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HO9.滅亡使命の救済者(7話)
4.異世界の漂着場
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神林杏はインターネットで、謎の宇宙船の噂を検索していた。
しかし、情報が古かったり、明らかに眉唾なものが多くて苛立ちを抑えられない。当然ではあるが、五百蔵イオタは相当上手く隠したようだ。
こうなったら、多摩地区の廃墟という廃墟を片っ端から探すしかない。彼は「多摩地区 廃墟」で検索を掛け、次の目的地を定めた。
(早く浪越さんの星を……『地球』を救わなきゃ)
◆◆◆
小西朝菜は交通ICカードで改札を抜けると、駅員に聞いた電車に飛び乗った。
(杏くんはきっとあの場所を目指している筈。グレートコスモスの漂着場)
魔法少女のアニメで、敵として登場するものの、魔法少女との心の交流を経てその助けになるキャラクターがいる。そのキャラクターは作中で「グレートコスモス」と呼ばれる集団の一員であった。自らを「天啓」によって魔法少女と思い込んでいる朝菜は、杏のことをそのグレートコスモスの所属だと思い込んでいるのである。
作中では、グレートコスモスは魔法少女と交流を深めるが、やはり敵対する立場であり、魔法少女と別れることを決意して本拠地へ戻り戦いの準備を整えようとするエピソードがあるのだが、そのモデルとなった場所があるらしい。母が話していたのを思い出した。
「ほら、ここだって。確かにあの森に似てるよね」
母がそう言って、インターネットの画像を見せてくれたことがある。あの辺りだよ、と地名も。
「えー! すごい。本当にグレートコスモスの漂着場があるの!?」
朝菜は、アニメの光景がリアルにあることを知って興奮した。
「ここはモデルになった場所だから、グレートコスモスの漂着場ではないけどね」
「行ってみたい!」
「うーん、ちょっと危ない場所だから……」
母は言葉を濁した。朝菜は知り得ないことだったが、要するに廃墟だったのである。
(ママは危ないって言ってたけど、今の私は救済の魔法少女なんだから!)
だから大丈夫! 何が出てきたってやっつけてやる!
(杏くんはもしかしたら、グレートコスモスとして向こうに戻ろうとしてるのかも。そんなの絶対駄目! 救ってあげなきゃ!)
朝菜はぎゅっと手を握って、窓の外を見たのだった。
◆◆◆
『358星人の皆さん、そしてθ7354。あなたたちに伝えなくてはならないことがあります』
「天啓」をもたらした宇宙人が初めてこちらに向けた言葉は、随分と丁寧なものだった。
「自動翻訳ですね。本人はもっと尊大ですから。日本語の敬語のデータしかないんです」
「いやそれでも異星の言葉を翻訳できるなんて大したもんだよ」
どうやら音声入力らしく、二人の言葉も丁寧な日本語に変換されてチャット欄に表示された。恐らく、向こうには向こうの言葉で表示されているのだろう。
「それで、伝えたいこととはなんですか? お父さん」
テータが冷ややかに尋ねる。
『あなたたちがカンバヤシキョウと呼んでいる358星人に、私は他の358星人とは違うデータを送信しました』
『私の研究を、地球は認めてくれませんでした。だから私は地球など滅んでしまえば良い、と思ったことがあります』
「地球?」
「え?」
「NASAが通じてた?」
職員たちの困惑の声。哲夫は知っている。テータたちも、自分たちの星を「地球」と呼んでいることを。
だから、つまり……その彼らが作ったデータで「地球」と言及されているのは……。
「神林さんはおたくの星を滅ぼそうとしてるってことですか?」
哲夫は思わず口を挟んだ。
『驚きました。358星人に頭の良い人がいるとは思いませんでした』
「張り倒すぞクソ親父」
テータが毒づく。地球人に対しては温厚なテータなので、誰もがその威圧感に驚くが、画面に表示されたのは
「叩いて倒しますよ、排泄物父」と言う、笑って良いのかいけないのかわからない翻訳であった。
『彼の言うとおりです。カンバヤシキョウに、私は自分の怒りを込めたデータを誤って送信してしまっていたようです。あれは、高官に植え付けて地球を混乱に陥れるつもりで作成したデータでした』
つまり、元々「天啓」と同じで洗脳データだったと言うわけだ。
『ですが、その前に358星にデータを送って操ることができれば良いのではないかと思ってそちらを実行しました。そうすれば認めてもらえると思いました』
要するに、他の星を侵略することに星が首を縦に振らなければ、滅亡データを星の高官にばらまいて自分の星を混乱に陥れようとしていたのだろう。
「確信犯じゃないですか」
『私の有用さをわからない星に価値はありません。私はカンバヤシキョウのデータが起動しないと聞いて、ただの起動失敗だろうと思いました。そこで、派遣していたι0500に起動を命じました。ι0500がカンバヤシキョウのデータ起動を試みている最中に、私はデータを間違えたことに気付きました。失敗したと聞いて安心していましたが、実は成功していたと知りました』
『いえ、その』
イオタが何か言おうとするのを、テータが制する。
「日本語で話せ。何が起こっているのか、ここの人たちには知る権利がある」
「……いえ、その、失敗した、と思っておりまして……」
もごもごと力ない言い訳をするイオタ。
『それについて今は話しません。358星人に我が星を滅ぼすことができるとはとても思えませんが、今そちらの星にはθ7354やι0500の船があります。なので、万が一に備えてそちらでカンバヤシキョウを捕らえ、データを削除しなさい』
最後の命令形に、哲夫はずっこけそうになった。しかし、イオタが心酔している相手、と言うならこれくらいでなくては違和感すらあるだろう。いやしかしテータの父……。
「あなたのためには何もしませんよ、お父さん」
テータは毅然として伝えた。
「でも、そういうことなら神林さんはどんな無茶をしてでも宇宙に行こうとするでしょう。それはきっと彼を傷付ける。だから私は」
彼女は一旦そこで躊躇ったように言葉を切った。
「だから私は……彼を救いたい」
「ああ」
哲夫は頷いた。
「俺もだ」
「私は358星人のことなどどうでも良いが……」
イオタは不服そうに言った。
「しかし起動させてしまったのは私の責任であるし、万が一にも地球に来てしまったらと思うと……」
テータはイオタの言葉を全て無視して、
「そういうことなら、神林さんが私の宇宙船を使おうとしたのも納得がいきます。あと、彼が思いつくであろう、我々の星に来る手段、それはイオタの宇宙船です」
彼女はつかつかと、同郷の前に立った。
「イオタ、あなたの宇宙船はどこですか?」
◆◆◆
東京都は日本の首都であり、その中でも特に有名な新宿は、区内にある駅が世界の利用者数ランキングでトップに躍り出たとも言われている。
しかし、それはあくまでも新宿などの都市部の話であり、西に行くにつれて人口は減る。八王子市などはいわゆる多摩地区の中でも人口が多い方ではあるが、多いのはやはり特別区(23区)だ。
つまり、東京都も西の方に行けば行くほど人目に付かないところが増える。
浪越テータや五百蔵イオタが宇宙船を停泊させたのは、そう言う西のエリアにある森だった。そして、そこは魔法少女のアニメで、印象的なシーンで登場する景色の元ネタとされている。
グレートコスモスの一人が、交流を持った魔法少女への情を振り切って、自らの本拠地に帰るエピソードで描写されている。
杏はそんなことを欠片も知らなかったから、イオタの宇宙船を探して走り回っている最中に、自分を追ってきた「魔法少女」が現れたことに度肝を抜かれたのだった。
あの後、杏は検索エンジンのサジェストに表示されるワードを片っ端から検索し、ここ半年くらいで多摩地域に突如現れたオブジェクトの噂を見つけた。それがイオタの宇宙船だと、「使命」に逸る頭で決めつけた彼はこの場所に来たのである。
「朝菜……くん……?」
「やっぱり、杏くんここにいたんだね」
「どうしてここがわかったんだ……?」
「だって、ここはグレートコスモスと繋がってる……グレートコスモスの漂着場だから」
朝菜が何を言っているのかわからなかった。魔法少女のコスチュームに身を包んだ少女は、背中から出した翼状の触手も相まって本当の魔法少女にも見える。
「杏くん、帰るんだね、グレートコスモスに」
朝菜は微笑んだ。
「うん……帰るって訳じゃないけど……救わないといけないから」
「そうなんだ。それが、杏くんの使命なんだね」
魔法少女は頷く。
杏は……滅亡使命の救済者は毅然とした態度を保ち、
「そうだ。それが僕の使命だ」
「そっか……だったら……私は、それを止める……!」
朝菜はステッキを構え、ボタンを押した。装飾が輝き、サウンドエフェクトがけたたましく鳴り響く。
「それが私の、救済の魔法少女の役割なんだから――!」
滅亡使命の救済者と、救済の魔法少女。
異なる「救済」を謳う二人は、互いに一歩も引かなかった。
しかし、情報が古かったり、明らかに眉唾なものが多くて苛立ちを抑えられない。当然ではあるが、五百蔵イオタは相当上手く隠したようだ。
こうなったら、多摩地区の廃墟という廃墟を片っ端から探すしかない。彼は「多摩地区 廃墟」で検索を掛け、次の目的地を定めた。
(早く浪越さんの星を……『地球』を救わなきゃ)
◆◆◆
小西朝菜は交通ICカードで改札を抜けると、駅員に聞いた電車に飛び乗った。
(杏くんはきっとあの場所を目指している筈。グレートコスモスの漂着場)
魔法少女のアニメで、敵として登場するものの、魔法少女との心の交流を経てその助けになるキャラクターがいる。そのキャラクターは作中で「グレートコスモス」と呼ばれる集団の一員であった。自らを「天啓」によって魔法少女と思い込んでいる朝菜は、杏のことをそのグレートコスモスの所属だと思い込んでいるのである。
作中では、グレートコスモスは魔法少女と交流を深めるが、やはり敵対する立場であり、魔法少女と別れることを決意して本拠地へ戻り戦いの準備を整えようとするエピソードがあるのだが、そのモデルとなった場所があるらしい。母が話していたのを思い出した。
「ほら、ここだって。確かにあの森に似てるよね」
母がそう言って、インターネットの画像を見せてくれたことがある。あの辺りだよ、と地名も。
「えー! すごい。本当にグレートコスモスの漂着場があるの!?」
朝菜は、アニメの光景がリアルにあることを知って興奮した。
「ここはモデルになった場所だから、グレートコスモスの漂着場ではないけどね」
「行ってみたい!」
「うーん、ちょっと危ない場所だから……」
母は言葉を濁した。朝菜は知り得ないことだったが、要するに廃墟だったのである。
(ママは危ないって言ってたけど、今の私は救済の魔法少女なんだから!)
だから大丈夫! 何が出てきたってやっつけてやる!
(杏くんはもしかしたら、グレートコスモスとして向こうに戻ろうとしてるのかも。そんなの絶対駄目! 救ってあげなきゃ!)
朝菜はぎゅっと手を握って、窓の外を見たのだった。
◆◆◆
『358星人の皆さん、そしてθ7354。あなたたちに伝えなくてはならないことがあります』
「天啓」をもたらした宇宙人が初めてこちらに向けた言葉は、随分と丁寧なものだった。
「自動翻訳ですね。本人はもっと尊大ですから。日本語の敬語のデータしかないんです」
「いやそれでも異星の言葉を翻訳できるなんて大したもんだよ」
どうやら音声入力らしく、二人の言葉も丁寧な日本語に変換されてチャット欄に表示された。恐らく、向こうには向こうの言葉で表示されているのだろう。
「それで、伝えたいこととはなんですか? お父さん」
テータが冷ややかに尋ねる。
『あなたたちがカンバヤシキョウと呼んでいる358星人に、私は他の358星人とは違うデータを送信しました』
『私の研究を、地球は認めてくれませんでした。だから私は地球など滅んでしまえば良い、と思ったことがあります』
「地球?」
「え?」
「NASAが通じてた?」
職員たちの困惑の声。哲夫は知っている。テータたちも、自分たちの星を「地球」と呼んでいることを。
だから、つまり……その彼らが作ったデータで「地球」と言及されているのは……。
「神林さんはおたくの星を滅ぼそうとしてるってことですか?」
哲夫は思わず口を挟んだ。
『驚きました。358星人に頭の良い人がいるとは思いませんでした』
「張り倒すぞクソ親父」
テータが毒づく。地球人に対しては温厚なテータなので、誰もがその威圧感に驚くが、画面に表示されたのは
「叩いて倒しますよ、排泄物父」と言う、笑って良いのかいけないのかわからない翻訳であった。
『彼の言うとおりです。カンバヤシキョウに、私は自分の怒りを込めたデータを誤って送信してしまっていたようです。あれは、高官に植え付けて地球を混乱に陥れるつもりで作成したデータでした』
つまり、元々「天啓」と同じで洗脳データだったと言うわけだ。
『ですが、その前に358星にデータを送って操ることができれば良いのではないかと思ってそちらを実行しました。そうすれば認めてもらえると思いました』
要するに、他の星を侵略することに星が首を縦に振らなければ、滅亡データを星の高官にばらまいて自分の星を混乱に陥れようとしていたのだろう。
「確信犯じゃないですか」
『私の有用さをわからない星に価値はありません。私はカンバヤシキョウのデータが起動しないと聞いて、ただの起動失敗だろうと思いました。そこで、派遣していたι0500に起動を命じました。ι0500がカンバヤシキョウのデータ起動を試みている最中に、私はデータを間違えたことに気付きました。失敗したと聞いて安心していましたが、実は成功していたと知りました』
『いえ、その』
イオタが何か言おうとするのを、テータが制する。
「日本語で話せ。何が起こっているのか、ここの人たちには知る権利がある」
「……いえ、その、失敗した、と思っておりまして……」
もごもごと力ない言い訳をするイオタ。
『それについて今は話しません。358星人に我が星を滅ぼすことができるとはとても思えませんが、今そちらの星にはθ7354やι0500の船があります。なので、万が一に備えてそちらでカンバヤシキョウを捕らえ、データを削除しなさい』
最後の命令形に、哲夫はずっこけそうになった。しかし、イオタが心酔している相手、と言うならこれくらいでなくては違和感すらあるだろう。いやしかしテータの父……。
「あなたのためには何もしませんよ、お父さん」
テータは毅然として伝えた。
「でも、そういうことなら神林さんはどんな無茶をしてでも宇宙に行こうとするでしょう。それはきっと彼を傷付ける。だから私は」
彼女は一旦そこで躊躇ったように言葉を切った。
「だから私は……彼を救いたい」
「ああ」
哲夫は頷いた。
「俺もだ」
「私は358星人のことなどどうでも良いが……」
イオタは不服そうに言った。
「しかし起動させてしまったのは私の責任であるし、万が一にも地球に来てしまったらと思うと……」
テータはイオタの言葉を全て無視して、
「そういうことなら、神林さんが私の宇宙船を使おうとしたのも納得がいきます。あと、彼が思いつくであろう、我々の星に来る手段、それはイオタの宇宙船です」
彼女はつかつかと、同郷の前に立った。
「イオタ、あなたの宇宙船はどこですか?」
◆◆◆
東京都は日本の首都であり、その中でも特に有名な新宿は、区内にある駅が世界の利用者数ランキングでトップに躍り出たとも言われている。
しかし、それはあくまでも新宿などの都市部の話であり、西に行くにつれて人口は減る。八王子市などはいわゆる多摩地区の中でも人口が多い方ではあるが、多いのはやはり特別区(23区)だ。
つまり、東京都も西の方に行けば行くほど人目に付かないところが増える。
浪越テータや五百蔵イオタが宇宙船を停泊させたのは、そう言う西のエリアにある森だった。そして、そこは魔法少女のアニメで、印象的なシーンで登場する景色の元ネタとされている。
グレートコスモスの一人が、交流を持った魔法少女への情を振り切って、自らの本拠地に帰るエピソードで描写されている。
杏はそんなことを欠片も知らなかったから、イオタの宇宙船を探して走り回っている最中に、自分を追ってきた「魔法少女」が現れたことに度肝を抜かれたのだった。
あの後、杏は検索エンジンのサジェストに表示されるワードを片っ端から検索し、ここ半年くらいで多摩地域に突如現れたオブジェクトの噂を見つけた。それがイオタの宇宙船だと、「使命」に逸る頭で決めつけた彼はこの場所に来たのである。
「朝菜……くん……?」
「やっぱり、杏くんここにいたんだね」
「どうしてここがわかったんだ……?」
「だって、ここはグレートコスモスと繋がってる……グレートコスモスの漂着場だから」
朝菜が何を言っているのかわからなかった。魔法少女のコスチュームに身を包んだ少女は、背中から出した翼状の触手も相まって本当の魔法少女にも見える。
「杏くん、帰るんだね、グレートコスモスに」
朝菜は微笑んだ。
「うん……帰るって訳じゃないけど……救わないといけないから」
「そうなんだ。それが、杏くんの使命なんだね」
魔法少女は頷く。
杏は……滅亡使命の救済者は毅然とした態度を保ち、
「そうだ。それが僕の使命だ」
「そっか……だったら……私は、それを止める……!」
朝菜はステッキを構え、ボタンを押した。装飾が輝き、サウンドエフェクトがけたたましく鳴り響く。
「それが私の、救済の魔法少女の役割なんだから――!」
滅亡使命の救済者と、救済の魔法少女。
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