THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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交流戦の真の目的

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「お肉ぅ!お肉ぅ!ルンルンルンじゃ」
「フィンフィンフィン!クゥクゥキュン!!」

 宿を出て少し薄暗くなってきた海沿いを歩く私達【渡り鳥】。
 ご機嫌なリアスとマロフィノの後ろで私のテンションはだだ下がりになっていた。

「どうしたんじゃタタラ?腹でもくだしたか?」

 キラキラと輝くような満面の笑みが腹ただしくて仕方がない。この際だからもう一度ハッキリと言っておかねば。

「なんで俺とまったく同じ柄のシャツにしたんですか!?しかもマロフィノにまで着せて!つーかマロフィノ、前に服着せたとき嫌がってたのになんで今日はご機嫌なんだよ!?」
「スーン」

 スーンってなんだこの野郎。

「ほかに良いのがなかったんじゃから仕方がないじゃろ、嫌ならタタラが脱げばいいんじゃ」

 何でお前は平気なんだよ!?はたから見たらリゾートに浮かれてお揃いのアロハシャツを着た仲良し3人組に見えるのが恥ずかしくて仕方がない、それになんで犬用までちゃっかり売ってんだよ!
 つーか、私が脱いだらみんなドン引きだっつーの。

「おい、そこのバカップルささっと来い」

 遠くから威圧感のある聞き馴染みのある声が、私達を小馬鹿にしながら呼びつける。
 声の主はもちろんエヴァさんであるが、普段とは違い、黒いセクシーなビキニを着用してその上から着たTシャツをお腹の上で結び、引き締まった細いウエストとスラッと長い手足でファッションモデルような美しいプロポーションを惜しげもなく見せつけていた。
 それに加えてあの整った顔と艶やかで長い髪、エヴァさんでなければいいよってくる男は山ほどいるだろう。
 エヴァさんでなければね……。
 あの目で睨まれただけで弱い魔獣なら即死するだろう。

「ふぅ、あの絶世の美女がエヴァ・フリゲートじゃなかったらなぁ、兄ちゃん」
「まったくの同意ですが……あなたはさっきのいい肉の」
「ちーす!獣人大国ムル王国の【ゴロン】のギルマス、バル・ディムラっす!年齢は34、【豹人パンシー】の漢!趣味は
「イザベルギルドのタタラです」
「ふぅ~!食い気味ぃ~ってか食ってるぅ~」

 ギルドマスターを名乗る身長2mほどの黒い肌の細マッチョな胡散臭い黒豹の獣人は、派手な赤いハーフパンツを履き、襟付きの柄シャツのボタンを全部開け首には太い金の鎖のネックレス、頭に麦わらのハットを被って、どこからどう見てもチャラかった。

「こいつ、うざったいんじゃ」
「フィン!」
「ハッキリ本人の前でそういうこと言うのはやめなさい!そういうのは居なくなってから影でコソコソ言うくらいがちょうどいいんです」
「ふぅ~!悪質ぅ~!でも俺っち気にしなっゴフッ!?」

 サッと現れた獣人の女性は、右ストレートでバルさんのあごを撃ち抜き一撃で意識を奪い、倒れる前に素早く担ぎ上げ、私達に頭を深々と下げどこかに去っていった。

「なんじゃ?今の」
「さぁ……」

 世界は不思議であふれている。

「って、マロフィノがいねっ……
「キャー!何この子!シャツ着てる!めっちゃ可愛いじゃん!しかもモフモフゥ」

 ……いた。さっそく水着ギャル達をナンパしている……まぁ楽しそうなのでほっとこう。

「遅くなりましたエヴァさん」
「見たか?」
「何をじゃ?」
「今の正確に顎を撃ち抜く右ストレート、あれが去年のベスト8【拳獅子けんじしのレオナ】だ」
「そこなんですが、ホントに交流戦なんてあるんすか?」
「安心しろ、ちゃんとある」

 何を安心したらいいのかわからないが、あの地獄の一週間が無駄になるのだけは勘弁してほしい。

「ところで、お前達も薄々勘付いているかもしれないが、毎年ジング王国に集まるのには交流戦以外に真の目的がある」
「真の目的じゃと!?」
「それは……」
「なんじゃ」

 もうすでにだいたい予想がつくだろうに、リアスはどうしてそんなに食いつくのだろう。

「ギルドマスターの休暇だ」
「えっ?なんと?」

 ほらね、どうせそんな事だろうと思った。

「ギルドのマスターってのはな、こうでもしないと休みなんてないんだよ!しかもどうせ休むならリゾートでのんびりしたいんだ!」
「ちなみにセリカさんはここのこと知ってんすか?」
「知らん!セリカはこの【イストア】を岩山に囲まれた巨大闘技場があるだけの場所だと思っている!だからお前達も、間違ってもセリカにこの事を言わないように!」

 哀れだセリカさん、もし彼女がここがこんなリゾート地だと知ったら絶対行きたいと騒ぐはずだ。

「ちなみにセリカが本気で暴れたら、私でも手を焼くからくれぐれも頼むぞ」

 恐ろしい表情で念押しされたのだが、アンタでも手を焼くってどんななの!?変身でもしちゃうとかか!?

「この事は黙っておいた方が良さそうじゃのう」
「でっですね」

 触らぬ神に何とやら……黙っていれば平和が保たれるのなら、それに越した事はない。

「それからタタラ」
「はい」

 さっきより一段と険しい表情で私に詰め寄るエヴァさん。

「最低でもベスト32、2回は勝つこと!それ以下は絶対にありえないからな」
「それ以上ならSランク貰えるってことですか?」
「違う!ベスト32以上のギルドだけが来年もこのビーチリゾートに泊まれるんだ!」

 いつになく力が入ってると思ったら、私の心配ではなく自分の心配だった。ちなみに33以下は山にある闘技場の周辺宿泊施設なのだとか……しるか!!

「タタラァ、お肉食べたいんじゃ」
「勝手にとって勝手に食べなさいよ、はいお皿とお箸です」
「やったぁ」

 リアスは嬉しそうに近くのグリルに走って行った。子供か。まったく。

「飲むか?ビール」
「……いただきます」

 各国のギルドが集まった浜辺の宴は深夜遅くまで続いたのであった。

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