リサシテイション

根田カンダ

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第19話 参戦祈念

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 嶋はノートパソコンを使って、基地内のメインコンピューターと『アリサ』を接続させた。


[『アリサ』この基地内を調べてくれ。
 武装も細かく。]

ーーー畏まりました、すぐに取り掛かりますが…ーーー

[ん?どうした?]

ーーー美保子様とアリサ様ですが、こちらのナノマシンに移ってもらってはどうでしょうか?
 マスターのナノマシンのコピーである御二方のナノマシンから、不自然なノイズを感知いたしましたので。ーーー

[ノイズ、欠陥か何かかな?頼むよ。
 それと美保子のナノマシンの分析を。
《シマー》軍勢と同じの筈だから、欠陥があれば対策できそうだ。]

ーーー畏まりました。ーーー


 『アリサ』との通信を切った後、嶋は入間に今後の作戦について聞いたが、《シマー》軍への知識も乏しく有効な作戦や武装など、何一つも無かった。


「じゃ、あんたら何の為に此処にいてるんだ?
 そもそも、何で俺が自衛隊や警察の奴等と一緒に居なきゃなんねぇんだ?」

「我々は…、ただ朝鮮半島壊滅から、CIAが田中社長への警戒ラインを押し上げており、更に田中社長がCIAと共に搭乗していた情報もあるE-7撃墜事件。
 ゲームやバーチャルから抜け出して来た様な軍団と田中社長に、何らかの関わりがあるのではないか?
 そう思いまして。
 事実、貴方はクレイモアと呼ばれるCIA上級担当官とE-7に搭乗していた。」


 入間はモニターに1枚の写真を映し出した。
 その写真は、CIAローウェンと共にE-7に乗り込む嶋の姿が写っていた。


「我々公安は、クレイモアが田中社長に接触を試みているとの情報を掴み警戒しておりました。
 田中社長、貴方は太平洋上で撃墜されたE-7に搭乗していた。
 それなのに、撃墜されたその数時間後には秋葉原の街にいた。
 そしてCIAが我々に確保を要求して来た日系女性と、その娘と接触をし保護している。」


 入間の問いに嶋は表情も変えず、否定も肯定もせず、ただ聞いていた。


「貴方はコンピューターエンジニアとしても世界最高頭脳であり、我が国の『昇陽』開発にも関わってらっしゃる。
 ゲームやバーチャル世界から抜け出して来た様な軍勢に対抗出来るのは、貴方の経歴や、今や謎の軍勢を操っているであろうアメリカの貴方への警戒感から容易に推測出来ます。
 あの軍勢はゲーム機《シマー》のユーザーであり、奴等への対抗手段を持ちうるのは貴方だけだ。
 人類を守る為に、どうかご協力お願いします。」


 嶋はまだ黙っていた。
 かつてインドでの『リサシテイション』開発が、最悪の形で世界に影響を及ぼしてしまった。
 
[俺には責任があるな…。]

 嶋は古田を見た。

[古田さんを自分の都合で生き返らせた。
 古田さんの、家族を守りたい気持ちを利用して…。
 ならば、俺はとことん古田さんや他の皆んなの家族を守る義務がある。
 それに、《シマー》と『リサシテイション』消滅には、こいつらの組織の力も必要か。]


 嶋は古田に軽く頷き


「協力はする。だがその前に、あんたらの決意を見せろ。
 あんたらも含め、ここにいる隊員全員だ。」

「社長!」


 古田が驚き、椅子から腰をあげた。
 嶋は視線で古田を抑え


「まず、何をすれば?」


 入間が腰を浮かせた古田に視線を送りながら問い返した。


「死んでくれ。」

「何だと!?」


 前防衛庁長官が、怒りのままに叫んだが嶋は


「ああ、まずそいつを拘束してもらおうか。
 そいつはダブルスパイになる。こっちに今は付いておいて、戦況を見て有利な方へ付けばいいって思ってる。
 政府が有利になれば、ここやあんたらの情報持って政府へ。こっちが有利なら、このままここへ。
 姑息な考えの爺ィだ。
 高岡元大臣、甘すぎますね。」


 前長官の考えは、『アリサ』から知らされていた。


「貴様!私を侮辱するか!」


前長官は顔を真っ赤にして怒鳴り声を挙げたが


「図星突かれて激怒か(笑)
 こんな感情のコントロールも出来ねぇ奴に、よく自衛隊の連中は命預けて来れたな(笑)」

「貴様!」


 前長官が顔を更に赤くして立ち上がった時、古田と中村が両脇から取り押さえた。
 更に中村は入間に向かい


「警視正!私は田中社長を信じます!古田さんが、古田さんが信じている方ですから!」


 入間は黙って頷いた。


「大臣、宜しいですね?
 我々が気付いてすらいなかった電波やスパイを、瞬時に見抜いた事からも明らかです。
 我々には、田中社長が必要です。
 日本を、世界を守るならば、縁故に囚われるべきではありません。」

「それと、そのおっさんの腹心が2人…」


 入間に続けて嶋が言いかけた時、数発の銃声が響いた。
 嶋が伝えようとした腹心の2人が、嶋に向け発砲したのだ。
 銃弾は嶋に命中した筈だが、嶋は何事も無かった様に薄く笑みを浮かべ、発砲した2人にゆっくりと歩いて行った。


「銃は効かねぇな(笑)」


 迫り来る嶋に、更に数度発砲したが


「効かねぇつってんじゃん(笑)」


 古田も笑ってた。
 嶋は銃を持つ2人の手を掴み、そのまま壁に向かって投げつける様に振り回した。
 2人は大きな鈍い音を立てて壁に叩きつけられ失神した。
 

「田中さん、貴方は…?弾丸は命中した筈。しかも自衛隊員2人を軽く壁に…」

 
 入間は目を見開き、高岡や中村、他の自衛隊員達も驚いていた。


「あの軍勢の身体は俺と同じでね。
 俺のテクノロジーが盗まれた物だ。盗んだのは野崎。
 入間さん、あんたと同じ公安の人間だ。
 ただ、野崎はもう60近い筈だけどね。
30年程前、CIAに出向した男だよ。
 あの軍勢も操ってる張本人だ。」

「野崎…、知りませんが…。それに貴方の身体は…?」


 嶋は腕のナノマシンを解除して見せ、古田以外は声をあげて驚いた。


「奴等の身体は俺と同じ生体ナノマシンだ。
 突然現れ突然消えるのも、今見たのと同じ。ナノマシンの構成を解除すれば、風に舞って消える。
 てか、奴等は今日本に向けて進行中だ。
 1週間以内に日本に上陸するぞ。数十万規模の軍勢で。
 ここの設備だけで、守れると思ってんの?」

 
 ゴビ砂漠を起点に発生した砂嵐。《シマー》軍は、砂嵐にナノマシンを隠し日本へ向けて進行していた。


「全てが全て、我々には掴めてない情報で…」


 入間が恐る恐る聞いた。


「ゴビ砂漠の砂嵐に紛れて、風に乗ってやって来る。
 日本に到着してから実体化すればいい。
 黄砂の中に、奴等のナノマシンが紛れてんだ。」


 そう言って何かに気付き、嶋は古田を見た。
 前長官を抑えたまま、古田も何かを確信した様な目をしていた。


[『アリサ』ゴビ砂漠に奴等のプラントがある可能性は?]


 中国、ロシアを襲った時にゴビ砂漠から現れ、再度ゴビ砂漠から日本へと進行を始めた。
 ホワイトハウスとペンタゴンを陥落させたのは、シリコンバレーのプラントからの軍勢だろうが、アジアにも拠点やプラントを築いていてもおかしくはなかった。


ーーーゴビ砂漠に拠点、またはプラントのある可能性は90%です。ただ…ーーー

[ただ、何だ?]

ーーー美保子様とアリサ様の身体を構成していたナノマシンに『傷』が発見されました。
 すべてのナノマシンに同じ『傷』があり、軍勢のナノマシンにも同様に『傷』かある可能性が99%。
 美保子様にお伺いした所、ナノマシンのサンプルがCIAに保管されていたそうで、そのサンプルを元にクローンを繰り返したそうです。
 そのサンプルの出所を調べた所、井上真一様を襲った工作員の衣服に付着してたようです。
 CIAはそれが何かは、解明出来なかった様で、謎の組織として保管していたようですが。ーーー

[傷か。奴等を叩きのめした時に、破損したマシンが付着したか。
 『アリサ』その『傷』から奴等の構成を崩せるかもしれない。
 よく調べてくれ。
 あと、井上さんや他の皆さんはどうしてる?]

ーーー私の創るバーチャル世界と、《シマー》の創るバーチャル世界とを繋げるアルゴリズムを美保子様が構築中です。
 井上真一様と夏菜様が、WEBを使ってeスポーツプロプレイヤー達に呼びかける準備をしています。
 私はナノマシンを戦闘用に改造しております。
 構築された際の身体能力や、電磁パルスに耐えれるナノマシンを構築します。
 完成すれば、核は勿論電磁パルスですら直撃しても身体構成が崩れる事はなくなると思われます。ーーー

[バーチャルと現実と両方で戦うと言うことか。
 わかった。軍勢規模で勝てる事はないから、せめて性能で勝てる様に頼む。
 レオンと柴田さんは?]


 スパイにされていた自衛隊員の娘の救出に向かったレオンと柴田が気になった。


ーーー娘さんのDNA情報は既に転送されて来ました。
 只今ナノマシンに情報をダウンロード中です。
 白血病と言う事から、脊髄と血液とをナノマシンで構成する予定です。ーーー

[わかった。出来るだけ早く構成してくれ。]


 レオンと柴田は、病室の外からレーザースキャンを使い、隊員の娘のDNA情報を入手していた。
 病院にも政府の監視員がいる事が予測され、病院から連れ出すまでは極力トラブルを避ける様にする為だった。



 

 秋葉原の地下では、真一達が交流のあるプレイヤー達に呼びかける準備をしていた。
 だが、そのプレイヤー達も《シマー》軍に参加していた可能性もあったし、声を掛けたからと言って、参戦してくれる保証もなかった。
 更に…


[ゲームじゃない!実戦なんだ!それに、複数のチームとの共闘の経験がない…。]


 真一達が主にプレイしている《コール・ザ・ショット》でも、大きい大会で3チームでの共同作戦を行った事はあるが、その作戦に参加したチームの内の1つは夏菜達のチームだった。
 海外のチームだと、言葉の壁もある。
 《シマー》軍ですら、『軍隊』と呼べる統率はなく、ただ思い思いに敵を攻撃していただけで、軍隊の進軍ではなく巨大な規模の暴動と虐殺だった。
 ゲームの様に、拠点を奪えば勝ち。大将を倒せば勝ち。ではなく、殲滅するしか無かった。


[でも…、ヤルしかない!]


 夏菜達はネット動画配信の準備をしていた。
 動画配信によって、《シマー》軍と戦う戦士を募る為だ。


「美保子さん?奴等の武器が現実世界でも、ゲーム世界と同じ能力があるのは何故ですか?」


 ゲーム世界での武器や防具には、現実ではあり得ない能力が付与されているが、それが現実世界でも再現されている事を夏菜は疑問に思っていた。


「私も詳しくはわかりませんが、ナノマシンを《シマー》に接続し、ゲーム内データをインストールしたのだと思います。
 ただナノマシン自体が私にも理解を超えていて…。
 今私自身がナノマシンでも、人の身体だった時と何の変わりもなくて…。
 智彦さんの頭脳って、どうなってるのか…。」


 嶋の造った生体ナノマシンは、嶋ですら100%理解している訳ではなかった。
 スケーリーフット希少種の金属部分は、金属でありながら生体細胞だった。
 深海の高水圧下、更に高温の熱水噴出口付近の特異な環境下で、独自の進化を遂げたスケーリーフットの更に希少種。
 その金属生命体が、プラナリアとのキメラ化によって、人智を越える生命体に進化してしまっていたのだ。
 他生物の細胞との融合だけでなく、量子すら自身に取り込むその性質は、物理学から大きく逸脱した存在となっていた。
 現実世界の物理の法則が通用しない為、空想である魔法や火を吐くドラゴンをも生み出してしまったのだった。

 オリジナル細胞である嶋やボディーガード達は、『人』として生活していた為に気付いていないが、核の超高温や電磁パルスすらナノマシンが取り込んでしまう為、無敵の存在だった。
 嶋自身も、《シマー》軍勢が核によって吹き飛ばされた状況等を目にしていた為、自身も核や電磁パルスによって、ナノマシンは破壊されると思っていた。
 それは『アリサ』すらも気付いていない。
 気付いていない為、只でさえ無敵のナノマシンを、更に無敵へと進化させて行こうとしたのだった。
 


「『アリサ』?私達のアバダーって、すぐ出来るの?」

 
 夏菜は『アリサ』に聞いた。
 おもちゃで遊んでいたアリサが、くるっ!と首をまわして夏菜を見たが、すぐに『アリサ』と理解したのか、すぐにおもちゃで遊び出した。


「どの様なアバダーでも可能です。
 ただ一度バーチャル世界においで頂く必要がありますが。」

 
 壁から『アリサ』の声が響いた。


「じゃあ『モンスレ』の私のアバダーお願い。
 私がバーチャルに行くにはカプセルに入ればいいのかな?」

「今は必要御座いません。《シマー》軍との戦闘時にはカプセルに入って頂きますが、そうでなければベッドに横たわって頂ければ。」


 そう言ってアリサは床からベッドを浮き上がらせた。
 夏菜は横になり目を閉じたが、次の瞬間にはバーチャル世界の『モンスレ』キャンプにいて、古代のジャングル風景を見回した瞬間、ベッドに横たわる自分の姿が目に入った。


「えっ?」


 更に見回すと、驚いた顔の真一達や駆け寄ってくるアリサがいた。
 驚きながらアリサを抱き上げると、抱いた感覚も体温も、すべてが夏菜のままの感覚があった。
 いや、《シマー》開発に美保子を手伝っていた時より、《シマー》にログインした時よりも、リアルを超える感覚だった。
 【ナナ】となった夏菜があっけに取られていると、『アリサ』はナナの目前に鏡を出現させた。

 鏡の中には、夏菜ではなく【ナナ】がいた。
 『モンスター・スレイヤー』の装備そのままに。
 背中には長い日本刀の形状の刀を背負っていた。
 雷を操るモンスターの素材を使った刀。
 『モンスレ』内では、雷の属性を持つ刀。
 属性錬気がMAXになると、刀身に雷を纏う刀【天雷斬】。


「おりりゅ!おねちゃん、かたな!」


 アリサはナナに、刀を抜けと言った。
 『アリサ』はナナを透明な壁で囲み


「どうぞ。壁はどんなエネルギーや衝撃も吸収します。
 使ってみて下さい。」


 ナナは背中から太刀を抜き、正眼に構えて腕に力を込めた。
 瞬間、刀身から雷が程走り、空気が震える音が響いた。
 モンスターへ攻撃する時の様に、前方にダッシュをして横から薙ぎ払うと稲光が残像を残し、切り裂かれた空気が甲高い音を響かせた。
 音に驚き我に帰った夏菜は、慌ててまわりを見渡したが、ナノマシンで出来た透明な壁は衝撃を全て吸収し、壁の外の美保子やアリサ、他のメンバー達は無事だった。


「す…っごい!」

「ナナ!抜刀術!抜刀やってみて!」

 
 『モンスレ』では巨大なウォーハンマーを操るエリザが言った。
 『モンスレ』太刀で最大威力を発揮する抜刀術。
 モンスターの攻撃に合わせ抜刀攻撃すれば、カウンターで更に威力は上がる。
 ナナは左手に鞘を持ち、正面に少し斜に構えて腰を沈めた。
 鞘の中の刀身に、雷のエネルギーが充満し、解放されるのを待っていた。
 耳が痛くなる様な甲高い、鳥の鳴く様な音が鞘から響いていた。
 鞘内のエネルギーが臨界に達した瞬間、ナナは前方にダッシュし同時に抜刀、逆袈裟に左下から右上に切り上げた。
 低く轟く爆発音が響き、切先が最頂点に達した瞬間ナナは後ろに向き直り、最頂点から刀を振り下ろした。
 今度は甲高い雷鳴が響き渡った。


 「す…」


 最後まで言葉が出なかった。
 これが《シマー》軍との戦場ならば、数十人は一気に両断してしまう様な威力だ。
 『アリサ』は威力に満足し、夏菜の『モンスレ』メンバーだけでなく、真一達のアバダーも実体化した。


「皆さまのアバダーも、いつでもご用意出来ます。
 感覚を知りたいのであれは、いつでもおっしゃって下さい。
 模擬戦用の敵アバダーもご用意出来ますので。」


 『アリサ』は模擬戦をして欲しかった。
 《シマー》軍の使用する傷の入ったナノマシンとの戦闘データが欲しかったからだ。
 美保子の使ってたナノマシンをコピーすれば、100体くらいは10分も有れば製造可能だ。


「模擬戦をライブ配信して、ゲーマー達に訴えようよ!」


 ケンの提案に、全員が準備に入った。























 





 























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