THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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バハムート

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「グロロォォォウォオオオォォ!!」

 バハムートの衝撃波のような咆哮がルチザンの街に響き、【ドラゴンダイブ】で亀裂の入った岩肌や建物の壁がガラガラと音を立てながら崩れる。
 
 どうやらさっきの攻撃で相当ご立腹のようだ。

 私は急いでアイテムボックスから魔法薬を数本取り出しガブ飲みして、武器を構えバハムートを迎え撃つ態勢をとる。

「 手負いだと思って一気に勝負に出ましたがそうはいかないようです、ここからは鱗を一枚づつ狙って剥いでいく、気の遠くなる作業です、覚悟はいいですか」
「当たり前じゃ!!」
「フィン!!」

「俺は正面から行きます!リアスは右!マロフィノは左!距離をとって絶対攻撃を喰らわないよう!」
「了解じゃ!!」
「フィン!!」

「行くぞ!!」

 その言葉と同時に地面を蹴り走り出し雷魔法【サンダー】。

「来い!ベルググ!!」

 手の中に漆黒の大剣が現れたとほぼ同時に天空から青白い閃光を放ちながら落ちる雷がバハムートを直撃。
 凄まじいエネルギーの電撃に包まれたバハムートは首を地面スレスレに落としながら硬直、その隙を狙い、戦陣【鱗断ち】断破と鱗剥ぎの合成スキルで、下がった首元の鱗を狙い下から切り上げる。
金属がぶつかり合ったような甲高い音が響き黒物体が弾け飛んだ。

「ぐっ……」

 痺れるような痛みが両手を突き抜け、思わず苦痛に声を上げた。
【鱗断ち】で飛ばされたのは、私の手の中にあったはずの【ベルググ】だった。

「戻れ!ベルグ……ぐぅ……」

 【ベルググ】をアイテムボックスに呼び戻すため声を上げた瞬間、私の目の前が闇に包まれた。
 それはバハムートが私の周囲を囲むように長い首と尻尾で私を覆ったのだ。
 
 そして、人など簡単に丸呑みできそうなほど大きな口が、私の目の前で少しだけ開き牙をむき出しにた。
 口角が上がるように開かれた口はまるで笑っているように見える。

 その瞬間、私は悟った。

 このバハムートかいぶつが鈍い動きで攻撃をほとんどしてこなかった理由を。
 それは、私達が敵なのか、それとも餌なのか見極めていたのだ。

 リアスの推測通り、バハムートはかなり弱った状態なのだろう、おそらく、ウォール山脈を越えれないほどに。
 そして、ウォール山脈を越えるための栄養補給をするためにこのルチザンを襲撃したが躊躇せずに襲ってくる私達が果たして、自身にさらにダメージを与えるほどの存在か否か、それを見極めていたのだ。

 そして、コイツは今、私達を餌と認識して笑った。

「リアス!!マロフィノ!!逃げろ!!」

 私の叫び声を聞くと同時にバハムートは大剣のような牙が並ぶ口を大きく開いた。
 このまま黙って食われてやるかっつーの、雷魔法【ディスチャージ】私の周囲を青白い電撃がほとばしる、が、バハムートの口は何事もないといった様子で私に迫る。
 口の中ですら、バハムートの防御力は私の魔法攻撃を上回っているのか!?だったらベルググで舌を叩き斬ってやる。

「来い【ベルググ】」
『テメェはさっきヘナチョコ斬撃はなんだ!?俺様をなんだと』
「反省会は後だ!行くぞ!」

 【断破】ありったけの力を込めてバハムートの口から飛び出した舌めがけ漆黒の大剣を振った。

「土魔法【アーススピア】!!」
「フィグロワッ!!」

 バハムートの結界の外から何か激しくぶつかるような音が聞こえる。
 逃げろと言ったのにリアス達が攻撃をしているのだろう。
 全力の攻撃をして、まったくのノーダメージ、さらに鱗一枚すら剥ぎ取れず、ベルググの【断破】でも。

「かすり傷すら……つかねぇか」

 自分の体がバハムートの口の中に消える前に、私はそっと目を閉じた。


 
 
 
 
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