悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白

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これでお互い様ね

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 驚いて後ろを振り返ると、そこにいたのはルイス、リアナ、テムル、ミーシャ、ジキウスだった。ルイスは私の隣に進み出て、その場に跪いた。
「失礼いたします。エマ・リーステンの国外追放を取りやめていただけるよう、お願いに参りました」
 そう言って懐から紙を取り出して開く。そこにはたくさんの名前が書かれていた。
「これは国外追放に反対する者の署名です。あまり時間が無かったためここには100人程度ですが、もっと集められる自信があります」
 国王はジキウスに視線を向けた。
「ジキウス、お前がエマのことを嫌になったから許嫁解消を切り出したんだろう。どうしてそこにいる」
「そういう事だったんですね。追放を決めた理由を教えてくれないので、ずっと疑問に思っていました。確かにあの頃、許嫁解消を決めた理由はその通りでした。でもそれは、私自身も許嫁であるエマに対して配慮が足りなかったと今では思っています。エマは悪人なんかじゃない。信じてください」
「私はエマに嫌がらせをされていたとされる本人ですが、ひどい思いなんてしていません。私の大切な親友を奪わないでください」
 国王はジキウスやリアナの目をじっと見据えた。
「……分かった。彼らの訴えに免じて、今まで通りの生活を続けることを許可しよう」
 そう言って私に視線を向けた。
「しかし、先ほどの件は悪用しているのを見つけたら……その時は分かっているな?」
「もちろんです。ご用命の際はいつでもお申し付けください」
 私は深く頭を下げた。奥の手として用意していた「未来視」はゲームのシナリオで知っている情報を使ってやりくりするつもりだった。国の情勢はどの攻略キャラのシナリオを選んでもほとんど共通していることがラッキーだった。
「話は以上だ」
 そう言って国王は去っていった。これからも今まで通りの生活が出来る……! 国外追放を回避したんだ……!
「エマ!」
「うわっ!?」
 横から勢いよく抱きついてきたのはリアナだった。
「もう会えなくなるんじゃないかってずっと怖かった……!」
 私の胸に顔を埋めるリアナをそっと抱きしめ返した。
「心配かけてごめんね。リアナ達のおかげで助かったよ。本当にありがとう。私もリアナ達と離れたくなかったから頑張れたんだ。そうだ、これ」
 そう言って髪を束ねていたリボンを外す。
「本当はリアナにプレゼントするためにルイスと買ったものなんだけど、リアナの力を借りたくて私が使っちゃった。今度新しいのを用意するね」
 するとリアナは私の手からリボンを抜き取った。そして大事そうに胸に当てた。
「ううん。私はこれがいい」
「……そっか」
「お2人の世界に入っているところに水を差すようで申し訳ありませんが、私はこれで失礼いたします」
 そう言って近づいてきたのはノアだった。
「もう行くの?」
「ええ。本来私はここにいることが許される人間ではないのです」
 そう言うとノアは深々と頭を下げた。
「お嬢様にはひどい態度を取ってしまい大変申し訳ありませんでした。何とお詫びをしたらいいか……」
「ノア、顔を上げて」
「ですが……!」
 頑なに頭を上げようとしないノアの体を掴んで、強引に前を向かせる。
「おじょう、さま……」
「えい!」
 私はノアの額にデコピンをした。ノアは驚いて目を丸くする。
「な、なにをするんですか!?」
「仕返しよ。これでお互い様ね」
 ニッと笑って見せると、ノアは口元に手を当てて笑った。
「ふふっ……やっぱりお嬢様は私の手に負えないようですね」
 そう言うとノアは姿勢を正した。
「ここまで連れてきていただいたこと、感謝いたします。お嬢様とそのご友人の勇姿を拝見して、私は暗い過去にとらわれたままだったのだと気づかされました。ですから、私も一歩踏み出して会いに行こうと思います」
 それはきっと生き別れた妹のことだろう。
「うん、いいと思う」
「お嬢様に素敵な未来が待っていることを陰ながら願っております。いつかまた、会えるその日まで。それでは」
 ノアは美しい所作でお辞儀をして、部屋を出て行った。私も、ノアには幸せになってほしいな。

 私は玉座の前で跪いたままぶつぶつと何か言っているシルバの元にツカツカと歩み寄った。
「お父様!」
 その声にやっと反応して、私の方を振り向いた。
「エマ……お前は一体何をして……」
「私は友達と一緒に帰りますので、お父様は先にお戻りください」
「そんな……私はただ……」
「うちに帰ったらしっかり話をしましょう。脅すのはもう無しですよ」
 そう言って手を差し出すと、遠慮がちながらシルバはその手を掴んだ。
「よいしょっと!」
 勢いをつけてシルバを引き上げる。そして立ち上がったその背中を押した。
 シルバがエマを大切に思っているのなら、それに応えてあげるのも今の私の役目なのかもしれない。
「じゃあまた後でね。お父さん」
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