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アガルタの試練
しおりを挟む「煙になるまで油断するでないマロフィノ!!」
「フィン!!」
【アガルタ】の2階層で謎の魔獣の襲撃を受け、一気に9階層まで落下した私達は、この荒れ果てた荒野のような場所で高レベルの魔獣に苦戦しながらも順調にレベルアップしていた。
タタラ(Lv45)スキルメイカー
HP:2913/3334 OP:492/1729
右手: ウインドソード
左手: マン・ゴーシュ
体: マスタングジャケット
体下: シュバルツデニム
腕: シュバルツグローブ
足: シュバルツウィングチップ
マロフィノ(Lv34)
HP:611/788 OP:94/215
首: レッドチョーカー
体: マスタングベスト
リアス・アーバン(Lv32)
HP:356/498 OP:166/404
右手: 退魔の短剣
左手: ヨルズ・ステッキ
体: アダマンプレートミーノーワンピース
腕: 魔力のブレスレット
足: ミーノーブーティー
「だいぶ楽にはなってきましたが、まだまだキツイっすね」
「そうじゃのう、特に【ヘルベアー】が厄介じゃ」
「フィン」
現在までに9階層で遭遇した魔獣は【レッドレオ】【ハルクリザード】【スピアカクタス】【アイアンアント】そして、話題に上がった【ヘルベアー】なのだが、コイツが本当に厄介極まりない。
特別な攻撃をしてくるとか、魔法を放ってくるとか、状態異常攻撃してくるというワケでも無いのにコイツの何が厄介かと言うと、単純に強いのだ。
レベル70前後のコイツの攻撃は、直撃すれば私でさえ800以上のダメージを受け、こちらの攻撃は硬い毛皮に阻まれ通りずらいうえに9000オーバーのHP……つーか、こんな上層でヘルとか言っちゃってちゃんとネタ続くのかよこのダンジョン!?と、叫びたい気分だ。
それに、身を潜める場所の無いこの階層の地形では遠くからでも魔獣に発見されてしまうため囲まれないように遭遇した魔獣は確実に倒さなければいけないのもキツイ、だが、この9階層に残れる時間も限られている……次は、もう件の10階層だ、泣きごとも言ってはいられない。
♦︎
「準備は良いですか?」
「完璧じゃ!」
「フィン!」
9階層に滞在すること約20時間、その間十分すぎるほどレベル上げをし、10階層へと続く階段付近で発見した洞穴で休息をとっていたがいよいよ階段を下る時が来た。
「何があるか分からぬが、みんな気合い入れて行くんじゃ!!」
『フィィィィウォォォォ!!』
ついに、私達【渡り鳥】は10階層を攻略するべく洞穴を飛び出そう……とした、が、突然洞穴の入り口が巨大な何かに塞がれた。
「グウォォォオオオオオ!!」
「……ヘルベアー」
「そうじゃのう……」
「フィン」
「洞穴ってもしかして、コイツの巣ですか」
「おそらく、そうじゃのう……」
私達は小さく深呼吸をして、洞穴入り口に立ち塞がるヘルベアーの横のわずかな隙間をペコペコと頭を下げながら通過した。
「グゥラウォォォォオオオ!!」
「やっぱりダメか、階段に向かって走れ!!」
リアスとマロフィノを走らせ、私は立ち止まり振り返り猛追して来るヘルベアーに向かい雷魔法【ショック】【スタン】手から放たれた電撃がヘルベアーを拘束し動きを止めた。
「どうもお邪魔しました、それでは!」
そう言い残し私は階段に向け猛ダッシュする。つーかせっかく回復したのにヘルベアーとなんか戦ってられるかっつーの!!
「タタラはなんでこう、いつも締まらんのじゃ!」
「ええ!俺のせいっすか!?」
「フィン!」
なんだよトラブルが全部私のせいみたいに言いやがって……まぁ洞穴で休もうって言ったのは私ですけどね。
そんな馬鹿話をしながら階段を降りて行くと、突然、雰囲気というか肌で感じる空気みたいなものが変わった気がした。
「フィン」
「ああ、そうだな」
この感じはおそらく……ボスが近い。
「リアス、【パーフェクトワールド】を」
「了解じゃ……うむ、この先に大きな空間があるようじゃのう」
それはおそらくボスのいる部屋だろう。
私達は一度立ち止まり、目線で合図を送り合い小さく頷いてから、部屋に向かって歩き出した。
「……ケテ」
「なんじゃタタラ?」
「えっ?何も言ってませんよ」
「……ス……テ」
「なんじゃマロフィノ?」
「フィッ?フィンフィン」
「さっきから何を言って……」
『助ケテェェェェ!!』
「この声じゃ!!」
「声の方に急ぐぞ!!リアスは後方支援、マロフィノはリアスの警護を」
「フィン!!」
おいおいおいおい!【アガルタ】じゃ他の冒険者には遭遇しないはずだろうが!?あの斧魔獣といい、このダンジョンは一体どうなってるんだ!?そんな疑問を抱えつつも、私達は助けを求める声に警戒レベルを最大にしつつ大部屋に駆け込んだ。
「……んっ……じゃ……」
部屋中に陣取る巨大な植物系魔獣の姿にリアスは言葉を失った。
幾重にも別れ地面の上に広がった根が大量の大蛇が蠢くようにうねり、三つ編のように捻れあった幹は大木のように太く、その太い幹の上で禍々しく咲き誇る黒紫色の巨大な花……。
そして、その花の下に垂れた無数の蔓が10名ほど冒険者らしき人達の上半身を飲み込み、ぶら下げている。
鑑定スキル【解析】 【 名前 】 マンドラゴラ
【 レベル 】 310
「助ケテェェ」
「助ケテ」
おそらくあの蔓はチューブのようになっていて、近づいたやつを丸呑みにして栄養を吸い取るのか……それにしても。
「助ケテェェェ!!」
足をジタバタさせながら助けを求める冒険者達……生きる為とはいえこの魔獣、やることがちょっとエゲツないな。
「タタラ!!」
「わかってます!!」
片手剣スキル【飛剣】【飛剣】力強く振りきった剣から放たれた衝撃波が蔓を切断し、冒険者3名が地面に落ちた。
「おい!大丈夫か!?」
冒険者の上半身を覆っていた蔓が徐々に砂煙に変わり、冒険者達が起き上がり。
『助ケテェェェエエエエエエ!!』
「フィッ!!?」
「なっ!!?」
「なんじゃ!!?」
敵意を放ちながら、フラフラとこちらに向かって歩き出した。
鑑定スキル【解析】 【 名前 】 マングローラー
【 レベル 】 289
人だと思いこみ行った行動は、結果、魔獣の罠で敵を増やしてしまった……つーか絶対助けちゃうでしょうが!こんなアリかよ!?
さすがあのタヌキじじ……ダム会長のお題だぜ、まったく。
エゲツないほど不利な状況に落ち入りながら、私達【渡り鳥】の【アガルタの試練】が始まった。
「ほらな、やっぱりタタラじゃろ?」
「フィン」
おいおい、お前達。この状況は俺のせいだけじゃ無いからな。
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