THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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バームの悲願

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【ブラックオニキス号】出航から3日目の午後。

「ほぉ、凄いのうなんじゃこれは」
「いいから触らないでください」
「フィン?フィーン!!」
「マロフィノもイタズラしない」
「ほう、コレがこうで回るのか!」
「いいから触らないでください」
「フィン!?フィンフィーン!!」
「だから!触んなつってだろうが!!」

 船長から許可を得て空室で【魔導機関式電動二輪装甲車両】の製作に打ち込んでいたのだが、ヒマヒマ星人達の妨害行為にブチ切れていた。

「退屈なんじゃからしかなかろうが!そうやってすぐ怒るところがタタラの悪いところじゃぞ」
「フィンフィン!」

「魔導モーターの大事な調整してるんですから静かにしてください!無理なら外に
「無理じゃからみんなで一緒に外に行こう!遊びに行こう!」
「フィオーン!!」
「だから!俺はいかねぇっつーの!」
「えー、じゃあわらわもいっかなーい」
「フィッフィフィーン」

 ダメだコイツ等。本当ダメ、全然ダメ。ああもう、こんなんじゃ一生完成しないよぉ、もぉ。

「あっそうだ!ハイト船長に操船を教えてもらったらどうですか?」
「えー嫌じゃ。タタラも一緒なら良いが雑用係がおらんとつまらないんじゃ」

 そうですよねぇ雑用係がいないとって、俺か!?雑用係!?お前もやれよ雑用。

「わかりました、魔導モーターをフレームに組み込んだら終わりますから、お菓子でも食べて部屋で待っていてください」
「了解じゃ!お菓子お菓子!」
「フィン!フィン!」

「はぁ……」

 渡されたお菓子を手にスキップしながら部屋を出て行くお菓子星人達を見送り、深いため息をつく。

「お疲れ様、大変そうだね」
「ハイト船長お疲れ様です。そうっすね大変です」
「それにしても凄い物を作っているようだけど、コレはいったい何なんだい?」
「えーと、コレは簡単に言うとオーラの力で動く乗り物ですね、結構早いんですよ」
「そうなのか、アスガルズには凄い技術があるんだね」
「いえ、コレは俺のオリジナルです」

「……君って本当何者なの?」

 ハイト船長は見たこともない物を必死に作る謎の冒険者を何か得体の知れないものを見るような目つきで見つめる、その冷ややかな視線を受け、隠しもせず異世界のオーバーテクノロジーをひけらかしていた自分の無神経さを少し反省した。

「それはさておき、明日の午前中にはバーム海域に入る予定だから念のため・・・・の準備は怠らないように頼むよ」

 念のためねぇ……。

「聞いておきたいんですが、もし【大海の災厄】に遭遇した場合どうするつもりですか?」

 質問をした私の目をハイト船長は力強くまっすぐな目で見つめる。

「倒す。それこそが王国の、いや、バームに住まう全て者の悲願なんだ」

 私にではなく、ここには居ない敵に向けて発せられたであろう殺気に満ちたその言葉に込められたのは、信念か、はたまた怨念か……。
 ハイト船長はその後何も語ることなく船長室へ戻って行った。
 完全に製作意欲を削がれた私はクラフトを中断し部屋に戻りお菓子を貪り食べるパーティーメンバーを横目にしながらダム会長からもらった資料に再び目を通した。

 【大海の災厄】
 かつて世界中の海を縦横無尽に移動し何千、何万もの船舶を沈めた【大海の災厄】と呼ばれる巨大海洋魔獣は、今から約30年ほど前にバーム海域に張られたスベンティ・ゲルギル式封印術式によりバーム海域から出ることが出来なくなった。
 その経緯は、当時の海洋貿易連合が【大海の災厄】被害よる貿易被害が拡大しすぎたことから討伐軍を結成したのだが神出鬼没の大海の災厄を最大兵力で討伐するためどこか1つの海域に封じ込める事ができないものかとスベンティ・ゲルギル社に打診した結果、海域全体の深度の浅いバーム海域であれば可能であると返答を受け、海洋貿易連合はバーム王国に対し討伐期間中の損害補償金を支払うことを条件にバーム王国よりバーム海域に大海の災厄を封印する許可を得てこの作戦を実行。
 結果は、大海の災厄をバーム海域に誘導、封印までは成功。その後、軍艦1000隻の討伐軍は壊滅、莫大な損失を出した海洋貿易連合も解体、バーム王国には補償金が支払われることが無く、大海の災厄を抱えたバーム王国は国民の不満が爆発し内戦状態となった。

「しかし、なぜ冒険者ギルドは大海の災厄とやらを討伐せんのじゃ?」
「1000軍艦を沈める怪物ですよ、冒険者パーティーじゃ無理でしょうよ。あと食べカス口のまわり付いてますよ」
「そうかのう……ジィとまでは言わぬが、エヴァじゃったらやれそうではないか?コレで取れたか?」
「ははぁ……エヴァさんなら確かに、つーかリアスのジィって何者なの?まだ反対にも付いてます」
「何者と言われると困るが、昔エヴァを鍛えてやったと言っておったぞ。もう無いじゃろ?」

 リアスのジィってエヴァさんの師匠なの!?うわぁそれなら確かに巨大魔獣くらい簡単に倒せそう。

「てか、上唇の右横あたりです」
「おおココか!」

 まぁ実力的に言えば倒せるのだろうけど、足場となる船を沈められては実力を発揮できないまま終わってしまう、そういう難しさがあるからなのか【大海の災厄】の討伐報酬は草原の災厄を遥かに超える15億ピック……もはや一生遊んでどころの金額ではない。

「さて!約束どおり遊びに行くんじゃ」

 ああ、そういえばそうでした。てか遊びに行くって何処に行くおつもりですか?

「隠れんぼじゃ!鬼はタタラじゃ!行くぞマロフィノ!」
「フィオン!」

「えっ?あっ、ちょっ……」

 この後、私はこのだだっ広い船の中を夜になるまでリアス達を探し回り、最終的に「遅い!!」と、怒られたのであった。

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