意思疎通が可能デス』
「そっか!気持ちは言葉だけじゃないってヤツですね!?」
「多分ちょっとだけ違うと思うんですけど…まぁいいか」
【あいぼう…どこ?】
【さみしいよ…あにき…】
【きょうはナデナデしにきてくれないの?】
【いっしょに…またはしりたいよ…】
「すごい…みんなの声が分かる…」
俺も彼らの感情が痛いくらいに伝わってくる。
どの子がどれを言っているかまではたくさんいすぎて分からないが、乗り手や同じ馬の仲間を探しているようだった。
「お馬さんと乗り手って基本的にずっと同じペアなんですか」
「相性の問題とかもありますけど、基本的にお馬さんは1人、多くても2人に一頭割り当てられてます。
騎馬になったらその一生を相棒の騎士と共に捧げることになりますから、相棒が亡くなったとなったら急に体調を崩しちゃう子は多いです。」
「やっぱりお馬さんも分かるんですね、相棒や仲間が病気だったり、亡くなったりすると」
「そうですね…」
【はしりたいよ…】
「走らせてあげますか」
「え…でも…」
「気休めにしかならないと思いますけど、彼らの相棒に会わせてあげることはできます」
「ケンちゃん」
『要請を出しマス』
数分後
「なんか馬の建てもんもデカくなってね?」
「当然だ、彼らが危険を冒してまで馬も救出したのだから。」
「とことんまでやらねーと気がすまねんだなあいつ」
「テーリオ」
「褒めてんだよ
さすがに人間しか無理かと思ってたからな」
「人馬一体の騎士にとって馬の死は騎士の死と同じ。見捨てることはできない。」
「ギルおめぇ…人間のこと以外になると口数増えるんだな…」
「黙れ、刻むぞ」
「怖ぇって」
「おーうっ きたぞー」
「あっ お疲れ様です皆さん」
「問題の馬達は」
「こっちです」
ションボリ…
「元気ないですね」
「大丈夫かコイツら?走ってくれんのかよ」
「そのために本職の皆さんに来てもらったんです。俺が鎧着ても多分乗り手として役不足だと思うんで。」
「でも…ボク達は彼らの相棒じゃ無いので乗って走ったところで彼らの気持ちには…」
「大丈夫です。【ミラージュ】」
「いったい何を…ボクが7人!?」
「魔法の変装…この前やってたやつか」
「そういや前にも第三のとこに来てたんだっけな」
「テーリオさんはサボってたから見てないですよね」
「へへっ まーな」
「照れるな。褒められることじゃないぞ」
「この魔法を使って、本来ならいるはずのない方達を演じればいいんですね」
「はい。俺は第三騎師団の方達以外の顔は知りませんし、騎馬は専門外です。なるべく彼らにストレスを与えることなく心の整理をつけさせたいんです」
「そういうことなら協力するが、私たちもそんなに知っているわけではないからな…」
「テーリオさんは?結構いろんな人と仲良いですよね」
「全員までは覚えてねぇ。オレがわかんのは呑める店で見る顔と、訓練サボった時に屋根から見える顔だけな。」
…ボソっ…
「全員覚えてるなんて言ったのは流石にハッタリだっての…」
「だとしたら何人くらい覚えているんだ」
「そう言われてもよ…オレ50から先はまともに数えらんねぇからな…」
『ソノ50が何回分か、数える事は出来マス?』
「第二の顔だろ? ンー……ンー…2回か…3回くらいか?」
「100人以上150人いないか位…」
『「充分だろ」』 『「十分です」』
「そか?」
「この中で乗るの得意な人は」
「ドルガン、ギルとスコットだな。テーリオは?」
「馬はウチにいたはいたがよ、じいちゃんか兄ちゃんの後ろにしか乗ったことねぇんだよ。近くの山でじいちゃんが可愛がってた闘牛と魔熊とグランドボアならよく乗ってたけどよ」
『「充分すぎるだろ」』 『「充分すぎますね」』
職人でかつスライム飼ってて、近所の山には馬に牛に熊にイノシシにって…テーリオさんの家系は金太郎の子孫なのか…?
「そうですね…それなら念話である程度の意思疎通が取れるんで大丈夫だと思います。4名は手分けして一緒に走ってあげて下さい。」
「おう」「「分かった」」「はい」
「トレバーさんとルチオさんは第二サイドの騎士の記憶データを集めて下さい。
治療とかが済んでいる人で連れて来れる方も連れて来てあげて下さい。本人ならわざわざ走らなくても顔を見るだけで十分落ち着くはずです」
「了解」「わかりました」
「俺は第二側の皆さんにあまり会うわけにはいきません。魔法で変装してサーガ先生と回復魔法で癒してみますので、話すときは」
「分かっている。マイク越しに、だろ。」
「お願いします」
「団長さんには俺から説明します。
ニコさんは皆さんにこのことを伝達してもらえますか」
「分かりました」
「それじゃ、始めるか」
「はいっ」
『ミッション、開始』
「【ミラージュ】」
「【【………【【【リフレッシュ】】】…………】】」
「君の相棒さんのことを教えてくれるかな」
『記憶データと名簿データの照合を開始シマス』
『【ミラージュ】 発動シマス』
「よぉプレシアス3世、元気ねぇんだってな」
『アニキ?アニキ!』
ベロンッ
「ヘヘッなんだよ全然元気じゃねぇか。
うっし ちょっくら外走るか」
『ウン!!』
「おぉ…落ち着いた…」
「鞍つけてやってくれ」
「分かりました。」
「さみしかったですよね…相棒が急にいなくなって。」
【うん…】
「少し落ち着いたら私が相棒さんの代わりに乗って、走りましょう。」
【いや!ブライアンしか乗せいないもん!!】
「お願いします」
『記憶データを読込…完了。【ミラージュ】発動しマス』
【ブライアン!】
「一緒に走ってくれますか?」
【うん!はしる!!】
「副団長!」
「聴取が終わった者はこっちに集めてある。連れて行け」
「はい!」
「皆さーん!!少し手伝って下さーい!!」
「そうか…すぐ行く」
「あちらです」
『記憶データコピー成功』
「なぜもっと早く言わなかった!」
「私に言われても…」
「こうしちゃおれん!今行くぞブルートルズ!待っていろブルートルズ!!」
『記憶データコピー成功』
「何だと!? どこに行けばいい!?」
「そこから外に出て下さい。案内の者がいます」
『記憶データコピー成功』
数十分後
広場には沢山の人間と馬が集まり、横に3~4頭ずつ並んだ列が一定の幅を空けて馬の早歩きペースで周回していた。
「よーしよしよしよし」
ベロンッ
「うわっと はははっ 私からは塩分摂っちゃダメだぞ」
「サーガ先生」
「どうした?」
「こっちから向こうのお馬さん達のほとんどが落ち着きを取り戻しました」
「残りのお馬さんは赤札隊と彼のミラージュの順番待ちといった感じか」
「そうなんです。ただ…」
「どうした」
「逆にお馬さんの方がいない方達も大勢詰めかけていて、乗せてくれって」
「そうか…分かった。30分後に第三の方のお馬さんに走ってもらおう。
人懐っこい子の選別はできるな」
「やってみます」
ビーーっ!!! ビーーっ!!!
『緊急事態発生
緊急球事態発生」
『「!!」』
「【拠点北西部200m地点ヨリ、はぐれと思わレル魔獣数匹の進行を確認
拠点北西部200m地点ヨリ、はぐれと思わレル魔獣が数匹進行を確認
現在、防衛班長が深めの休眠状態にテ、人力による防衛の必要アリ、初級警戒状態と設定しマス。
活動可能な戦闘班は、タダチに襲来に備えテ下サイ】』
「魔獣の警戒情報…!?」
「動揺するな。端末放送越しであって全体放送が鳴っているわけじゃない。
焦らずゆっくりでいい。安全を優先して馬達を戻していくぞ」
「はいっ!」
「サーガ先生」
「誰だ君はっ あぁそうだった、君か」
「【ミラージュ解除】
魔獣は手隙の人達で対応できるそうです。
近くなので、馬達は出なくていいと」
「そうか。ひとまずはよかった」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
「あっ 【テーリオさん、ギルさん、】」
ギクッ
「【さりげなく馬のまま出動しないでください。】」
「バレた~!」
「くっ…」
ピピーッ ピピーッ
「【はい。 ……了解、向かいます。
B型の人工輸血液ですか、15番の引き出しです。精神ポーションも出してください。倉庫係の亀さんが完全に寝ていて空間倉庫のアクセス止まってますが、残数大丈夫ですか】」
「何かあったのか」
「患者の急変があったそうです。ちょっと抜けます」
「問題ない。あとは任せてくれ」
「お願いします。
【り…】そうだ寝てるんだった」
「走っていくか【インビジブル】【脚力強化】
行ってきまーす」
「消えた!?」
「耳と魔力に集中して見てみるんだ。彼は目視で認識できなくなる魔法を使っただけで消し飛んだわけでは無い」
「…! ホントだ、走ってる…もう着いちゃった」
「いっけねっ お面忘れてたぁ!」
「なんて青年だ…あれで医者じゃないと言い張るが、彼ほどのドクターはどこを探してもいないだろうな」
「薬品治療に魔法治療、そして、職人治療の権威ですね」
「職人医療…なかなか面白いことを言うな」
「あれれ~?先生も興味出ちゃってるんですか~?職人医療に」
「バカ言うな。私は不器用なんだぞ」
「ふふふっ」「笑うな」
なんだかんだで夕方
「聴取と治療も完了、なんとか落ち着きましたね」
「ああ。ただ本当に良かったのか?市民枠の2名を先に送り返したりしてしまって」
「ロポッソさんとケインさんでしたっけ、あの2人は問題ありません。
こちら側の信頼性を高めるためにも瀕死状態から回復した人達を数名ギルドの保護下に引き渡し、王都でも損害保険や補償請求の手続き準備を進めてもらっておいた方が経済的にも行政的にも混乱は少なく済むはずです。
気になる所があるとすると、俺たちのことを少しでも目撃した人がギルド側に背格好を話したりしそうなくらいですか。」
「問題無い。貴殿達に関する詮索は控えるように伝えてある。万が一漏れても騎士団の権限で揉み消すことはできる。」
「そこはパワープレイなんですね」
「死ぬはずだった大勢の命が、貴殿達と第三期師団が手を取り合ったことで救えたんだ。それくらいはゴリ押させてもらう。」
「なるほど」
「ただ…」
「どうしました?また騎士団としての面目の話ですか」
「いや、少し違う。贅沢が言えるなら、もう少しだけ欲張れるなら、亡くなった者達の魂も救えたらもっといいと思ってしまっただけだ。
本当に…それだけなんだ」
絶対それだけなわけがない。
どこの何を推理するまでもなく、この人の考えが透けて見えた。
「死者と話せる魔法が使えたら直接謝罪したいとか考えてますね」
「…」
「違いますか」
「…なぜ分かった」
「さぁ。なんででしょうね。」
「貴殿にしてはずいぶん雑な返しだな」
「分かったものは仕方ないじゃないですか。分かり合えずに殺し合うよりいいと思いますけどね、俺は。」
「そうはいっても現実として死んでしまった者にこちらの言葉は通じない。
ましてや我々には過去を悔やんでいる余裕すら無い。ならば答えはひとつ。
救えなかった命を背負って生き、この先は救えなかった以上の命を護り続けるまでだ。」
「そうですか」
「なんだかんだ俺と団長さんの意見ってよく割れますよね」
「そうだろうか?貴殿が選択肢を増やしてくれている事は事実だと思うが、そこまで食い違っているとは思わないぞ」
「俺、言いましたよね、
“仲間がみんな笑顔で帰るために全力で対応する。”って。
そのためには1人でも死なれては困るって」
「まさか…! 死者を蘇らせようとか考えておられるのか」
「そのまさかです」
「いくらそちらが凄腕といえど古代の技術になってくる。 そんなことは絶対に不可能だ」
「やっぱりそう思いますよね。
普通は」
「なに…?」
コトッ…
「フルポーションです」
「振るポーション…?聞いたことがないが、振って効果が出るポーション…ではないなその顔は」
「はい、予想の筋道は悪くないですけど違います。振るんじゃ無くてフル、基本的になんでも治るっていうポーション。伝説の秘薬エリクサーの兄弟みたいなもので、昨晩から緊急的に使用を承諾している古代の錬金秘薬のひとつです。それから」
コトッ コトッ
「シルヴィアがフルポーションを材料の足りない状態で試作した偶然の産物、こっちはそれに俺が手を加えた薬品です。どちらも副作用がキツすぎるのもあって名前はまだありません。
フルポーションより全然効果は劣りますが、それに手が届かないでもない程度の質は持っています。
古代は古代、現代は現代である事実に変わりはありませんが、逆に言えば現代にある技術の応用を重ねに重ねれば、現代のやり方で古代の秘術に手が届く。」
「そうはいっても…古代の技術だぞ」
「確かに、古代の技術では錬金術と聖魔法、死霊魔法の合わせ技。普通に応用しようたってそうはいきません。
ですが、身体組織の再生ができれば聖魔法と死霊魔法もそこまで複雑なものは必要なくなります。もしかしたら基本属性魔法で蘇生できたりする可能性も。」
「そんな無茶なこと…
そうか…切り落とされた腕の再生…!」
「正解です。あの手術でやったことを身体全部、それも大まかな意味で人型魔獣の血肉を材料に人間の身体にって感じで応用できれば魂以外の要素は揃ってしまうんです。
どのみちご遺体にも最大限の治療を施して、ご遺族に引き渡す為に棺に納めるよう計画していたところ。
良くか悪くか、体温や水分、血流、鼓動、酸素、必要な栄養素を魔法や拠点内にある資機材をかき集めて補うことは理論上可能になってしまいつつあるんです。」
『ご遺体はマスターのスキルによって修復できマスし、ワタシを生命維持装置のメインシステムとして組み込めバ、人工的に生命活動を再現する事ハ可能デス』
「あとはご本人の魂と身体が引き合ってくれるかどうか、そこに全てがかかってます」
「リスクはないのか」
「霊魂が魔獣化してしまっていたり、よその誰かの霊魂が引き合ってしまう可能性はあります。」
「それだと承認できかねるぞ」
「分かってます。
ご遺体を回収している時に出来るかもって気づいてケンちゃんに演算をしてもらっている仮説の段階。
物事には優先順位ってものがありますし、最悪の未来をひとつ回避し終わった今、目の前にあることに集中したいのはあります。
なので、今日の会議では選択肢としての提示だけしてそこでおしまいにさせて下さい。
今後の討伐活動で万が一、第三からも死者が出た場合の保険として追々考えてもいいんじゃないかなって。」
「ただの思いつきでは無く、それなりの条件が本当に揃うのなら、確かに一考の価値はあるかもしれないな」
「ご存知の通り、こちらはいろんなことを想定して準備をしています。
もしもの事態の対処手順として先生達には話していて団長さんに話していなかったり、話す時間があまりなかったり情報が変に漏れ広がったりしないように誰にも話していない物はまだいくつかあります。」
「そうだろうな。私もこの拠点が浮いて大空を移動してもそこまで驚かない気がしている。」
「全員連れてこの拠点ごと空路で避難するだけなら昨晩の治療より簡単です」
「……」
「そんな遠い目で俺を見つめないでください。」
「このことについて一旦考えるのはよそう。」
「お互い寝てないですし、これ以上脱線しても時間が足らなくなるばかりですもんね。」
治療や調書の波も概ね収まり、あとは王都に送り返すだけとなった。それに際し、止めていたこちらの仕事の再開の目処もたった。
あらかじめ共有していたが、今回の遠征の目的は騎士団の任務だけではない。シルヴィアの社会復帰のための最初の一歩と、元ヴィンセント家の仇の捜索が別問題で絡んでくる。
当然、その3つの問題のために俺たちと騎士団がぶつかり合うようなことがあってはならない。
互いの落とし所を決めつつも、片方の問題を取りこぼせば全てにおいて歯車が合わなくなることをより強く実感する。
加えて目の前にいる騎士団長には、王都の被害の調整という大仕事も残っているが、現場の指揮を放棄するわけにも、死ぬわけにもいかない。
より確実な方法を取るために、2人と1台で意見を交わす。
結果的に1番安パイをとって、午前中、団長を王都で仕事をし、昼休憩を境に戻ってきて現場指揮という形で続行。
足りない分の指揮命令系統はゾース副団長で代打を任せ、要所要所で飛行車ケンちゃんや陸、こちらのスタッフのサポートと魔法や戦術に関する授業などをすることで決定、実際にはほとんど変わらない状態でやはり落ち着いた。
数十分後
「こんな感じですかね。
それにしても…王様も大胆でアバウトなこと言われましたね、 ”獣面騎士軍なる集団とより一層、最大限に協力し、守るべきものを全て守り抜け“でしたっけ」
「陛下も判断をしかねる事が多いと汲み取って頂けたのだろう。力づくで私から聞き出せば歩み寄ってくれそうと聞いたギルドが離れ、王都の経営は破綻し、王都が潰れれば王国は終わりだ。ましてや貴殿達が撤退する判断を下せば、我々は太刀打ちも、逃げ帰る事すら叶わなくなる。
であれば無理矢理に私の手綱を引くより、「基本的に細かい事は気にしないでおくから、なんとかこれ以上の被害は抑えて、良きようにしてくれ」と言った方がマシだからな。」
「ですね。団長さんと王様が話の通じるタイプで本当によかったって心の底から思ってます。どこぞの医者もどきと大違いです」
「陛下はそうだと思うが、私はフォンドバーグ家の教えを守っているだけだ。たいそうなものでは無い。」
「だからこそですよ。貴族派の貴族って庶民なんてただの駒って感じの扱いで、貴族のために死んで当然って考え方がまるで常識みたいになってるみたいな事を聞いたことがあります。
もしそんな人が騎士団長で、そんな人が俺を呼んだとしてもあの手この手で逃げ仰せるか、本当に蹴散らしにかかるかもしれません。」
「この遠征と第二のことが落ち着くまで、そうならない事を願うばかりだ」
「そうですね、ここからが大勝負です。フォンドバーグ第三騎士団長、引き続きよろしくお願いします」
「こちらこそ、重ねてよろしく頼むぞ。ドラゴン殿」
「資料はケンちゃんに要点だけ伝えておけば大丈夫なので、今晩くらいはちゃんと寝て下さいね」
「ああ。言われずとも今夜は快眠できそうだ」
「それじゃ、失礼します」
カチャッ キー… バッタン
「あれ?ここじゃない…みんなどこ行ったんだろ…」
あ、事務班の迷い子ピノさんだ
「お疲れ様ですピノさん」
「あ、どもども。
ドラゴンの人がいるってことは…工房棟だから…ここは診療所か。つまりそこの扉からお馬さんの所に出ればいいんだ よしっ」
「よしっじゃありませんよちょい待てーい!どこをどうやったらそうなるんですか
ここはメイン棟で1階は下です。そこのは窓なんで外にすら出れませんし、工房は診療所ともメイン棟とも離れてます。」
「ありゃ?」
「ピノさん、面白いぐらいに迷子になってますね」
「迷子じゃない。みんなと事務室がどっか行っただけ」
「じゃあ迷子です」
「ちがう。きっと全部回ればそのうちたどり着く」
「それを迷子っていうんです」
「ちょっと出たら帰り道を覚えるのを忘れちゃっただけ」
「なお迷子です」
「誰とも会えずに心細くなっただけ」
「めちゃくちゃ迷子です。そろそろ気づいてくださいご自分が迷子なことに」
「はっ!! わたし…迷子…!」
「気付くのにだいぶ時間かかりましたね」
ピッ
「【事務班、事務班、応答願います】」
「【はい、グラシノですぅ】」
「【迷子のピノさんを回収しました。今ってどっちの事務室使ってますか?】」
「【サブ棟の事務室にいますですぅ。】」
「【わかりました。お連れしますね】」
「【お願いしますですぅ】」
「さて、行きましょっかピノさんっていない!?」
「どっち行った?」
『彼女はスマホを置いて来てシマッタようデス(汗)。通常時はワタシが誘導しているのデスが、彼女レベルになるト端末を所持してナイと誘導は出来マセン。』
「もう… 【探査】 こっちか」
「こっち?あっちか」
「いたいた」
ヒョイッ
「おりょ?」
「はい確保。戻りますよ迷子さん」
『油断も隙も無い方向音痴サンでスネ』
「あーれー 連れ去られるー」
「はいはい、事務班の元まで大人しくしててくださいねー あと、そういうのはもっと緊迫感ある言い方しましょうね」
「あい」
コンッコンッ
「ピノさんのお帰りでーす」
「はーいっ 今開けますですぅ」
ガチャっ
「はい、お届け人です」
「確かに、引き取りましたですぅ。」
チラッと中を見ると紙の高層ビルが連立しているのが目に飛び込んでくる。
薬品や消耗品、食材の出入りを司る出納帳や有高帳、第二の騎士・一般枠の生死を記した名簿やそれに関わる手続き書類、紙の健康観察記録簿などが積み上がっていた。 ウチの人工知能と魔導式印刷機を使っても間に合わない部分が出ていそうなのは火を見るより明らか。事務室に充満するインクと濃いコーヒーの匂いから誰でも理解できそうなほどだ。
「昨日一気にポーションの棚数出入りしましたけど、棚数の収支の計算大丈夫ですか」
「うぅ… 何本か合わない箇所がありますですぅ…」
「ですよね ちょっと見てもいいですか?」
1番収支が合わなかったというポーションの出入りを見てみる。
残っている箱を数え、1本でも出した箱は消費済みとして数える方法と、単純に本数で数える方法の両方で大体の帳尻を見ているようだが、昨日の日付を境に合わなくなってしまったようだ
シルヴィアがポーションを作った後は、鍋にチューブを沈めて吸引、箱にセットしたポーションの薬瓶100本に分岐して注がれる装置を毎回使っているから、ケンちゃん管理で棚入り数に間違いが起きるとは思えない。
となると、赤札隊、医療班、事務班の全員と残りの各上長を除く約140名の間で何かが起きたようだ。
「瓶を落としちゃったか、複数の箱を何箱も同時に出した間にずれたか…第二側の誰かがコッソリおかわりして飲んだか盗まれたか、そんな感じの……………あ、待って下さい…原因、俺か王都チームの可能性もありますね…、俺はご存知の通り現場で作成したり、第一の方に逃した人の分とかありますし、テーリオさん達にも何本か予備渡しておいたんで王都の常連さんに飲ませたりしたら絶対合わないはずです」
「確かにドラゴンさんもお薬を作れるからその分ズレますですね…」
「申し訳ないです」
「大丈夫でありますですよっ!人の命に変えられませんですから」
「とりあえず…今後の治療に問題ない数で済んでいますし、提出する書類には過不足の欄に赤ペンで日付けだけ書いて、紛失や破損による棚卸しの損失で処理しちゃいましょうか。
どうせと言っていいかはわかりませんが、この後の最終的な判断一つで帳簿は白紙にしなければいけなくなりますから。」
『「やっぱりかぁ…」』
「お気持ちはお察しします
でもこれは王都の国庫を大変な状態にしないために必要な事なんです。
今回は敷地の内と外で栽培、調達しているので原価は初期の種や苗代、つまりは初期投資の額面で済みますが、帳簿上では薬草と野菜の種苗と肥料、成長や収穫のために使った魔法代も費用に仮計上して薬草と食材を別で栽培原価を出して試算してるんですよね。一本あたりの原価に1日に出入りする薬数をかけたらだいたいいくらになりましたっけ」
「え~っと…」
「31万ゴールド。」
「王都の市場価値に直すとどうなりますか?」
「えーっと…原価に利益率をかけるので…一十百千万十万百万…」
「150万ゴールド端数省略。需要と諸費用によりけり高騰の可能性大。」
「ピノさん、暗算はすごいんですよね…」
「計算は1番早い代わりに、能天気と迷子だけが本当に"困ったちゃん"なんですぅ」
「ともあれ、ピノさんの暗算通りの数字を使えばこれまでにザッと計上を漏らしても王都の原価で3桁万、普通に売値計算をすれば4桁万、下手したら億単位にまで達します。ここまでは分かりますね?」
「はいですぅ」
「ふむふむ」
今回の遠征の主成分は市民の協力の元かき集めた比較的原価の安い種や苗、他は金属製品の一部や長期在庫、モノによっては冗談抜きで生ゴミから引っ張ってきた野菜の腐りかけたヘタや根っこ。
俺たちに支払われる報酬が固定制だとして、この土地、拠点は魔法だけで作ってるので建材費ゼロ、水道高熱代もほぼゼロ、設備費も2ヶ月の魔道具の貸出費用とそれに伴う設置工賃なので、たかが知れている。
「実際に支出した額、額面上の額、通常発生しているはずだった額の3つの比較をした時の差額に強化改良した武具の資産価値の増加で、あり得ない純利益が出てしまうっていう正解にして今の王都にとって一番敏感になるポイントがこの拠点でも発生するんです。
後の支出で明らかに魔法代の相場がエグい額になるので、最終的な収支は合うかも知れませんが」
「財務から探りが入っちゃいますですぅ」
「相互の利害関係崩壊の素…」
「理解が早くて助かります。
先生達や騎士の皆さんが口にしている”語られない英雄伝“っていうのはこういうことでもあるんです。
はっきり言います。この拠点の跡地と第三騎師団に、どこぞの欲深い貴族と俺たちを隔てる壁になってもらうためにも、綺麗事ばかり言えないのが心苦しいところではありますが、その時は…皆さんの頑張ってつけた帳簿を棚の奥の奥にしまわせて下さい」
「承知しましたですぅ」
『「分かりました…。」』
「あい。」
翌日
大食堂で食事を済ませた後、裏方班も全員集められ、ミーティングが行われることになった。
「皆、昨日二日間は大変ご苦労だった。私の急な判断に巻き込んでしまったにも関わらず最善に最も近い結果を生んでくれたこと、ここに団長として心から感謝する。
私の判断が遅かったばかりに多くの尊い命が失われた事、ギルド本部との調停業務のためにこれ以降皆に負担をかけてしまうこと、陛下や王宮の大臣達に対して放った私の言動などによって今後皆に多大なる重荷を背負わせてしまう事など、悔やまれる点が残ってしまっている事も合わせて謝罪する。本当に申し訳ない。」
こんなたくさんの部下達と関係者に対して躊躇無く深々と頭を下げるとは相変わらず腰の低い団長さんだ
「生存者を王都に送り返した今、私のようにどれだけ心にしこりが残っていようとワンス池群周辺に闊歩する異常の魔獣を討伐するという使命を果たさねばならない。
王国の名の下に、お前達自身の命を含む全ての命を守るため、我々は恥や騎士がどうこうではなく、1人の戦士として日々闘い抜いてきたことは皆同じ。
「騎士らしく」ではなく「誰かを守り助ける者」として、ここから先も心を一つにし、この遠征から全員が笑顔で帰還できる事を心から祈っている。 以上だ」
「皆さん、おはようございます。」
パラパラと返事が返ってくる。
ま、朝だからこんなものか
「えー、早速ですが、今後の予定についていくつか変更点がありますのでお伝えします。
昨晩お伝えした通り、団長さんが午前いらっしゃらない事がこれから先多くなります。なので今日以降こちら側から1人か2人サポートで戦闘班と動きますので頭に入れておいて下さい、よろしくお願いします。
そしてこれは皆さんが1番感じていることだとは思いますが、殲滅活動において目標地点に進めば進むほど上位種や変異種といった通常より強い固体が増えています。
そこで、回収された死体の遺伝子を詳しく調べたところ、上位種の20体に1体くらいの割合で生物の自然な進化の上であり得ない歪みが見つかりました。人工的に手を加えたものだと断定であり」
「なんかムズカしい話になりそーだな…」
「寝るなよ」
「多分無理だな」
「皆さんが戦っていた魔獣のほとんどが、何者かによって行われた、強化改良実験の失敗作に過ぎないかもしれません。」
『『「「 !!!!? 」」』』
「どういう意味だ?」
「今ので分かれよ…」
「分からない方もいらっしゃるようなので、
もうめちゃくちゃ結論だけ言いましょう。
今まで強すぎだと思っていたハイオークですらこれから先、”ハイオークごとき“と感じるほどのバケモノが溢れかえる程いる可能性がとてつもなく高いということです。」
『「…」』
「そんなにヤベーのか!?」
「理解遅すぎだろ」
「単純に力が強いだけならこのままでもなんとでもなりますが、判明しているクラッシュタートルだけで島亀や山亀くらいのサイズの個体が複数体いるようです。
魔力反応などを手がかりに探っていてもAランクがゴロゴロいます。
こちらも策を出し惜しみもしていられません。持ちうるものは全て講じます。
まず、軍チームの装備として新規投入した強化スーツ、あれを鎧を着ていた皆さんにも配備します。さらにもう一つ、クラッシュタートルの素材やオークの魔石などから作成したアーマー、こちらも全員に追加配備します。
皆さんの武器の強化付与ランクも1段階ずつ上昇、補助用の魔法をいくつか施したり、アサルトライフルや別で用意した魔道具も追加で配備します。
状況によっては次なる手に出ます。今説明すると訳が分からなくなるとのことなので後ほど、実際にお見せしますが、武具の改良を通して機動力、防御力、攻撃力を段階的に上げていくものだと思っていて下さい。
他にも討伐のための手段はありますので、死にに行くくらいなら好機の無理な深追いはせず、一撃離脱を徹底して下さい。いいですね」
シーン…
チャキっ…
「返事はぁ?」
『『「「 はいっ! 」」』』
「こちらからも以上です。今日も頑張っていきましょう。」
ヒュンッ
「ちょっと遠いですけど、ここでいいですか」
「構わない。部下達をよろしく頼んだぞ」
「最善を尽くします。団長さんも頑張って下さい。」
「ああ。」
「匠が言ってたガラスの破片は… これか」
『認識阻害系魔法を【解除】しマス』
割れた時の画を共有してもらう。こうすることで俺のスキルと併せ、目視では探しきれない破片のありかが分かる
50メートルくらい飛んだ物がある。加減間違ったとは聞いたけどなかなか派手にやったなぁ…っていうかその大臣よく死ななかったな
『余計なコトを考エテいる暇はありマセンよ。マスター」
「分かってるよ…」
「【修復(リペア)】」
カタカタカタッ…
転がっていた破片に力を与え、あるべき場所に帰るように促すと、ひとりでに舞い上がり、昨日の朝うっかりポッカリ開いてしまった大穴にパズルピースを組み立てるように嵌り合い、何事もなかったかのように繋がった。
「いっちょあがりっと」
『西方80メートルより人が向かッテ来ていマス』
「急いで戻ろう【陸】」
「【はぁ~~い】」
ヒュンッ
「おっ 来たな こっちは全員準備かんりょーだぜ」
「さーて皆さん、大暴れしに行きりますか」
『『「 おうっ!!!!!! 」』』
「…ん…?」
「昨日はありがと。おかげであの場にいた全部助けることができた。人間も、馬も、ね」
「ん。グッジョブしゅじん」
馬舎の方に目をやると、土地を外に延ばしたのか奥行きが増している。昨晩、オレが一切関与できない間にティー兄の判断と獣医師のサーガさんや従魔術師のニコさん指導の元で増設したもので、その中には1度しか見たことのない馬達が収まっている。
昨晩の送られてきた物資の中、ティー兄が採っておいてくれた薬草の箱の中に、コッソリと隠すようにロープやニンジンが入ったアイテム袋を見つけた時は一瞬荷物の間違いを疑ったが、
[馬 牧草 ニンジン 誘導]
赤札隊からのメッセージに紛れてこんな注文が送られてきていたのを見て語れぬ証人患者として急遽建物ごと回収、陸の空間魔法を通じて増設した馬舎へ招待したという訳だ。
「みんな…きのう…ストレス」
「お馬さん達が環境の変化にストレスを感じてるってことか、分かった。後で様子を見に回るよ」
「ん。」
「お馬さんの数増えたけど食料自給率は足りてる?」
「……ちょい狭い」
「やっぱり…。どうする?畑広げる?」
「ん。」
「人手は借りる?」
「…じゅうぶん。」
「皆さん手伝ってくれてるんだ」
「ん。」
「オッケ、とりあえず何面分拡げる?」
「いい。おれ…出来る」
「そっか」
確かに最初見た時よりさりげなく何列か増えてる。1面が赤々や黒々と実る危険物ゾーンがあっても、多様な需要に応えられているのがその証拠か。
「なにこれ?赤紫色のカブ?」
「違う」
「え?じゃあコレ何?」
「二十日大根。」
「デカイなおい!」
野菜ひとつひとつが尋常じゃないくらいデカい。
大根だけでまぁまぁ太めの切り株のような直径。キャベツやかぼちゃ、レタスなどの球体系に関しては、アメリカのハロウィンの時期にカボチャの大きさ競う大会でしか見ない超特大サイズ。どれも一つ持つのに抱えて歩かないとしんどそうなほどにデカイ。
毎日200人余りの食材を担う畑では、全ての野菜がとてつもない“大”進化を遂げていた。
小さいやつを探しても、通常2~3個の粒のところを10個ぐらい連なって入っている枝豆とか、栄養価が高すぎてか自ら輝きを放ってすらいる果物類が通常より一回り大きいくらいなものだ。
「肥料と魔法 合わせ技…。」
そう言うと鍬を地面に置き、腕につけたスマートウォッチを操作。すると陸がゲートを送ってくれるのでそこから、ナタ代わりに予備のナッケンジョーを1本を取り出し、ゲートは開きっぱなしにして準備完了。
「キャベツ…ニンジン…レタス…イチゴ…【集合】…」
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
トッテ トッテ トッテ トッテ トッテ トッテ
妙にムキムキな茎のような手足が生えてきたかと思うと自分で土から抜け出して、根や茎が付いたままこちらに走り向かってくる。
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ニョキニョキニョキ グググググググ…ボコっ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
「…【跳べ】…」
たった一言の号令を野菜達は逃さず、一切の乱れなく一斉にジャンプする。この時ばかりは堅牢なはずのこの土地全体で軽い地響きが起きる。
「…フンっ…!」
スパーーーーーーンッ!!!!!!!!!!
『【回収ヲ。】』
「【…】」
「【リクサン?お野菜の回収ヲ】」
「【……ファ~~~~い…】」
根とヘタをふた振りで切り落とし、3つに分かれた各部位をゲートが吸い込んでいく。
この体制がティー兄と時々来る手伝いだけで畑の栽培が出来ている最大の秘訣。
あらかじめ品種改良した種、日々出てくるお馬さんの馬糞から加工した肥料、専用に開発したいくつかの地属性植物系魔法を、植物本来の生命力の阻害にならないない範囲で惜しげもなく使い、野菜の成長速度、栄養、糖度、その他エトセトラを極限まで高めてているんだとか
ちなみに、可食部分はケンちゃんの介入の元、このまま調理班や馬世話班に分配され、後にケリーや、手の空いたスタッフ達によって洗浄化、最後に匠とケリーによって使用可能なサイズに斬り分けられる。
ただ、このシステムには少しだけデメリットがあって、通常の何倍もある巨大野菜がこちらに向かって押し寄せてくるように見えてしまうと最後、頭では分かっていても本能的に命の危機を感じてしまうし、食べる時にどうしてもこの手足が生えた野菜達が土から抜け出て襲ってくるように見えるシーンがフラッシュバックして箸やフォークが止まってしまう。
便利なことに間違いはないけど、袋を持つ側の視点としては勘弁。できることなら収穫シーンは見たくない。顔はもちろん表情なんてものは無いから余計に怖くて
「お馬さん…診断。」
「あ、はい。いってきまーす…」
早よ行ってこいとのことなので農場ゾーンを後にし、お隣のお仕事現場を見に行く。
徒歩20秒ほどで到着するもう一つの医療現場ではサーガさん、ニコさんを筆頭に30名のスタッフが沢山のお馬さん達と必死に向き合っていた。
「プルルルッ」
「お薬飲みましょうね~。お口開けてもらえるかな~?」
ア~
「はーいおりこうさんですね~」
パクッ
「よ~しよくがんばりました」
ナデナデ
「あっ ドラゴンさん」
「お疲れ様です。」
『「ヒヒ~~~ン」』
「お疲れ様で みんなどしたのどしたのっどうしたのっキャッ!」
「おっととと 大丈夫ですか」
「はい…ありがとうございます」
「えらくみんな落ち着きが無いみたいですね
バイタルチェックはしてますか」
「こまめにやってるんですがあまり良くないですね…
昨晩から朝方にかけて中庭にいっぱい人がいたのと寝床が変わった影響であんまり眠れていないんです。食欲もあまりないみたいで」
『「ヒヒ~~~ン」』
「寝不足とストレスは彼らにとって負担が大きすぎますからね」
「みんな助かってよかったとは思うんですけど、ちょっとの油断も許されない子達がまだいて…
せめて寝かせてあげたいんですが、どうしても寝てくれなくて…」
「こういう場合、回復魔法によるリラックス療法が確実ですけど、皆さんが総手でやっても魔力が足りるかどうか…、全員が全員、回復魔法を使える訳でもないですからね」
『念話と従魔術ヲ併せた魔法でワタシがサポートすれば意思疎通が可能デス』
「そっか!気持ちは言葉だけじゃないってヤツですね!?」
「多分ちょっとだけ違うと思うんですけど…まぁいいか」
【あいぼう…どこ?】
【さみしいよ…あにき…】
【きょうはナデナデしにきてくれないの?】
【いっしょに…またはしりたいよ…】
「すごい…みんなの声が分かる…」
俺も彼らの感情が痛いくらいに伝わってくる。
どの子がどれを言っているかまではたくさんいすぎて分からないが、乗り手や同じ馬の仲間を探しているようだった。
「お馬さんと乗り手って基本的にずっと同じペアなんですか」
「相性の問題とかもありますけど、基本的にお馬さんは1人、多くても2人に一頭割り当てられてます。
騎馬になったらその一生を相棒の騎士と共に捧げることになりますから、相棒が亡くなったとなったら急に体調を崩しちゃう子は多いです。」
「やっぱりお馬さんも分かるんですね、相棒や仲間が病気だったり、亡くなったりすると」
「そうですね…」
【はしりたいよ…】
「走らせてあげますか」
「え…でも…」
「気休めにしかならないと思いますけど、彼らの相棒に会わせてあげることはできます」
「ケンちゃん」
『要請を出しマス』
数分後
「なんか馬の建てもんもデカくなってね?」
「当然だ、彼らが危険を冒してまで馬も救出したのだから。」
「とことんまでやらねーと気がすまねんだなあいつ」
「テーリオ」
「褒めてんだよ
さすがに人間しか無理かと思ってたからな」
「人馬一体の騎士にとって馬の死は騎士の死と同じ。見捨てることはできない。」
「ギルおめぇ…人間のこと以外になると口数増えるんだな…」
「黙れ、刻むぞ」
「怖ぇって」
「おーうっ きたぞー」
「あっ お疲れ様です皆さん」
「問題の馬達は」
「こっちです」
ションボリ…
「元気ないですね」
「大丈夫かコイツら?走ってくれんのかよ」
「そのために本職の皆さんに来てもらったんです。俺が鎧着ても多分乗り手として役不足だと思うんで。」
「でも…ボク達は彼らの相棒じゃ無いので乗って走ったところで彼らの気持ちには…」
「大丈夫です。【ミラージュ】」
「いったい何を…ボクが7人!?」
「魔法の変装…この前やってたやつか」
「そういや前にも第三のとこに来てたんだっけな」
「テーリオさんはサボってたから見てないですよね」
「へへっ まーな」
「照れるな。褒められることじゃないぞ」
「この魔法を使って、本来ならいるはずのない方達を演じればいいんですね」
「はい。俺は第三騎師団の方達以外の顔は知りませんし、騎馬は専門外です。なるべく彼らにストレスを与えることなく心の整理をつけさせたいんです」
「そういうことなら協力するが、私たちもそんなに知っているわけではないからな…」
「テーリオさんは?結構いろんな人と仲良いですよね」
「全員までは覚えてねぇ。オレがわかんのは呑める店で見る顔と、訓練サボった時に屋根から見える顔だけな。」
…ボソっ…
「全員覚えてるなんて言ったのは流石にハッタリだっての…」
「だとしたら何人くらい覚えているんだ」
「そう言われてもよ…オレ50から先はまともに数えらんねぇからな…」
『ソノ50が何回分か、数える事は出来マス?』
「第二の顔だろ? ンー……ンー…2回か…3回くらいか?」
「100人以上150人いないか位…」
『「充分だろ」』 『「十分です」』
「そか?」
「この中で乗るの得意な人は」
「ドルガン、ギルとスコットだな。テーリオは?」
「馬はウチにいたはいたがよ、じいちゃんか兄ちゃんの後ろにしか乗ったことねぇんだよ。近くの山でじいちゃんが可愛がってた闘牛と魔熊とグランドボアならよく乗ってたけどよ」
『「充分すぎるだろ」』 『「充分すぎますね」』
職人でかつスライム飼ってて、近所の山には馬に牛に熊にイノシシにって…テーリオさんの家系は金太郎の子孫なのか…?
「そうですね…それなら念話である程度の意思疎通が取れるんで大丈夫だと思います。4名は手分けして一緒に走ってあげて下さい。」
「おう」「「分かった」」「はい」
「トレバーさんとルチオさんは第二サイドの騎士の記憶データを集めて下さい。
治療とかが済んでいる人で連れて来れる方も連れて来てあげて下さい。本人ならわざわざ走らなくても顔を見るだけで十分落ち着くはずです」
「了解」「わかりました」
「俺は第二側の皆さんにあまり会うわけにはいきません。魔法で変装してサーガ先生と回復魔法で癒してみますので、話すときは」
「分かっている。マイク越しに、だろ。」
「お願いします」
「団長さんには俺から説明します。
ニコさんは皆さんにこのことを伝達してもらえますか」
「分かりました」
「それじゃ、始めるか」
「はいっ」
『ミッション、開始』
「【ミラージュ】」
「【【………【【【リフレッシュ】】】…………】】」
「君の相棒さんのことを教えてくれるかな」
『記憶データと名簿データの照合を開始シマス』
『【ミラージュ】 発動シマス』
「よぉプレシアス3世、元気ねぇんだってな」
『アニキ?アニキ!』
ベロンッ
「ヘヘッなんだよ全然元気じゃねぇか。
うっし ちょっくら外走るか」
『ウン!!』
「おぉ…落ち着いた…」
「鞍つけてやってくれ」
「分かりました。」
「さみしかったですよね…相棒が急にいなくなって。」
【うん…】
「少し落ち着いたら私が相棒さんの代わりに乗って、走りましょう。」
【いや!ブライアンしか乗せいないもん!!】
「お願いします」
『記憶データを読込…完了。【ミラージュ】発動しマス』
【ブライアン!】
「一緒に走ってくれますか?」
【うん!はしる!!】
「副団長!」
「聴取が終わった者はこっちに集めてある。連れて行け」
「はい!」
「皆さーん!!少し手伝って下さーい!!」
「そうか…すぐ行く」
「あちらです」
『記憶データコピー成功』
「なぜもっと早く言わなかった!」
「私に言われても…」
「こうしちゃおれん!今行くぞブルートルズ!待っていろブルートルズ!!」
『記憶データコピー成功』
「何だと!? どこに行けばいい!?」
「そこから外に出て下さい。案内の者がいます」
『記憶データコピー成功』
数十分後
広場には沢山の人間と馬が集まり、横に3~4頭ずつ並んだ列が一定の幅を空けて馬の早歩きペースで周回していた。
「よーしよしよしよし」
ベロンッ
「うわっと はははっ 私からは塩分摂っちゃダメだぞ」
「サーガ先生」
「どうした?」
「こっちから向こうのお馬さん達のほとんどが落ち着きを取り戻しました」
「残りのお馬さんは赤札隊と彼のミラージュの順番待ちといった感じか」
「そうなんです。ただ…」
「どうした」
「逆にお馬さんの方がいない方達も大勢詰めかけていて、乗せてくれって」
「そうか…分かった。30分後に第三の方のお馬さんに走ってもらおう。
人懐っこい子の選別はできるな」
「やってみます」
ビーーっ!!! ビーーっ!!!
『緊急事態発生
緊急球事態発生」
『「!!」』
「【拠点北西部200m地点ヨリ、はぐれと思わレル魔獣数匹の進行を確認
拠点北西部200m地点ヨリ、はぐれと思わレル魔獣が数匹進行を確認
現在、防衛班長が深めの休眠状態にテ、人力による防衛の必要アリ、初級警戒状態と設定しマス。
活動可能な戦闘班は、タダチに襲来に備えテ下サイ】』
「魔獣の警戒情報…!?」
「動揺するな。端末放送越しであって全体放送が鳴っているわけじゃない。
焦らずゆっくりでいい。安全を優先して馬達を戻していくぞ」
「はいっ!」
「サーガ先生」
「誰だ君はっ あぁそうだった、君か」
「【ミラージュ解除】
魔獣は手隙の人達で対応できるそうです。
近くなので、馬達は出なくていいと」
「そうか。ひとまずはよかった」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
「あっ 【テーリオさん、ギルさん、】」
ギクッ
「【さりげなく馬のまま出動しないでください。】」
「バレた~!」
「くっ…」
ピピーッ ピピーッ
「【はい。 ……了解、向かいます。
B型の人工輸血液ですか、15番の引き出しです。精神ポーションも出してください。倉庫係の亀さんが完全に寝ていて空間倉庫のアクセス止まってますが、残数大丈夫ですか】」
「何かあったのか」
「患者の急変があったそうです。ちょっと抜けます」
「問題ない。あとは任せてくれ」
「お願いします。
【り…】そうだ寝てるんだった」
「走っていくか【インビジブル】【脚力強化】
行ってきまーす」
「消えた!?」
「耳と魔力に集中して見てみるんだ。彼は目視で認識できなくなる魔法を使っただけで消し飛んだわけでは無い」
「…! ホントだ、走ってる…もう着いちゃった」
「いっけねっ お面忘れてたぁ!」
「なんて青年だ…あれで医者じゃないと言い張るが、彼ほどのドクターはどこを探してもいないだろうな」
「薬品治療に魔法治療、そして、職人治療の権威ですね」
「職人医療…なかなか面白いことを言うな」
「あれれ~?先生も興味出ちゃってるんですか~?職人医療に」
「バカ言うな。私は不器用なんだぞ」
「ふふふっ」「笑うな」
なんだかんだで夕方
「聴取と治療も完了、なんとか落ち着きましたね」
「ああ。ただ本当に良かったのか?市民枠の2名を先に送り返したりしてしまって」
「ロポッソさんとケインさんでしたっけ、あの2人は問題ありません。
こちら側の信頼性を高めるためにも瀕死状態から回復した人達を数名ギルドの保護下に引き渡し、王都でも損害保険や補償請求の手続き準備を進めてもらっておいた方が経済的にも行政的にも混乱は少なく済むはずです。
気になる所があるとすると、俺たちのことを少しでも目撃した人がギルド側に背格好を話したりしそうなくらいですか。」
「問題無い。貴殿達に関する詮索は控えるように伝えてある。万が一漏れても騎士団の権限で揉み消すことはできる。」
「そこはパワープレイなんですね」
「死ぬはずだった大勢の命が、貴殿達と第三期師団が手を取り合ったことで救えたんだ。それくらいはゴリ押させてもらう。」
「なるほど」
「ただ…」
「どうしました?また騎士団としての面目の話ですか」
「いや、少し違う。贅沢が言えるなら、もう少しだけ欲張れるなら、亡くなった者達の魂も救えたらもっといいと思ってしまっただけだ。
本当に…それだけなんだ」
絶対それだけなわけがない。
どこの何を推理するまでもなく、この人の考えが透けて見えた。
「死者と話せる魔法が使えたら直接謝罪したいとか考えてますね」
「…」
「違いますか」
「…なぜ分かった」
「さぁ。なんででしょうね。」
「貴殿にしてはずいぶん雑な返しだな」
「分かったものは仕方ないじゃないですか。分かり合えずに殺し合うよりいいと思いますけどね、俺は。」
「そうはいっても現実として死んでしまった者にこちらの言葉は通じない。
ましてや我々には過去を悔やんでいる余裕すら無い。ならば答えはひとつ。
救えなかった命を背負って生き、この先は救えなかった以上の命を護り続けるまでだ。」
「そうですか」
「なんだかんだ俺と団長さんの意見ってよく割れますよね」
「そうだろうか?貴殿が選択肢を増やしてくれている事は事実だと思うが、そこまで食い違っているとは思わないぞ」
「俺、言いましたよね、
“仲間がみんな笑顔で帰るために全力で対応する。”って。
そのためには1人でも死なれては困るって」
「まさか…! 死者を蘇らせようとか考えておられるのか」
「そのまさかです」
「いくらそちらが凄腕といえど古代の技術になってくる。 そんなことは絶対に不可能だ」
「やっぱりそう思いますよね。
普通は」
「なに…?」
コトッ…
「フルポーションです」
「振るポーション…?聞いたことがないが、振って効果が出るポーション…ではないなその顔は」
「はい、予想の筋道は悪くないですけど違います。振るんじゃ無くてフル、基本的になんでも治るっていうポーション。伝説の秘薬エリクサーの兄弟みたいなもので、昨晩から緊急的に使用を承諾している古代の錬金秘薬のひとつです。それから」
コトッ コトッ
「シルヴィアがフルポーションを材料の足りない状態で試作した偶然の産物、こっちはそれに俺が手を加えた薬品です。どちらも副作用がキツすぎるのもあって名前はまだありません。
フルポーションより全然効果は劣りますが、それに手が届かないでもない程度の質は持っています。
古代は古代、現代は現代である事実に変わりはありませんが、逆に言えば現代にある技術の応用を重ねに重ねれば、現代のやり方で古代の秘術に手が届く。」
「そうはいっても…古代の技術だぞ」
「確かに、古代の技術では錬金術と聖魔法、死霊魔法の合わせ技。普通に応用しようたってそうはいきません。
ですが、身体組織の再生ができれば聖魔法と死霊魔法もそこまで複雑なものは必要なくなります。もしかしたら基本属性魔法で蘇生できたりする可能性も。」
「そんな無茶なこと…
そうか…切り落とされた腕の再生…!」
「正解です。あの手術でやったことを身体全部、それも大まかな意味で人型魔獣の血肉を材料に人間の身体にって感じで応用できれば魂以外の要素は揃ってしまうんです。
どのみちご遺体にも最大限の治療を施して、ご遺族に引き渡す為に棺に納めるよう計画していたところ。
良くか悪くか、体温や水分、血流、鼓動、酸素、必要な栄養素を魔法や拠点内にある資機材をかき集めて補うことは理論上可能になってしまいつつあるんです。」
『ご遺体はマスターのスキルによって修復できマスし、ワタシを生命維持装置のメインシステムとして組み込めバ、人工的に生命活動を再現する事ハ可能デス』
「あとはご本人の魂と身体が引き合ってくれるかどうか、そこに全てがかかってます」
「リスクはないのか」
「霊魂が魔獣化してしまっていたり、よその誰かの霊魂が引き合ってしまう可能性はあります。」
「それだと承認できかねるぞ」
「分かってます。
ご遺体を回収している時に出来るかもって気づいてケンちゃんに演算をしてもらっている仮説の段階。
物事には優先順位ってものがありますし、最悪の未来をひとつ回避し終わった今、目の前にあることに集中したいのはあります。
なので、今日の会議では選択肢としての提示だけしてそこでおしまいにさせて下さい。
今後の討伐活動で万が一、第三からも死者が出た場合の保険として追々考えてもいいんじゃないかなって。」
「ただの思いつきでは無く、それなりの条件が本当に揃うのなら、確かに一考の価値はあるかもしれないな」
「ご存知の通り、こちらはいろんなことを想定して準備をしています。
もしもの事態の対処手順として先生達には話していて団長さんに話していなかったり、話す時間があまりなかったり情報が変に漏れ広がったりしないように誰にも話していない物はまだいくつかあります。」
「そうだろうな。私もこの拠点が浮いて大空を移動してもそこまで驚かない気がしている。」
「全員連れてこの拠点ごと空路で避難するだけなら昨晩の治療より簡単です」
「……」
「そんな遠い目で俺を見つめないでください。」
「このことについて一旦考えるのはよそう。」
「お互い寝てないですし、これ以上脱線しても時間が足らなくなるばかりですもんね。」
治療や調書の波も概ね収まり、あとは王都に送り返すだけとなった。それに際し、止めていたこちらの仕事の再開の目処もたった。
あらかじめ共有していたが、今回の遠征の目的は騎士団の任務だけではない。シルヴィアの社会復帰のための最初の一歩と、元ヴィンセント家の仇の捜索が別問題で絡んでくる。
当然、その3つの問題のために俺たちと騎士団がぶつかり合うようなことがあってはならない。
互いの落とし所を決めつつも、片方の問題を取りこぼせば全てにおいて歯車が合わなくなることをより強く実感する。
加えて目の前にいる騎士団長には、王都の被害の調整という大仕事も残っているが、現場の指揮を放棄するわけにも、死ぬわけにもいかない。
より確実な方法を取るために、2人と1台で意見を交わす。
結果的に1番安パイをとって、午前中、団長を王都で仕事をし、昼休憩を境に戻ってきて現場指揮という形で続行。
足りない分の指揮命令系統はゾース副団長で代打を任せ、要所要所で飛行車ケンちゃんや陸、こちらのスタッフのサポートと魔法や戦術に関する授業などをすることで決定、実際にはほとんど変わらない状態でやはり落ち着いた。
数十分後
「こんな感じですかね。
それにしても…王様も大胆でアバウトなこと言われましたね、 ”獣面騎士軍なる集団とより一層、最大限に協力し、守るべきものを全て守り抜け“でしたっけ」
「陛下も判断をしかねる事が多いと汲み取って頂けたのだろう。力づくで私から聞き出せば歩み寄ってくれそうと聞いたギルドが離れ、王都の経営は破綻し、王都が潰れれば王国は終わりだ。ましてや貴殿達が撤退する判断を下せば、我々は太刀打ちも、逃げ帰る事すら叶わなくなる。
であれば無理矢理に私の手綱を引くより、「基本的に細かい事は気にしないでおくから、なんとかこれ以上の被害は抑えて、良きようにしてくれ」と言った方がマシだからな。」
「ですね。団長さんと王様が話の通じるタイプで本当によかったって心の底から思ってます。どこぞの医者もどきと大違いです」
「陛下はそうだと思うが、私はフォンドバーグ家の教えを守っているだけだ。たいそうなものでは無い。」
「だからこそですよ。貴族派の貴族って庶民なんてただの駒って感じの扱いで、貴族のために死んで当然って考え方がまるで常識みたいになってるみたいな事を聞いたことがあります。
もしそんな人が騎士団長で、そんな人が俺を呼んだとしてもあの手この手で逃げ仰せるか、本当に蹴散らしにかかるかもしれません。」
「この遠征と第二のことが落ち着くまで、そうならない事を願うばかりだ」
「そうですね、ここからが大勝負です。フォンドバーグ第三騎士団長、引き続きよろしくお願いします」
「こちらこそ、重ねてよろしく頼むぞ。ドラゴン殿」
「資料はケンちゃんに要点だけ伝えておけば大丈夫なので、今晩くらいはちゃんと寝て下さいね」
「ああ。言われずとも今夜は快眠できそうだ」
「それじゃ、失礼します」
カチャッ キー… バッタン
「あれ?ここじゃない…みんなどこ行ったんだろ…」
あ、事務班の迷い子ピノさんだ
「お疲れ様ですピノさん」
「あ、どもども。
ドラゴンの人がいるってことは…工房棟だから…ここは診療所か。つまりそこの扉からお馬さんの所に出ればいいんだ よしっ」
「よしっじゃありませんよちょい待てーい!どこをどうやったらそうなるんですか
ここはメイン棟で1階は下です。そこのは窓なんで外にすら出れませんし、工房は診療所ともメイン棟とも離れてます。」
「ありゃ?」
「ピノさん、面白いぐらいに迷子になってますね」
「迷子じゃない。みんなと事務室がどっか行っただけ」
「じゃあ迷子です」
「ちがう。きっと全部回ればそのうちたどり着く」
「それを迷子っていうんです」
「ちょっと出たら帰り道を覚えるのを忘れちゃっただけ」
「なお迷子です」
「誰とも会えずに心細くなっただけ」
「めちゃくちゃ迷子です。そろそろ気づいてくださいご自分が迷子なことに」
「はっ!! わたし…迷子…!」
「気付くのにだいぶ時間かかりましたね」
ピッ
「【事務班、事務班、応答願います】」
「【はい、グラシノですぅ】」
「【迷子のピノさんを回収しました。今ってどっちの事務室使ってますか?】」
「【サブ棟の事務室にいますですぅ。】」
「【わかりました。お連れしますね】」
「【お願いしますですぅ】」
「さて、行きましょっかピノさんっていない!?」
「どっち行った?」
『彼女はスマホを置いて来てシマッタようデス(汗)。通常時はワタシが誘導しているのデスが、彼女レベルになるト端末を所持してナイと誘導は出来マセン。』
「もう… 【探査】 こっちか」
「こっち?あっちか」
「いたいた」
ヒョイッ
「おりょ?」
「はい確保。戻りますよ迷子さん」
『油断も隙も無い方向音痴サンでスネ』
「あーれー 連れ去られるー」
「はいはい、事務班の元まで大人しくしててくださいねー あと、そういうのはもっと緊迫感ある言い方しましょうね」
「あい」
コンッコンッ
「ピノさんのお帰りでーす」
「はーいっ 今開けますですぅ」
ガチャっ
「はい、お届け人です」
「確かに、引き取りましたですぅ。」
チラッと中を見ると紙の高層ビルが連立しているのが目に飛び込んでくる。
薬品や消耗品、食材の出入りを司る出納帳や有高帳、第二の騎士・一般枠の生死を記した名簿やそれに関わる手続き書類、紙の健康観察記録簿などが積み上がっていた。 ウチの人工知能と魔導式印刷機を使っても間に合わない部分が出ていそうなのは火を見るより明らか。事務室に充満するインクと濃いコーヒーの匂いから誰でも理解できそうなほどだ。
「昨日一気にポーションの棚数出入りしましたけど、棚数の収支の計算大丈夫ですか」
「うぅ… 何本か合わない箇所がありますですぅ…」
「ですよね ちょっと見てもいいですか?」
1番収支が合わなかったというポーションの出入りを見てみる。
残っている箱を数え、1本でも出した箱は消費済みとして数える方法と、単純に本数で数える方法の両方で大体の帳尻を見ているようだが、昨日の日付を境に合わなくなってしまったようだ
シルヴィアがポーションを作った後は、鍋にチューブを沈めて吸引、箱にセットしたポーションの薬瓶100本に分岐して注がれる装置を毎回使っているから、ケンちゃん管理で棚入り数に間違いが起きるとは思えない。
となると、赤札隊、医療班、事務班の全員と残りの各上長を除く約140名の間で何かが起きたようだ。
「瓶を落としちゃったか、複数の箱を何箱も同時に出した間にずれたか…第二側の誰かがコッソリおかわりして飲んだか盗まれたか、そんな感じの……………あ、待って下さい…原因、俺か王都チームの可能性もありますね…、俺はご存知の通り現場で作成したり、第一の方に逃した人の分とかありますし、テーリオさん達にも何本か予備渡しておいたんで王都の常連さんに飲ませたりしたら絶対合わないはずです」
「確かにドラゴンさんもお薬を作れるからその分ズレますですね…」
「申し訳ないです」
「大丈夫でありますですよっ!人の命に変えられませんですから」
「とりあえず…今後の治療に問題ない数で済んでいますし、提出する書類には過不足の欄に赤ペンで日付けだけ書いて、紛失や破損による棚卸しの損失で処理しちゃいましょうか。
どうせと言っていいかはわかりませんが、この後の最終的な判断一つで帳簿は白紙にしなければいけなくなりますから。」
『「やっぱりかぁ…」』
「お気持ちはお察しします
でもこれは王都の国庫を大変な状態にしないために必要な事なんです。
今回は敷地の内と外で栽培、調達しているので原価は初期の種や苗代、つまりは初期投資の額面で済みますが、帳簿上では薬草と野菜の種苗と肥料、成長や収穫のために使った魔法代も費用に仮計上して薬草と食材を別で栽培原価を出して試算してるんですよね。一本あたりの原価に1日に出入りする薬数をかけたらだいたいいくらになりましたっけ」
「え~っと…」
「31万ゴールド。」
「王都の市場価値に直すとどうなりますか?」
「えーっと…原価に利益率をかけるので…一十百千万十万百万…」
「150万ゴールド端数省略。需要と諸費用によりけり高騰の可能性大。」
「ピノさん、暗算はすごいんですよね…」
「計算は1番早い代わりに、能天気と迷子だけが本当に"困ったちゃん"なんですぅ」
「ともあれ、ピノさんの暗算通りの数字を使えばこれまでにザッと計上を漏らしても王都の原価で3桁万、普通に売値計算をすれば4桁万、下手したら億単位にまで達します。ここまでは分かりますね?」
「はいですぅ」
「ふむふむ」
今回の遠征の主成分は市民の協力の元かき集めた比較的原価の安い種や苗、他は金属製品の一部や長期在庫、モノによっては冗談抜きで生ゴミから引っ張ってきた野菜の腐りかけたヘタや根っこ。
俺たちに支払われる報酬が固定制だとして、この土地、拠点は魔法だけで作ってるので建材費ゼロ、水道高熱代もほぼゼロ、設備費も2ヶ月の魔道具の貸出費用とそれに伴う設置工賃なので、たかが知れている。
「実際に支出した額、額面上の額、通常発生しているはずだった額の3つの比較をした時の差額に強化改良した武具の資産価値の増加で、あり得ない純利益が出てしまうっていう正解にして今の王都にとって一番敏感になるポイントがこの拠点でも発生するんです。
後の支出で明らかに魔法代の相場がエグい額になるので、最終的な収支は合うかも知れませんが」
「財務から探りが入っちゃいますですぅ」
「相互の利害関係崩壊の素…」
「理解が早くて助かります。
先生達や騎士の皆さんが口にしている”語られない英雄伝“っていうのはこういうことでもあるんです。
はっきり言います。この拠点の跡地と第三騎師団に、どこぞの欲深い貴族と俺たちを隔てる壁になってもらうためにも、綺麗事ばかり言えないのが心苦しいところではありますが、その時は…皆さんの頑張ってつけた帳簿を棚の奥の奥にしまわせて下さい」
「承知しましたですぅ」
『「分かりました…。」』
「あい。」
翌日
大食堂で食事を済ませた後、裏方班も全員集められ、ミーティングが行われることになった。
「皆、昨日二日間は大変ご苦労だった。私の急な判断に巻き込んでしまったにも関わらず最善に最も近い結果を生んでくれたこと、ここに団長として心から感謝する。
私の判断が遅かったばかりに多くの尊い命が失われた事、ギルド本部との調停業務のためにこれ以降皆に負担をかけてしまうこと、陛下や王宮の大臣達に対して放った私の言動などによって今後皆に多大なる重荷を背負わせてしまう事など、悔やまれる点が残ってしまっている事も合わせて謝罪する。本当に申し訳ない。」
こんなたくさんの部下達と関係者に対して躊躇無く深々と頭を下げるとは相変わらず腰の低い団長さんだ
「生存者を王都に送り返した今、私のようにどれだけ心にしこりが残っていようとワンス池群周辺に闊歩する異常の魔獣を討伐するという使命を果たさねばならない。
王国の名の下に、お前達自身の命を含む全ての命を守るため、我々は恥や騎士がどうこうではなく、1人の戦士として日々闘い抜いてきたことは皆同じ。
「騎士らしく」ではなく「誰かを守り助ける者」として、ここから先も心を一つにし、この遠征から全員が笑顔で帰還できる事を心から祈っている。 以上だ」
「皆さん、おはようございます。」
パラパラと返事が返ってくる。
ま、朝だからこんなものか
「えー、早速ですが、今後の予定についていくつか変更点がありますのでお伝えします。
昨晩お伝えした通り、団長さんが午前いらっしゃらない事がこれから先多くなります。なので今日以降こちら側から1人か2人サポートで戦闘班と動きますので頭に入れておいて下さい、よろしくお願いします。
そしてこれは皆さんが1番感じていることだとは思いますが、殲滅活動において目標地点に進めば進むほど上位種や変異種といった通常より強い固体が増えています。
そこで、回収された死体の遺伝子を詳しく調べたところ、上位種の20体に1体くらいの割合で生物の自然な進化の上であり得ない歪みが見つかりました。人工的に手を加えたものだと断定であり」
「なんかムズカしい話になりそーだな…」
「寝るなよ」
「多分無理だな」
「皆さんが戦っていた魔獣のほとんどが、何者かによって行われた、強化改良実験の失敗作に過ぎないかもしれません。」
『『「「 !!!!? 」」』』
「どういう意味だ?」
「今ので分かれよ…」
「分からない方もいらっしゃるようなので、
もうめちゃくちゃ結論だけ言いましょう。
今まで強すぎだと思っていたハイオークですらこれから先、”ハイオークごとき“と感じるほどのバケモノが溢れかえる程いる可能性がとてつもなく高いということです。」
『「…」』
「そんなにヤベーのか!?」
「理解遅すぎだろ」
「単純に力が強いだけならこのままでもなんとでもなりますが、判明しているクラッシュタートルだけで島亀や山亀くらいのサイズの個体が複数体いるようです。
魔力反応などを手がかりに探っていてもAランクがゴロゴロいます。
こちらも策を出し惜しみもしていられません。持ちうるものは全て講じます。
まず、軍チームの装備として新規投入した強化スーツ、あれを鎧を着ていた皆さんにも配備します。さらにもう一つ、クラッシュタートルの素材やオークの魔石などから作成したアーマー、こちらも全員に追加配備します。
皆さんの武器の強化付与ランクも1段階ずつ上昇、補助用の魔法をいくつか施したり、アサルトライフルや別で用意した魔道具も追加で配備します。
状況によっては次なる手に出ます。今説明すると訳が分からなくなるとのことなので後ほど、実際にお見せしますが、武具の改良を通して機動力、防御力、攻撃力を段階的に上げていくものだと思っていて下さい。
他にも討伐のための手段はありますので、死にに行くくらいなら好機の無理な深追いはせず、一撃離脱を徹底して下さい。いいですね」
シーン…
チャキっ…
「返事はぁ?」
『『「「 はいっ! 」」』』
「こちらからも以上です。今日も頑張っていきましょう。」
ヒュンッ
「ちょっと遠いですけど、ここでいいですか」
「構わない。部下達をよろしく頼んだぞ」
「最善を尽くします。団長さんも頑張って下さい。」
「ああ。」
「匠が言ってたガラスの破片は… これか」
『認識阻害系魔法を【解除】しマス』
割れた時の画を共有してもらう。こうすることで俺のスキルと併せ、目視では探しきれない破片のありかが分かる
50メートルくらい飛んだ物がある。加減間違ったとは聞いたけどなかなか派手にやったなぁ…っていうかその大臣よく死ななかったな
『余計なコトを考エテいる暇はありマセンよ。マスター」
「分かってるよ…」
「【修復(リペア)】」
カタカタカタッ…
転がっていた破片に力を与え、あるべき場所に帰るように促すと、ひとりでに舞い上がり、昨日の朝うっかりポッカリ開いてしまった大穴にパズルピースを組み立てるように嵌り合い、何事もなかったかのように繋がった。
「いっちょあがりっと」
『西方80メートルより人が向かッテ来ていマス』
「急いで戻ろう【陸】」
「【はぁ~~い】」
ヒュンッ
「おっ 来たな こっちは全員準備かんりょーだぜ」
「さーて皆さん、大暴れしに行きりますか」
『『「 おうっ!!!!!! 」』』
10
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