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アガルタルール
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「さて、お前達は【アガルタ】についてどの程度聞いてきた?」
「はっきり申し上げますと、ダンジョンの場所と名前くらいしか」
どこに向かっているのか知らされないまま私達はアンカさんの後をついて歩く。もちろん、暴走気味のマロフィノは私がガッチリと抱きかかえている。
その道中でアンカさんから【アガルタ】というダンジョンの特殊なルールというか性質を教えられた。
【アガルタ】ルールその1。
アガルタに入ると同時にレベル1になり、ステータスもそれに準じたものになる。
その2。
アガルタの内部は入る度に地形が変動し同じ地形になることは無い。
その3。
ルールその2があるため、同時期にアガルタに入ったとしても他の潜航者に出会うことは無い。その為パーティーで潜航したい場合は手を繋ぐなど、ある程度密着した状態でアガルタに入らなければいけない。
その4。
アガルタは下層に行けば行くほど出現魔獣のレベルが上がる。ただし、下層より登ってくる魔獣もいる為、稀に上層で高レベル魔獣に遭遇する場合もある。
その5。
各階層ごとには階段がありそれを下ると次の階層に行くことができるが、再度上層に戻った場合は地形が変動している。
その6。
10層毎にボス魔獣が出現する。その魔獣を倒すと転移石をドロップし1階に戻ることができる。またその転移石は1階で使用すると入手した階層まで転移することができる。ただし転移石を入手した階層以下で使用すると転移出来ず砕けてしまう。
「ここまでで何か質問はあるか?」
何かっていうか疑問だらけなのだが、ここは一番重要そうな事を聞かねばなるまい。
「ルールその1のレベル1っていうのは、アガルタから出てもレベルが低下したままなんですか?」
「アガルタから出たら、入る前のレベルに戻る。さらにアガルタで得た経験もプラスされるから戻って来れた者のほとんどが入る前よりレベルアップしている」
戻って来れた者って、それは戻って来れないヤツも多いってことですね……つーかレベル1の状態で下層から来た高レベル魔獣に遭遇したらほぼほぼアウトなんじゃないか?
「装備とか食料とか事前準備が超重要ですね」
「そこでルールその7だ」
まだあるんかい!!
アガルタルールその7
アガルタ内に地上の物を持ち込んだ場合、強度が著しく低下する。例えば金属の剣であれば炭程度になり一振りで砕け散ってしまうし皮の鎧も紙のように簡単に破けてしまう。
ただし食品類の栄養価はそのままなので摂取することは可能である。
「それから、収納魔法と鑑定スキルを持ったある冒険者が実験したところ、アガルタ内であっても収納された道具は地上の状態と変わりなかったそうだが、取り出した瞬間に強度が低下したそうだ」
「ちょっ、ちょっと!それじゃあ素っ裸でダンジョン攻略しろと!!?」
「そこでルールその8」
アガルタルールその8
アガルタ内には武器や防具、果てには食品や薬までが落ちている、そしてその武具や道具は強度を保っている。またその武具や道具は地上に持ち出し可能で、さらに再度アガルタに持ち込んでも強度が低下することはない。
「なんでダンジョンに人工物が落ちているんじゃ!!」
「それについては面白い話がある、アガルタルールを知らないある冒険者が装備を全損させながら何とか下層に潜っていったところ、落ちていた武器を手にして驚愕したそうだ。それはなんと、自分の持ち込んだ武器と瓜二つ、さらに攻撃力も強度も飛躍的に上がっていたとのことだ」
って、ことはあれか?アガルタ内に落ちている装備類は全て冒険者が持ち込んで壊した装備の生まれ変わりってことか?不思議だ、なんて不思議なダンジョンなんだ!アガルタ。
「さて、おしゃべりしている間についたぞ」
「ここは?」
「ここは町の商店街で通称【拾い物通り】だ」
【拾い物通り】冒険者達がアガルタで入手した物を売買できる商店が並ぶこの通りには、これからアガルタに挑む準備をする者達、アガルタから戻り戦利品を売る者達で賑わっている。
しかし、エンドーレはドワーフの国と聞いていたのにこの迷宮の町ダバンも港町のラッハもそうだったが多彩な人種が満遍なくいるような感じでドワーフが多いといった雰囲気は感じられないなぁ。
「あのぉ、ドワーフってあんまりいないんですか?」
「なんだお前、こんな可愛いエルフといるのに実はドワーフ好きなのか?」
「なんじゃと!?タタラそうなのか!?」
「フィッ!!?」
「違います!!ただドワーフの国と聞いていたのにここまでの道中もあまりドワーフを見かけなくて」
つーかフィッってなんだよマロフィノさん!さてはお前あまりドワーフは好みじゃないな?良いじゃんドワーフ、ザッファンタジーで!
「ラッハから来たなら……んっ?途中いくつか村を経由して来たはずだが?」
「いえ、俺達はラッハから直でダバンに来たので」
「直接来たのか、それなら確かにそう思うかもな」
アンカさんいわくラッハはエンドーレの玄関口で貿易、観光の拠点だから多人種なのは当たり前。そして、ここダバンも世界中からアガルタを攻略してひと旗上げたい冒険者や、最古のダンジョンの研究をしたい研究者、貴重なアガルタ武具を買い付けに来た業者なんかが集まって来るから、ラッハに次ぐ多人種が集まる町になっているらしい。
「てか、おい、ちょっと待て。ラッハから直接?昨日は飛竜の受け入れなんてしてないし、獣車でも3日はかかる……おい!お前達!どうやって来たんだ!?」
まずい、余計なことを言ってしまった。魔導式電動二輪装甲車両の説明は実機を見せれば手っ取り早いんだが、また騒がれても面倒だし……さて、どうしたものか……。
「そんな事はどうでもよかろう!それよりもここで装備を整えれば良いのだな?」
「あっ、ああ、そういうことだな」
おお、リアスさんナイスです。
「実はアガルタ武具と偽って偽物を売る店も多い、そこでこれから信頼できる店に案内してやろう。ただし、少々値は張るがな」
「ははははぁ……ありがとうございます」
高いのね……お金足りるかなぁ。
♦︎
「着いたぞ、この店はアガルタへ持ち込み可能な物だけを置いているダバンでも数少ない店だ」
私とリアスは店の看板を見上げながら顔を曇らせている。
なぜなら看板に書かれた店名は【アガルタツールショップ・スベンティ】……つまり。
「こやつの店か」
「ええ、アンカさんの店ですね」
「さぁどうした!入口じゃ買い物はできないぞ」
完全に商人モードに入ったアンカさんに気負いしながら私達は足取り重く入店したが、店に入った私達はオモチャ屋に来た子供のように目を輝かせた。
広い店内に並べられた沢山の武具や道具はそのどれもが綺麗に手入れされ、種類ごとにランク分してありさらに1つづつ性能表示までされている。いままで立ち寄った武器屋や防具屋が物置に思えてしまうほどこの店の陳列は見やすく選びやすくなっている。
「ちょっ、凄くないっすか?」
「ああ……凄いんじゃ」
この店においてさらに凄いのは商品の性能である。
ただの鉄の剣でさえ攻撃力300、これは【AQURIS online】の鉄の剣の5倍以上の攻撃力だ。ただし、値段もそれ相応なのだが……しかし値は張るが高性能なのは事実で、私はヒバチ救出時に防具が全損した為それらをメインに店内を物色し始めた。すると、ファーフード付きN-3Bタイプのカーキ色のジャケットが目に留まった。
【マスタングジャケット】
守備力1200
衝撃耐性
魔法耐性
常時スキル【保温】
私の好みドストライクの見た目もさることながら、性能が規格外に凄い。ヤッバ、これ欲しっ……。
「これは前にタタラが着てたのに似ておるのう、どうしたプルプルと震えて?これがそんなに欲しいのか?」
「リアスさん値段……」
「値段?いち、じゅう、ひゃく……せっ!?1020万!!?」
ジャケットの前で呆然とする私達にアンカさんが声をかけてきた。
「さすが、良いのに目をつけたな。それはアガルタの65階層で発見された物で、鎧を超える守備力を誇りさらに付加効果も付いた珍しい一品だ、災厄クラスを2体も撃破したお前達なら安いものだろう」
メニューウインドウの所持金欄の数字を見つめながら頭を抱えていた。
残金998万2500ピック、イザベルに戻ればきっと災厄達を討伐した報奨金が貰えると思うが今手元に無ければ絵に描いた餅である。
「報酬金がまだ入っていないので、諦めます……」
「なんだ、それならウチのギルドで報酬金を出してやろうか?」
「そんなこと出来るんですか!?」
「ああ、ウチのギルドで立て替えて後日イザベルから送ってもらうからもちろん手数料はかかるが最大2億まで未払い報酬金の支払いが可能だ」
「ちなみに手数料というのは?」
「支払い額の5%だ」
マックス2億受け取ったら手数料で1000万!?いやいや、手数料にそんな大金絶対に支払いたくないが、アガルタを効率的に潜る為に良い装備は整えたいし、その他イザベルに戻る船の乗船料が全員分で約150万、ルチザンでフェンリルの牙の加工費用、さらにエンドーレにいる間の食費、生活費……。
このままじゃ絶対的にお金が足りない……さて、いくらお願いしたら良いものか……。
今までの人生では考えられない大金のやりとりに私の頭がパニック寸前になっているとリアスがある決定を下す。
それも勝手に。
「わかった!装備は全てこの店で揃えるし、報酬金も限度額いっぱい受け取ろう」
「おい!リアス何を勝手に」
「ほう!気前が良いねお嬢ちゃん!毎度あ
「ただし!報酬金の支払い手数料分この店で値引きをするのが条件じゃ!」
「おいおい、お嬢ちゃんそれは横暴が過ぎるってもんだ」
「なら今回妾達はアガルタには挑戦せずにこのままルチザンで用を済ませたらイザベルに帰り通常通り報酬金を受け取りまた戻ってくるとしよう、もちろんその時はこの店で買い物はせぬがな」
おいおい何恐ろしいこと言ってんのこのお嬢様は?相手ギルドマスターよ?エヴァさんと同格よ?そんな人に完全に喧嘩売ってんじゃん。ちょっとヤバイって、謝ったほうがいいって、ほら眉間シワ寄せてめちゃくちゃ睨んでんじゃん。
私のジャケットの為にそんな頑張んなくていいって。
「会長からの依頼はどうでもいいと?」
「どうでもいい?期限を付けられたわけではないからのう、急いでおるわけではないというだけじゃ。さぁどうするんじゃ?」
アンカさんの表情はさらに怒りに包まれる。嗚呼、もういいって、揉めないでリアスさんマジでもう怖いから。
もうジャケット諦めるからやめようってねぇ。
「そんなめちゃくちゃな要求が通るわけがないだろう」
「通せ!妾が話ておる相手は下っ端じゃあるまい?出来ぬ者には初めから言いわせぬ、じゃがおぬしじゃったらそのくらい出来るじゃろう!」
店内は静寂に包まれ同時に冷たい空気がどこからか流れてくる。これはまずい、どうにか今のうちに逃げ出さねば……リアスとマロフィノを抱え【脱兎】で逃げ去ろうとしたその時。
「アハハハハハハ!確かに下っ端じゃできないわな、わかったよその条件通してやるよ」
なぜか、どこかにツボったアンカさん大爆笑アンド爆弾発言……ってマジ!?
「そうこなくては!!」
「うえっ!!マジっすか!!ってことはこのジャケットほぼタダ!?」
「そういうことだな、ただし約束通り他の装備もキチンと購入してもらうからな」
「はい、わかりました」
「やったぁ!!妾コレにするぅ!!」
後ろから過去最高にテンションが上がったリアスの叫び声に近い声が響く、そして、その手に握られていたのは。
【アダマンプレートミーノーワンピース】
守備力:1590
攻撃力: 50
毒耐性
麻痺耐性
石化無効
値段:21050080ピック。
「ほ・か・は・どれにしようかなぁ!あっ!見てみろ、マロに良さそうなのがあるんじゃ」
「フィン」
「……おい」
そう、私は気づいてしまった。
リアスのあの決死のやりとりは私のジャケットのためではなかったということに……そしてリアスの交渉のせいで安い物を買いづらい雰囲気になってしまったことに……。
私達はこの後、僅か2時間で5800万(値引き済み)もの大金を使ったのであった……。
「はっきり申し上げますと、ダンジョンの場所と名前くらいしか」
どこに向かっているのか知らされないまま私達はアンカさんの後をついて歩く。もちろん、暴走気味のマロフィノは私がガッチリと抱きかかえている。
その道中でアンカさんから【アガルタ】というダンジョンの特殊なルールというか性質を教えられた。
【アガルタ】ルールその1。
アガルタに入ると同時にレベル1になり、ステータスもそれに準じたものになる。
その2。
アガルタの内部は入る度に地形が変動し同じ地形になることは無い。
その3。
ルールその2があるため、同時期にアガルタに入ったとしても他の潜航者に出会うことは無い。その為パーティーで潜航したい場合は手を繋ぐなど、ある程度密着した状態でアガルタに入らなければいけない。
その4。
アガルタは下層に行けば行くほど出現魔獣のレベルが上がる。ただし、下層より登ってくる魔獣もいる為、稀に上層で高レベル魔獣に遭遇する場合もある。
その5。
各階層ごとには階段がありそれを下ると次の階層に行くことができるが、再度上層に戻った場合は地形が変動している。
その6。
10層毎にボス魔獣が出現する。その魔獣を倒すと転移石をドロップし1階に戻ることができる。またその転移石は1階で使用すると入手した階層まで転移することができる。ただし転移石を入手した階層以下で使用すると転移出来ず砕けてしまう。
「ここまでで何か質問はあるか?」
何かっていうか疑問だらけなのだが、ここは一番重要そうな事を聞かねばなるまい。
「ルールその1のレベル1っていうのは、アガルタから出てもレベルが低下したままなんですか?」
「アガルタから出たら、入る前のレベルに戻る。さらにアガルタで得た経験もプラスされるから戻って来れた者のほとんどが入る前よりレベルアップしている」
戻って来れた者って、それは戻って来れないヤツも多いってことですね……つーかレベル1の状態で下層から来た高レベル魔獣に遭遇したらほぼほぼアウトなんじゃないか?
「装備とか食料とか事前準備が超重要ですね」
「そこでルールその7だ」
まだあるんかい!!
アガルタルールその7
アガルタ内に地上の物を持ち込んだ場合、強度が著しく低下する。例えば金属の剣であれば炭程度になり一振りで砕け散ってしまうし皮の鎧も紙のように簡単に破けてしまう。
ただし食品類の栄養価はそのままなので摂取することは可能である。
「それから、収納魔法と鑑定スキルを持ったある冒険者が実験したところ、アガルタ内であっても収納された道具は地上の状態と変わりなかったそうだが、取り出した瞬間に強度が低下したそうだ」
「ちょっ、ちょっと!それじゃあ素っ裸でダンジョン攻略しろと!!?」
「そこでルールその8」
アガルタルールその8
アガルタ内には武器や防具、果てには食品や薬までが落ちている、そしてその武具や道具は強度を保っている。またその武具や道具は地上に持ち出し可能で、さらに再度アガルタに持ち込んでも強度が低下することはない。
「なんでダンジョンに人工物が落ちているんじゃ!!」
「それについては面白い話がある、アガルタルールを知らないある冒険者が装備を全損させながら何とか下層に潜っていったところ、落ちていた武器を手にして驚愕したそうだ。それはなんと、自分の持ち込んだ武器と瓜二つ、さらに攻撃力も強度も飛躍的に上がっていたとのことだ」
って、ことはあれか?アガルタ内に落ちている装備類は全て冒険者が持ち込んで壊した装備の生まれ変わりってことか?不思議だ、なんて不思議なダンジョンなんだ!アガルタ。
「さて、おしゃべりしている間についたぞ」
「ここは?」
「ここは町の商店街で通称【拾い物通り】だ」
【拾い物通り】冒険者達がアガルタで入手した物を売買できる商店が並ぶこの通りには、これからアガルタに挑む準備をする者達、アガルタから戻り戦利品を売る者達で賑わっている。
しかし、エンドーレはドワーフの国と聞いていたのにこの迷宮の町ダバンも港町のラッハもそうだったが多彩な人種が満遍なくいるような感じでドワーフが多いといった雰囲気は感じられないなぁ。
「あのぉ、ドワーフってあんまりいないんですか?」
「なんだお前、こんな可愛いエルフといるのに実はドワーフ好きなのか?」
「なんじゃと!?タタラそうなのか!?」
「フィッ!!?」
「違います!!ただドワーフの国と聞いていたのにここまでの道中もあまりドワーフを見かけなくて」
つーかフィッってなんだよマロフィノさん!さてはお前あまりドワーフは好みじゃないな?良いじゃんドワーフ、ザッファンタジーで!
「ラッハから来たなら……んっ?途中いくつか村を経由して来たはずだが?」
「いえ、俺達はラッハから直でダバンに来たので」
「直接来たのか、それなら確かにそう思うかもな」
アンカさんいわくラッハはエンドーレの玄関口で貿易、観光の拠点だから多人種なのは当たり前。そして、ここダバンも世界中からアガルタを攻略してひと旗上げたい冒険者や、最古のダンジョンの研究をしたい研究者、貴重なアガルタ武具を買い付けに来た業者なんかが集まって来るから、ラッハに次ぐ多人種が集まる町になっているらしい。
「てか、おい、ちょっと待て。ラッハから直接?昨日は飛竜の受け入れなんてしてないし、獣車でも3日はかかる……おい!お前達!どうやって来たんだ!?」
まずい、余計なことを言ってしまった。魔導式電動二輪装甲車両の説明は実機を見せれば手っ取り早いんだが、また騒がれても面倒だし……さて、どうしたものか……。
「そんな事はどうでもよかろう!それよりもここで装備を整えれば良いのだな?」
「あっ、ああ、そういうことだな」
おお、リアスさんナイスです。
「実はアガルタ武具と偽って偽物を売る店も多い、そこでこれから信頼できる店に案内してやろう。ただし、少々値は張るがな」
「ははははぁ……ありがとうございます」
高いのね……お金足りるかなぁ。
♦︎
「着いたぞ、この店はアガルタへ持ち込み可能な物だけを置いているダバンでも数少ない店だ」
私とリアスは店の看板を見上げながら顔を曇らせている。
なぜなら看板に書かれた店名は【アガルタツールショップ・スベンティ】……つまり。
「こやつの店か」
「ええ、アンカさんの店ですね」
「さぁどうした!入口じゃ買い物はできないぞ」
完全に商人モードに入ったアンカさんに気負いしながら私達は足取り重く入店したが、店に入った私達はオモチャ屋に来た子供のように目を輝かせた。
広い店内に並べられた沢山の武具や道具はそのどれもが綺麗に手入れされ、種類ごとにランク分してありさらに1つづつ性能表示までされている。いままで立ち寄った武器屋や防具屋が物置に思えてしまうほどこの店の陳列は見やすく選びやすくなっている。
「ちょっ、凄くないっすか?」
「ああ……凄いんじゃ」
この店においてさらに凄いのは商品の性能である。
ただの鉄の剣でさえ攻撃力300、これは【AQURIS online】の鉄の剣の5倍以上の攻撃力だ。ただし、値段もそれ相応なのだが……しかし値は張るが高性能なのは事実で、私はヒバチ救出時に防具が全損した為それらをメインに店内を物色し始めた。すると、ファーフード付きN-3Bタイプのカーキ色のジャケットが目に留まった。
【マスタングジャケット】
守備力1200
衝撃耐性
魔法耐性
常時スキル【保温】
私の好みドストライクの見た目もさることながら、性能が規格外に凄い。ヤッバ、これ欲しっ……。
「これは前にタタラが着てたのに似ておるのう、どうしたプルプルと震えて?これがそんなに欲しいのか?」
「リアスさん値段……」
「値段?いち、じゅう、ひゃく……せっ!?1020万!!?」
ジャケットの前で呆然とする私達にアンカさんが声をかけてきた。
「さすが、良いのに目をつけたな。それはアガルタの65階層で発見された物で、鎧を超える守備力を誇りさらに付加効果も付いた珍しい一品だ、災厄クラスを2体も撃破したお前達なら安いものだろう」
メニューウインドウの所持金欄の数字を見つめながら頭を抱えていた。
残金998万2500ピック、イザベルに戻ればきっと災厄達を討伐した報奨金が貰えると思うが今手元に無ければ絵に描いた餅である。
「報酬金がまだ入っていないので、諦めます……」
「なんだ、それならウチのギルドで報酬金を出してやろうか?」
「そんなこと出来るんですか!?」
「ああ、ウチのギルドで立て替えて後日イザベルから送ってもらうからもちろん手数料はかかるが最大2億まで未払い報酬金の支払いが可能だ」
「ちなみに手数料というのは?」
「支払い額の5%だ」
マックス2億受け取ったら手数料で1000万!?いやいや、手数料にそんな大金絶対に支払いたくないが、アガルタを効率的に潜る為に良い装備は整えたいし、その他イザベルに戻る船の乗船料が全員分で約150万、ルチザンでフェンリルの牙の加工費用、さらにエンドーレにいる間の食費、生活費……。
このままじゃ絶対的にお金が足りない……さて、いくらお願いしたら良いものか……。
今までの人生では考えられない大金のやりとりに私の頭がパニック寸前になっているとリアスがある決定を下す。
それも勝手に。
「わかった!装備は全てこの店で揃えるし、報酬金も限度額いっぱい受け取ろう」
「おい!リアス何を勝手に」
「ほう!気前が良いねお嬢ちゃん!毎度あ
「ただし!報酬金の支払い手数料分この店で値引きをするのが条件じゃ!」
「おいおい、お嬢ちゃんそれは横暴が過ぎるってもんだ」
「なら今回妾達はアガルタには挑戦せずにこのままルチザンで用を済ませたらイザベルに帰り通常通り報酬金を受け取りまた戻ってくるとしよう、もちろんその時はこの店で買い物はせぬがな」
おいおい何恐ろしいこと言ってんのこのお嬢様は?相手ギルドマスターよ?エヴァさんと同格よ?そんな人に完全に喧嘩売ってんじゃん。ちょっとヤバイって、謝ったほうがいいって、ほら眉間シワ寄せてめちゃくちゃ睨んでんじゃん。
私のジャケットの為にそんな頑張んなくていいって。
「会長からの依頼はどうでもいいと?」
「どうでもいい?期限を付けられたわけではないからのう、急いでおるわけではないというだけじゃ。さぁどうするんじゃ?」
アンカさんの表情はさらに怒りに包まれる。嗚呼、もういいって、揉めないでリアスさんマジでもう怖いから。
もうジャケット諦めるからやめようってねぇ。
「そんなめちゃくちゃな要求が通るわけがないだろう」
「通せ!妾が話ておる相手は下っ端じゃあるまい?出来ぬ者には初めから言いわせぬ、じゃがおぬしじゃったらそのくらい出来るじゃろう!」
店内は静寂に包まれ同時に冷たい空気がどこからか流れてくる。これはまずい、どうにか今のうちに逃げ出さねば……リアスとマロフィノを抱え【脱兎】で逃げ去ろうとしたその時。
「アハハハハハハ!確かに下っ端じゃできないわな、わかったよその条件通してやるよ」
なぜか、どこかにツボったアンカさん大爆笑アンド爆弾発言……ってマジ!?
「そうこなくては!!」
「うえっ!!マジっすか!!ってことはこのジャケットほぼタダ!?」
「そういうことだな、ただし約束通り他の装備もキチンと購入してもらうからな」
「はい、わかりました」
「やったぁ!!妾コレにするぅ!!」
後ろから過去最高にテンションが上がったリアスの叫び声に近い声が響く、そして、その手に握られていたのは。
【アダマンプレートミーノーワンピース】
守備力:1590
攻撃力: 50
毒耐性
麻痺耐性
石化無効
値段:21050080ピック。
「ほ・か・は・どれにしようかなぁ!あっ!見てみろ、マロに良さそうなのがあるんじゃ」
「フィン」
「……おい」
そう、私は気づいてしまった。
リアスのあの決死のやりとりは私のジャケットのためではなかったということに……そしてリアスの交渉のせいで安い物を買いづらい雰囲気になってしまったことに……。
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