THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

文字の大きさ
110 / 144

脱出

しおりを挟む
「タタラ!!今助けるぞ!!」
「フィン!!」

 リアス達がバハムートに包囲された私を助けようとありったけの攻撃を加えながら叫ぶ声は私には届いていない。
 
 そんな事を知らないリアス達は包囲を解いて起き上がるバハムートを見て自分達の攻撃が通じたと思ったのだろう。

「大丈夫かタタラ!?」
「フィン!!」

「タッ……タラ……」

 バハムートが起き上がった場所にいるはずの私の姿が無いことで、何が起こったのか察したリアス達は言葉を失った。
 
 そして、バハムートはゆっくりとリアス達の方へ体を向け、あざ笑うかのように口角を上げ口を少し開いた。

「おのれ!!爬虫類が!!タタラを!!タタラを返せ!!」
「フィィィィッグロゥッ!!!」

 私がバハムートに飲み込まれたことを知ったリアス達は、怒りで自分達の攻撃がまったく通じていないという事実を失念している。

「土魔法【タワーオブバベル】!!」
「フィグロッ!!!」

 リアスは最大の土魔法を放ち、マロフィノは牙と爪をむき出しにして飛び上がった。
 バハムートは「フンッ」と鼻から息を短く吐いて【タワーオブバベル】が土の塔を作り出す前に踏みつけ、マロフィノを翼で軽く弾いてウォール山脈の岩肌の叩きつけた。

「キュウォッ」

 マロフィノは血を吐きながら地面に落下、リアスは。

「そっ……そんな……わらわの……わらわのせいで……わらわが戦うと言ったせいで……」

 手を震わせながらヨルズ・ステッキをバハムートに突き出すも、その体は今にも膝から崩れて落ちそうなほど力がなく、目には涙がたまっている。

「フィ……ゥゥ……」

 マロフィノは地面に横たわったまま、力の無い目でリアスを見つめている。

「嘘じゃ、さっきまであんなに……みんなで……」

 リアスはうつむき、地面に数滴の涙が落ちてシミを作った。
 そして、絶望の中、空に向かって叫ぶ。

「タタラァァァアアアッ!!!」

 そのリアスの私を呼ぶ声は。

 確かに、私に届いた。

「もういいだろう!!行くぞ!!」

 【逆鱗】ゼロ距離から放つ龍剣、その前に【暴食】で可能な限りベルググの攻撃力を底上げした渾身の一撃をバハムートの体内で発動。
 【ワーム・ロワ】を葬ったこの技、耐えれるものなら耐えて見ろ!!

 私はリアスの声を合図にしたかのように目を見開き、龍のオーラを纏いながらバハムートの体内を上も下も分からないまま、疾走した。
 すると、目の前に大剣のようなものが上下に所狭しと並んだ場所の先に光が見えた。

「リッアアアァァスッ!!」

 私はリアスの名を叫びながらバハムートの体内から飛び出す。

「タタラッ!!」

 涙を振りまきながら私を見上げるリアスの隣に着地し。

「マロフィノは!?」
「あっちで……倒れおるぅ……」
「掴まってください、走ります」
 
 私はリアスの指差したほうに、横たわるマロフィノを発見。
 リアスを抱きかかえ急いで駆け寄り【ハイパーヒール】を発動、リアスを下ろし、膝をついてマロフィノの背中撫でると、喉にたまった血を吐き出しながらヨロヨロと立ち上がり、私の膝の上に頭を乗せて倒れるように座った。
 何分もたっていないというのに追い詰められた仲間達の状態に驚きながら、それでも今、生き残っていてくれたことに安心した。

 私はマロフィノを優しく抱き上げて立ち上がり、振り返った。

 



 

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...