悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白

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杞憂なら

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 リアナに彼氏が出来た。それは嬉しいことだ。でもその相手は、ルイスの代わりにまほプリ2に登場した不良キャラのキースだった。これは一体どういう事なんだろう。この世界はまほプリ1の方じゃなかったの……?
 キースとのデート服を一緒に選んでいるリアナはいつも以上に可愛くて、本当に彼のことが好きなんだって伝わってきた。リアナには幸せになってほしいって心から思う。
 だから、私のこの考えは杞憂ならいい。主人公リアナがキースを選んだ今、まほプリ2の世界へ移行しているなんてことは。

「ルイス!」
 学園に登校して、真っ先にルイスのいる教室へ向かった。席に座っていたルイスは驚いた様子でこっちを振り向いたけど、私と目が合って微笑む。
「おはよう、エマ。教室まで来てくれるなんて珍しいね」
 いつも通り、に見える。やっぱり私の考えは思い過ごしだったんだよね……?
「エマ、場所を変えようか」

 ルイスに連れられて、第二図書室へやってきた。ルイスが温かい紅茶を入れてくれる。
「何か心配事?」
 向かい合って座ると、ルイスがそう切り出した。紅茶の入ったティーカップに触れるとじんわり温かさが伝わって、少し心が落ち着いた。
「ルイス、最近変なことはない? 体の様子がおかしいとか……」
 私の言葉にルイスは首を捻った。
「変なことは特にないかなぁ。体も元気だし……ゴホッゴホ」
「ルイス!?」
 慌てて立ち上がって駆け寄る。
「大丈夫だよ。最近ちょっと咳が出るだけ。その他は本当に元気なんだよ」
 そう言って微笑む。
 私は、すごく怖いよ……ルイスがこの世界から消えちゃうんじゃないかって。そんなこと今まで考えもしなかったから。
 ルイスは立ち上がった。そして、私の頭を優しくなでる。
「心配してくれてありがとう。もしも病気になったとしても、すぐに治してみせるよ。だって、大好きなエマとずっと一緒にいたいからね」
「本当……?」
「約束するよ。エマが『ルイスなんてキライ!』って言うまでは離してあげないからね?」
「……言わないよ、そんなこと」
 話して少し安心した。うん、きっと大丈夫な気がする。
「やっと安心した顔になったね。それじゃあ戻ろうか」
「うん」

 その数日後、ルイスは学園へ来なくなった。


 ルイスの家までの道は覚えていた。早く行きたいのに、体に上手く力が入らなくて全力で走れないのがもどかしい。
 早く、早く……!
 やっと家に着くと、すぐにメイドがやってきて中へ通された。案内された部屋で、ベッドに横になったルイスと目が合う。
「ルイス……!」
 側へ駆け寄る。ルイスは申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね、エマ。きっと心配してうちに来るんじゃないかと思ってたんだ」
「具合、そんなに悪いの……?」
「昨日、登校してから体調が悪くなってきて、講義中に倒れたみたいなんだ。あんまり覚えていないんだけどね。家へ帰ってからは少し回復して、今もそこまで辛くないよ。ゴホッ、ゴホッ……今は咳と少し体がだるい感じがするくらい。先生に診てもらったけど、原因は分からないって言われたんだ」
 昨日はキースの転入初日だから校内を案内してくるって、リアナが言っていた。同じ日にルイスが学園で倒れたことが偶然とは思えない。
 原因不明の病。やっぱりこの世界は、ルイスを排除しようとしているんじゃないの……?
「結局エマに心配かけさせちゃったなぁ……こんなのバチが当たっちゃうよ」
「そんなこと……!」
 ルイスが消えてしまったらどうしよう。そのことが怖くて仕方ない。
 どうしてキースは突然リアナの前に現れたんだろう。リアナの口からキースの名前を聞いたのは、この前が初めてだった。
「エマ……?」
 ルイスが心配そうにこっちを見つめている。その表情もどうしようもなく愛おしい。

 ねえ、もしかして、キースが現れたのはルイスと私が付き合うことになったから……? 

 ルイスが主人公の攻略キャラとして役割を果たさなくなったから、キースが出てきたんじゃないの? もしそうだとしたら、私のせいだ。私がエマになって、ルイスに恋をしたから、ルイスがこの世界から消えてしまう……?

「エマ、大丈夫。落ち着いて」
 その声にハッと引き戻される。ルイスは私の手を優しく包み込んだ。
「手が冷たいね。温めてあげる」
「ねえルイス、どうしよう、私……」
「僕はエマの前からいなくなったりしないよ。すぐに治せるかは分からないけど、約束したからね」
「約束……」
「大好きなエマと一緒にいたいからって」
 そう言って笑顔を見せてくれた。
 ルイスがここまで言ってくれているのに、私がこんな調子でどうする。好きを貫いて幸せに生きるんだ、一緒に!
「私も、大好きなルイスとずっと一緒にいたい!」
 私一人の力じゃどうにもならないのかもしれない。でもやるんだ。考えろ。幸せな未来の可能性が僅かでもある限り。
 その時、ある人の顔が浮かんだ。やらない手はない。
「ルイス、私の賭けに乗ってくれない?」
「もちろん、喜んで」
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