THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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条件

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「それで狸爺たぬきじじい用件はなんだ」
「そうでしたぁ。それではまず、タタラ君の件から」

「俺のですか?」

 おいおい安心させておいて、もしかして俺だけペナルティですかぁ?でもタタラ君のってことは他の奴らにも何かあるって事では……それなら良しとしよう。

「なんだ、ずいぶんとかかったな。この国にいる間は無いのかと思ったぞ」
「うん、異例づくしだったしぃそう簡単にはいかないよねぇ、でもまぁ色々条件付きでそれならOKということになったんだよね」

 なんだよエヴァさんも噛んでる話かよ、それなら絶対厳しいヤツくるじゃん、もぅ一体何させる気?あれか壊れた闘技場直せか?それならエヴァさんが一番壊したんだからエヴァさんも手伝えよ。

「それではタタラ君コレを」

 そう言ってダム会長が差し出してきたのはギルドの証明符だった。

「なんやって!!」
「なんじゃと!!」
「フィン?」

「あのぉ……コレは?」

 私は困惑していた、今まで所有していたはAランク冒険者の白ミスリルの証明符だが、今私の前に差し出された証明符はなんの光沢もない真っ黒い証明符だった。
 コレはもしかしてあれか、犯罪紛いの行動をした冒険者を区別するため的なヤツか?

「まっマジかいな、タラちゃんいったい何したんや」
「何って、お前助けに行っただけだろうが」

「それだけじゃない、500のゴブリンを1時間かからずに単独撃破、難攻不落のプルガサス迷道の初見攻略及びアイアンゴーレム討伐、極み付きは草原の災厄ワームロワの単独討伐、それをギルド登録から僅か1ヶ月足らずで行ったんだ、当然の結果だろう」

「500に初見にゴーレムにワームロワ!!タラちゃん頭のネジぶっ飛んでるんかいな」
「至って正常だっつーの!!」

「フォッフォッフォッフォッ!元気元気、さぁタタラ君コレが君のしてきたことに対する我々の評価だよ、遠慮せずに受け取りなさい、そろそろ上げた腕も疲れたからね」

 ええー、なんかやだなぁコレェ。私は梅干しを食べたようなしかめっ面で渋々、本当に渋々、黒い証明符を受け取った。
 でも、アレ、なんかコレ、手触りめっちゃいい。
 その瞬間、マロフィノ以外全員から大きな拍手が送られた。

「えっえ!?なんすか!?マジなんですか!?」

 突然の拍手に驚き戸惑う私の手をダム会長が握りながら。

「ここに新たなSランク上級冒険者が誕生しました、タタラ君そのアダマンタイトの黒い証明符に恥じない働きを期待してますよ。おめでとう」

 えっ?

「推薦した私の面子も潰れずに済んだ、良くやったなタタラ」
「ええ!エヴァちゃん!僕も頑張ったんだよぉ褒めて褒めてぇ」

「当たり前の仕事をこなしただけだろう、狸爺が調子にのるな」

「きっ厳しいぃ……」

 えっ?

「どうしたんじゃタタラ?」
「ええええええっ!!?」

 Sランク!?アダマンタイト!?えっ?何?マジで何?もしかしてアレか?ドッキリか?私が「やったー」なんて言おうものなら扉の外からテッテレーって大勢のテレビクルーが入ってきて……ってテレビクルーって何だ!?

「おい、はしゃぐな落ち着け阿呆」
「いや別に、はしゃいでいる訳ではなくってですね何というかペナルティ的なものばかりを想定していたので急にランクアップと言われましても自分の気持ちの整理と言いますかなんと言いますか
「五月蝿い」

「はい、すみません」

 エヴァさんのドスの効いた一言に落ち着きを取り戻した私は、なんとか事態を飲み込んで冷静な思考を取り戻した。

「で、狸爺。条件ってのは一体何だ?」
「フォッフォッフォッ、ではさっそく条件を発表するよん。1つ目はバーム海域の調査船に護衛として乗船すること。もう1つはエンドーレ王国にある世界最古のダンジョン【アガルタ】の地下10階層以上に到達することの2つだよん」

「おい、テメェはうちのガキを殺す気か?悪いがバーム海域なんざ行かせねぇぞ」

 眉間にしわを寄せてエヴァさんがテーブルに空の一升瓶を叩きつけた。

「フォッフォッフォッフォッ、【大海の災厄】のことだったら心配ご無用だよ」

「どういうことだ?」

「長年バーム海域に居座り続けたヤツがつい1ヶ月ほど前にミドガナ海域で目撃されたと情報が入ったんだよね、それで今回の調査船なわけ」

 ウォール山脈により北と南に分断されているディアンタ大陸にとって北ディアンタ南東にあるバーム王国のバーム海域は、北と南さらには諸外国とディアンタ大陸の往来の際に通過する海上の交差点と言われるほど重要な海域であった。だが【大海の災厄】と呼ばれる1匹の大型魔獣がこの海域を住処にしてしまったことで、この海域は封鎖状態になり航路は大きく迂回せざるおえない状況になっていた。

「この海域が再び使えるようになれば、衰退していたバーム王国も復活の糸口になるし、航海日数だって大幅に短縮できるんだよね」

「だそうだ。どうする?」
「どうするって言われましても……俺たちエンドーレに行かなきゃいけないのでダンジョンの方はともかくとして、海洋調査船は
「それなら心配ご無用!調査船の目的地はエンドーレ王国のラッハだから!魔獣がでるのは他の船だって変わらないしぃ、乗船料だって食事だって無料だしぃ、従来の航路の半分の時間で着くしぃ、それにSランクだって剥奪されないしぃ、やった方が良いんじゃない?ねっタタラ君!」

「そう言われてもなぁ……」

 美味い話にはなんとやら、この怪しげなギルド連盟会長がイマイチ信用ならない私はパーティメンバーに視線を送り賛否をうかがう。

「フィン!」
「えっ?マジすか」
「まぁ、リーダーがそう言うんならわらわは別に構わないぞ」

「えっ?どうしたの?どうしたの?」

 私達の会話を不思議そうに見つめるダム会長。まぁリーダーがヤル気だしリアスも良いと言うなら。

「この話、お受けいたします」
「本当!やったぁ!良かったぁ!それじゃぁ次はヒバチ君の件ね」
「なんやねん?」

「ヒバチ君はエヴァちゃんのイザベルギルドに移籍になったから、エヴァちゃんと一緒にイザベルに行って手続きしてね」

「はぁ!?何勝手に決めとんねん」

 何も聞かされていなかったヒバチは苛立ち声を荒げたが眼光鋭くエヴァさんが一言。

「不服なのか?」
「いえ、身に余る光栄でございます」

 さすがのヒバチもエヴァ・フリゲートには逆らえなかった。

「それで急で申し訳ないないんだけど、調査船の出航準備が進んでいるから急ぎで港に行ってもらえるかなぁ」
「今ですか?」
「うん今」
「あのですね……」
「何か問題でもあった?」

 その時、私の腹が獣の唸り声のような音を立て部屋中に響きわたった。

「腹が……減りました」

「……ご飯食べてからで大丈夫です」

「すみません」

 私が恥ずかしさに顔を赤らめ俯くと、エヴァさんが立ち上がり。

「じゃあ私達は行くぞ」
「もうっすか、姉御!?」
「マスターと呼びな」
「すみません!マスター!」
「じゃあ僕も行こっと、ここに調査船とアガルタの詳細をまとめた書類置いておくからよろしくねタタラ君」

 ヒバチの舎弟感がハンパないな。つーか詳細書類があるなら先に見せろや狸爺が。
 
「あの……すみません姉っ……マスター、ちょっとだけ先に行っててくれますか?」

「……旅客飛竜の発着場はわかるな」
「はい、すみません、すぐ追いつきますんで」

 エヴァさんとダム会長はヒバチを残して部屋を後にした。
 
「どうした?」

 ヒバチは部屋の扉の前でバツの悪そうな照れ臭そうなそんな複雑な表情でもじもじしている。

「タラちゃん、お嬢、マロ坊……ホンマに世話になりました、皆さんのおかげで命ばかりか冒険者としてまた活動することができます。さっきは何勝手にって言うてもうたけど、ワイみたいなのが職探すなんて大変なことやからホンマにありがたいとことです。それもコレも全部皆さんのおかげです」

 そう言いながらヒバチは正座し両手を地面に置いた。

「待つんじゃ!!」

 頭を下げようとするヒバチを制止しリアスが私に小声で問いかける。

「こういう時ヒバチがよく言うヤツなんじゃったっけ」
「よく言うヤツ?……ああ!アレは……」

 意図を悟った私はリアスにそっと耳打ちをする。

「おお、それじゃそれじゃ!」

 私とリアスは目で合図をして声を合わせ。

『かまへん!かまへん!』

 ヒバチは目に薄っすら涙を溜めながら立ち上がり少しだけ頭を下げた。

「フィン!」

「せやな、マロ坊もおおきにやで」

「イザベルで待ってるで!」
「おう!次はイザベルで」
「無茶するでないぞ」
「フィン!!」

 こうして嵐のような男、戦鬼人ヒバチは去っていった。

「さて、俺たちも行きますか」
「そうじゃな」
「フィン!!」

「バーム海峡を越えて目指すはエンドーレ!行くぞ【渡り鳥】!」

『フィィィィウォォォォ!!』

 ♦︎

「で、本当に彼がそうなのかい」
「ああ間違いはない」

「放浪の英雄ディノ・ルギ二から消えた【祝福の聖印】か……エヴァちゃんが見間違うはずはないからそうなんだろうけど」
「確かにディノさんと比べたら雑魚すぎるがアイツが【神の祝福】を運ぶものだ」

「大変な時代に重いものを背負わされたものだね」
「ああ、しかもこのままじゃ確実にアイツは……死ぬ」

「世界を命運を託された第3の放浪者……か」






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