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午前10時
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「フィン!フィンフィン!」
「まだ眠いんじゃぁ……もう少し寝たいんじゃぁ」
「マジで!急いでください!」
マロフィノに先導され、半分寝ているリアスの手を引きながら私達は通りをギルドに向けて走っていた。時刻は午前9時58分。
ベルググの対話により生まれた疑問と今日の報告会への緊張のせいで昨晩はあまり眠れなかった私は、7時には準備万端だったというのに、このガッカリエルフはこの調子でベットから出てこようとはせず、困り果てた私は宿屋のミケさんに頼みガッカリエルフの身支度をしてもらったのだった。
「ああもう、マジでヤバイ」
ガッカリエルフを荷物のように抱え、全速力で走り出す。ほどなく、遠目にギルドが見えた、その入口には冒険者風の人達が数人集まっている。約束の10時まで後1分、ギリギリセーフだ、よかった。
「ずいぶん余裕だな、何でも屋のあんちゃん」
ギルド前に集まっている中のひとり、大柄な隻腕の男がこちらに気づき大きく手を振る。
私は息を切らしながらその男の前に滑り込むようして足を止めた。
「余裕があるなら、こんな全力疾走してきませんよ、スカイさん」
「ガハハハ、言ってみただけだ。間に合って良かったな」
豪快に笑いながらスカイさんは私の背中を2回叩く、その様子を見ながら申し訳なさそうに銀の矢のメンバーが布に包まれた棒のようなものを持って近づいてくる。
お礼と謝罪とともに差し出されたソレは、昨日貸し与えた剣だった。この瞬間まで貸したことすら忘れていた、このまま忘れてクエストに出ていたら大変なことになるところだったな。あっぶねぇ。
リアスを地面に下ろして、二振りの剣を受け取ると、綺麗に手入れされていることに気づく。私が礼を言おうとした瞬間、ギルドの門が大きくな音を立て乱暴に開かれる。そして、入口の中に長い黒髪をポニーテールにまとめた、美しくも恐ろしい女性が立っている。
「何、くっちゃべってんだ。とっとと入れ」
『はい!マスター!』
長い髪を翻し、ギルドの奥に進むエヴァさんに続き、スカイさんを先頭に次々とギルド内に入って行く。私はリアスの後ろ、列の最後尾につけ、うつむきながら歩く。すると、リアスの前のジーティさんが振り返り小声でつぶやく。
「どうしたっすか、タタラさん」
「いっいや……なんでもないです」
私はクエストを受けずに救援に行った事を誰にも打ち明けずにいた。もし、打ち明けたなら銀の矢はきっと私のために手助けをしてくれるだろうが、自分の身勝手に彼らを巻き込んではいけないという思いがあったからだ。
心配そうに見つめるマロフィノを抱き上げ、受付の奥にあるギルドマスターの部屋に入っていくと、エヴァさんが机の奥で椅子に座りながら腕を組み、鋭い視線で私を睨む。
「これで全員だな。タタラ、扉を閉めろ」
「はい!」
ああああ。めちゃくちゃ怖いよ、この人。まだ入室しただけだというのに、キリキリと胃が痛み出した。
「まだ眠いんじゃぁ……もう少し寝たいんじゃぁ」
「マジで!急いでください!」
マロフィノに先導され、半分寝ているリアスの手を引きながら私達は通りをギルドに向けて走っていた。時刻は午前9時58分。
ベルググの対話により生まれた疑問と今日の報告会への緊張のせいで昨晩はあまり眠れなかった私は、7時には準備万端だったというのに、このガッカリエルフはこの調子でベットから出てこようとはせず、困り果てた私は宿屋のミケさんに頼みガッカリエルフの身支度をしてもらったのだった。
「ああもう、マジでヤバイ」
ガッカリエルフを荷物のように抱え、全速力で走り出す。ほどなく、遠目にギルドが見えた、その入口には冒険者風の人達が数人集まっている。約束の10時まで後1分、ギリギリセーフだ、よかった。
「ずいぶん余裕だな、何でも屋のあんちゃん」
ギルド前に集まっている中のひとり、大柄な隻腕の男がこちらに気づき大きく手を振る。
私は息を切らしながらその男の前に滑り込むようして足を止めた。
「余裕があるなら、こんな全力疾走してきませんよ、スカイさん」
「ガハハハ、言ってみただけだ。間に合って良かったな」
豪快に笑いながらスカイさんは私の背中を2回叩く、その様子を見ながら申し訳なさそうに銀の矢のメンバーが布に包まれた棒のようなものを持って近づいてくる。
お礼と謝罪とともに差し出されたソレは、昨日貸し与えた剣だった。この瞬間まで貸したことすら忘れていた、このまま忘れてクエストに出ていたら大変なことになるところだったな。あっぶねぇ。
リアスを地面に下ろして、二振りの剣を受け取ると、綺麗に手入れされていることに気づく。私が礼を言おうとした瞬間、ギルドの門が大きくな音を立て乱暴に開かれる。そして、入口の中に長い黒髪をポニーテールにまとめた、美しくも恐ろしい女性が立っている。
「何、くっちゃべってんだ。とっとと入れ」
『はい!マスター!』
長い髪を翻し、ギルドの奥に進むエヴァさんに続き、スカイさんを先頭に次々とギルド内に入って行く。私はリアスの後ろ、列の最後尾につけ、うつむきながら歩く。すると、リアスの前のジーティさんが振り返り小声でつぶやく。
「どうしたっすか、タタラさん」
「いっいや……なんでもないです」
私はクエストを受けずに救援に行った事を誰にも打ち明けずにいた。もし、打ち明けたなら銀の矢はきっと私のために手助けをしてくれるだろうが、自分の身勝手に彼らを巻き込んではいけないという思いがあったからだ。
心配そうに見つめるマロフィノを抱き上げ、受付の奥にあるギルドマスターの部屋に入っていくと、エヴァさんが机の奥で椅子に座りながら腕を組み、鋭い視線で私を睨む。
「これで全員だな。タタラ、扉を閉めろ」
「はい!」
ああああ。めちゃくちゃ怖いよ、この人。まだ入室しただけだというのに、キリキリと胃が痛み出した。
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