THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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対話

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 誰もいない夜の中央公園には噴水の水の音だけが響き、私は広場の芝生の上で立ち止まった。

 メニュー起動、装備お気に入り3
 手の中に現れた漆黒の大剣を刀身を立て顔の前に構える。

 冷たい風が芝生を波のように揺らしながら吹きつけていく。

「お前なんだろ?」

 ひとりごとのように言った私の言葉に木々のざわめきだけが答える。

「あまり時間もないんだ、なんとか言えよ」

 夜の闇に消えた問いかけの返答をしばらく待つが、答える者はいなかった。
 どうやら私の思いすごしだったようだ。宿に帰ろうと装備を解除しようとしたその時。

『なんだよ、もう終わりかよ』

 耳から聞こえたのではなく頭の中に直接、声が響く。

『黙ってりゃぁもう少し喰えたと思ったが、お前はせっかちだなぁ。タタラァ』

 その声に私の疑念は確信へと変わった。

「毎秒オーラが減っていくんだ、待ち続けるにも限度があるだろ」

『前よりはだいぶ増えてるからいいじゃねぇか』

「あの時、俺の名前を読んだのはやっぱりお前だったんだな……ベルググ」

 刀身が月明かりを反射して光を放つ。

『でっ、食い物てきもいねぇし何の様だ』

「なぜお前は意思を持った?もともとそうだったのか?」

『お前が俺様をこういう風に決めたのさ』
「どういう意味だ」

 こういう風に決めた?まったく意味がわからない。ベルググはゲーム時に入手した武器で、もちろんその設定を作ったのは私ではなくゲームの製作者だ。
 少しの沈黙の後、頭に声が響く。

『あの時、お前が俺様を呼び【真名マナ】を与えたんだ』

 あの時というのは、私はベルググの名をスカイさんに教えた時のことか。
 マナを与えた……コイツが言っているのは、物体の元になる【マナ】ではなく、おそらくフェンリルの言っていた【真名マナ】の方だと推測する。
 マロフィノの時もそうだったがマナを与えるとはどういうことなんだろうか。

「俺がお前の名を呼んだから、お前は意思を持ったってことか?」

『そうだ、【真名】与える力を持つ者が名前を与える、そうすると与えられた者の魂はその【真名】をしるべに進化していく。まぁ聖剣なんて名付けられても俺様は変わりはしないがな』

「【真名】を与えるってのは名前をつけることなのか?それなら誰が付けても」

『俺様だってわからないが、誰でもいいってわけじゃないのは確かだな』

 これ以上の情報は得られそうにないか、OPもだいぶ減ってきたのでベルググをアイテムボックスに戻そうとすると。

『次からは、いちいちウィンドウを出さなくても、俺様をイメージして呼び出せば出てきてやるよ』

「まじ?今、試していい?」

 私はベルググを収納して、心の中でイメージをする。『来い!ベルググ』

「おお!」

 手の中にベルググが現れ、思わず歓声を上げてしまった。

『ホント、お前はせっかち野郎だな』
「別にいいだろ、いきなり実戦で試すわけにもいかないじゃないか」

 その後、色々と試してみた結果。
 念じてアイテムボックスから出し入れ・・・・できるのはベルググだけだが、他の武器を持っている時はその武器と入れ替わってくれる。
 ただし、装備中の武器が手元から1m以上離れていると収納はしてくれない。
 ベルググから他の武器に入れ替える場合はベルググの収納はできるが、他の武器はメニューウィンドウから選択しなければいけないので、今まで通りお気に入り選択で換装したほうが早そうだ。

 でも、この実験で思わぬ収穫があった。
 1m以内であればアイテムボックスに収納できると気ずけたことだ。しかしこれにも条件があるようで、そこらの石で試した結果、一度も触ったことのない物は1m以内にあっても収納できない。仮にこれが人の物ならどうなるのか?そもそも収納できる大きさの限度はどのくらいなのか?色々と疑問が出てきたが、すでに時刻は午前3時。さすがに眠くなったのでこれでおひらきにしよう。
 
 【真名】を与えるという謎の力によって、意思を持つ武器を得たことで私の戦闘にどういう影響があるのだろう。この世界にはまだまだ知らなければいけないことが数多くあるようだ。



 


 
 

 
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